#111 シンドラー社の人身事故・隠居の茶話その五 2006.06.15作成・メルマガ発信
売れない落語家の 阿智胡地亭辛好 が今日も今日とて、楽屋横の隠居部屋に上がりこみ、
席亭のご隠居と毒にも薬にもならない話で盛り上がっております。
辛 好:ご隠居さん、スイスの会社が作ったエレベーター事故でひとじにがあって、なんやその会社が責任逃れみたいなことして
新聞やテレビによう叩かれてますなあ。
隠 居:そらそうや、世界でも2番目のシェアーを持つ130年からの歴史がある会社やけど、事故に対する初動対応は下手やったなあ。
おそらく日本法人としては、何ごともスイスのご本社のご意向を伺ってからやないと、外には物言うたらアカン決めに社内的になってるんやで。
まぁ、日本のシンドラー社の社長言うても、本社から言えばせいぜい部長クラスが派遣されてるんやと思うわ。
日本の大手もアメリカや欧州や中国の現地会社は同じようなもんらしいからな。
辛 好:それにしても新聞で見たけど、官庁関係の入札では日本メーカーより2割くらい安い落札額で注文さらってるらしい。
やっぱり安かろう悪かろうに間違いないわ、ご隠居さん。
隠 居:確かにそういう一面はあるかもしらん。そやけどワシにはも一つわからんとこもあるんや。会社いうのは損しては続かんから、
会社が続いている言うことは、必ず利益があるんや。
利益があるからこそはるばる欧州のスイスの会社が、極東の島国で商いやりはるんや。2割安の値段レベルでも商売いけるんかも知らんで。
辛 好:いや、やっぱり、危ない機械売るこんな会社は、征伐して日本でアキナイやれんようにお上に頑張ってもらわんと。
隠 居:そら、ちゃんと原因をはっきりさせて再発せんように直してもらわんといかんけど、この会社が日本で商いやってくれてる
お陰でエエことが一つあるんや。
辛 好:そんなもん、ありまっかいな!テンゴ言うたらどもならんな、いくら年寄りや言うても。
隠 居:おいおいえらい過激なこと言うやないか、それ以上言うたら出入り禁止やぞ。
あのな、日本ではこの業界は秘達、投資場、密微視ちゅうような大手が殆どおさえとって、もう長い間値段が高止まりしてる機械やねん。
もしお前が足の悪いお婆ちゃんのために、家でエレベーターつけよ思て見積もり取ってみ、そら軽四1台買えるくらいの数字が出てくるわ。
それから保守整備不良は国民の生命にかかわるちゅう誰も反論でけん理屈でお上に働きかけて、定期点検の法令つくらせよった。
年間定期点検が義務付けられてるから、一台エレベーター入れたら、必ずメンテ契約せないかん仕組みや。
車の定検と同じや。この席亭にもエレベ-ター2台あるから契約するねんやが、この見積もりは、これまでは不思議なことに
相見積もり取っても値段どこもかわらへん。
こないだから漸く法令が緩和されて、専門メーカーの子会社やのうても保守点検できるようになって漸く値段が動きだしたんや。
その代わり整備会社もまだ玉石混合やけどな。淘汰が進むまでしばらくかかるやろな。
辛 好:そうですのん、そらおいしいカラクリですなあ。どこにも頭のエエ奴はおるもんや。
隠 居:おいおいお前が感心してたらどもならんがな。あのな、お客さんのチケット代にそんな費用がみんな乗ってるんやで。
こんどの事故で陰で喜んでいるのが、いままで長いこと業界協調している日本のエレベーターメーカーやな。
なんせ各社のエレベーター部門は点検保守の収入も入るから何十年と赤字になったことがない珍しい商売や。
事故起こした会社が2割も安い値段で公共関係の入札を落するんで、頭痛かったけど、今の新聞見たら日本人が皆、
シンドラーの値段は不当廉売やと思う方向になってるわな。
このまま、もしかしてスイスへ撤退でもしてくれたら最高やと大手の会社は思てるな。
そうならんでもしばらく大人しゆうしてくれたら、これまでどおりの仲間内で和やかな競争せん商売に又戻れるチャンスやと思てるわ。
辛 好:そらそうかも知らんけど、やっぱりスイスの会社は日本人を舐めてるような気ぃがしてならんけど。
隠 居:確かにそれはそうやな、シンドラー社は慌てて危機管理のコンサルタント会社雇とうたらしうて、突如態度が一変して、
幹部が頭下げだしたわな。
イスラエルのタンカーが日本の漁船を沈没させたときと同じで、最初は世界の共通ルールで頭下げた方が負けやから理屈でツッパっとったけど、
日本人は他の国とちごて情緒に訴えるのが一番と言うこと教えられたんや。
日本のマスコミは、毛の薄い頭のテッペンがいくつも並んだ写真撮って、紙面に載せると矛を収める言うのを教えてもらおたんやわ。
辛 好:ご隠居、それは日本のマスコミが日本の読者をバカにしてるのを、うまいこと外国人に利用されてるんとちゃいますか?
まあ、隠居が言いはるんは、新聞が書く記事を額面どおりに見んと、マナコ開いてあちゃこっちゃからも見んといかんちゅうことですな。
隠 居:おお、お前もワシの話を聞くようになってから、ちょっとくらい世間がわかってきたがな。
辛 好:なんや知らん、今日はいつもと違ごて、下ろしたり上げたりでんな。
隠 居: そらお前、エレベーターは日本語で昇降機ちゅうくらいのもんやからな。
お後がよろしいようで。
注)シンドラー社エレベーター死亡事故
2006年6月3日午後7時20分頃、東京都港区共同住宅「シティハイツ竹芝」12階のエレベータにおいて、
男子高校生がエレベータの床部分とエレベータ入り口の天井に挟まれ死亡するという事故が起きた。
死亡した男子高校生は同マンションの13階に住む女性と一緒に1階からエレベータに乗ったが、 この時自転車を引いて前向きに乗り込んでいた。 エレベータが12階に停止したので男子高校生が自転車にまたがって後ろ向きで降りようとしたところ、 エレベータが扉を開いた状態のまま突然急上昇したため、男子高校生はエレベータのかごの床部分とエレベータ入り口の外枠天井部分との間に挟まれた。 体を折り曲げて頭と足をエレベータ内に残し、背中を外に出した状態であった。 同乗していた女性がすぐにエレベータ内の非常ボタンを押して同マンションの防災センターに事故を通報、 防災センターの職員が119番通報して男子高校生は約40分後に救急隊員により救助されたが、全身打撲と頭部骨折で間もなく死亡した。 その後の司法解剖の結果、死因は胸や腹部を強く圧迫したことによる窒息死と判明した。 引用元。
http://www.shippai.org/shippai/html/index.php?name=nenkan2006_04_Schindler