恋ひ恋ひて・・・巻四・六六七 大伴坂上郎女
恋ひ恋ひて・・・巻四・六六七 大伴坂上郎女
「恋ひ恋ひて 逢ひたるものを 月しあれば 夜は隠るらむ しましはあり待て」
校訂原点(漢字)
「戀々而 相有物乎 月四有者 夜波隠良武 須臾羽蟻待」
現代語訳と解説
「長く恋し続けて、やっとお逢いできたのです。まだ月が残っているので夜の闇は深いでしょう。しばらくはこのままいてください」
恋し続け、苦しんできて、やっと逢えたふたりです。だから、帰るのを待ってください。夜はまだたっぷりあるのだから、もう少しそばにいて、と大伴坂上郎女が安倍虫磨に贈った恋歌です。
実はこの恋、架空の恋なのです。
ふたりは恋人でもなく、ふたりの間に恋心が芽生えたわけでもありません。仲間として楽しく語り合い、お酒を呑んでいるときに詠まれました。
万葉集にあるパターンのひとつ、引き止め歌を真似て知的な遊びを言葉の上でしているのです。
日本語には複数という概念がありません。そこで例えば、木なら木木(きぎ)という風に、同じ言葉を重ねて複数を表現していたようです。「恋ひ恋ひて」は、恋し続けるという意味になります。
恋とは、苦しさやせつなさ、そこにないものを求めること。そんな恋を知る大人同士であり、気心の知れた仲だからこそ、この歌は楽しめるのです。
恋ひ恋ひて・・・巻四・六六七 大伴坂上郎女
「恋ひ恋ひて 逢ひたるものを 月しあれば 夜は隠るらむ しましはあり待て」
校訂原点(漢字)
「戀々而 相有物乎 月四有者 夜波隠良武 須臾羽蟻待」
現代語訳と解説
「長く恋し続けて、やっとお逢いできたのです。まだ月が残っているので夜の闇は深いでしょう。しばらくはこのままいてください」
恋し続け、苦しんできて、やっと逢えたふたりです。だから、帰るのを待ってください。夜はまだたっぷりあるのだから、もう少しそばにいて、と大伴坂上郎女が安倍虫磨に贈った恋歌です。
実はこの恋、架空の恋なのです。
ふたりは恋人でもなく、ふたりの間に恋心が芽生えたわけでもありません。仲間として楽しく語り合い、お酒を呑んでいるときに詠まれました。
万葉集にあるパターンのひとつ、引き止め歌を真似て知的な遊びを言葉の上でしているのです。
日本語には複数という概念がありません。そこで例えば、木なら木木(きぎ)という風に、同じ言葉を重ねて複数を表現していたようです。「恋ひ恋ひて」は、恋し続けるという意味になります。
恋とは、苦しさやせつなさ、そこにないものを求めること。そんな恋を知る大人同士であり、気心の知れた仲だからこそ、この歌は楽しめるのです。