阿智胡地亭のShot日乗

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  1942年生まれが東京都江戸川区から。

追悼上映会【追悼特集 女優・八千草薫】     大阪九条の映画館「シネ・ヌーヴォ」にて2月8日から

2020年02月09日 | 音楽・絵画・映画・文芸

【追悼特集 女優・八千草薫】
大阪で生まれ、宝塚歌劇出身の名優・八千草薫。清純派の娘役から、さまざまな“日本の理想の女性”を時代と共に爽やかに体現。ひたむきで儚げ、可憐な中にも芯のある強さをあわせ持った女性像を鮮やかに演じてきた。2019年10月に亡くなった永遠の女優・八千草薫さんを偲び、代表作17本を一挙上映!!
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八千草薫 略歴
♦1931年1月6日、大阪・上本町生まれ。父が2歳の時に死去。病弱だったために一時期、祖父母のいる六甲で育つ。大阪にあるミッション系の女学校プール学院へ進学するが、戦火が激しくなり勤労奉仕の日々。母親と二人で戦時中を生き抜くが、終戦1週間前に空襲で自宅を無くす。戦後、憧れの「宝塚音楽学校」に入学、47年に宝塚歌劇団に戦後第1期生として入団。美貌・清純派の娘役として宝塚の一時代を風靡。劇団内に新設された映画専科にも所属し、51年に東宝映画『宝塚夫人』で銀幕デビュー。54年に宮本武蔵の恋人・お通役に抜擢され『宮本武蔵』は米アカデミー賞で名誉賞(外国語映画賞)を受賞。撮影が終わるとイタリアに飛んで日伊合作で映画化したプッチーニ作のオペラ『蝶々夫人』(55)に主演。半年に渡って滞在し原語でオペラを猛特訓。帰国後、三部作となる『宮本武蔵』続編に出演。その後も『夏目漱石の三四郎』(55)、『乱菊物語』(56)などに出演。「お嫁さんにしたい有名人」で、たびたび1位に輝くが、『乱菊物語』で19歳年上の谷口千吉監督と運命的な出会いとなり、翌年宝塚を退団後、谷口監督と結婚。そのウエディングドレス姿は匂いたつような美しさだったと語りぐさに。ファンは涙をのんだ。結婚により一時は引退も考えたが、マイペースでその後も映画に出演。60年代からはTVドラマにも出演し、77年にはTV史に残る山田太一脚本の『岸部のアルバム』出演し、テレビ大賞主演女優賞を受賞。向田邦子原作のドラマ『阿修羅のごとく』(79~80)では主人公の4姉妹の次女を演じた。同作が2003年に映画化された際には、4姉妹の母親役で出演し、第27回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。その後の主な映画出演作品に『しゃべれども しゃべれども』(07)、『ディア・ドクター』(09)、『舟を編む』『くじけないで』(ともに2013)、『ゆずり葉の頃』(15)など、生涯現役で活躍。2000年の第一回宝塚映画祭にゲストとして出演、また2012年にシネ・ヌーヴォで開催した「生誕百年記念・谷口千吉監督特集」の際は、プレイベントに来阪。結婚50年目の2007年に亡くなった谷口監督を偲んでお話していただくとともに、夫の生誕百年の上映を行なった私たちに熱いエールをおくっていただいた。2019年10月24日に膵臓がんのため逝去。享年88。

上映作品 
大阪で生まれ、宝塚歌劇出身の名優・八千草薫。日本映画黄金期から現在まで、日本映画界を代表する女優として活躍。清純派の娘役から、さまざまな“日本の理想の女性”を時代と共に爽やかに体現。ひたむきで儚げ、可憐な中にも芯のある強さをあわせ持った女性像を鮮やかに演じてきた。1957年、谷口千吉監督と結婚。2012年「生誕100年・谷口千吉監督特集」上映の際はご来阪いただき、谷口監督との映画人生を熱く語っていただいた。2019年10月に亡くなった永遠の女優・八千草薫さんを偲び、代表作17本を一挙上映!!
宮本武蔵
1954年/東宝/94分/カラー 
監督:稲垣浩/脚本:稲垣浩、若尾徳平/原作:吉川英治/劇化:北条秀司/撮影:安本淳/美術:伊藤熹朔、園真/音楽:団伊玖磨/共演:三船敏郎、三国連太郎、尾上九朗右衛門、水戸光子、岡田茉莉子、加東大介、阿部九洲男
◆何度も映画化された「宮本武蔵」を名匠・稲垣浩が三船敏郎=武蔵で描き、内田吐夢版・錦之助武蔵と対比される時代劇シリーズの傑作。お通役に宝塚歌劇在籍中の八千草が抜擢され、一躍スターの座を占めた。『サムライ』の名で海外公開され、日本初の米アカデミー外国語映画賞受賞の快挙を遂げた。

