警察庁が道交法で禁止されている3人乗り自転車を「安全性が確認できれば」という条件つきで認める方針だと昨夜NHKがニュースで流していた。Asahi.comからその記事を検索してみた。
≪3人乗り自転 車検討 警察庁、子育て母の声を受け≫(08年03月04日)
<3人乗りでも安全に運転できる自転車を開発できないか――。警察庁は4日、自転車業界と連携して、そんな検討に乗り出すことを決めた。子どもを2人乗せる「3人乗り」は安全上の問題から禁止されている。だが、改めて自転車の規則に明記する方針を同庁が昨年末に公表したところ、子育て中の母親らから「幼稚園の送り迎えもできなくなる」などと戸惑いの声があがった。同庁は、安全性が確認できれば3人乗りについて認める方針だ。
自転車は道路交通法上、軽車両に分類される。原則として2人乗りは禁止だが、都道府県の公安委員会規則により6歳未満の子を幼児座席に乗せることが認められている。東京都と新潟県では、さらに運転者が子ども1人を背負う形での3人乗りもできる。これらを守らないと同法の乗車制限違反にあたり、2万円
以下の罰金か科料の対象となる。 (福田首相の顔を貼付けたがパッとせず)
警察庁は今春、自転車の正しい乗り方を定めた教則を30年ぶりに改正し、これまで事実上黙認されていた3人乗りについても禁止行為と改めて明記する予定だ。全国の警察は改正後、3人乗りを見つけた場合にはまず警告し、ルールを周知していくという。
ところが、複数の幼児を抱える母親らのなかには幼稚園の送り迎えや買い物などの際、前後に2人を同乗させるケースも少なくない。販売現場でも、前かごと荷台の付近に幼児用の座席を取り付けることに応じているのが実情だ。
日本交通管理技術協会が06年に実施した全国アンケートでは、幼稚園や保育所に通う子を持つ保護者約6500人の約4割が「3人乗りを認めるべきだ」と回答。一方、1歳児と3歳児の2人の同乗を想定した実験では、坂を上ったり、走り始めや停車したりする際にハンドルが大きくぶれ、運転に支障が出ることが分かった。
ある大手メーカーの担当者は「3人乗りで安定性を確保するのは技術的に簡単ではないが、合法化されれば対応していく必要がある」と話す。
警察庁は近く、自転車メーカーや女性団体の代表、有識者らでつくる委員会を立ち上げ、来年度中にも安全走行ができる「3人乗り自転車」の形態について検討。4日には自転車の業界団体に試作や実証実験について協力を要請した。 >・・・・・・
先ず第一に考えられることは、<安全走行ができる「3人乗り自転車」>が実現するまでは、従来どおりに3人乗り、4人乗りは黙認されるだろうと言うこと。いわば暫定的措置として。急に禁止されたら、世のお母さんは困るだろうから。
第二に法定許可となる「3人乗り自転車」が実現したら、それ以外の自転車の3人乗り、4人乗りは一定の猶予期間を置くかもしれないが、それ以降は厳格な取締りの対象となり、違反者は厳しく罰金を科せられることになるに違いない。現行の「乗車制限違反」は「2万円以下の罰金か科料(軽微な犯罪に科す財産刑。現行刑法では1000円以上1万円未満)の対象」と上記記事は伝えているが、「科料」は省いて「2万円以下の罰金」となることが予想される。多分、2万円払わせるに違いない。そうすれば「2万円の罰金を払うか、法定許可の自転車を新しく買うか」と迫って、2万円なら新しい装置が取り付けられることになったとしても買える金額だろうから。買わせることができる。すべて「安全」を錦の御旗にして。
3人乗り・4人乗り自転車の利用者は歓迎せざる失費ではあっても、いやでも新しい自転車を買わざるを得ない。
このことは自転車業界としたら、大歓迎の商機であろう。新しい自転車が確実に大量に売れることになる。既にナショナル(現パナソニック)とかブリジストン自転車とかの自転車製造会社の株が値上がりしているかもしれない。
自転車業界にも各企業を会員とした組織があるだろうと思ってインターネットで調べてみると、「財団法人・自転車産業振興協会」という団体を見つけた。
目 的: 自転車の生産、貿易、流通及び消費の増進並びに改善を図り、もって我が国自転車産業の振興
と国民生活の向上に寄与する。
設 立: 昭和39年4月1日
代表者:会長 阿部 忠壽
協会の目的: 会は、自転車及びこれらの部品・付属品(以下「自転車等」という)に関する安全性
向上、規格の作成及び標準化の推進並びに資源有効利用に係る調査研究等を行うことに
より、自転車の利用促進を図り、もって環境保護の推進及び国民の健康促進に寄与する
ことを目的とする。
「事業概要」――
1.自転車産業に関する総合的な調査研究
2.自転車産業振興に関する総合的な企画立案
3.自転車産業の体質改善に関する指導助成
