麻生日本国総理大臣、2005年10月の総務大臣在任中の有名語録――
「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」
日本の他にはない「一文化、一文明、一民族、一言語の国」である「日本」という国はそうではない国よりも優れていると価値づけているご発言である。「多文化、多文明、多民族、多言語のアメリカなんざあ、一文化、一文明、一民族、一言語の日本から比べたら、下の下の劣る国じゃあねえのか」てなもんよ。
さすがに麻生太郎。日本民族を他の民族よりも優越的な位置に置く自民族優越主義を基本的スタンスとし、人間的血とした日本民族優越主義者を正体としているというわけである。
民族の上下・優劣を民族の血で価値づける者(自民族優越主義者)は自民族の構成員をも各個人の血を上下・優劣のモノサシに用いて価値づける。血を民族単位でのみならず、各個人単位でも価値を計る基準値とすることになるからだ。腹の中ではきっとそう思っているに違いない。
だからこそ、2003年当時、野中広務のことを「野中のような出身者を日本の総理にはできないわなあ」(出展「Wikipedia」と総理にすまいとする策謀に巻き込むべく他人を唆すことができたのだろう。
さらに「Wikipedia」によると、その後自民党総務会で「出身者」発言を野中広務から直接面罵された我が麻生太郎は何も答えることができず、顔を真っ赤にして俯いたままだったというが、2005年2月に国会でそのことを追及されて、例の濁った声、上唇の端を跳ね上げてだろう、「その種の発言をしたことはありません」と否定したそうだ。
「自民党総務会は31名の総務をもって構成され、党の運営及び国会活動に関する重要事項を審議決定する。」(「Wikipedia」機関だという。麻生太郎はなぜその場で「その種の発言をしたことはありません」ときっぱりと否定しなかったのだろう。
週刊誌等の報道によって多くの政治家・一般人に“顔を真っ赤にして俯いたまま何も答えることができなかった麻生太郎”の姿が記憶されたのである。記憶されたのはきっぱりと否定した麻生太郎の姿ではなかった。
2年後の国会で否定するよりも、発言したばかりの「2003年」当時にこそ否定して、その姿を各メディアや人々の記憶に残すべきだったが、そうすることができなかった。意気地のない、あるいは口程でもない自民族優越主義者だ。
改めて言う。
民族の上下・優劣を民族の血で価値づける自民族優越主義者は自民族の構成員をも各個人の血を上下・優劣のモノサシに用いて価値づける。
日本民族を優越的位置に置く麻生太郎日本民族優越主義者は当然の価値づけとして、アジアの各民族を日本民族の下に置いている。下に置くとは、下等視していることを意味する。
そのような我が偉大な麻生太郎が4月9日、日本記者クラブで「新しい成長に向けて」と題してスピーチを行い、アジアについて語っている。日本民族を上に置き、アジアの各民族を下に置いている以上、アジアについて語る資格はないはずだが、本性を隠してそんなことは顔に見せない平然としたしらばっくれによっていくらでも語ることができる。濁っただみ声と上唇の端を持ち上げて。国会で「野中民出身」発言を平然と否定したように。
首相官邸HPの「新たな成長に向けて」のスピーチから、アジアに関する箇所を抜粋してみる。
≪アジアの成長 ~ 「アジア経済倍増へ向けた成長構想」≫
次に、もう一つのテーマであるアジアの成長に話を進めたいと思います。
アジアは、21世紀の成長センターであります。日本の大きな強みは、このアジアに日本という国が位置していることです。これからの日本の新しい成長戦略を考える上で、この地理的強みを最大限に生かしていく。こういう発想が重要です。
日本は、間違いなく人口減少に直面をいたしております。欧米市場と比べても、今後、大きく市場が伸びるのはアジアです。東アジアだけでも約32億人の人口、世界人口の約半分が東アジア。これはアジアの定義が難しいところですが、インドから東と思ってください。そういうぐらいのところです。パキスタンぐらいまで入る。そういった地域だと思っていただければと思います。
東アジアだけでも32億人。最近4年間で、1億3,000万人の人口が増加をしております。たった4年間で日本1国分が増えたということです。しかも、アジアでは膨大な経済所得の中間層というものが成長しつつあります。1人当たりのGDPが3,000ドルを超えると、耐久消費財ブームが起きると言われております。
今、中国は約3,000ドル。ASEANの平均で2,200ドルを超えました。
日本は、国境を越えてアジア全体で成長するという視点に立つことが大事です。
(1)成長するアジア全体で富を生み出し、
(2)それを経済連携や、また人的交流というものを通じて、日本の雇用やイノベーションにつなげる
。
(3)それをアジアのさらなる発展につなげるというような好循環をつくることが重要なんだと考えて
おります。
