闇(新銀行東京)が光(東京マラソン)を覆ったとき石原慎太郎の「東京はバラバラになる日」

2008-03-18 12:56:10 | Weblog

 「東京マラソン2008」の公式HPに「東京が一つになる日」の謳い文句が流れる。「東京マラソン」のようなお祭りと違ってその場で終わらせることのできない「新銀行東京」は42.195キロを完走できるのか――

 東京マラソン2008は08年2月17日に行われた。


<澄み渡った晴天のもとで17日、開催された東京マラソン。全国から集まった3万2000人のランナーが都心を駆け抜け、マラソンの部の完走率は昨年を上回る97・4%を記録した。沿道には166万人の観衆が押し寄せ、ランナーに熱い声援を送った。・・・・・>――

 それを以て「MSN産経」記事(≪東京マラソン 沿道ダイジェスト ランナーに声援 心ひとつ≫2008.2.18)は「東京マラソン2008」の公式HPの「謳い文句」に重ねて「東京が一つになった日」と高らかに宣言している。日本の美しい首都・東京の一大国民イベントである。メデタキかな。石原裕次郎も草葉の陰で嬉し涙を流していいたことだろう。

 だが、「東京マラソン」は東京という場所柄のみで地の利・注目の利・宣伝の利を自然発生させる長所の後押しを受けた、前準備は必要ではあっても、本番そのものは1日完遂のお祭り・イベントであるから、カネの掛け具合と見栄えのいいコースの選択といった1+1=2の機械性以外の創造性を特に必要とはせず、石原慎太郎ではなくても誰が知事でも経営可能であったろう。

 要するにカネを掛けた特大の花火を夜空一杯に何発か一斉に打ち上げるようなもので、ハコモノの発想で済ますことのできる儀式に過ぎない。
 東京という場所が如何に地の利・注目の利・宣伝の利を自然発生させる要素に恵まれているかは後援会社や共催関係者を見れば一目瞭然である。

共催 読売新聞社・日本テレビ放送網・フジテレビ・産経新聞・東京新聞
後援 スポーツ関係の団体以外に経団連・経済同友会・日本財団・東京商工会議所・東京都医師会・
   東京都看護協会・東京観光財団、 東京都町会連合会、東京都商店街振興組合連合会、東京都商
   店街連合会、 (財)東京都体・報知新聞・ラジオ日本・サンケイスポーツ・夕刊フジ・サンケイ
   リビング新聞・ニッポン放送・フジサンケイビジネスアイ・SANKEI EXPRESS・扶桑社・東
   京中日スポーツ
特別支援 笹川スポーツ財団
特別協賛 東京メトロ
協賛 スターツ・アシックス・大塚製薬・セイコーホールディングス・トヨタ・日本光電・久光製薬・
   広友リース・コナミスポーツ&ライフ・ジェイティービー・セブン-イレブン・東京ビッグサイ
   ト・フォトクリエイト
協力 青森県りんご協会・カリフォルニア・レーズン協会・JAグループ新潟・新潟県・田中貴金属・築
   地市場・東京青果卸売組合連合会・ドール・はとバスetc.etc。

 何と錚々たる面々か。動員社会日本である。各団体は所属員にコース沿道に駆けつけてお祭りを盛り上げろ、マラソンに参加して何が何でも成功させろと動員を掛けたに違いない。いわば動員も相当数加わった3万2000人のランナーであり、沿道の166万人の観衆ということなのだろう。

 東京マラソンの発案者に石原慎太郎以外に曽野綾子やマラソンの小出監督の名前をブログで見かけるが、石原慎太郎が発案者でなくても、強力な推進者だったろうから、石原慎太郎センセイ、大成功に自らの手柄と鼻を高くしただろうが、1+1=2の予定調和としてもたらされた果実に過ぎない。そうである以上、実質的には選手に配ったバナナの総量にちょっと毛が生えただけの果実といったところだろう。

 残念なことに「東京マラソン2008」の成功の喜びに長く浸っていることはできなかった。マラソン開催日の2月17日から2週間ちょっと経って、1000億円を出資して経営難に陥っていた新銀行東京の融資先1万3000社のうち約600社が事実上破綻し、計86億円が焦げ付いていることが明らかにされたからだ。

 尤もそのことは前以て知らされていたことだろうが。
 
 新銀行東京は紛れもなく石原慎太郎センセイ、その人の発案である。<金融機関の貸し渋りで資金繰りに苦しむ中小企業の支援を目的に、石原慎太郎都知事が03年の選挙公約に掲げ、都が1000億円を出資して05年4月に開業した。>(asahi.com記事)

