麻生の3段ロケットは4段目(補正)を必要とする/自己政策否定ではないか

2009-04-09 15:02:58 | Weblog

 ごくごく当たり前のことを言うが、3段ロケットは3段ロケット用エンジンと一体化させて設計する。それを4段ロケットとした場合、一体性を欠いた屋上屋とならないだろうか――

 3月31日(09年)、我が麻生太郎は首相官邸で記者会見を開いて、「去る3月27日に、平成21年度予算と関連法案が成立いたしました。私は、予算の早期成立が最大の経済対策であると申し上げてまいりました。これで、景気対策の3段ロケットが完成したことになります」――

 このように高々と宣言した。

 続けて、3段ロケットのうちの1段目と2段目である「既に実施いたしております、平成20年度の第1次、第2次補正予算は、大きな成果を上げていると存じます」と、その性能の素晴らしさを誇っている。

 「大きな成果を上げている」――1、2段が「大きな成果を上げている」なら、当然3段目にしても1段目、2段目と同様に、いや本予算なのだから、1段目と2段に劣らない超ウルトラの「大きな成果を上げ」るはずである。3段ロケットとして一体的に設計したのだから、1段目、2段目は3段目の土台を成してこそ初めて一体化した3段ロケットとなるからだ。

 1、2段目が「大きな成果を上げ」ていながら、3段目が「大きな成果を上げ」ないとしたら、一体化させて設計した意味を完璧に失う。

 「100年に一度」の未曾有(「みぞゆう」)の不況を前にして、麻生太郎は2月22日にホテル青森開催の自民党県連の政経セミナーでも「大きな成果」を胸を張って確約している。

 「この大胆な対策を打つことによって、世界で最初にこの世界同時不況から抜け出る国が日本でなければならない。そう思って私どもは、改革をいたしましたのが、通常、3段ロケットと申し上げている、第1次の補正予算、これは11兆円のものを補正予算につくらさせていただいた。そして第2段階が、第2次の補正予算で27兆円になります。そして今、審議いただいております平成21年度の予算、これで37兆円。合計で75兆円になります経済対策を打ち出しております。予算と減税だけで国内総生産の約2%になりますが、この2%のGDP、2%の経済対策をうっている国、これは世界でほぼ最大の経済対策を打ち出したのが日本だと思っております。」云々――

 麻生3段ロケットとは何を隠そう、「世界でほぼ最大の経済対策を打ち出した」もので、そうであるゆえに「世界で最初にこの世界同時不況から抜け出る国が日本でなければならない」・・・・国民に向かって、ヒトラー張りにこのように大々的に宣言したのである。

 「経済の麻生」に任せて、安心して親船に乗っていなさいというわけである。派遣切りも正社員切りも内定取消しも企業倒産も株価下落も、貿易収縮もこれですべて解決します。

 「世界でほぼ最大の経済対策」とは、それ以上のものが「ほぼ」ないということを意味するはずで、そのように意味しなければならない。

 だからこそ、「世界で最初にこの世界同時不況から抜け出る国が日本でなければならない」と正面切って自信満々に断言できた。「経済の麻生」は「自信の麻生」でもあります。

 それ以上のものがありながら、「世界でほぼ最大の経済対策を打ち出した」と言ったとしたら、途端にウソつきとなる。

 ところが3月27日に09年度予算が成立したその舌の根が乾かぬうちの3月31日の上記記者会見の冒頭発言で、「しかし、なお日本は経済危機ともいえる状況にあろうと存じます。そのため、新しい経済対策を策定いたしたいと存じます。

 今やらなければならないことは、基本的に3つです。

 1つ、景気の底割れを防ぐこと。
 2つ、雇用を確保し、国民の痛みを和らげること。
 3つ、未来の成長力の強化につなげることです。」云々――

 このように「新しい経済対策」の策定を早くも計画し、さらに6日経過しに過ぎない4月6日に与謝野財務相に対して国内総生産(GDP、約500兆円)の2%を上回る規模の09年度補正予算案を編成するよう指示している(「asahi.com」)。

 同「asahi.com」記事は、この「09年度補正予算案」は10兆円超の国費が投入される見通しで、小渕内閣の98年度3次補正(7.6兆円)を上回り、過去最大となる規模だと書いている。