続宮本武蔵 一乗寺の決闘
1955年/東宝/103分/カラー 
監督:稲垣浩/脚本:稲垣浩、若尾徳平/原作:吉川英治/劇化:北条秀司/撮影:安本淳/美術:園真/音楽:団伊玖磨/共演:三船敏郎、鶴田浩二、尾上九朗右衛門、木暮実千代、水戸光子、岡田茉莉子、加東大介、堺左千夫
◆前作の大ヒットを受けて製作された第二弾。鎖鎌の達人・宍戸梅軒(東野英治郎)との対決に勝利を収めた武蔵(三船)は京に上がり、吉岡道場を率いる吉岡一門との決闘に挑む。本作で初登場の宿命の敵、佐々木小次郎を鶴田浩二が演じている。八千草は武蔵を一途に想い続けるお通を切なくも可憐に好演。

宮本武蔵 完結篇 決闘巖流島
1956年/東宝/104分/カラー
監督:稲垣浩/脚本:稲垣浩、若尾徳平/原作:吉川英治/劇化:北条秀司/撮影:山田一夫/美術:伊藤熹朔/音楽:団伊玖磨/共演:三船敏郎、鶴田浩二、志村喬、嵯峨三智子、岡田茉莉子、加東大介、上田吉二郎、高堂国典
◆剣豪として名を上げた武蔵は、仕官を諦め人間修行の旅に出る。剣の道を歩む小次郎との宿命の対決、巖流島での決闘を描く『宮本武蔵』3部作完結編。朝焼けを狙って撮影された巖流島の対決は、迫力あふれる名シーンとなった。内田吐夢版「武蔵=錦之助五部作」は今夏に上映予定。その前に三船武蔵をご堪能あれ!

蝶々夫人
1955年/日本・イタリア/101分/カラー
監督・脚本:カルミネ・ガローネ/脚本:森岩雄/原作:プッチーニ/撮影:クロード・ルノワール /美術:三林亮太郎 、マリオ・ガルブリア /作曲:ジャコモ・プッチーニ/共演:ニコラ・フィラクリディ、田中路子、宝塚歌劇団

◆プッチーニのオペラを映画化。『宮本武蔵』の撮影後、スタッフらと共にイタリアへ渡欧、半年に渡っての撮影となった。八千草は当時、宝塚歌劇団に在籍中の23歳。蝶々夫人を可憐に美しく演じるだけでなく、歌の特訓を行い、録音された曲に口を合わせての演技という名演で、終生忘れられない1本となった。
 
夏目漱石の三四郎
1955年/東宝/81分/白黒
監督:中川信夫/脚本:八田尚之/原作:夏目漱石/撮影:玉井正夫 /美術:北猛夫、清水喜代志/音楽:斎藤一郎/共演:山田真二、笠智衆、土屋嘉男、岩崎加根子、江原達怡、金子信雄、村上冬樹、平田昭彦、塩沢登代路
◆熊本の高等学校を卒業し上京した大学生の三四郎が過ごす、新しい出会いに満ちた日々と淡い恋。青春期に誰しもが持つ不安と期待をみずみずしく描き出す。巨匠・中川信夫が監督し、三四郎に山田真二、広田先生に笠智衆が好演。三四郎が恋心を抱く美禰子を演じた八千草薫はため息が出るほどの美しさ! 

乱菊物語
1956年/東宝/96分/白黒
監督:谷口千吉/脚本:八住利雄/原作:谷崎潤一郎/撮影:飯村正/音楽:團伊玖磨/美術:北猛夫、阿久根巌/出演:池部良、小堀明男、杉山昌三九、山田巳之助、笈川武夫、浪花千栄子、藤原釜足、藤木悠、小杉義男、上田吉二郎

◆谷崎潤一郎の原作を映画化。戦乱の室町時代末期、遊女・陽炎をめぐり、大名や謎の男・海竜王が戦いを繰り広げる。伝奇や史実をもとにした幻想的な物語に八千草の陽炎が美しく映える。池部良と八千草薫のお雛さまのような美男美女ぶりにうっとり。翌年結婚する谷口千吉との運命的な出会いとなった。
 
