頂相彫刻の傑作と言われる重文、円覚寺開山、仏光国師こと無学祖元師の坐像が現存するのに、私如き者がわざわざ作ったのは、来日前の宗で、元寇を恐れ他の僧が避難している中、一人坐禅中に、蒙古兵に剣を喉元に向けられたところ平然と漢詩を口に、その様子に感服した兵は去っていった、という名場面が、私の知る限り可視化されていないからで、これは見てみたい、と始めた訳だが、もう一場面、円覚寺創建当時、無学祖元の法話を聴きに白鹿が集まったことから、円覚寺の山号が『瑞鹿山』となった。白鹿に囲まれる禅師、これまた見てみたい。 ところが最近、やはり宗で坐禅中に金色の龍と青い鳩を伴った神が現れ、どこの誰とは名乗らなかったが、我が国に仏法を伝えよ、と何度も現れた。龍は禅師の袖に、鳩は膝上にとまった。北条時宗に招かれ来日すると、鶴岡八幡に鳩が沢山いるのを見て、あれは鶴岡八幡だったのだと悟る。後に死後、私の姿を刻むことあれば、袖に龍、膝上に鳩を、その因縁を伝えよと弟子に言い残したという。件の坐像は、何故だか椅子の背もたれに龍と鳩が刻まれている。ならば私が、ということに。彩りも考え、袖に金龍、膝に青鳩、白鹿はここに持ってこよう、と考えている。