国内の生産というものを拡大することに固執するという発想よりも、国民の富が増大することを重視する。いわゆる国内総生産、GDP、Gross Domestic Productという発想から、国民の総所得、Gross National Incomeといった発想の転換が今後必要なんだと思っております。
私は、昨年11月に総理特使というものを任命しております。アジア各国の声をよく聞いて、具体策を協議するように指示しました。各国の要人と協議を重ねてきた特使の報告というものを踏まえて、私は次の2つを提案したいと考えております。
(1)アジアの成長力強化
第1に、アジアの成長力の強化です。広域インフラの整備、産業開発、制度改善、こういったものを一体的かつ計画的に進めることで、周辺地域や幅広い産業の飛躍的な発展が期待できると思っております。そのようなプロジェクトを支援します。お手元の資料に5ページがあろうと思いますが、資料の5ページを御参考ください。
《(1)具体例》
例えば現在、ベトナムのホーチミンからインドのチェンナイまでマラッカ海峡を経由して海を使い、海路で約2週間かかります。
これをホーチミンからアンダマン海まで陸路を整備して、タイからカイロでチェンナイへ運べば10日。更に、これは国を横切りますので、通関など国境通過にかかる時間というものが膨大にかかっておりますが、これは日本の通関技術、ワンストップサービス、シングルウィンドー、こういった技術を入れますと、8日で運ぶことができます。
このようなルートを建設し、周辺に工業団地など関連インフラを整備します。これによりメコン地域は、はるかインドや中東を視野に入れた自動車やエレクトロニクス、そういった製品の供給拠点として大きく発展することができます。
また、マラッカ海峡というものが果たす、海上交通の役割は不可欠です。マラッカ海峡沿岸の発展を支えることで、日中韓と中東をつなぐエネルギー輸送の大動脈を安定させることができます。インドネシア、マレーシア、フィリピンに至るまで、東南アジアの発展にも大きく寄与するのは当然です。
こういったプロジェクトの候補は、幾つもあります。
《(2)アジア総合開発計画の策定》
構想を具体化するには、
a)鉄道や陸路などの基幹的なインフラ、
b)発電所、工業団地などの関連インフラ、
c)そして、産業開発の計画、
d)資金調達の仕組み、
e)そして、通関などの改善すべき制度
などについて、総合開発計画というものを策定することが必要です。
今、東アジア・ASEAN経済研究センター、ERIAというものがありますが、また、ADB、アジア開発銀行。また、ASEANの事務局が中心となって、各国と協力しながらアジア総合開発を策定することを、今、提案したいと思っております。
ASEAN、インドを中心に、5年間で70兆円のインフラ需要があると予測されております。そのうち、既に構想・計画段階にあるものが10兆円あります。
日本は、提案するだけではなくて、ODAやその他の公的資金、勿論、民間資金まで総動員して、こうした取組みを後押しします。
日本は今回、新たにアジアのインフラ整備へ民間投資を振り向けていくために、官民連携案件を中心に、2兆円の貿易保険枠を設けます。先般表明した、最大2兆円規模のODAや国際協力銀行による5,000億円程度の環境投資支援イニシアティブも活用して、アジアのインフラ整備というものに貢献したいと思っております。
また、アジアの持続的成長には環境問題への対応も忘れてはなりません。日本の優れた環境技術、新エネ、省エネ技術を活用して、アジアワイドでの資源循環システムや高度な水の循環システムの普及などの事業を進めます。
(2)アジアの内需拡大
第二に、アジアの内需拡大が重要になります。広域開発構想による投資の刺激に加えて、アジアにおいて消費を増やすことが極めて重要です。
今後、アジアの中間層が安心して消費を拡大するためには、社会保障などのセーフティーネットを整備する必要があります。また、教育の充実によって中間層を増やしていく必要があります。
こうした課題は各国が自主的に取り組むべき課題ではあります。ベストプラクティスというものの共有や共通指標の整備などの面で、アジア全体が協力することが重要なんだと考えております。エリアが政策提言することを提案したいと思っております。
御記憶だと思いますが、日本は昭和35年に池田内閣によります国民所得倍増計画、いわゆる所得倍増というものを策定して、高度経済成長時代へ入っていきました。
今やアジア全体で中間層が存在し、内需主導で大きく成長する新しい時代を迎えつつあります。
本日、私の申し上げた構想は、アジア経済倍増へ向けた成長構想というべきものだと思っております。アジアの経済規模というものを2020年に倍増することを目指して、お互いの立場を尊重しながら、対等の立場で取り組んでいきたいと考えております。
4月12日に予定されております東アジア首脳会議の場で、私から提案し、アジアの国々と共に前進したいと思います。
表面的には立派なことを言っている。
