阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

俳句の面白さは解釈の多様性にもある

2022年10月08日 | 「過去の非日乗&Shot日乗」リターンズ
2010年01月12日(火)「阿智胡地亭の非日乗」掲載

その俳句が作者から離れて鑑賞されうるかどうか。
俳句は結社や俳壇と一体でないと存在できないのか。

 俳句をそんな観点から見るとは思わなかった。

書名から判断して、高齢に向かう者への俳句作りの手ほどきの本かと思って、前から関心があった坪内稔典さんが書いた本を購入した

読んでみると、「俳句レッスン1から10」という項目もあったが、内容は俳諧の発句が子規により現代の俳句に姿を変じていった日本の俳句史を鳥瞰した内容が主だった。

「俳壇史」ではなく明治以降現代までの「俳句史」そのもののコンテンツはユニークで、これはこれで面白く有益だった。

本の帯にはこうある。

「俳句は平易に愉しむもの。仲間といっしょに笑うもの。不真面目に遊んですますもの。モーロク程度がいいんです。」

まことにそのことをまっすぐ伝えようとした本だった。

書中に祖父 岱風(click)と その仲間が戦前から戦後までに拠っていた自由律俳句の、

中塚一碧楼が主宰した結社雑誌「海紅」についても記述があり嬉しかった。中塚一碧楼(click)

 ところで、この本を読み終えたあとたまたまこの句を知った。作家は江戸時代の俳人 瓢水。

浜までは海女も蓑きる時雨かな


☆柳田邦男さん(ノンフィクション作家)の読み

「海女は裸で海に入るけど、通り過ぎる時雨のなかでもどうせ海で濡れてしまうからといい加減にしないで、海に入るまではしっかり身だしなみを整えるという一句です。」

☆従来一般に言われてきた読み

入門を請いに瓢水の庵を訪ねた一人の修行僧。

 そこで目にしたのは、「風邪気味で町まで薬を買いに行っている」という置き手紙。
「風邪を引いたぐらいで薬を求めにいくなんど悟りを開いたと言われる瓢水だがこの程度か…」
 と思いながら、瓢水の帰りを待ち、その思いをそのまま瓢水に投げかける。

 そこで瓢水が詠んだのがこの句と言われている。

  海女はやがて海に潜り水に濡れる。しかし時雨は身体を冷やす、せめて浜までは身体を冷やすまいと蓑を着て身を厭うではないか。

 風邪気味で薬を求めるこの瓢水を意気地の無いと責めるなら責めるがよい、しかしこの瓢水の身体も仏に成る身、せめてその時まで大切に大切にしていきたい。

♪なるほど作者の人間を離れて、俳句そのものが一人歩きして読む人それぞれに解釈をゆだねる。世に残る句とはそういうものかと思った。
 
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岱風句抄clickから・・
 
日々針を持ちミシンをまわし梅咲けり


炭を焼きそこの残雪をこりこりたべる男


山独活を取るこゝから残雪の山を見る


畑あり にちにち乾く 朴の花咲き


初夏旅から戻り灯が奥深くわが家


芝焼ける土手幅大きな牛が居る
 
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2010年03月01日(月)「阿智胡地亭の非日乗」掲載
 
自由律俳句の会「海紅社」のご紹介
 
祖父「岱風」が所属していた中塚一碧楼師主宰の「海紅社」は、現在中塚唯人師が引き継いでおられます。

「海紅」HPの連絡アドレスに、一碧楼師の句碑(下諏訪・水月公園)に関する岱風の俳句を送信したところ、中塚唯人師からメールを頂戴しました。

『海紅の社主をしております中塚唯人と申します。調べましたら一碧楼は昭和17年12月12日に諏訪錬成句会を桔梗屋旅館で行っています。その際、
  
  どてらで歩く朝の温泉町霧が深くて     岱 風

と言う句も見られます。

水月公園の句碑は
  
  夏めくこころあり水平なれば家郷のごとし  一碧楼

で、実は昭和41年に私が子供の頃除幕をし、三年ほど前でしたか久しぶりに訪れました。

先師の想い出は多々ありますが、海紅は千五十号を超え今だ健在です。
そんな想い出があり、ご教授誠に有難う御座いました。
                         
                          海紅社 中塚唯人拝

☆中塚様、ご懇切なご返信ありがとうございました。

☆海紅社のHPはこちらです、アクセスしてみてください。
 
 

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