菅首相1月4日年頭記者会見を実現可能能力から判断する(1)

2011-01-05 10:35:31 | Weblog


  いくら美しい言葉を並べ立てて立派なことを言ったとしても、実現可能能力を備えていなければ、絵に描いたモチで終わる。実現可能能力は深くリーダーシップに関係していく

 昨1月4日(2011年)の菅首相の年頭記者会見を首相官邸HPから採録、思ったことを書いてみようと思う。菅内閣のキーワードなる単語は太字にしておいた。文字数の関係から、記者との質疑で何ら解釈を施さない箇所は削除することにした。

 菅内閣総理大臣年頭記者会見

 【菅総理冒頭発言】

 明けまして、おめでとうございます。今年が、皆さんにとってすばらしい年になることを、まず心から祈念をいたしたいと思います。

 年頭に当たって、私が目指す国の在り方について、3つの理念を申し上げます。

まず、平成23年を平成の開国元年としたい、最小不幸社会を目指す。そして、不条理を正す政治、この3点であります。今、世界の多くの国が日本に追いつけ追い越せと成長を続けています。そういう国々のリーダーと話をすると、自分たちは日本を目標にして、モデルにして頑張ってきたんだと口々に言われます。そうです。これまで多くの国に財政的な援助や技術的な援助をしてきた兄貴分が我が国日本だと言えます。私はこれからも、そうした国々の成長を支援する。同時にそれらの国々のエネルギーを逆に我が国のエネルギーとして、日本の成長につなげていくことが今、必要だと考えております。

 そのためには、貿易の自由化の促進。そして一方では、若者が参加をできる農業の再生。この2つをやり遂げなければなりません。平成23年を、そうしたヒト・モノ・カネばかりではなくて、明治維新や戦後に続く、日本人全体が世界に向かってはばたいていくという、そうした開国を進めていく元年としたい。そしてこの開国を進めるためには、貧困あるいは失業といった不幸になる要素を最小化することが何よりも必要です。社会保障について、今後の不安が広がっております。昨年の参議院選挙では、やや唐突に消費税に触れたために、十分な理解を得ることができませんでしたが、今、社会保障の在り方と、それに必要な財源を、消費税を含む税制改革を議論しなければならないという、そのことは誰の目にも明らかであります。幸いにして、自由民主党も公明党も、そうした姿勢を示されております。今がまさにそのときだと思います。しっかりした社会保障を確立していくために、財源問題を含めた超党派の議論を開始をしたい。野党の皆さんにも参加を呼びかけます。
 
 そして、アジア太平洋をめぐる安全保障についても、我が国のためだけではなく、この地域全体の安全・安定を考えた行動が必要です。日米同盟の深化は、そうしたアジア太平洋地域の安定のためにこそ必要だと、こういう観点で推し進めてまいります。
 
 このような開国を進めていくに当たって、もう一つ考えておかなければならないことがあります。それは、国民の皆さんがおかしいなと思っていることに対してしっかりと取り組んで行くことであります。
 
 私は、東京都に所在する硫黄島で多くの遺骨が残されていることを知ったときに、なぜこんなことになっているんだろうと不思議に思いました。総理になって、特命チームをつくって、アメリカの公文書館で調査をして、大きな埋葬地を見つけることができました。先日、私も出かけた追悼の式典を行いました。お遺骨を家族の元に返すことは国の責任です。

 また、若い人が学校を卒業しても仕事がない。子どもを産んでも預かる場所がない。あるいはいろいろな難病について十分な手当がなされていない。こういった問題についてもしっかりと取り組んでいきたい。私自身、特命チームをつくり取り組んでおりますが、これからもこうした不条理と思われる問題で、直接私が取り組むことがふさわしい問題については、しっかりと新たな特命チームをつくって進めてまいりたい、このように考えております。

