月と蟹 | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
【一口紹介】
◆内容紹介◆
小学生の慎一と春也は「ヤドカミ様」なる願い事遊びを考え出す。
100円欲しい、いじめっ子をこらしめる――他愛ない儀式はいつしかより切実な願いへと変わり、子供たちのやり場のない「祈り」が周囲の大人に、そして彼ら自身に暗い刃を向ける……。
注目度ナンバー1の著者による最新長篇小説。
鎌倉の風や潮のにおいまで感じさせる瑞々しい筆致で描かれる、少年たちのひと夏が切なく胸に迫ります。
◆内容(「BOOK」データベースより)◆
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。
やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる―やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。
【読んだ理由】
平成22年度下半期 直木賞作品
【印象に残った一行】
誰、昭三は言った。
「何にでも、きっと理由ってのがあんだ。世の中のことぜんぶにな、ちゃあんと理由がある、俺の足が切られたのも、あんときあいつをろくに探さねぇで、逃げ帰っちまったからだ。いの一番に逃げ出したからだ。何だって、けっきょくはさーーー」
もう一度のろのろと左足を撫でる。
「けっきょくは、自分に返ってくんだ」
昭三の話を聞いているうちに、慎一もそんな気になってきた。何かと何かが見えない糸でつながっていて、どちらかを引っ張るともう片方も引っ張られる。そんなイメージが頭の中に浮かんだ。
【コメント】
淡々とした小説であるが、読み始めると何故か読者を引き付ける。
この著者の作品ははじめて、他の作品も読んでみよう。