午後、再び山へ散歩。
広々と遠くまで見渡せる、
ゆるい傾斜の草原の上に、
ぽつんと一つだけあるベンチや、
高いところから海を見渡せて、
周りにはつくしがいっぱい生えているベンチ、
突然現れる山桜など、
見どころいっぱいのコースだった。
近づいて見ることはできない、
まさに山桜。
こんなにいいところなのに、
パパママがふだんろくに散歩をしてないようなので、
もったいなくて歯がゆい。
海も空も毎日違う色だし、
きれいな薄緑の新芽だって、
珍しい渡り鳥だって、
一瞬しか見られない。
当たり前のことだけど。
お茶と本でも持って散歩しなよ、といったら、
ママは「飽きるよ」
なんていうのでイラッとくる。
パパはきらびやかな世界を引退し、
一転して田舎生活になったので、
ギャップが大きくて心配だったけど、
予期せぬことに、パパより、ママの方が変わった。
無意識にパパに気をつかいすぎてるし、
おしゃれを楽しむのをやめて急に年をとった感じ。
なんでそんなに変わるのかと、
ところどころでイラッときてしまう。
こんなに美しさにあふれた土地で、
やっとパパと二人の新しい暮らしができるのに。
仕事からも子育てからも解放されて、
本当の優雅な暮らしができるのに。
でも、60すぎた人に説教するほど偉くもないので、
美しいものを見てたら、美しくなるんだよ、
とだけいうと、
「美しいもの見てるもん、お姉ちゃんの顔~」
またイラッときた。
お庭はきれいに花が咲いてるし、
お家もとてもきれいだし、
そんなに心配することもないんだろうけど。
いとしい海。無限の美しさ。
次の日は潮干狩りに行こうと年に一度の早起き。
朝一で、猫のお墓参り。
お寺のように整備されたお墓には、
中学か高校の頃彫刻刀で作った、
猫の石像が立っている。
その前にしゃがんで、
猫Kの姿を思う。
お墓の周りに散り落ちた、
緋桜の花がかわいい。
潮干狩りは、風波がすごくて中止。
風は冷たいし。
とれたてワカメが干してあるところで、
潮の香りをいっぱいかぐ。
干しワカメを買ってから、
海の公園でおにぎり。
まだ枯れ草も残っているけれど、
冬の寂しい感じはない。
この日はWBCのアメリカ戦で、
パパはずっとラジオを聴いていた。
家に戻ると、ちょうど日本が勝つところだった。
イチローの天下のどや顔。
ほんとーにかっこいい。
パパがまたピザを作ってくれた。
ピザ作りもすぐ飽きたらしくて、
そんなに上達してはなかったけど、
美味しかった。