安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

デクスター・ゴードン GETTIN' AROUND

2013-05-12 16:07:36 | テナー・サックス

高森中学校(長野県下伊那郡高森町)の新校舎が落成したので、昨日行われたお祝いの式典に参加してきました。校舎の中を見せてもらいましたが、廊下は広々としているし、武道場や音楽室なども立派で、町がたいへん力を入れたことがわかりました。内装には地場産のヒノキや杉を用いるなど、木のぬくもりも感じられます。この環境だと、勉強もはかどるに違いありません。リラックスした温もりのあるテナーを。

DEXTER GORDON (デクスター・ゴードン)
GETTIN' AROUND (BLUE NOTE 1965年録音)

  Gettin_around

ボーナス・トラックに惹かれてCDを買うことは滅多にありませんが、先日、名古屋パルコ内にあるタワーレコードで、デクスター・ゴードン(ts)の「Gettin' Around」にそれが2曲入っているのを見つけたので、即購入しました。輸入盤で690円と安かったこともありますが、デックスとボビハチの組み合わせは頗る魅力的です。

有名アルバムなのでいまさらですが、メンバーは、デクスター・ゴードン(ts)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、バリー・ハリス(p)、ボブ・クランショー(b)、ビリー・ヒギンズ(ds)。曲は、スタンダードの「Manha De Carnaval」(カーニヴァルの朝)、「Who Can I Turn To」、「Heartaches」、「Everybody's Somebody's Fool」、フランク・フォスター作「Shiny Stockings」、デクスター・ゴードン作「Le Coiffeur」、ボーナス・トラックが2曲で、Onzy Matthawsという人の書いた「Very Sakly Yours」とベン・タッカー作「Flick of a Trick」の全7曲。

ボーナスの2曲がオリジナルLPに収録されなかったのは、録音時間が長くて、LPフォームに入りきらなかったためのようです。「Flick of a Trick」は、ハリス(p)のトレモロからアフター・アワーズ的な雰囲気が濃厚で、ゴードン(ts)のスムーズなソロに加え、ハッチャーソン(vib)が硬質な音色で伝統的なフレーズを用いた黒っぽいソロをとります。この1曲で、買ってよかったCDになりました。

全体は、スローからミディアム・テンポくらいで、落ち着いた印象です。ゴードン(ts)とハッチャーソン(vib)がテーマをユニゾンでプレイするなどちょっと音色も新鮮。「Manha De Carnaval」では、ゴードンがマイペースで吹いていて、ボサノヴァという感じがあまりしないのがかえって面白く、「Who Can I Turn To」は、バラードで、ゴードンの優しげな吹奏にハッチャーソンのつけるオブリガートが美しく響きます。「Shiny Stockings」は、ハリス(p)がテーマ部で入れる合いの手などに、カウント・ベイシーを思い起こさせる楽しい演奏になっています

【高森中学校】

特産品の「市田柿」が知られる長野県下伊那郡高森町のご紹介  高森町ホームページ  

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シーネ・エイ SINNE EEG

2013-05-08 22:35:28 | ヴォーカル(S~Z他)

シーネ・エイ(vo)の名古屋ブルーノートにおける5月16日の公演に行く予定でいたところ、その日に夜までどうしても避けられない仕事が入ってしまい出かけられなくなりました。仕方ないのですが、シーネ・エイの歌をライブで聴いてみたかっただけに、すごく残念です。その代わりというわけではありませんが、彼女のファースト・アルバムを聴いてみます。

SINNE EEG (シーネ・エイ)
SINNE EEG (Cope 2003年録音)

  Sinneeegcope

シーネ・エイ(vo)は、デンマークの歌手ですが、日本国内でも知名度が上がってきました。この5月10日からは、日本国内をツァーし、7都市で公演を行います。彼女は、自作曲の録音も多数行っていて、それらは、ジャズ・ヴォーカルのバラード系統といってよいですが、クラシカルな感じもありジャンル分けしにくいかもしれません。このアルバムは、最初ということもあってか、4ビートのスタンダードも収録されていて、スキャットも披露するなど多彩です。 

