明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



YouTubeを観ていたら、ごく最近放送された番組のようだが、内部が鏡張りになった球体の中に、人が入ったらどう見えるかという実験を、ジャニーズの嵐がやっていた。つまり、江戸川乱歩の『鏡地獄』そのままである。永年の疑問があっけなく・・・。 拙著『乱歩 夜の夢こそまこと』に取り上げる作品の、最後まで候補にあがっていたのが『鏡地獄』であった。少なくとも、よく勘違いされる、沢山の像が無限に、とはならないことは解かっていたが、時間的なこともあり断念した。惜しくはあったが、今思うと、野暮にならず良かったかもしれない。乱歩作品は、乱歩のあの文体でイメージするところに醍醐味があるわけで、よってビジュアル化に関しては、踏み込んではならない一線があり、注意を要する。頭に鮮烈にイメージされるものだから、映像化の誘惑抑えがたい映画人の気持ちは解かるが、蟻地獄のような乱歩の罠に吸い寄せられように、今後も失敗作が作られ続けるに違いない。そして乱歩作品は、常に鮮度を保ち続ける。 実験はというと、はたから見る限り、当然狂気に陥るほどの世界が現れるとは思えなかったが、球体に入った人間には、目の前に自分自身の3D像が浮かぶようである。作品が書かれた時代を考えると、3D像はどのように感じたろうか。普通想像する、内部全体に広がる歪んだ世界に恐怖するというより、その3D像に対し、丁度お岩の亡霊におびえる、伊右衛門のような状態になることは、考えられるかもしれない。

01/07~06/10の雑記
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