 そして、もう一つ不条理ということに関して言えば、政治とカネの問題があります。私が初めて衆議院選挙に立候補したのは、ロッキード選挙と呼ばれたその選挙であります。政治とカネを何とかしなければ、日本の民主主義がおかしくなってしまうという思いから、30歳のときに初めて立候補いたしました。

 今、なお、政治とカネのことが国民の皆さんから不信の念を持って見られている。これでは、これから多くの改革を進める上で、国民の皆さんにも痛みを分かち合っていただくことがとてもできません。今年をそういった政治とカネの問題にけじめをしっかりつける年にしたい。小沢元代表にも、自らの問題について国会できちんと説明をしていただきたいと考えております。

 最後に、国会について申し上げます。私も野党の議員が長く、そのときどきの政府を厳しく批判してまいりました。そのことを通して、国民の皆さんに時の政権の政策の矛盾などを示していきたいと考えたからであります。

 しかし、今、振り返ってみますと、政局中心になり過ぎて、必ずしもそうした政策的な議論が十分でなかった場面も党としてあるいは私としてあったのかなと思っております。今、政権交代が繰り返される中で、ほとんどすべての党が与党、野党を経験いたしました。その国会が残念ながら必ずしも政策的な議論よりも、とにかく政局的に解散を求めるあるいは総辞職を求めるといったことに議論が集中しているのは、必ずしも国民の皆さんの期待に応えていることにはならないと思います。私たちも反省をします。同時に、与党、野党を超えて、国民の目から、皆さんの目から見て、国会がしっかりと国民のために政策を決定しているんだと、こういう姿を与野党を超えてつくり上げていきたい。野党の皆さんにもご協力をお願いします。

 その中で、特に2点について具体的にお願いしたいと思います。1つは、国会での質疑のその質問要旨を、質問をされるせめて24時間前には提示をいただきたいということであります。先の臨時国会で予算委員会などでは、前の日のその質疑を翌朝5時に起きて、そして、それを見て頭に入れるのが精一杯という時間の拘束がありました。これでは本当の意味での議論ができません。イギリスでは、3日前までに質問要旨を出すというのが慣例になっておりますけれども、せめて24時間前にそうした質問要旨を出すということを、与野党を超えての合意と是非していただきたいと思います。

 また、国際会議などが大変重要になっております。トップセールスという言い方も強くされております。そういう閣僚が海外に出ることについて、国益にかなうことであれば、与野党を超えて、国会の日程も工夫をして送り出す。このような慣例も是非、生み出していただきたい。

 そして、このことは国会自身の役割であると同時に、国民の皆さん、あるいはメディアの皆さんの目から見て、もっとそうした国会の在り方についてこうあるべきでだ。そのことを是非、第三者的な目からも積極的に発言をいただければと、このように考えております。

 以上、年頭に当たっての私の考え方を申し上げさせていただきました。あとは皆さん方からのご質問をいただきたいと思います。

 ご清聴ありがとうございました。


【質疑応答】

(内閣広報官)

 それでは、次の方、お願いします。それでは、山下さん、お願いします。

(記者)

 北海道新聞の山下です。

 民主党の小沢一郎元代表の国会招致問題についてお聞きします。小沢氏は、国会の状況次第で通常国会冒頭や予算成立後に政倫審に出席するという姿勢を示しておりますけれども、総理はあくまで無条件での通常国会前の出席を求める姿勢を貫かれるのでしょうか。小沢氏がこうした条件付きの出席の姿勢を崩さない場合は、どう対応するおつもりでしょうか。政倫審での議決や、さらには証人喚問なども想定されているんでしょうか。また、小沢氏が強制起訴となった場合、民主党代表として総理が小沢氏の離党勧告もしくは除名を言い渡すことも考えられているのでしょうか。お聞かせください。

(菅総理)

 小沢元代表は、自ら国会で説明するということを言われているわけですから、その言葉どおりの行動を取っていただきたいと思います。また、起訴が実際に行われたときには、やはり政治家としての出処進退を明らかにして、裁判に専念されるのであればそうされるべきだと考えています。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。それでは、松浦さん、お願いします。