愛情の決算
1956年/東宝/112分/白黒 
監督:佐分利信/脚本:井手俊郎/原作:今日出海/撮影:山田一夫/美術:北猛夫、清水喜代志/音楽:団伊玖磨/共演:佐分利信、原節子、三船敏郎、小林桂樹、千葉一郎、田中春男、堺左千夫、内田良平、藤間紫、田中春男
◆戦死した夫の上官だった楢崎(佐分利)と再婚した勝子(原)だが、次第に心の隔たりを感じ始める。そんな時、夫の戦友の大平(三船)から思いを告げられる…。戦後10年の日本人の家庭を描いた今日出海の小説を、佐分利信が監督・主演で映画化。八千草は大平にほのかな恋心を抱く朝子役を愛らしく好演

雪国
1957年/東宝/133分/白黒
監督:豊田四郎/脚本:八住利雄/原作:川端康成/撮影:安本淳 /美術:伊藤熹朔、園真/音楽:芥川也寸志/共演:池部良、岸恵子、森繁久彌、三好栄子、久保明、浪花千栄子、千石規子、加東大介、東野英治郎、市原悦子
◆“国境の長いトンネルを抜けると雪国であった”ノーベル文学賞を受賞した川端康成の不朽の名作を現地ロケで映画化し、文芸映画の代名詞ともなった名作。年に一度の逢瀬を重ねる芸者の駒子(岸)と画家の島村(池部)。降りしきる雪のなか、二人の悲恋に駒子の義妹、葉子を八千草が小妖精のように名演。

ガス人間第一号
1960年/東宝/91分/カラー 
監督:本多猪四郎/脚本:木村武/特技監督:円谷英二/撮影:小泉一/美術:清水喜代志/音楽:宮内国郎/共演:三橋達也、土屋嘉男、佐多契子、田島義文、田島義文、三島耕、小杉義男、左卜全、佐々木孝丸、松村達雄
◆生体実験の犠牲で、身体をガス化できる特殊能力を持ってしまった男(土屋)と、愛される日本舞踊の家元との悲恋を描いたSFスリラー。八千草は男から盲目的な求愛を受ける春日流家元・藤千代を好演、凛々しい着物姿と日本舞踊を披露。『ゴジラ』(54年)の監督・本多猪四郎と特撮・円谷英二コンビによるもうひとつの秀作。

わが恋わが歌
1969年/松竹/100分/カラー
監督:中村登/脚本:広沢栄/原作:吉野秀雄、山口瞳/撮影:竹村博/美術:梅田千代夫/音楽:いずみたく/共演:中村勘三郎、岩下志麻、中村賀津雄、中村勘九郎、竹脇無我、北林早苗、アンナ・ルーセン、緒形拳、三木のり平
◆「幻の大学」として語り伝えられる鎌倉アカデミアで教鞭をとった歌人・吉野秀雄(中村)の戦中戦後の波瀾万丈の家庭史を、吉野に師事した山口瞳(緒形)らの交流とともに描く。八千草は若くして亡くなった先妻役で、後妻に岩下志麻。実名で描かれる戦後文壇の一断面を、女性映画の名匠・中村登が描く。
 
田園に死す
1974年/ATG/102分/カラー
監督・原作・脚本:寺山修司/撮影:鈴木達夫/美術:粟津潔/音楽:J・A・シーザー/共演:菅貫太郎、春川ますみ、新高恵子、木村功、斎藤正治 、原田芳雄、小野正子、蘭妖子、三上寛、原泉、サルバドール・タリ、粟津潔
◆寺山修司が自歌集「田園に死す」をもとに映画化した自伝的名作。映画監督の“私”は少年時代の自分を元に映画を作ろうと考えた。恐山近くの山に住み、西洋風の隣家に住む美しい人妻に憧れ、都会へ出て行くことを夢見た少年時代の記憶が蘇る…。八千草は少年が憧れる美しい人妻を魅力たっぷりに好演。

