ハルキ文庫にある詩集を読んでいますが、今回は中原中也です。高校生の時に友人から「汚れつちまつた悲しみに」を教えてもらい中原中也の詩を初めて知ったのですが、深い寂寥と言葉運びのテンポの良さに惹かれました。他の詩や翻訳詩も学生時代などにたまに読んでいました。ごく久しぶりの再読です。
表紙
(略歴)
中原中也は、1907年山口県山口市湯田温泉生まれ、小林秀雄や大岡昇平らとの文学的交友、長谷川泰子との恋愛と失恋、愛児の死などの体験を経て30歳で夭逝。詩集「山羊の歌」や「在りし日の歌」、また、アルチュール・ランボオの詩の翻訳などがある。次は、この本の裏表紙にある中原中也の紹介です。
(感想など)
中原中也の詩は、詩集に「山羊の歌」と「歌」がつけてあり、リズミカルで、詩のひとかたまりがまるで歌詞のようでもあり、音楽的なところがあるように感じます。難しい言い回しは少なく親しみやすさがありますが、切なさや悲壮感といったものが漂っていて、それがリフレインされて、訴えかけてきます。
「汚れちまつた悲しみに」や「除夜の鐘」は個人的に忘れがたい詩ですが、僕ももうかなり年齢を重ねてきて先が見えているだけに、詩集「在りし日の歌」に収められた「頑是ない歌」が今回は特に心に沁みました。次にその一部を掲げます。
頑是ない歌
思へば遠く来たもんだ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気は今いづこ
雲の間に月はゐて
それな汽笛を耳にすると
悄然として身をすくめ
月はその時空にゐた
それから何年経つことか
汽笛の湯気を茫然と
眼で追ひかなしくなつてゐた
あの頃の俺はいまいづこ (以下続きます)
「別離」という詩の一編が記されています。ハルキ文庫に掲載された写真です。
詩集「在りし日の歌」より「含羞」の一部が記載されたハルキ文庫の写真。
中原中也の写真