平成20年度予算は成立したものの道路整備事業に使途を限定した道路特定財源の大部分の原資となる揮発油税の暫定税率を定めた租税特別措置関連法が08年3月31日に期限切れを迎えるに当たって、それに代わる暫定税率維持を盛り込んだ政府与党の税制改正法案が衆院を与党賛成多数で2月29日(08年)に通過したものの参院で民主党以下の野党の審議入り拒否にあって期限切れを迎え、4月1日よりガソリンが平均25円値下げされる事態前日の3月31日に「20年度予算成立と道路関連法案の年度内未成立について」 福田内閣総理大臣は記者会見(「首相官邸」HPより)を行っている。
<まず世界では、ガソリンに対する税金を引き上げる傾向に今あります。これは、世界が地球温暖化問題に立ち向かうため、ガソリン価格の引き上げが、CO2を排出するガソリンの消費を抑えることに役立つと考えているからであります。この結果、ガソリン価格は今、イギリスでは1リットル250円です。フランスやドイツでも1リットル220円であります。もしここで日本がガソリンの税金を25円安くすれば、ガソリン価格は125円となり、イギリスの半分になってしまいます。地球温暖化対策に取り組んでいる世界に対して、日本はガソリンの消費を増やそうとしているんではないか、という誤ったメッセージを発することになりかねません。時代逆行の動きであります。
今年7月には北海道洞爺湖において各国首脳が集まり、この地球温暖化問題への対応を検討します。そのとき、ガソリンは安い方がよいということでは、各国の首脳が果たして納得してくれるでしょうか。
今、私たちは京都議定書の6%削減を達成しようとしております。少なくとも環境問題を重視すべきこの時期に、ガソリンの税率を引き下げることは適当ではないと考えております。>・・・・
福田総理大臣の側近の位置を占めている町田官房長官も同じ考えに立っているのは当然ことである。
≪「ガソリンの暫定税率の問題について」町村官房長官記者発表≫(08年1月17日/首相官邸HPより一部抜粋)
パネルを使っての力説(写真/「asahi.com記事」から――
<これも今更言うまでもございませんけれども、地球温暖化問題というのが、私は大変大きな問題としてあると思います。当初から、ガソリンは地球温暖化、ガソリン税はですね、地球温暖化対策を目指してやったわけではございませんけれども、お手元の表をご覧いただければ分かるとおり、実は、その日本の税金、或いはガソリンの価格そのものも、税負担が低いが故に、155円から160円くらいということで、日本は非常に低い数字なんですね、今、上がった上がったと言っても、155円前後。お隣の韓国は193円、今もう200円を超えたそうです。それから、他のこのイギリス、ドイツ、フランス等々は、大体今、240円から230円、或いは220円台というようなことで、日本と比べると、まだまだ数十円高い。
その値段差は何かというと、この緑の部分がそうですが、正に税金の負担格差なんですね。これだけあれがあります。だから、細かい数字で恐縮ですけれども、イギリスなどは、小売価格の66%、3分の2が税金、日本はどうかというと、39%、61円分が税金ということであります。アメリカはどうかというと、ここはもう車がないと何も成り立たない国ですから、しかも税金はほとんど取らないという国ですから、これだけ低いのは、アメリカの今の実態なんだろうなと思っております。
こういうことで、実は、OECDのいろいろな資料を見ると、日本は環境税という言葉は使っておりませんけれども、環境の改善に役立っている税という分類の中に、日本の揮発油税等々は、もう既に計算をされております。ヨーロッパの国々は、当初炭素税と言ったり、或いはガソリン税、灯油税と言ったりしておりますけれども、日本のガソリン税も正にそういう意味では、環境対策税制の中にも入っております。
それから、もう一つご覧いただきたいのは、一番左端が1980年をとっておりますけれども、その時から日本は、ずうっと変わらないで横ばいなんですね。3枚目の図表をお配りしてありますけれども、日本はずうっと横一線で変わっておりません。それに対して、イギリス、フランス、ドイツ、特に一番今値段が高いのはイギリスですか。ここまで、今上がってきておりますから、1980年を100とすると、今イギリスはガソリンの税額で見ると、1980年と比べると4.5倍くらいになっているわけですね。日本は全然変わっておりません。
これだけ諸外国は環境ということも考えて、これだけ税額を上げてきているわけです。日本は上げてきていないというようなことを、やはり考えなければいけないんだろうなと思っておりまして、これからサミットが開かれる時に、日本が環境問題を訴える、その時に日本はガソリンの値段を、税金を下げました。油の値段を下げましたと言った時に、はたして諸外国が、日本は環境問題に熱心に取り組んでいるねというふうに見られるかといえば、それは全く正反対の効果しかないんだろうなと思っております。
それでは、ガソリンの値段が上がった人達への影響はどうなんですかと、ここは正に、昨年の年末12月に入って2回の会議を開き、補正予算或いは本予算の中で、様々な原油価格高騰対策というものを既に打ち出し、発表しているのはご承知のとおりであります。寒い地域では福祉灯油というようなものを自治体がやる場合には、そのかかった財政負担を、できるだけ緩和するために、特別交付税の配分で、自治体の財政を緩和しようといったようなことも既に手を打っているところでございますので、是非、そうした面もご理解をいただければと思います。>・・・・・・・