 第1次補正予算、第2次補正予算、そして09年度本予算を合わせて、その威力・完成度を3段ロケットだと国会でも記者会見でも、講演でも譬えて憚らなかったばかりか、「世界でほぼ最大の経済対策を打ち出した」とおおぴっらに公言もし、偉そうに高言もして自分からその効果・効力を保証しておきながら、その威力・完成度に反して、あるいは裏切って、「世界でほぼ最大の経済対策」に付け加えた「新しい経済対策」を「09年度補正予算案」として打ち出す。

 このことが意味することは「3段ロケット」が「世界でほぼ最大の経済対策」ではないということを麻生自身が白状したと言うことではないのか。

 当然、「世界でほぼ最大の経済対策を打ち出した」はウソ、ハッタリの類と化す。

 尤も元々麻生にはハッタリ癖があると見ていたから、ウソ・ハッタリの類であっても少しも驚かない。

 大体が民主党初め野党の緊急を要するはずだから、第2次補正予算は08年度内に出すべきだとの追及をかわして年内に出さなくで大丈夫だ、来年回しで十分だと言って押し通したのは内容と提出のタイミング共に自信を持っていたからだろう。何しろどこに出しても恥ずかしくはない「世界でほぼ最大の経済対策」=「3段ロケット」を当初から目論んでいて、2次補正はその2段目に当たる一つの要でもあるのだから、自信作でないはずはない。

 にも関わらず、「世界でほぼ最大の経済対策」の後に後付にも09年度09年度補正予算を打ち出す。3段ロケットの上にもう1段付け足して、4段ロケットとする。
4段ロケットとすること自体が、散々「3段ロケットだ、3段ロケットだ」と言ってきたことを裏切り、それをウソ・ハッタリとするマヤカシに当たる。

 それとも麻生ならではのマヤカシなのだろうか。

 08年度1次補正、2次補正、そして09年度本予算と3段ロケットは3段ロケットとして設計されたはずである。当然一体的構造を有していることになる。最初は1段ロケットの積りが、それでは距離が届かない、飛距離が短過ぎるからと2段ロケットに設計し直そう、いや2段ロケットでも少々力不足だ、3段ロケットにして強力なものにしようと継ぎ足して設計したわけではあるまい。

 継ぎ足し、継ぎ足しできたと言うなら、先を見通す目、先見の明を欠くことになる。

 建物で言うと、1階建てを建てた、家族が増えて狭くなったから、2階部分を増築して2階建てにしよう、いや、さらに増えたから、2階の上に3階部分を増築したというふうに上に伸ばしていった3階建てというわけではあるまい。

 「3段ロケット」として設計し、建造しながら、ここに来てさらに1段付け足して、4段ロケットとする。まさしく首尾一貫を欠くことになる。

 それとも最初からこれで大丈夫だと言える内容を詰める程に計画立てることができなかったと言うことなのだろうか

 計画性もなく場当たり的に政策を積み上げてきたから、「3段ロケットだ、3段ロケットだ」と言いながら、あるいは「世界でほぼ最大の経済対策を打ち出した」と口では言い、「世界で最初にこの世界同時不況から抜け出る国が日本でなければならない」と正面切って自信満々に断言したものの、「3段ロケットだけでは怪しいぞ、大丈夫かいな」となって4段目を必要としたといったところではないのか。何しろ「経済の麻生」がやることなのだから。

 それが小渕内閣の98年度3次補正(7.6兆円)を上回り、過去最大の「15兆円」(「NHK」)規模だというから、「世界でほぼ最大の経済対策」形無しにする、3段ロケットも真っ青の追加規模、4段目ということではないだろうか。

 「NHK」オンライン記事から、補正内容を見て切ると――

●ことし1月から2年間に限って、20歳以上の人が祖父母や親から贈与された財産を住宅の取得や増改
 築に充てた場合には、贈与税の課税の対象とならない額を年間500万円とする。

