明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

一日  


Tさんから送ってもらった小さな台本を、演出中の小津に持たせる。最後に完全に乾燥させて着彩に入りたい。
乾燥機に小津を突っ込みK本に顔を出すと、常連席に誰もいない。珍しく今日は誰も来ていないそうである。しばらく飲んでいると森下賢一さんがみえる。昨年暮れに出たばかりの『居酒屋礼賛』(ちくま文庫)をサイン入りでいただく。帯には“あの名著が、最新情報を載せて文庫化!”。K本は237P。『なぜか居酒屋マニアの間では入りにくい酒場の最たるものらしく』とある。『コの字カウンターの一角に毎日たむろし、柄の悪い言葉で、知らない人が見たら喧嘩腰みたいに毎日きつい冗談を言い合っている常連がいるので、ビビる客もいるのかも知れない』。正確にいうとそんな常連は、私と同じマンションの一階下に住み、私に『団地妻 昼下がりの情事』を貸してくれたYさん一人だけである。いくと隣に座ることが多いが、Yさんが(昨日のように)飲みすぎた場合、私はあらぬ虚空を見つめ、隣の人とは初めて会った他人のような顔をすることにしている。実際は悪いのは口だけなのだが。そもそもほんとに悪いと、すぐ出入り禁止になる店であり、出入り禁止にした客の顔は、絶対忘れない女将さんである。とぼけて入ってきても無駄。 本日は閉店の8時まで、数少ない女性の常連Hさんと、森下さんと私の3人だけの常連席であった。その後コンビニに届いたスーザン・テデスキのCDを受け取り、T屋の前をサッと通り過ぎると、案の定、さっきまで一緒だったHさんが飲んでいる。10メートル先に自転車を止め、暗闇の中でしばし逡巡す。『今日は乾燥を続けるだけだよな』引き返し店に入ると、目ざといHさんが通り過ぎた私の愛車ピクニカに気付き、店主のHさん、すでに私の家に電話をしていた。席に着きCDをカウンターの上に置き、「帰ってこれ聴きたいから2杯だけね」。しかし話が盛り上がり、『家に帰って乾燥中の小津を、ただ見つめてたってしょうがねェよな』フト思ったのがいけなかった。

01/07~06/10の雑記
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