書店で、小宮正安著「ベートーヴェン《第九》の世界」(岩波新書、2024年11月20日発行)を立ち読みしたら、面白そうだったので購入しました。
表紙
(本書の紹介)
(目 次)
(感想など)
ベートーヴェンの交響曲第9番について、作曲された経緯、当時の時代背景、歌詞の内容、演奏史、世界における受容、そして、現代の日本で年末に頻繁に演奏される理由など、この曲にまつわる様々な事柄を論じた労作で、興味が尽きない面白い内容です。
特に、シラーの詩「歓喜に寄す」と、ベートーヴェンがそれを元にして創作した第4楽章の歌詞を掲載(ドイツ語と著者による日本語訳)していて、その比較ができるのは画期的です。恥ずかしながら、僕は初めて、第9の歌詞を意味をとりながら読みました。
歌詞を読むと、『あらゆる人々は兄弟となるがよい』と書かれていますが、後段では、『そしてそれができない者はそっと立ち去るがよい』とあり、ベートーヴェンは、兄弟となれない人も想定していることに気づきました。その点は、第5章で著者も触れていて、今まですっかり、人類皆兄弟と唄う曲かと思っていたので、驚きました。
(著者略歴)
あらためて、CDでベートーヴェン「交響曲第9番」を聴いてみました。
カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管弦楽団、ウィルマ・リップ(ソプラノ)、マルガ・ヘフゲン(コントラルト)、マレイ・ディッキー(テノール)、ゴッドローブ・フリック(バス)、エリーザベト・ブラッスール合唱団。1958年録音。
交響曲第1番~第8番はモノラル録音ですが、第9番は、モノとステレオ録音の両方が収録されています。第9番の演奏は、激烈さもありますが、すっきりとして美しい演奏という感じがします。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、アンナ・トモワ・シントウ(ソプラノ)、アグネス・バルツァ(アルト)、ペーター・シュライヤー(テノール)、ジョゼ・ヴァン・ダム(バス)、ウィーン楽友協会合唱団(合唱指揮:ヘルムート・ブロシャウアー)。1976年、1977年録音。
カラヤン指揮のもので、音質が改善されたCDです。時間をかけてスタジオで丁寧に作り込まれた録音で、定評のある演奏です。