●新たに「子どもと家族応援手当」を創設して、3年以内に小学校に入学する子どもがいる家庭の養育費
 を、今年度に限り3万6000円補助する。

●乳がんと子宮けいがんの検診について、それぞれ年齢で対象者を絞り、今年度、1回無料で受けられる
 ようにすること

●医療費の自己負担が軽減される難病に新たに11の病気を加えること

 他に
●ワークシェアリング推進企業を対象に雇用調整助成金の拡充
●公立小中学校3万7000校への太陽光発電の設置
●環境対応車(エコカー)の購入促進に最大25万円を補助
●地デジ対応テレビの購入額の13%、最大3万9000円相当を「ポイント」で補助
●「緊急人材育成・就職支援基金(仮称)」による職業訓練など総合的支援
●派遣切り防止など派遣労働者保護の強化号――

 等々の政策を含んでいるようだが、「医療費の自己負担が軽減される難病に新たに11の病気を加えること」は景気対策として行う項目ではなく、国民の生命・財産を守る項目として常に進行形を取りながら従来的に行うべき政策であろう。

 保険の利かない高額な薬や医療を利用せざるを得ず、満足な治療を受けることができない患者の存在、彼らの保険適用を求める跡を絶たない声に満足に耳を傾けてこなかったことの裏返しではないだろうか。

 それを景気対策のために新たに補正予算に組むということは政治の怠慢を示すものでしかない。

 「ワークシェアリング推進企業を対象に雇用調整助成金の拡充」は「3段ロケット」が「100年に一度の不況」に手抜かりなく対処すべき政策である以上、「3段ロケット」に最初から遺漏なく含めるべき政策であって、これでは不足だからと後からの継ぎ足しではやはり全体を見通しす力を欠き、立案に甘さがあったことの証明そのものであって、麻生政治の怠慢をさらに示すことになる。

 「公立小中学校3万7000校への太陽光発電の設置」にしても、住宅用太陽光発電システムの設置に向けた国の補助金制度の2006年3月打ち切りから08年度の補正予算で復活、「2009年1月から条件付きで1kWpあたり7万円の補助金の開始」(「Wikipedia」までの空白が「太陽光発電量、日本3位転落」(「msn産経」)という状況を招き、遅まきながら景気対策でそれを埋め合わせようとする後付の政策でもある。

 これも政治の怠慢による政策判断ミスに位置づけなければならない。

 「msn産経」記事(≪日本は光を取り戻せるか 太陽光発電量、日本3位転落≫)は次のように伝えている。

 <民間国際団体の再生可能エネルギー政策ネットワーク21(REN21、本部ドイツ)が調査した。それによると、昨年末段階の太陽光発電の導入量の1位はドイツで540万キロワットを記録した。2位のスペインは230万キロワットとなり、日本は197万キロワットで3位となった。

 また、年間の新規導入量をみると、スペインがトップで大型原子力発電所1基分を上回る170万キロワットを記録し、2位がドイツ(150万キロワット)、3位は米国(30万キロワット)で日本は24万キロワットと4位となった。

 日本は05年に累積でドイツに世界一の座を明け渡している。今回の調査結果について、飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長は「政策の差が出た。スペインだけでなく、韓国やイタリアも日本と肩を並べるレベルにきているという調査結果もある」と指摘し、太陽光発電の導入拡大に向けた政策の重要性を指摘した。
ドイツは1991年に家庭などの太陽光設備で発電した電力を電力会社に買い取らせる制度を導入。すでにフランス、イタリアなど20カ国以上に広がっており、スペインは2008年に買い取り価格を引き上げたことが導入拡大につながった。米国でもカリフォルニア州など6州が導入済みで、他州も追随する姿勢だ。

 このため、経済産業省では、06年3月でいったん打ち切った家庭用太陽光発電設備に対する補助制度を今年1月に復活し、3月末までに申請は2万件を超えた。09年度は8万4000件の制度利用を見込んでいる。今年1~3月分と合わせると30万キロワットの太陽光発電導入が達成できる計算となる。また、10年度には欧州にならい、電力会社に対して家庭などにおける太陽光発電の買い取り義務を課す制度を導入する。>――

 「10年度には欧州にならい、電力会社に対して家庭などにおける太陽光発電の買い取り義務を課す制度を導入する。」――常に後手後手の後付を行っている。麻生を初め、日本の環境技術を世界をリードする技術だと誇るが、飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長が言うように「政策の差」で後手に回ることになる。「政策の差」とは政治の怠慢から生じる「差」であることは断るまでもない。

