「アポロ」について、久保綋一芸術監督は、「音楽を視て、ダンスを聴く」(See the music, hear the dance.)というジョージ・バランシンの言葉を引用してみどころを説明していた。
この観点からすると、この作品の「振付家&作曲家」は、「バランシン&ストラヴィンスキー」という風に、セットで表示しないといけないような気がする。
さて、この言葉で私は、”センスス・コムニス”というアリストテレスの言葉を思い出した。
「ここでアリストテレスのいう<共通感覚>の内容を少しく明らかにしておくと、次のようになる。われわれ人間は、異なった種類の感覚、たとえば視覚上の白さと味覚上の甘さとを感じ分けることができる。なにによってこのような識別がなされるのかと考えてみると、感じ分けるのは判断以前の働きだから、その識別は一種の感覚能力によるものと考えられる。しかしそれは、個別的な感覚ではなく、異なった種類の諸感覚に相渉る同一の能力でなければならない。こうして<共通感覚>の存在が根拠づけられる。・・・
また、共通感覚と浅からぬ関係のあるもう一つの人間の働きに、共感覚(シニスティジア synesthesia)というのがある。これは音楽を聞くと色が見えるというような現象であり、たとえば宮沢賢治の中にも、音から色彩あるいは光を感受するなど共感覚現象と見なされるものが少なくない。」(p84~85)
バランシンは、音楽の素養があり、おそらくピアノも上手かったのではないかと思われる。
なので、音と動きとの「共感覚」ないし「共通感覚」が抜きんでていたのではないだろうか?
ところで、この映像(宮野真守 (as パーシー)「PERCY'S PRESSURE」)を視て、「顔がうるさい」という感想が浮かんだ人は、おそらく「共感覚」が発達している人だろう。