パレスチナ・学ぶことなき破壊と死の不毛な再生産

2008-03-04 10:40:59 | Weblog

 イスラエル軍が3日、侵攻していたパレスチナ自治区ガザを撤退した。4日に予定されるライス米国務長官のイスラエル訪問に合わせた事態沈静化といった論調でマスコミは伝えている。

 イスラエルのオルメルト首相は国際社会の批判に<「イスラエルが基本的な自衛行動をとることに対し、道徳を説教する権利は誰にもない」と反論した。>(asahi.com/08.3.3≪ガザ攻撃を続行 イスラエル首相、国際社会の批判に反論≫)という。

 ガザ侵攻の発端は2月27日<午後、パレスチナ武装勢力が撃ち込んだロケット弾でイスラエル人男性(47)が死亡した事件への報復とみられる。>と2月28日の毎日新聞インターネット記事(≪パレスチナ:ガザで乳児死亡30人負傷 イスラエルが報復≫は伝えている。

 同記事はこうも伝えている。<ガザ市中心部にあるイスラム原理主義組織ハマスの「内務省」をミサイルで攻撃、近くに住む生後6カ月の乳児が死亡したほか、市民約30人が負傷した。>

 ハマスがロケット弾を打ち込んで得た最初の戦果が「イスラエル人男性」を1人死なせたこととそれ相応の建物や道路等の破壊。対してイスラエルの戦果は「生後6カ月の乳児」1人の死と「市民約30人」の負傷とインフラの破壊。どちらに正義があろうと、消耗戦という観点から見たら、イスラエル側の圧倒的勝利と言える。

 そして3月3日の毎日新聞インターネット記事(≪パレスチナ:イスラエル攻撃で死者百人超す ガザ地区ルポ≫)は私自身の表現で翻訳すると、イスラエルが地上部隊と戦闘機を派遣して華々しく獲得した戦果が100人を超えるまでに達したパレスチナ人死者ということになる。戦前の日本なら、提灯行列物だったろう。

 他の新聞記事とも読み合わせると、100人の中には乳児や子供まで含まれている。

 この戦果の逆説性を3月3日の時事通信社インターネット記事(≪イスラエル地上部隊が撤退=ハマスは「勝利」宣言-ガザ≫)は象徴的に伝えている。

 イスラエル軍「作戦で目的を達成した」ことからの撤退。
 ハマス、ガザ領内への再度の侵攻を躊躇させるために撤退するイスラエル地上部隊に追撃をかけ、散々な目に遭わせることなく撤退させて、その<撤退したことを受けて「勝利」を宣言。>

 双方の死なせた人数、負傷させた人数、建物や道路の破壊等々の戦果に歴然たる差がありながら、敵の「撤退」を以って「勝利」とする。ライス長官のイスラエル訪問が1日遅れたら、撤退も1日遅れかもしれないと言うのに。

 そして<イスラエル領内へのロケット弾攻撃を今後も続行する方針を示した。>(同時事通信記事)

 軍事力も攻撃能力も数段上であることに加えて超大国アメリカを後ろ盾にしている敵相手なのだから、成功の程度が従来とさして変化のない戦果の競い合いに終わることが分かっていながら、いわばパレスチナ側により多くの人的・物的被害をもたらすに過ぎない「破壊と死の不毛な再生産」の同じことの繰返しを招くだけの「ロケット弾攻撃を今後も続行する方針」を捨てない。

 パレスチナはこれまで何を得てきたのだろうか。国や社会の発展に寄与する建設的な成果を何か打ちたてと言えるのだろうか。人々の生活に物質面は勿論、精神面でも豊かとなれる制度を保障することができたのだろうか。

 パレスチナ武装勢力がイスラエル領内に撃ち込むロケット弾発射拠点に住いを構えている47歳の男性の声を上記毎日記事(≪パレスチナ:イスラエル攻撃で死者百人超す ガザ地区ルポ≫)が次のように伝えている。

 「イスラエル軍に報復されてロケット弾攻撃の代償を払うのは武装勢力ではなく、我々だ」

 この言葉ほど双方の戦果の格差をものの見事に表現している言葉はあるまい。いわばハマスがロケット弾を打ち込んでイスラエル人の男を1人殺して支払うこととなった「代償」が「生後6カ月の乳児」その他の子供たちの死であり、一般民間人を交えた「100人を超える」パレスチナ人の死と生活の破壊というわけである。お見事。