最初に「アジアは、21世紀の成長センターであって、日本の大きな強みは、このアジアに日本という国が位置していることです」と言っているが、同じアジアに位置している中国がアジアの盟主たる地位を日本から奪い、自らがその地位に就き、アジアの政治・経済を主導している。日本が主導しているのではない。
そのことは2005年に日本が安保理常任理事国入りを目指してアジア・アフリカ各国の支持を得るべき経済援助等を行ったものの、中国の同じ経済援助等を武器とした極めて政治的な阻止活動によってことごとく阻害され、結果的にアジア・アフリカ各国ともその殆どが中国の意向を選択することになったのだが、そのような経緯そのものが中国がアジアの盟主として躍り出た何よりの象徴的出来事であったことを証明すると同時に、アジアに於いて日本は日本主導の機会を失い、中国主導に対する単なる対抗馬に成り下がった何よりの証明でもあった。
いわば「21世紀の成長センター」であるアジアをリードするのは日本であることよりも中国だと言うことである。
日本の地位低下をしっかりと見据えた対アジア戦略を持たないと常任理事国入りを断念したときと同じ失敗を演じることになる。日本民族をアジア各国の民族よりも上に置く自民族優越主義者である我が麻生太郎に日本の地位低下を冷静・客観的に把える目を期待するのは無理な注文かもしれない。
だからこそ、どうせ官僚の作文だろうが、そうではあっても、言っていることの矛盾に気づかずに「日本は、国境を越えてアジア全体で成長するという視点に立つことが大事です」などといったことを今更ながらのことのように言える。これまでは日本の成長のためにアジアの成長を利用してきただけだったが、そういった成長戦術が中国の成長で効き目を失った。中国の他のアジア各国への影響力が大きくなり過ぎたからだ。
そこで「アジア全体で成長」といった共生の意味合いを体裁よく持たせた戦術転換を偽装せざるを得なくなった。アメリカや中国におんぶに抱っこの外需頼みの経済という現実を隠して、さも主体的な経済性を持っているかのように装う。
「アジア全体で成長」が単なる偽装共生でしかないのは、「今やアジア全体で中間層が存在し、内需主導で大きく成長する新しい時代を迎えつつあります」という言葉が何よりも雄弁に物語っている。
ではなぜ日本はこれまで「内需主導で大きく成長する」「時代」を迎えることができなかったのか。戦争による荒廃からの復興を含めた日本の経済発展そのものが常にアメリカの経済に助けられ、「失われた10年」からの回復にはアメリカと中国の景気に助けられた外需型の経済「成長」であった。
そして外需型の経済構造が原因となって景気の悪化を招くたびに内需型経済構造への転換の必要性を叫ぶこととなった。
しかし必要性を叫ぶだけで、内需型経済構造への転換を図ることができず、外需型を引きずることとなっている。
それなのに、アジアに対しては「内需主導」の成長を訴える。
「アジア全体で成長」が体裁のいい偽装共生に過ぎないとなったなら、その目標項目も偽装となるのは当然だが、その文脈で解説すると、
「(1)成長するアジア全体で富を生み出し、
(2)それを経済連携や、また人的交流というものを通じて、日本の雇用やイノベーションにつなげる
。
(3)それをアジアのさらなる発展につなげるというような好循環をつくることが重要なんだと考えております。」云々は「アジア全体」でつくり出した「富」を「経済連携や、また人的交流というものを通じて、日本の雇用やイノベーションにつなげる」日本にとっての外需を主体とし、「それをアジアのさらなる発展につなげるというような好循環をつくること」を従とする、いわばアメリカや中国に引き続いてアジアに対しても日本を“外需”の位置に置く麻生の「アジア成長」戦略がホンネだということになる。
いわばそういったことを偽装した≪アジアの成長 ~ 「アジア経済倍増へ向けた成長構想」≫だということであり、これらの構図もアジアを下に置き、日本民族を優越的位置に置く麻生の日本民族優越主義の意識に裏打ちされて図らずも飛び出すとことなったホンネとしてあるアジア観・成長観であろう。
我が自民族優越主義者麻生太郎は≪アジアの成長 ~ 「アジア経済倍増へ向けた成長構想」≫を実現させるための具体的提案であるアジアの途上国政府財政支援のための最大3千億円(約30億ドル)の円借款や日本の食料生産力を向上させて食糧自給率を上げる政策さえ創造できない日本の政治家がアジアの食料生産力向上に手を貸すとは滑稽な矛盾そのものだが、カネを出すだけのことだからできるのだろう、各国の食料生産力向上のための5年間で1千億円(約10億ドル)の支援、そして1200人への研修実施等(「asahi.com」)を4月10日からタイ中部リゾート地パタヤで開催のASEANプラス3(日中韓)首脳会議、東アジアサミットで表明する予定でいたが、激しい反政府デモによってタイ政府は会議を全面中止、2、3カ月後に再開催と決定、その影響で麻生太郎が自らの晴れ舞台とすべく満を持していた構想表明の機会を失ったことはホンネはアジアを下に置いていることと併せて、何やら象徴的な晴れ舞台の消滅に見える。