 都知事として発案し、都が関わって開業している銀行であるなら、都知事として都全体の経営責任者である間は経営状況を見極める責任が発生する。いわば経営陣を管理・監督する責任を有する。管理・監督の方法は経営情報の常なる共有以外にないことは断るまでもない。

 1日限りのお祭りで結果が目に見える形で出る「東京マラソン」と違って、銀行経営は1+1=2のハコモノで片付けることはできない、そのような機械性以外の経営上の創造性を不可欠とする。経営難が報道が伝えているようにズサン経営が原因ということなら、経営上の創造性を欠いて1+1=2のハコモノ的機械性で経営に取り掛かっていたとしか思えない。

 だが何よりも「400億円の追加出資」という差し迫ったところまできたと言うことは、経営情報を常に共有していなかったからではないか。その証拠がある。

 都議会での共産党の吉田信夫氏の質問
 「知事は慎重な姿勢が欠けていた」
 石原「私にも『責任』がありますよ。墜落寸前の銀行を上昇させることだ。さんざん話してきたじゃ
   ないですか」
 吉田氏「あなたが会社の社長だったら、1000億円の大穴をつくれば即辞任だ」
 石原「最初から私が社長だったらもっと大きな銀行にしていますよ」
                   (asahi.com/2008年03月12日記事」
 「社長」の資格者として存在していなかったことを言っているが、同時に情報の共有者としても存在していなかったことを言っているのでる。発案者であると言うことだけではなく、銀行経営も含めて都全体の経営責任者である石原都知事の情報を把握・共有せずに放置していた責任は重い。

 如何にズサンな経営であったか、3月7日の「MSN産経」記事≪粉飾企業に多数融資、「焦げ付きは不問」と旧経営陣 新銀行東京≫から箇条書きに書き出してみる。

1.融資先企業の中に自社決算書を粉飾していた会社が相当数上るにも関わらず、精査しなかった。「
  融資先への訪問調査や通帳による資金確認を行わないまま融資していた」(関係者)
2.破綻した企業は法的処理を伴うものだけで約600社、回収不能額は約86億円に上る。
3.融資の返済が3カ月以上6カ月未満の期間、滞っている企業が520件(総額54億円)、6カ月以上の
  延滞が1100件(総額132億円)に上る
5.累積赤字は、昨年9月中間決算で936億円。今年3月末には1000億円程度に膨らむ見通し。
6.融資がビジネス実体のないペーパーカンパニーに対しても行われいた。

 (これなどは最初から融資を詐取してやろうとしていた詐欺師たちにとっては新銀行東京はいいカモだったに違いない。)

7.新銀行が行ってきた“乱脈融資”の背景として、旧経営陣が実績を積み重ねるために無担保融資を
  積極的に奨励していた。「融資先の焦げ付きは不問にする」と指示していたほか、「半年つぶれな
  い会社だったらどんどん貸せ」との方針を示し、回収を問わず融資実績を上げた行員には最大で20
  0万円の報奨金まで出していた。
 
 (何と社保庁といいとこ勝負のズサンさである。)

 新銀行東京の経営が42.195キロ完走できずに途中棄権といった事態に至ったなら、都知事3選、3期12年の功績も、東京マラソンの成功も、いわば石原慎太郎が背負った東京の光の部分は銀行経営破綻の闇に飲み込まれ、銀行を破綻させて都民に借金を付回した都知事として負の業績を通して語られることになるだろう。

 「負」は負を吸い寄せ、負の面を膨らませていく。大きな一つの否定がその証明として他のすべての否定を傍証とするからだ。

 「中国人犯罪民族DNA論」や不法入国した多くの三国人・外国人が東京で凶悪犯罪を繰返しているといった「三国人発言」、「これは僕がいってるんじゃなくて、松井孝典がいってるんだけど、“文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものは「ババア」”なんだそうだ。“女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です”って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む能力はない。そんな人間が、きんさん・ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって…。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないわね(笑い)。まあ、半分は正鵠を射て、半分はブラックユーモアみたいなものだけど、そういう文明ってのは、惑星をあっという間に消滅させてしまうんだよね。」(Wikipedia)と言ったとされるいわゆる「ババア発言」、あるいは01年のワシントン出張では、最高で1泊26万3000円のホテルに宿泊したことやガラパゴス諸島への出張では、大型クルーザーを5日間借り切り、1泊あたり13万1000円の夢のような旅を愉しんだ物見遊山の海外出張・海外視察等々、過去の負の評価を洗いざら吸着して石原慎太郎自身を否定すべく語られることになるだろう。

 勿論、新銀行東京が奇跡の経営回復を成し遂げた場合は、上記負の業績は忘れ去られて、東京マラソンと共に光の部分のみでその功績は語られ、肯定されるべき人物の評価を受けることになる。

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