575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

父、竹中皆二の短歌から ~老松 伐られる~竹中敬一

2017年07月21日 | Weblog
私の生家「いるかや」の前の一本松が伐られることが決まったのが昭和47年(1972)、
父が歌友の前川佐美雄氏に寄せた歌です。

  君かって宿り給ひし「いるかや」は 今赤土の崖に面する

  狸共穴を追はれし如くにて あるときの我うろうろと居り

地蔵堂は「いるかや」の横に僅かな村の空き地があって、そこに新しく建てられる
ことになりました。我が家のある一帯は村有地です。今でもごく僅かながら借地代を
村に納めています。父はよく私にくどいように云っていました。
「ここの土地を買ったりしてはいけない。この村に住まわせてもらっているという
ことを忘れるな」と。

新しい地蔵堂の脇に父の歌碑を建てる話がお弟子さんたちの間で持ち上がりました。
お弟子さんの一人がこの歌碑の話を父にしたところ、一笑に付したそうです。
そして、「私の歌碑なら断る。もし、どうしてもというなら、この街道にたつ老松が
道路拡張のため伐られる。その松の鎮魂なら…」と云って、やっと了承したという。

その老松が伐られる日がきました。父は思いを歌に託します。

  昭和四十八年六月十四日 樹齢五百年の松は伐られき

  拓かれし観光道路さもあらばあれ 樹齢五百年の大松伐られき

父のお弟子さんたちが歌友に寄付を募り、村の協力もあって昭和59年(1984)に、
父の歌碑が建ちました。歌碑の下には老松の根っ子の部分が葬られています。
歌碑には父の字をもとに、初期の代表作が刻まれています。

  老松に渡らふ風のひびきあり うば玉の夜にわれはきくかも

写真は、竹中皆二の歌碑 背後は入江と久須夜岳 (619m)

コメント
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