メンバーは、シーネ・エイ(vo)、マーティン・シャック(p)、キャスパー・ヴァシュホルト(b)、ユッキス・ウオティーラ(ds)。この4人ともに北欧の出身ですが、ことにシーネ・エイの歌声やピアノのサウンドに透明感や清涼感といったものが感じ取れます。マーティン・シャック(p)には、キース・ジャレットの影響があるようですが、美しい音色で傾向の異なる各曲に的確に対応して伴奏、ソロを行っています。

曲は、スタンダードが、「How Deep is The Ocean」、「The Night Has a Thousand Eyes」(夜は千の眼を持つ)、「You Don't Know What Love Is」(あなたは恋を知らない)、「Comes Love」、「Close Your Eyes」、「Love For Sale」、ケニー・ホイーラー作曲、ジェーン・ホワイト作詞「Everybody's Song But My Own」、シーネ・エイの作詞作曲が「Silence」と「Manth of May」で全9曲。「Silence」は、静謐、哀感といったものが満ちている、いいメロディーを持った曲です。もっとも、作者自身が歌うことによって一段とそう聴こえるせいもあります。

歌、伴奏、そして新曲も充実していて、幅広い層にアピールできるアルバム。スインギーなものでは、「The Night Has a Thousand Eyes」や「Comes Love」を、バラードだと「Everydody's Song But My Own」や「Silence」を挙げます。ケニー・ホイーラー(tp)のアルバムは2枚だけ持っていましたが、「Everydody's Song But My Own」という佳曲を書いているとは気付きませんでした。シーネ・エイは、第2作目の「Waiting for Dawn」(2007年)で俄然注目されましたが、既に素晴らしい才能が発揮されたこの第1作もかなりいけます。

【シーネ・エイオフィシャルサイト】

彼女のホームページにリンクしてみました。  シーネ・エイオフィシャルサイト


ケニー・ドーハム INTA SOMETHIN'

2013-05-05 12:55:12 | トランペット・トロンボーン

飯田市と安曇野市又は長野市との間で、中央高速自動車道を一週間に一回くらいは往復で通行しているのですが、この連休に初めて駒ヶ根インターチェンジで降りて、名刹「光前寺」(長野県駒ケ根市赤穂)に寄ってみました。境内は、杉の大木に囲まれ、また苔類もあって、自然が豊かです。中央アルプスをはじめとしたあたりの眺望もよく、いい休憩になりました。元気を回復したところで、ハードバップを。

KENNY DORHAM (ケニー・ドーハム)
INTA SOMETHIN' (Pacific Jazz 1961年録音)

  Inta_somethin

最近、ヴォーカルを中心として比較的新しい録音も聴いていますが、ゴールデンウィークに珈琲でも飲みながら寛いで聴きたいとなると、まずハードバップの諸作を手に取ります。中でも、ケニー・ドーハム(tp)とジャッキー・マクリーン(as)の双頭コンボによる3作品は、適度な激しさや甘さ、そして哀愁もあって、真っ先くらいに挙げたくなるものです。以前、マタドールを取り上げたので、今回はこのコンボの第1作のライブ盤にしてみました。

メンバーは、ドーハム(tp)、マクリーン(as)、ウォルター・デイビス(p)、ルロイ・ヴィネガー(b)、アート・テイラー(ds)。サンフランシスコのジャズ・ワークショップでのライブ録音です。ドーハムは、バラード演奏が優れているせいなのか、時にいぶし銀などと言われることもありますが、ブルーノートの諸作などを聴くと、元気のいい吹奏もあり、ここでも、はつらつとしたプレイが聴けます。