町村は地球環境対策上、「日本の揮発油税等々」の維持(=本則税率+暫定税率の維持)の必要性を訴える中で「日本はガソリンの値段を、税金を下げました。油の値段を下げましたと言った時に、はたして諸外国が、日本は環境問題に熱心に取り組んでいるねというふうに見られるかといえば、それは全く正反対の効果しかないんだろうなと思っております」とガソリン価格の値上げ欲求を露骨に見せている。
この主張は福田首相の「ガソリン価格の引き上げが、CO2を排出するガソリンの消費を抑えることに役立つと考えている」と軌を一にする主張であろう。
「ガソリン価格の引き上げ」こそが「地球温暖化対策に取り組んでいる世界に対して、日本はガソリンの消費を増やそうとしているんではないか、という誤ったメッセージを発」しかねない危険を正すことになる。
町村の場合は「様々な原油価格高騰対策というものを既に打ち出し、発表しているのはご承知のとおりであります」とは言っているものの、暫定税率の復活によるガソリンの値上げだけではなく、原油高騰という政策的に意図せざる要素に連動したガソリンのなお一層の高騰は彼らのガソリン価格値上げ欲求と期せずして合致することとなり、結果的にガソリンの消費抑制――CO2排出抑制――地球環境対策(温室効果ガス排出抑制)へと順次つながっていっているのは確かな事実であって、原油高騰そのものが福田内閣が期待して止まない地球環境対策(温室効果ガス排出の抑制)に役立っているということであろう。
原油の高騰のみならず、物価の値上がりについて福田首相は4月12日に新宿御苑で自らが主催した恒例の「桜を見る会」で「まあ、いろいろありますよ。物価が上がるとか、しょうがないことはしょうがないのだから、耐えて工夫して切り抜けていくことが大事だ」(「47NEWS」と言って、「しょうがないのだから」と肯定してもいる。
否定したら、即ガソリンの値上げを意図することにもなる自らの暫定税率復活の論理に矛盾することになるからだろう。
と言うことは、こうも言えるのではないのか。福田首相及び町田官房長官以下の福田内閣の面々にとって嬉しいことに原油高騰のお陰を以ってガソリンは180円へと値上がりしたが、フランスやドイツの1リットル220円にまだ40円は及ばない「時代逆行の動き」は依然として続いているのであります。「世界が地球温暖化問題に立ち向かうため」には日本がそのリーダーシップを取るためにも日本のガソリンはまだまだ値上がりが必要というわけであります。ガソリン1リットルにかけている揮発油税(24.3円)と地方道路税(0.8円)併せた暫定税率分だけでは不足で、原油高騰こそが地球環境対策の何よりの良薬となっているということではないだろうか。
原油高騰が日本経済活動に与える弊害面については福田首相が言っているように「しょうがないことはしょうがないのだから、耐えて工夫して切り抜けていくことが大事」なのです。
一作日15日(08年7月)に燃料油高騰によって採算が合わないからと全国で20万隻の漁船が一斉休漁のストライキに出たが、福田内閣暫定税率復活の論理から言うと20万隻が休漁することよって成し遂げることができた温室効果ガス排出も原油高騰が与えた恩恵だと言うことができる。
燃料高騰が漁業に与えている打撃救済に関して業界団体が求める燃料費への直接補助は行わないということも、直接補助が燃料費補填となって間接的な燃料値下げとなるばかりではなく、暫定税率を復活させてガソリンを値上げした手前もあって、同じ原油高騰の影響を受けている他の業界や一般消費者に不公平になるからだろう。
地球環境対策を主目的とした自らの暫定税率復活の論理に照らすなら、値上げは必要不可欠事項なのである。
福田内閣は一斉休漁によってどのくらいの温室効果ガスの排出抑制ができたか、地球環境対策上の効果を町村官房長官を以ってしてパネルを使って発表させるべきではないだろうか。その数値を世界に向けて公表し、日本の漁業の1日20万隻一斉休漁のみでも日本は温室効果ガスをいくらいくら削減できたと、その成果を記念すべき日本の誇りとすべきであろう。
こういった把え方は牽強付会(こじつけ)に過ぎるだろうか。まあ、ちょっとしたひねくれた皮肉と受け取ってもらいたい。
それにしても町村大長官、「アメリカはどうかというと、ここはもう車がないと何も成り立たない国ですから、しかも税金はほとんど取らないという国ですから、これだけ低いのは、アメリカの今の実態なんだろうなと思っております」は自らのガソリン値上げ論理に添わせた地球環境対策の観点から批判するなら理解できもするが、瞬間的健忘症にかかったのか批判もせず、あっさりとアメリカの現状を現状のままに追認してしまう単純反応はお見事としか言いようがない。さすが日本の内閣官房長官だけのことはある。
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≪物価上昇しょうがない 首相、桜を見る会で)(47NEWS/2008/04/12 12:07 【共同通信】)
「桜を見る会」で(右から)にしおかすみこさん、菊川怜さん、ギャル曽根さんらと記念写真に納まる福田首相=12日午前、東京・新宿御苑
福田康夫首相が主催する恒例の「桜を見る会」が12日午前、東京都内の新宿御苑で開かれ、暖かい日差しの中で、政財界人、タレントら約1万人の招待客が満開の八重桜を楽しんだ。
首相はあいさつで「こんな桜ばかりのような日本にしたい。政治と行政をしっかりさせるのが私の役割で、先は明るいと思っていただきたい」と強調。ただ「まあ、いろいろありますよ。物価が上がるとか、しょうがないことはしょうがないのだから、耐えて工夫して切り抜けていくことが大事だ」とも述べた。
首相は御苑内を約1時間半歩き、握手や記念撮影に応じた。招待客から「党首討論はよかった」と声を掛けられ、にこやかに手を振る場面もあった。タレントのギャル曽根さんや女優の菊川怜さん、歌手の西城秀樹さんらも招かれた。
――大食いタレントギャル曽根、思っても見なかった一世一代の晴れ舞台だったでしょう。