(記者)

 共同通信の松浦です。

 ねじれ国会で予算関連法案がどうにも通らないという状況になった場合は、衆議院解散総選挙というのも選択肢に入ってくるのでしょうか。

(菅総理)

 私の念頭には、解散のかの字もありません。

(内閣広報官)

 それでは、次に外国プレスの方。廣川さん、お願いします。

(記者)

 ブルームバーグの廣川と申します。

 TTPの問題についてお聞きします。この問題は、総理の掲げる平成の開国に対する本気度をはかる試金石とも思える問題かと思いますけれども、仙谷官房長官は農業改革の基本方針がまとまる6月前後に交渉参加の是非を判断するのが望ましいという考えを示されています。総理はこの問題、交渉参加の是非をいつごろまでに判断しようと考えていらっしゃるのか。また、大きな影響を受ける農家の方々の理解を得るために、どう説明し、どう対策を打っていくお考えなのか。こちらを教えてください。

(菅総理)

 現在、TPPに参加する場合に必要となる農業対策の具体策を検討している状況であります。そういう議論を踏まえながら、最終的な判断を6月頃というのが一つの目途だと思います。できるだけ早い時期にそうした状況が生まれればいいと考えております。

(内閣広報官)

 それでは、次の方、お願いします。それでは、山口さん、お願いします。

(記者)

 NHKの山口です。

 総理は先の臨時国会で、熟慮の国会ということで話し合いを求めていかれましたけれども、今回の通常国会も引き続きそういう姿勢で臨むのかどうかということと、それから自民党は対決姿勢を強めていまして、冒頭から審議拒否も辞さずということなんですが、そうなった場合には対決型になっていくのか。その辺のところをお聞かせください。

(菅総理)

 基本的には先ほど冒頭も申し上げましたように、国会という場がある程度、政党ですから政権を争うという側面があっても、それは致し方ないところでありますけれども、やはり先進国で政権交代を繰り返されているところの国を見ると、例えばイギリスなどでは新たに政権交代が行われれば、次の選挙は大体5年先ということで、議論は行われるけれども、すぐに辞めろとか辞めるなという議論はあまり行われておりません。多くの国がある一定期間は政権交代が行われれば、そちらの党が政権を担うと。何年かやってみて、次の選挙の機会にそのことを国民に問うと。これが政権交代の建設的な運営の仕方ではないかとこのように思っております。そういう意味で、基本的にはしっかりと政策を議論していきたいという姿勢は、変わりありません。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。五十嵐さん、どうぞ。

(記者)

 読売新聞の五十嵐です。

 総理は先ほど、小沢元代表の問題について、起訴された場合は、政治家としての出処進退を明らかにして裁判に専念されるのであれば、そうされるべきだとおっしゃいましたけれども、これは議員を辞職すべきだというお考えを示したということでよろしいんでしょうか。

 それと、不条理を正すということであれば総理は取組むというふうにおっしゃいましたけれども、小沢さんの問題について、総理はどういう働きをされたいと思っていらっしゃるのでしょうか。

(菅総理)

 私が初めて当選した1980年当時、田中元首相が闇将軍と呼ばれておりました。やはり、そういう姿を見て、私は日本の政治を変えなければならないという思いを一層強くしたことを今でも記憶いたしております。

 そういった意味で、どなたが何をということを超えて、もうこういった問題は、日本の政治の社会で、カネの問題が何か議論をしなければならないという状態そのものを脱却したいというのが私の思いです。そういった意味で、小沢元代表に関して起訴がなされたときには、ご本人が自らそうしたことも考えられて、自らの出処進退を決められることが望ましいということを申し上げたところです。

 (内閣広報官)

 それでは、次の方。上杉さん、どうぞ。

(記者)

