『クィーン』(原題: The Queen)は、2006年のイギリス映画。1997年8月31日のダイアナ元皇太子妃の突然の交通事故死の最中にある当時のイギリス王室の舞台裏といえる史実を描いた作品である。監督はスティーヴン・フリアーズ、主演はヘレン・ミレン。エリザベス2世を演じ、ヴェネツィア国際映画祭の女優賞を受賞するなどの高い評価を得ている。共演にトニー・ブレアを演じたマイケル・シーンなど。シーンは、フリアーズ監督の過去のテレビ作品でもブレア首相を演じている。またヘレン・ミレンもこの映画に先立ち、テレビミニシリーズ『エリザベス1世 〜愛と陰謀の王宮〜』でエリザベス1世も演じている。
今作は第63回ヴェネツィア国際映画祭に出品され、プレミア上映された。エリザベス2世を演じたヘレン・ミレンと本作品は高い評価を受け、女優賞と脚本賞を受賞する。上映後、15分間のスタンディング・オベーションを受け、最高賞にあたる金獅子賞でも最有力作品とも言われた。
全米で公開された際も批評家から熱狂的な支持[2]を得たほか、第79回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、衣装デザイン賞、作曲賞の合計7部門にノミネートされ、最終的には主演女優賞を受賞する。エリザベス女王とブレア首相本人もこの受賞を祝した。
キャッチコピーは「全世界が涙したその日、ただ一人、涙を見せなかった人がいた」。引用終わり。
映画「クィーン」を見ました。
今から10年前、43歳の気鋭のブレアが英国の新首相に選出されました。(その彼も昨日、任期を2年残してを自ら辞任を発表しました)。
今から10年前のまさにその時、元英国皇太子妃のダイアナさんがパリで亡くなりました。
この映画は、ダイアナ元プリンセスの死を悼む英国民と世界のフアンの深い悲しみの気持ちを当初読むことが出来なかったエリザベス女王と、
その時の世間の空気を感知し女王に現実の状況を伝え、助言、進言をして行ったブレア首相の二人の緊迫した七日間を描いた映画です。
1、映画としては私の面白い映画の判断基準である「次のシーンの展開が読めない」「ハラハラドキドキがある」「観客を見下したあざとさがない」の3つが合格の面白い作品でした。
エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンは今年のアカデミー主演女優賞を獲得しました。賞を取ろうが取るまいがそんなことは無関係に、
人が他人の人格をここまで演じ切る事が出来るものなのかと、ただただ驚きました。
2、映画を見ている途中と見終わってこんなことを思いました。
・イギリスの王室のトップの私生活の場(と思えるもの)を映画のスクリーンに平気で写すことが出来るイギリスという国の懐の深さはどうだ。
・あのお歳で領地内とは言え、イギリス王室では女王自らが四駆を運転することが出来るのだ。
・女王の母親である皇太后と夫であるフィリップ殿下は作劇上明らかに常に“ヒール・悪役”なのだが確かに王室が善人ばかりではないにしろ、こんな描き方が出来る、
(許される)英国の国民と王室の関係は現在の日本の国民と皇室の関係では想像の枠をはるかに超えるなあ。
・自分としてはダイアナ元妃をあのような目に合わせた元凶はチャールズ皇太子だとこれまで思い込んでいたが、なんとこの映画では彼は登場の全画面で“
ベビーフェイス・善玉”に近く描かれているのはなぜ?
・今までにもこれからもこれだけ愛らしい女性は生まれてくることはないと思えるダイアナ元妃だけが実写フィルムで登場し、それが映画をドキュメント風に真実味を与えている。
本人がこうして登場出来なければ、この映画は成り立たないほどの重みがある。
彼女の肖像権を所有する生家である「スペンサー伯爵家」は何故彼女の実写の肖像の使用を許可したのか?彼女の名誉回復?カネに転んだ?
あるいは公人の行動を写したフィルムの使用権は所有しているメデイアにあって伯爵家にはなかった?
3、今この時期に何故この映画は制作されたのか?
私の全く勝手な推論では、女王の退任が間近いのが制作の理由のような気がします。
このまま不人気なチャールズ皇太子が国王になるようでは英国民の王室離れが加速して、一部に根強い王室廃止論にまで火が広がる恐れがあるのでしょう。
この映画は実は、「チャールズ皇太子の従来のイメージ」を変えんがためのイギリスの体制側の巧妙なプロパガンダ映画ではないのか、
なんてことまで思いたくなる彼らが持つ危機感の深さを感じました。
つまり、ブレア首相は労働党なら実は隠れ王室擁護派であったが、その首相も間もなく退任しそうだし時代は変り、国民感情が変化していることに気がついて、
それを憂慮している支配階級の危機感がこの映画を作らせたような気がしました。
それにしても先を常に見て手を打つ英国という国の支配階層の危機管理の凄さを感じ、反面、過去の慣例にのみ生きるエスタブリッシュメントの中の
どうしようもない寄生虫連中をしっかり批判しているシーンも多く、何回見ても笑える場面が数多くちりばめられています。お勧めです。
◎最後に一言。映画を見ていると、ついつい日本の皇室の女性方を連想、比較して見てしまうのは、ユーラシア大陸の東西の二つの島国が
持つ 今や先進国では二国にしかない王室・皇室というほぼ共通の制度ですから止むを得ないことだと思います。
システムとしては共通でも、その 内容や運用が 何故違い、その違いは、どこから出ているのか?
国を動かす高位の役職にある人が「最後は自分で取るしかない責任」がある国と、「誰も責任を取らなくてもすむ」国の差が見た目は同じでも内容と
実際の運用の差を産んでいるような気がしてなりません。
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