4.生産技術に関する研究等品質改善のための事業
5.内外情報の収集及び海外市場開拓等貿易振興のための事業
6.国内流通及び消費の増進並びに改善のための事業
7.その他、本財団の目的を達成するために必要な事業
どうせ天下り団体だろうと思って、協会長の「阿部忠壽」で調べてみると、「役員名簿」のHPが検索にかかった。日付は「平成19年7月1日現在」となっている。
但しポータルサイトの「検索結果」には「阿部 忠壽 財団法人 自転車産業振興協会会長 (最終官職 通商産業省 大臣官房付)」と出ているものの、HP自体はその名称ではなく、「(財)日本自転車普及協会役員名簿」の名称となっていて、「阿部 忠壽」は非常勤の理事に名前を連ねているのみである。
会長は「阿部毅一郎」、「最終官職 通商産業省 札幌通商産業局長」。警察関係からは一人非常勤理事がいて、「最終官職 中部管区警察局長」となっている。これら3人が11人中、省庁からの天下りとなっている。
ここで気付いたのは会長の「阿部毅一郎」の最終官職が「通商産業省 札幌通商産業局長でありながら、非常勤の理事に過ぎない「阿部忠壽」が「通商産業省 大臣官房付」というより高い地位を最終官職としていて、際立って権威主義社会である役人の世界では珍しい地位上の逆転現象が起きていることである。
「阿部」と同姓であるから、近親者なのか、それとも元「通商産業省 大臣官房付」にふさわしく「財団法人オートレース振興協会」の常勤の理事長も勤めているから、兼任の問題で部下を装っているのか。
いずれにしても天下り団体であることに変りはない。しかも警察関係からも天下っている。警察関係から天下りなしということだったなら、天下り先新規開拓の意味もある「3人乗り許可」かと思っていたが、既にいるということなら、自転車運転をあまり厳しく取締られたのでは売れ行きに関係してくるから、「お手柔らかに」とお願いするために既に用意しておいた警察関係からの天下りということもある。
自転車業界にしても3人乗り自転車が認められることになれば、獲得した利益に応じた天下りを受け入れて、感謝と礼の印とするのではないだろうか。「お陰様で、大儲けでございます。勘定奉行様」、「長崎屋、お主もやるよのう」
私自身は現行の自転車のままで3人乗り4人乗りは本人に任せるべきだと思っている。若いお母さんの三人乗り、四人乗りを見ると、お母さん、頑張ってるなあとその逞しさに逆に感心する。取締りをあんまり厳しくすると、世の中が却って窮屈になるばかりではなく、人間から逞しさを奪うことになる。
学校行事から危険だからと騎馬戦や棒倒しを奪って、子供たちから逞しさや敏捷性まで奪うことになった。奪っておきながら、サッカーとかのスポーツでその実力が外国のチームに劣ると、臨機応変の敏捷性がない、身体能力が劣ると騒ぐ。お母さんが3人乗り、4人乗りで頑張れば、子供たちに自然と伝わるものである。少し年齢が上に行けば、自転車で風を切る快適さ、周囲の景色を高いところから眺める快適さを味わうに違いない。時にはヒヤッとしても、何回か経験していくと慣れていく。
それに車のペダルを踏むのと自転車のペダルを確かな足応えで踏んでいくのとでは、お母さんの育児に対する意気込みは自ずと違ってくるだろう。
上記記事では「1歳児と3歳児の2人の同乗を想定した実験では、坂を上ったり、走り始めや停車したりする際にハンドルが大きくぶれ、運転に支障が出ることが分かった」としているが、まるきり運転に支障が出るようなら、乗るのをやめる。多くのお母さんがハンドルを揺らしながらスピードをつけていき姿勢を安定させる。そのことはお母さんたちの現在の利用状況そのものが証明している。
坂道について言えば、1人乗りの高校生でも急な坂道を長い距離を走ると最後にはふらつくことがある。お母さんにしたって、多くはふらつきながら、精一杯ペダルを漕いで上りきれるところまで登っていく。
なぜ日本人はそれぞれの判断に任せることができないだろうか。違反を犯すも犯さないも、あるいは事故を起こすも犯さないも何もかもそれぞれに任せる。違反・事故を発生させた場合、法によって取締るしかないし、犯罪の発生とそのことに対する対処と同様にそういった経緯で世の中は進んできた。
それぞれの判断に任せることができず、何もかも管理しようとするのは政治家や役人が元々抱えている権威主義的国家主義からの国民支配欲求が自分たちの既得権確保と絡んで、そのことに文句をつけないおとなしい国民を望んでいることからの法律を使った国民従属・国民管理を衝動としているからではないか。
3人乗り自転車に関して言えば、許可しますといい顔を見せておいて、天下り利益確保と同時に法定自転車での管理を通した国民一人ひとりの逞しさの去勢・無害化の遠謀術数を裏に隠した、そういった方向からの許可に思えて仕方がない。