阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

東京都北区にある旧古河庭園のバラ園が3年ぶりに公開された。   その三      石造りの洋館はイギリス人の建築家コンドルの設計 

2022年05月21日 | 東京あちこち

上野の旧岩崎邸の洋館もコンドルの設計だ。

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宮崎学 著「ヤクザと日本 近代の無頼」を読む

2022年05月21日 | 乱読は楽しい
2008年02月29日(金) 「阿智胡地亭の非日乗」掲載 

『ヤクザと日本』 宮崎 学 ちくま新書 2008 1月25日第2刷

著者の宮崎 学の「立ち位置」は作家・司馬遼太郎と全く逆だ。

日本の国の各時代を、それがどんな時代でも、格好悪くとも、何とか生きていかねばならない下層民の目で見ていく。

 例えば、戦国時代のオリジナルな「武士道」は、新渡戸稲造が言う、武士が公務員化した時代の「武士道」とは違うことを述べている。

本来の武士道は、近世ヤクザの「任侠道」と同じであったと。そしてその「任侠道」も近代ヤクザになって変わらざるを得なくなったとも。

時代と国家のありようの変化が、ヤクザの存在を変容させていく。そしてカタチを変えながら人の世にヤクザ機能は内在していく。

司馬遼太郎のお陰で、明治と明治以前の日本が、敗戦後の日本で生きる自分となんとかつながった。


 学校で習った日本史の時間は、縄文・弥生や平安・室町あるいは徳川時代までで、三学期になった頃教科書が入る明治大正昭和の近代史は駆け足で飛ばすか、

「時間がなくなったので後は自分で教科書を読んでおいてください」、で終った。

子供に聞くと彼らも同じだったと言う。自国の歴史、特に近現代史に疎い国民をつくる。

占領軍のこの占領政策の眼目の一つは今も成功をおさめているような気がする。(国は自国語と歴史で継続していく。

自国の歴史を知らない国民が住む国は独立国とはいえない)。その近現代史を司馬遼太郎から学んだ・・。

 とはいえ、彼の「立ち位置」は、「国民国家」の為政者側の立ち位置だ。

それはある意味、敗戦国があらゆる階層の国民の力により、猛烈な勢いで復活していく時代の勢いが要請したものでもあるのだろう。

司馬遼太郎全集を買って読んで、本当に面白かった。

 彼が同時代に作家としていてくれて良かったと思う。

 しかし、日本人の数から言えば、彼の「立ち位置」ではない「立ち位置」にいる日本人の方が圧倒的に多い。

つまり“赤紙の召集令状一枚”で日常生活から突然引き剥がされる階層に所属する人間と、召集する国家側の人間の「立ち位置」の違いだ。

司馬遼太郎は後者の「立ち位置」からの国民文学を彼の司馬史観で書いてくれた。

宮崎 学は、違う面から日本を見ている。

   彼は言う、土建業、港湾荷役、火消し、目明し、芸能・・、日本人の歴史には、いわゆるヤクザ稼業というものは、必然であったし、

暴力装置というのは権力にも反権力にもカタチを変えつつ今も機能していると。

歴史に裏側だけも表側だけもない。上流も下流もない。それらを全て含んだ全面が一国の歴史になっている。

目からウロコの本ではあるが、後半の山口組の叙述の部分は、同じ作者の「近代ヤクザ肯定論 山口組の90年」があるせいか、この本では粗っぽい内容に思えた。

   出版社の惹句から;

ヤクザとは何者なのか?法の支配がおよばない炭鉱・港湾などの最底辺社会に生きた者たちが、生きんがために集まり発展したのが近代ヤクザの始まりといえる。

 彼らの存在が日本社会の近代化を下支えしたという現実。日雇い派遣、ワーキングプアなど、あらたな下層社会が形成されつつある今こそ、

ヤクザの歴史を振り返ることで、現代社会の亀裂を克服する手がかりがみつかるにちがいない。

序章 ヤクザ観の相剋
第1章 ヤクザの源流―カブキ者から博徒まで
第2章 近代ヤクザの成立―川筋から、港から
第3章 親方・子方関係とヤクザ―下層労働力統括者としての近代ヤクザ
第4章 ヤクザと芸能の世界―周縁仲介者としての近代ヤクザ
第5章 ヤクザと近代国家―社会的権力としての近代ヤクザ
第6章 義理と人情、顔と腹―日本的社会関係と近代ヤクザ
第7章 山口組概略史―近代ヤクザ

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