 イスラエル側に大きな人的被害が出たという報道はない。戦闘機と地上軍を駆使して自分たちの方から侵攻しながら人的に甚大な被害を蒙ったとしたら滑稽な逆説となる。数人程度の被害にとどまったのだろう。

 イスラエルの被害が軽微なものであったなら、ロケット弾で仕掛けた側がより多く負った憐れむべき「代償」と言うことになりかねない。

 潘国連事務総長がハマスのロケット攻撃を「テロ行為」、イスラエル報復攻撃を「過剰な武力行使」と喧嘩両成敗の形で非難しているが、単に言葉を発しただけで終るのはこれまでの例を見れば容易に分かることである。言葉だけで終わり、ハマス側のみがより多く「代償」を支払うこととなる従来どおりの「破壊と死の不毛な再生産」が今後と続けられる。何も学ばず、発展や建設に寄与する何物も得るものがないテロと報復の悪循環を。成長しない愚かなパレスチナ人。

 以前メーリングリストで以下の文章を送信したが、当時と何にも変わっていない。その当時にしても、何10年と続く以前と変わらない風景としてあった。

送信者: "Hiroyuki.Teshirogi" <wbs08540@mail.wbs.ne.jp>
宛先: <kokkai2@egroups.co.jp>
件名 : [kokkai2] 愚かなアラファト・愚かなパレスチナ市民
日時 : 2003年5月11日 21:13 

  手代木ヒロユキ

 テロはその是非は別として、自らが掲げる目標、あるいは目的を実現させるための手段であって、決して自己目的化してはならない。憎悪をエネルギーとし、それを晴らすテロは、既に自己目的化の自縄自縛に陥ったテロとなる。

 自己目的化したテロは憎悪にまみれた敵対感情と、そのような敵対感情に支えられた破壊や人命の犠牲のみを目的とした目には目を・歯には歯をの報復の連鎖に行き着くのが精一杯といったところだろう。その愚かしい不毛性に気づかずに、パレスチナとイスラエルは報復の無限連鎖のアリ地獄から抜け出れないでいる。報復の連鎖とは、愚かしさの連鎖に他ならない。

 しかし、愚かしいという点において、パレスチナとイスラエルは同等ではない。パレスチナはイスラエル以上の愚かしさを犯している。なぜなら、パレスチナの経済はイスラエルに依存することによって成り立ち、経済的に支配と従属の関係にあるからである。インフラの代表である発電所一つ取っても、ごく小規模な発電は部分的には自ら行っているが、大部分の電気はイスラエルからの買電で賄っている貧弱な状況が、支配と従属を物語って余りある。

 テロがイスラエルの経済的支配を打ち破って、経済的自立の獲得を約束する種類のものならいい。例えパレスチナ国家を樹立したとしても、少なくとも一定期間は確実に、あるいは長期にわたってイスラエルに経済的な依存を余儀なくされる以上、テロはイスラエルの経済的支配を将来にわたって高める担保をつくり出すことに他ならない。経済的に自らの首を絞める逆効果現象しか生み出さないということである。>・・・・

 テロと報復の終わりのない再生産・循環を見せつけられると、まあ、好きなだけやってくれ、オッパッピーといった気持にもなる。潘国連事務総長にしても効き目がないと知っていながら、立場上何か言わなければならないから言ったまでなのだろう。

 2006年4月1日に当ブログに≪パレスチナの取る道・世界を領土とせよ かつてのユダヤを倣う≫なる記事を載せて、<世界は急速にグローバル化している。グローバル化に応じて、国境を自由に跨ぎ、世界を一つ舞台とした人間の往来と活動が激しさを増している。領土はもはやその絶対性を失いつつあり、国家の管理と自由な相互関係との二重性を持つに至っている。多くの人間がそのことに留意しないだけである。その流れを利用して、領土の分割を超え、世界全体を機会実現の領土とする、いわば領土の従来的性格の相対化を図るべきではないか。