フリーランスの上杉隆です。

  開国元年という言葉は、非常にいいなと心に響きましたが、総理は野党時代から、情報公開、そして今、クリーンでオープンということで訴えていますが、是非そこで伺いたいのが、情報公開の観点から、官房機密費の公開、さらには官房長官会見の創設、そしてこの記者会見のフェアなオープン化ということをお約束されましたが、これを守っていただく時期がそろそろ来たのではないかと思います。

 先ほど小沢さんに、言ったことは守っていただきたいと総理自らおっしゃいましたが、総理御自身、この件に関してやるかやらないか、この場でお聞かせいただけますでしょうか。

(菅総理)

 会見の在り方について、何度かこの場でご質問といいますか、提案をいただきまして、私もできるだけオープン化すべきだという姿勢で、私自身の会見は臨んでおります。また、閣議あるいは閣僚懇の席でも、各閣僚にできるだけそういう姿勢で臨むようにということを申し上げているところです。

 官房機密費の問題は、いろいろな経緯、いろいろな判断がありますので、官房長官と十分考え方を合わせて対応していきたいと思っております。

(内閣広報官)

 それでは、次の方お願いします。後藤さん、どうぞ。

(記者)

 時事通信の後藤です。2011年度の予算案についてお伺いします。

 年末の段階で、仙谷官房長官と岡田幹事長は、修正の可能性に言及されました。それについては、総理もお考えを共有されているのでしょうか。

(菅総理)

 予算をつくった立場からすれば、最も国民の皆さんにとってふさわしい予算ということで、閣議決定をしたわけです。と同時に、国会の場で多くの政党の皆さんにも理解をいただき、できればより多くの皆さんに賛成をいただきたいというのも、もう一つの大きな要素であります。そういうことを、両方のことを考えながら、対応を決めていきたいと思っています。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。坂尻さん、どうぞ。

(記者)

 朝日新聞の坂尻といいます。野党との連携についてお伺いします。

 昨年の末に、たちあがれ日本との連立話というのが浮上しましたが、これはたちあがれ側が連立は拒否するということを確認して終わっています。今回は、この件をもって、なかなか野党との連携は端緒をつかむのは難しいと思われますが、総理としては、連立ということはもう断念して、政策ごとの部分連合という道を目指されるのか、あるいはなお引き続き連係できる野党と連立政権を組むという道を目指されるのか、どちらを目指されるお考えなんでしょうか。お聞かせください。

(菅総理)

 昨年のいろいろな動きも、政策的に一緒にやっていけないかということの話を基本として進めてきたと理解しています。その姿勢は、どの党に対してもこの国会でも変わりません。

(内閣広報官)

 それでは、次の方。青山さん、どうぞ。

(記者)

 日本テレビの青山です。

 先ほど内閣改造について、総理は具体的なことはこれからさらに熟慮したいとおっしゃいましたけれども、実際、具体的に仙谷官房長官の問責決議というのは既に可決しているわけです。ただ、問責決議はこのままの状態だとこの通常国会でも何本も出てきて何本も可決する可能性だって勿論あるわけです。現段階でそれこそ本予算を審議する通常国会を前にして、問責決議に対するどのような菅政権としてスタンスで臨んでいくのかというのは非常に大事な観点かと思うんですが、現在の菅総理のお考えをお聞かせください。

(菅総理)

 いろいろな識者の皆さんからいろいろな考え方を私に参考になるのではないかということで示していただいているケースもあります。1つの例を申し上げますと、衆議院ではいわゆる内閣不信任案というものがあって、それが可決すれば総辞職をするか、それとも一方では衆議院を解散することができるという規定は勿論皆さんご存じのとおりであります。しかし、参議院の問責については、例えばそれが内閣に対するものが成立したとしても、総辞職をするか解散をするという形にはなっておりません。つまり、参議院に対しての解散ということは憲法上規定されておりません。

 ということは、もし参議院が問責をしたときに、それが即辞任をしなければならないということになるとすれば、それは衆議院よりもより大きな権限を持つことになるのではないか。これは今の憲法の構造からして、必ずしもそういうことを今の憲法は予定していないのではないかという、こういう意見もいただいております。いずれにしても、こういったいろいろな意見をやはり党の方あるいは国会の方で議論していただく場面もあっていいのではないかと思っております。

