# 95 <初めての進水式> 2005.10.18 発信
10月17日の大安の日に55,500トンのばら積み運搬船の進水式がありました。

JR神戸駅から歩いて15分ほどで川崎造船の神戸工場につきました。会場は第4船台でした。
知人の安本久美子さんの兵庫高校の同期の方が日本海事検定協会におられ、安本さんとその方のツテで見せてもらえることになりました。
安本さんの高校同期の方々など総勢10名で、大勢の招待客や造船会社のOB、家族に混じって船台まで歩きました。

構内に入って気が付きました。この造船所の大型船殻(ブロック)組立て用のドックサイドの沢山のクレーンは 合併会社である私の元勤務先の会社の一つが、
納入したクレーンでした。私の担当のお客さんではありませんでしたが、先輩たちが昭和20年代から連綿と継続して購入してもらってきた大事なお得意先の会社でした。
川崎造船さんはそんなご縁がある会社さんであることを、構内に入場してから気が付きました。もう40年、50年と使われ、いまだに現役である沢山の
納入クレーンを見るのはやはり心踊り嬉しいものでした。


当日のために設えられた貴賓台に関係者が着席するまでの待ち時間の間、神戸市消防局の音楽隊の演奏からハヤリの「のまネコ」の曲が流れてきた時は耳を疑いました。
早くもこれをやるか、さすが神戸市!なかなかやるやんと思いました。

式の直前には造船所の近くの小学校かららしい一団がやはり一カタマリになって入場してきました。
進水式は手順に従い、国旗掲揚からスタートし、傭船社(船を借りて運用する会社)の社長が「KATRINE STAR」と命名したあと、
オーナー夫人が斧で支綱を切断すると、綱の先にセットされているお神酒をつかんだアームが折れ曲がり、お神酒が割れると同時にくす球が割れました。
事前に予備知識でメールを頂いていましたが、予想以上に静かに船は船台を滑っていきました。皆さんと一緒に私も大きく拍手をしていました。

長さ185m、幅32m、高さ17.8m、グロス31、000トンの鉄鋼構造物が動き出すと言うのはこんなものかと言うほどあっけなく船体は静かに進み着水していきました。
最近のIT技術も適用せず昔ながらの方法で大きな船体を、事故もなく無事に着水したことが確認できたとき、見守る発注者以上にこの番船の製造責任者から末端の現場担当者が、
一番ほっとされたことだろうと思いました。


自分が担当して購入していただいた機械設備に、それぞれの客先立会いで試運転のスイッチが入った瞬間の百回以上経験した緊張感を、ついいまだに思い出しながら
長く拍手を続けていました。
なお、今回の進水式が今や日本で唯一の方式だとの解説でもありますので、事前に日本海事検定協会の安田健二さんからメールで頂いた下記の説明をご興味のある方はお読みください。
⇒船は、傾斜のついた陸上の船台で製作されます、積み木のブロックみたいに積み重ねて建造しますが、一般の陸上構造物とことなり、船は海に浮かばさねばならないので、
ある程度船体(どんがら)が完成した時点で、傾斜の台を滑らせて海に浮かべます。これが進水式です。進水式後は、岸壁につないで内装などの工事をして完工となります。
しかし、船が大きくなりますと船台でつくるわけにはいかず、最近の新しい造船所ではドックの中で直接建造しております。
この場合船は傾斜をすべらないので、ドックに 注水して浮上させております。
今日本の大型船を建造する造船所はほとんどドックで建造しておりますが、神戸の三菱重工と川崎造船は非常に古い造船所で、昔風の方法で船台で建造し、
進水して完成しております。いまや神戸以外の大都市では進水式をみることはできず、神戸市民はこれをみる恵まれた環境にあります。
さて、川崎造船の場合は昔ながらのヘット(油脂)を使用した方法で進水させております。
三菱重工は、船体をすべらせるのに、船台の滑り面に鋼ボール玉をソロバン状に敷き詰めて進水させております。進水作業は簡便ですが進水時は
ガラガラととても大きな音がいたします。
一方、川崎造船は昔からの方法で滑り面にヘット(油脂)を敷き詰めて進水させます。この方式による大型船の進水は日本では非常に珍しくなっています。
いまでは非常に珍しい進水式です。
進水式の日時:進水式は進水後船体を傷つけ無いように、大潮の時間に行い、日取りも大安の日に行いなす。 今回の17日は大安でまた、月も満月であり、進水は満潮時です。
進水式では、進水の前にまず、命名式をするのが普通です。
この後、支綱(ロープ)を切断ー>進水作業ー>進水となります。
なお、昔より進水は造船所にとって子供の出産であり、支綱(しこう)は母親と子供をつなぐ臍帯にみたてて、この綱を切断するのは、必ず女性ときまっております。
今回も船主の奥さんが斧で切断し、ロープの先にあるお神酒が割れ、進水します。
また、このロープは安産のお守りとして寸断され関係者に配布されます。
今回、川崎造船で進水するのは、穀類、 石炭などをバラ(梱包しないで)で運搬するバラ積運搬船(バルクキャリアー:BULK CARRIER)です。