ハチ公物語
1987年/松竹/107分/カラー
監督:神山征二郎/脚本・原作:新藤兼人/製作:奥山和由/撮影:姫田真佐久/美術:西岡善信/音楽:林哲司/共演:仲代達矢、田村高廣、長門裕之、石野真子、柳葉敏郎、尾美としのり、春川ますみ、殿山泰司、加藤嘉
◆昭和初期、雪深い農家で生まれた秋田犬の子犬が東京の一家にもらわれ、周囲も感心するほど主人に忠実な飼い犬としてその生涯を全うした実在の忠犬ハチ公を描いた大ヒット作。渋谷駅のハチ公像の秘話を、当時の渋谷駅を再現し製作。八千草は、仲代達矢演じる主人公の大学教授の妻役を深い温かさで名演。

226
1989年/松竹/114分/カラー
監督:五社英雄/脚本:笠原和夫/製作:奥山和由/撮影:森田富士郎/美術:西岡善信/音楽:千住明/共演:萩原健一、三浦友和、竹中直人、本木雅弘、加藤昌也、丹波哲郎、仲代達矢、松方弘樹、渡瀬恒彦、根津甚八、長門裕之

◆二・二六事件の発生から終結までの四日間を、オールスターキャストで描いた五社英雄監督、奥山和由製作作品。昭和維新を掲げた陸軍の青年将校たちは、1500人にも及ぶ決起部隊を率いてクーデターを起こした。奥山和由が昭和史に残る一大事件を執念で製作。八千草はテロに遭う鈴木貫太郎の妻を堂々と演じている。
 
天国までの百マイル
2000年/日活/101分/カラー
監督:早川喜貴/脚本:田中陽造/原作:浅田次郎/プロデュース:奥山和由/撮影:田村正毅/美術:丸尾知行/音楽:藤井尚之/共演:時任三郎、大竹しのぶ、羽田美智子、柄本明、村上淳、ブラザー・トム、ベンガル、寺島進
◆実話を基にした浅田次郎の同名小説を原作に、奥山和由率いるチーム・オクヤマが製作したヒューマンドラマ。不況で会社は倒産、家族にも見放された男(時任)のもとに母親(八千草)が倒れたと知らせが入り、最愛の母を救うために心臓病の名医のところへ百マイルの旅に出る…。涙溢れる愛に満ちた名篇。

阿修羅のごとく
2003年/東宝/135分/カラー
監督:森田芳光/脚本:筒井ともみ/原作:向田邦子/撮影:北信康/音楽:大島ミチル/美術:山崎秀満/共演:大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子、小林薫、仲代達矢、中村獅童、桃井かおり、木村佳乃、長澤まさみ
◆昭和54年の冬、久しぶりに集まった四姉妹に、70歳を越える父親に愛人と隠し子がいることが発覚。だが、姉妹にも秘密や悩みがあり…。向田邦子の名作ドラマを森田芳光が映画化。昭和後期の女性たちの人生模様を、豪華人気女優陣がいきいきと名演。TV版で次女役の八千草は円熟味たっぷりに母親役を演じた。

くじけないで
2013年/松竹/128分/カラー
監督・脚本:深川栄洋/原作:柴田トヨ/撮影:石井浩一/美術:松本知恵/音楽:富貴晴美/共演:武田鉄矢、伊藤蘭、檀れい、芦田愛菜、上地雄輔、鈴木瑞穂、ピエール瀧、尾上寛之、黒木華、橋本じゅん

◆98歳で刊行された処女詩集がベストセラーとなった詩人・柴田トヨの半生を八千草主演で映画化した感動作。息子(武田)の勧めで詩を書き始めたトヨは、日々の想いを言葉に置き換えるうち、明治から平成までを駆け抜けて来た自身の思い出を振り返っていく。八千草はトヨを茶目っ気たっぷりに演じている。
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ゆずり葉の頃
2015年/パンドラ/102分/カラー 
監督・脚本・製作・企画:中みね子/撮影:瀬川龍 /美術:小林真木/音楽:山下洋輔/劇中画:宮廻正明/共演:風間トオル、仲代達矢、岸部一徳、六平直政、嶋田久作、本田博太郎、竹下景子、嶋田久作、田村奈巳、岡本真実

◆故岡本喜八監督の妻でプロデューサーの岡本みね子が、旧姓の中みね子で八千草薫と仲代達矢を主演にオリジナル脚本で初監督。戦時中の思い出の絵を捜しに旅に出た年老いた女性。彼女の人生と戦後の貧しい状況の中で胸にしまっておいた思いを綴った感動の人間賛歌。八千草の集大成とも言える名演に感動!

阿智胡地亭はこれまでブログにシネ・ヌーヴォのエントリーを多数アップしてきたがその中から一つこちら。

 

 


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