曲は、ドーハム作が2曲で、「Us」(ブルーノート盤では、「Una Mas」と改称されました)と「San Francisco Beat」、あとはスタンダードで、「It Could Happen To You」、「Let's Face The Music and Dance」、「No Two People」、「Lover Man」。フランク・レッサー作「No Two People」は、演奏されるのが珍しいです。ドーハムのオリジナル「Una Mas」の初演が聴けますが、もう一つのオリジナル「San Francisco Beat」も佳曲です。

ライブということもありラフなところもありますが、二人の颯爽とした演奏が楽しめます。マクリーン(as)は、甘美なトーンばかりでなく、時にダーティーな音もまぜながら力強いプレイをしています。「Us」、「It Could Happen to You」、「Let's Face The Music and Dance」(管はマクリーンだけ)、「San Francisco Beat」と足踏みしたくなるようなスイング感たっぷりの演奏が続きます。今回気付いたのは、ウォルター・デイビスのピアノの良さで、各曲におけるソロの他、「San Francisco Beat」においてリズミカルな伴奏(コンピング)を付けています。

【光前寺】

光前寺ホームページ:http://www.kozenji.or.jp/

     Kouzenjihondou
                      
本 堂

     Kouzenjiteien
                
      庭 園

     Kouzennjisanjuunotou
                  
   三重の塔

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    光前寺付近から中央アルプス方面


アート・テイタム ART TATUM BEN WEBSTER QUARTET

2013-05-01 22:35:27 | ピアノ

ジャズ批評2013年5月号(No.173)は、特集を「スタンダード厳選100曲」として、曲の解説と、収録作品を紹介しています。昔からよくある企画ですが、小針俊郎さんによる責任編集でまとまりがあります。高木信哉さんが書いた”「スタンダード厳選100曲」と「スタンダード」とは何か?”(132~133ページ)という記事も印象に残ります。つまらない記事も多いジャズ批評誌ですが、今号の特集部分は読み物として面白く、新しいアルバムも載っていて参考にもなります。ぱっと開いたら目にとまった「All The Things You Are」の名演。

ART TATUM (アート・テイタム)
ART TATUM  BEN WEBSTER (PABLO 1956年録音)

 Arttatumbenwebsterquartet

「All The Things You Are」は、オスカー・ハマースタイン2世作詞、ジェローム・カーン作曲により、1939年のミュージカル「Very Warm for May」(5月にしては暑すぎる)のために書かれた曲です。曲がアドリブの素材として面白いようで、インストのヴァージョンが非常に多く、その中でも名演の誉れ高いのが、今回取り上げたアルバム中の演奏です。

メンバーは、アート・テイタム(p)、ベン・ウェブスター(ts)、レッド・カレンダー(b)、ビル・ダグラス(ds)。アート・テイタムとベン・ウェブスターの名人芸を聴いていると、バラード中心に極上の一時を過ごすことができます。スイングスタイルのピアノ演奏に慣れない方もいるかもしれませんが、原メロディを元に装飾したり、音階を弾いたりしているので、聴いているうちに馴染んでくると思います。

曲はスタンダードで、「Gone With The Wind」(風と共に去りぬ)、「All The Things You Are」(君は我がすべて)、「Have You Met Miss Jones?」(ジョーンズ嬢に会ったかい?)、「My One and Only Love」、「Night and Day」(夜も昼も)、「My Ideal」、「Where or When」(いつかどこかで)の7曲。CDでは、別テイクが3トラック追加されています。

「All The Things You Are」では、ベン(ts)がゆったりとメロディを吹き、テイタム(p)が細かな音でそれに寄り添っています。テイタムのソロでは、原メロディを見え隠れさせながら、感傷的なこの曲の気分(曲の楽譜を見るとセブンスコードが目につきます。)に相応しい変奏が繰り広げられます。また、渋くて甘美、透明感もあるベンの音色は、こういう甘く切ない曲には、うってつけです。「Gone With The Wind」でも、テイタム(p)の巧みな前奏に続いて、テナーが入ってくるところなどぞくぞくしますし、他の曲も魅力に富んています。

【ジャズ批評2013年5月号】

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