 ユダヤ人はその逆をいって、イスラエルを獲得した。ならば、パレスチナ人はさらにその逆をいって、現在のグローバル化と同調し、世界を領土とすべきだろう。現在のパレスチナの土地から比べたら、世界は無限の広さと可能性を持つ。>として、ユダヤ人が放浪の果てに自らの領土・イスラエルを手に入れた長い歴史の時間をパレスチナ人自身も糧として自らの「教育能力」を高め、その教育力でユダヤ人が世界各国で活躍し、社会的地位を高めてきたように活躍の舞台を世界に求め、世界を「領土」とすべきと、勿論、1日に高々2、30人しかアクセスのないブログなのだから、それ以上あったとしても彼らの耳に届かないのは承知で記事にしたが、『朝日』が「代案」とも言うべき興味ある記事を載せていた(全文引用)。

 ≪イスラエルと統合を≫(08.2.29/「朝日」朝刊)

 <【エルサレム=村上伸一】
イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を目指す和平交渉に進展が見えないなか、パレスチナ側に「独立国家ができないならイスラエルに統合すべきだ」という「1国家」論が渦巻いている。南アフリカで平等の権利を勝ち取った多数派の黒人が政権を主導することになったように、イスラエルと統合しても出生率の高いパレスチナ人がいずれは多数派になるという期待がある。一方、「ユダヤ人国家」にこだわるイスラエル側は危機感を募らせている。

 パレスチナ「1国家論」噴出

 <パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の大学教授で、2国家共存を受け入れた隠健派政党ファタハの幹部でもあるスフィヤン・アブザイダ氏(47)>

 「2 国家」論の起源である47年の国連パレスチナ分割決議は、領土をほぼ半々に分けたが、48年のイスラエル建国をめぐる第1次中東戦争で、パレスチナ側の領土は全体の23%にまで減った。その領土は67年の第3次中東戦争でイスラエルに占領された。

 パレスチナはその23%の占領地に独立国家の樹立を目指しでいるが、そこにさえユダヤ人入植地が虫食い状に広がる。独立国家の首都にする予定の東エルサレムは、すでにユダヤ人が全人口の半分近くを占めている。

 アブザイダ教授は「既成事実を積み重ねられ、23%の領土さえすべては戻らない。そんな独立国家はいらないという気持ちになるのは自然だろう」と語った。
昨年12月にはパレスチナ自治政府のアッバス議長のブレーンといわれるオックスフォード大学の研究者が英紙ガーディアンに寄稿し、「67年の占領地(23%)がすべて戻らないなら、土地を共有するしかない」と「1国家」論を示唆した。
 さらに最近のニューヨーク・タイムズ紙が、イスラエルとバレスチナの和平交渉がこのまま行き詰まれば、アラブ諸国が「2 国共存」への支持を放棄する可能性があると報じた。

 イスラエル側は、オルメルト首相やリブニ外相が「1 国家]論に危機感を表明している。パレスチナ人の出生率のほうが高く、同じ国内ならいずれ多数派を握られ、「ユダヤ人国家としてのイスラエル」ではなくなってしまうからだ。
パレスチナ人に平等の権利を与えなければ、「南アの過去のアパルトへイト(人種隔離)政策の二の舞いだ」と国際社会から非難されるのは必至だ。

 イスラエル政府は「だからこそ2 国家を実現するのが我々の利益だ」と訴えている。だが、入植地の住宅増設など和平交渉の妨害は増える一方だ。>――

 「1国家」方式でイスラエルと統合し、「出生率」を武器にパレスチナ人が多数派を形成するという選択肢を採るか、教育力を高め、それを資源に世界に「活躍の領土」を求める選択肢を選ぶか、いずれの選択も発展や建設に寄与するものがゼロである以上報復のための報復へと自己目的化した「テロ」との決別の上に築かれる。
 * * * * * * * *
 参考までに――

 ≪ガザ攻撃を続行 イスラエル首相、国際社会の批判に反論≫(asahi.com/08.3.3)

 <イスラム過激派ハマスが支配するパレスチナ自治区ガザに激しい武力攻撃を続けているイスラエルのバラク国防相は2日夜、「行動の時だ。ハマスは代償を払うことになる」と攻撃を続行する方針を表明した。イスラエル放送などが伝えた。

 パレスチナ自治区ガザ南部のラファで2日、イスラエル軍のミサイル攻撃で破壊されたモスクの周辺に集まる人々。ガザを支配するイスラム過激派ハマスの治安組織がこの施設を拠点としていたとされる=AP

 2日までの5日間で100人以上のパレスチナ人が死亡し、その約半数は女性や子どもを含む市民と見られるため、国際社会からイスラエル軍に対して自制を求める声が高まっている。

