明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



長らく続けた作家シリーズだが、作家が昔亡くなっていようと、出来ればご本人の意向に添い、ウケたいと考えていた。なので江戸川乱歩は、いくらでも残酷描写に走れるけれど、実は常識人であったことを考慮し、バラバラ殺人のシーンでも、むしろユーモラスに描いた。本人を登場させるので、単なる挿絵とは違う。最たるものが個展『三島由紀夫へのオマージュ椿説男の死』である。三島にウケる事以外全く考えなかった。まさに私と三島の2人の世界である。 しかしたまに例外もある。泉鏡花の『貝の穴に河童の居る事』を制作した時、例えば、この人物は、どっちに向かっている?鏡花の描写が判り難く、頭に来て、あるシーンで河童に蝿を3匹止まらせ、鼻水を垂らした。極端な潔癖症でバイ菌恐怖症の鏡花が卒倒するところを想像し溜飲を下げた。 さすがに七百年前の人物にウケようとは考えないが、無学祖元が、自分の姿を刻むことあれば、袖に龍膝に鳩を、と言い残したのであれば、坐禅もやったことのない私で良ければ、と思うのである。



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