 「環境対応車(エコカー)の購入促進に最大25万円を補助」は「asahi.com」記事≪新車買い替え最大25万円補助 新経済対策に盛る方針≫2009年4月8日12時10分)によると(一部抜粋)――

 <経済産業省が新経済対策の一つとして検討している自動車買い替えの促進策が8日明らかになった。新車登録から13年以上経過した車を廃車にして、10年度燃費基準を満たした車を購入する場合、普通車で25万円、軽自動車で12.5万円を補助することを想定。同基準はほぼすべての新車が達成しており、4月からの省エネ自動車に対する税の減免措置より対象が大きく広がる。

 登録13年未満の車の買い替えや新規に車を買う場合も、省エネ自動車を買えば普通車で10万円、軽自動車で5万円を助成する方針だ。10年度燃費基準より15%以上燃費がいい車が対象だが、新車の4割程度が該当するという。

 トラックなど商用車についても同様に20万円から180万円を補助する。

 4月から始まった自動車重量税などの減免制度と合わせれば、200万円のハイブリッド車への買い替えの場合なら、購入者の負担は約40万円程度減ることになる。政府は今回の買い替え促進策で、9万人の雇用創出効果があるとみている。>――

 「新車登録から13年以上経過した車」に乗っている人間にとって、愛着があって乗っているケースを除いて、新車に買い換えるカネに余裕がないことからの「13年以上経過した車」だろうから、「普通車で25万円、軽自動車で12.5万円」は縁なき「補助」、役に立たない政策に過ぎないのではないのか。

 となると、「登録13年未満」どころか、登録数年「未満の車の買い替え」が主体となる金持優遇の側面は否定できない。

 「20歳以上の人が祖父母や親から贈与された財産を住宅の取得や増改築に充てた場合には、贈与税の課税の対象とならない額を年間500万円とする」にしても、例え住宅建設需要が生じてそこにいくばくかの雇用を生んだとしても、直接的利益を最も多く得る金持優遇の側面は否定できまい。

 職を失ったり、賃金カットなどで現在継続中の住宅ローンの支払いに難渋している中低所得層がどれ程いるか、考えたことがあるのだろうか。

 住宅ローン減税は、09年度予算で「減税額が一般住宅で最大500万円(耐久性の高い長期優良住宅は600万円)と過去最大規模に拡充され、08年(最大160万円)の3倍強に。対象は住宅やマンションを購入し今年1月1日以降に入居した人。一般住宅の場合、購入者は年末のローン残高(最大5000万円)の1%分の税額控除が10年間にわたって受けられる」(≪09年度予算:成立 住宅ローン減税過去最大/正社員化で企業に奨励金≫「毎日jp」/ 2009年3月28日)と言うことだが、「今年1月1日以降に入居した人」は昨年から始まった世界同時不況に影響しない生活者だからこそ住宅建設に取り掛かることができたことを考えると、住宅ローン支払い継続中の者を除いている点、「生前贈与」等を併せると、やはり金持優遇の面があることを消し去ることはできない。

 ここにきて金持優遇の面が色濃く躍り出た。1人頭12000円から2万円の定額給付金は中低所得者を前以て黙らせるアメ玉だったのだろか。
 
 いずれにしても「100年に1度」の世界同時不況からの脱出策として、「選挙よりも景気対策だ」と言って、万全を期して「3段ロケット」を飛ばした。

 万全を期さないとしたら、政治無能力を曝すことになる。多分、万全の上にも万全を期したからだろう、飛ばした「3段ロケット」の航跡の白雲がまだ空から消えないうちに4段目が必要だと騒ぎ出した。
それも従来的な政策であるべきはずなのに政治的怠慢から放置してきた、あるいは不完全なまま誤魔化してきた政策を景気対策として打ち出したり、あるいは麻生自身が大金持だから、金持の気持がよく理解できるのだろう、金持優遇の政策が大部占めている。

 こういったことだけを見ても、小渕内閣の98年度3次補正(7.6兆円)を上回る過去最大の15兆円「補正」は――こういう言い方をしなければならないこと自体が既に矛盾を示しているが、「3段ロケット」に付け加えた4段目は「3段ロケット」という自己政策否定であるばかりか、結果的に一体性を欠くことになる屋上屋に過ぎないと言える。

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