 バラク国防相は「ハマスはロケット弾でイスラエルの市民を標的にしている。我々はその状況を変える」と断言した。

 一方、イスラエルのオルメルト首相は2日の閣議の冒頭、国際社会からの批判に触れ、「イスラエルが基本的な自衛行動をとることに対し、道徳を説教する権利は誰にもない」と反論した。>――
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 (≪パレスチナ:ガザで乳児死亡30人負傷 イスラエルが報復≫(08.3.3/毎日新聞)

 <【エルサレム前田英司】パレスチナ自治区ガザ地区からの情報によると、イスラエル軍機が27日夜、ガザ市中心部にあるイスラム原理主義組織ハマスの「内務省」をミサイルで攻撃、近くに住む生後6カ月の乳児が死亡したほか、市民約30人が負傷した。同日(2月27日)午後、パレスチナ武装勢力が撃ち込んだロケット弾でイスラエル人男性(47)が死亡した事件への報復とみられる。
 ガザ市の「内務省」近くにはハマス政府の「首相府」もある。首相、内相ともハマス最高幹部のハニヤ氏が務めるが、当時、同氏は建物内にはいなかった。ハマス幹部は最近、イスラエル軍の「暗殺作戦」の標的になることを警戒して姿を隠している。

 イスラエル軍によると、ガザ地区から発射されたロケット弾はこの日だけで40発に上った。軍は空爆などで報復しており、イスラエルのメディアによると、ガザ北部ではパレスチナ人の子供3人が死亡した。>――
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 ≪パレスチナ:イスラエル攻撃で死者百人超す ガザ地区ルポ≫(毎日新聞 2008年3月3日)

 <イスラエル軍の攻撃で崩壊したイスラム原理主義組織ハマスの関連施設=ガザ市近郊で、前田英司撮影

 【ガザ地区(パレスチナ自治区)前田英司】「私は(イスラム原理主義組織)ハマスでも何でもない。なぜ、こんな目に遭わなければならないのか」--。先月27日以降、イスラエル軍の攻撃にさらされるパレスチナ自治区ガザ地区。パレスチナ人死者数は2日、100人を超えた。墓地では犠牲者増を見越して新しい墓穴が準備されている。 

 ナセル・アルボライさん(29)は2日、ガザ市の自宅で、生後6カ月で逝った長男ムハンマドちゃんの写真を見つめていた。先月27日に写真スタジオで撮影したばかり。

 撮影から帰宅後間もなく、自宅前のハマス「内務省」が空爆された。がれきが寝室の天井を突き破り、ムハンマドちゃんが下敷きになった。「この写真が遺影になるとは……」。アルボライさんが怒りに肩を震わせる。

 ガザ北部ジャバリヤに住むアヘド・ハッサンさん(46)は「今朝、妻が流産した」と明かす。妊娠3カ月。「精神状態が不安定だったに違いない」

 1日午後8時半ごろ、イスラエル軍から自宅を空爆すると電話で警告された。ハマス系大学で食堂を経営しているが、狙われる覚えはない。退去を拒否すると「残る人生は数分だ」と告げられた。

 脅える妻と8人の子供たち。親類や近所の人が駆けつけ、「人間の鎖」を作って抗議した。結局、攻撃は免れた。「これもガザに生きる運命だ」。ハッサンさんは自分に言い聞かせるように語る。

 イスラエル軍が侵攻しているジャバリヤ東部。軍ヘリが機銃掃射を繰り返し、戦車の移動音が響き渡る。地元住民によると、付近はパレスチナ武装勢力がイスラエル領内に撃ち込むロケット弾の発射拠点という。ある男性(47)は「イスラエル軍に報復されてロケット弾攻撃の代償を払うのは武装勢力ではなく、我々だ」と憤りを口にした。
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 ≪イスラエル地上部隊が撤退=ハマスは「勝利」宣言-ガザ≫(時事通信社/2008/03/03)

 <【エルサレム3日時事】イスラエル軍スポークスマンは3日、パレスチナ自治区ガザで武装組織の掃討作戦を展開していた地上部隊がイスラエル領内に撤退したことを明らかにした。同軍は「作戦で目的を達成した」としている。

 一方、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスは、イスラエル部隊が撤退したことを受けて「勝利」を宣言、イスラエル領内へのロケット弾攻撃を今後も続行する方針を示した。>――

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