 菅首相1月4日年頭記者会見を実現可能能力から判断する(2)》に続く

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首相1月4日年頭記者会見を実現可能能力から判断する(2)

2011-01-05 10:21:17 | Weblog



(内閣広報官)

 それでは、次の方、どうぞ。一番奥の方、そちらの方。

(記者)

 専門誌の酪農経済通信の斎藤と申します。

 先ほど総理は開国という言葉をお使いになられましたが、開国と農業の再生の両立を図るという観点でいえば、今後、国内対策と国民負担等も含めて多額の財政措置も必要になるという考えも出てくるかもしれないんですが、そうした点も今後推進本部や実現会議で議論になりまして、先ほど6月に予定されているという話もありましたが、基本方針の策定の中で税制改正等も含めて議論になっていくということで考えてよろしいのでしょうか。

(菅総理)

 日本の農業を再生するという目標に向かって、あらゆるそれに関わることを議論する必要があると思っています。と同時に、先ほど申し上げましたが、現在、日本の農業が抱えている問題は、例えば就業している人の平均年齢が66歳という若い人が農業に従事したくてもなかなかする機会を持ちにくい、そういった問題もあります。

 また同時に、6次産業化と言われるような経営の在り方についても、もっと推し進めなければなりません。そういった意味で、いろいろな財政的な問題も勿論、議論としてあるいは必要となる場面はあり得ますけれども、ただそれで物事が進むというよりも、根本的な農業の構造をどのようにすれば世界に開かれたものになっていくのか。私、本当に感じるのは、多くの外国の人がやってきて、日本の料理ほどおいしいものはないと。日本の食べ物ほど安心しておいしいものはないということを口々に言われます。そういう意味では、農業も開かれた農業にしていくことが、私は可能だと考えています。

(内閣広報官)

 それでは、時間が過ぎておりますので、最後の質問とさせていただきます。そちらの方、どうぞ。

(記者)

 琉球新報の稲福といいます。

 先ほど総理は不条理を取り除きたいという話をされていましたが、沖縄に米軍基地が集中することも不条理なことだと思います。これは5月の日米合意どおり辺野古に移設されたとしても、沖縄に集中するという状況は変わりません。総理はこのことについて不条理だと考えますでしょうか。

 あと1点、日本全体で受け止め、できる限りの負担軽減をという話もありましたが、もう少し具体的にどのようなことに取り組めば負担軽減になるのか、総理の考えをお聞かせください。

(菅総理)

 私も多少ではありますけれども、沖縄の歴史などに触れた書物も拝見をさせていただきました。戦後に限って見ても、日本へ復帰された後においても本土における、つまり沖縄以外の米軍基地が大きく削減された中で、沖縄の基地が余り減らされなかったというこのことは、私にとっても政治家の一員として大変慙愧に堪えない思いをいたしておりまして、そのことは沖縄でも申し上げたところです。そういう意味で不条理という言葉で言い尽くせるかどうかわかりませんが、その1つだと考えております。

 そういう思いをしっかり私自身持ちながら、それでは具体的にどのようにしていくかということで、先だって沖縄で私なりの考え方を申し上げさせていただきました。何としても全体としては沖縄の基地負担を引き下げる方向で、できることをできるだけ迅速に進めていきたいというのが基本的な姿勢です。

(内閣広報官)

 それでは、これをもちまして記者会見を終了いたします。ご協力大変ありがとうございました。


 先ず最初に貿易の自由化の促進=平成の開国と若者が参加をできる農業の再生について。

 菅首相は質疑で、「日本の農業を再生するという目標に向かって、あらゆるそれに関わることを議論する必要があると思っています」と言い、「根本的な農業の構造をどのようにすれば世界に開かれたものになっていくのか」と議論の必要性を説き、今後の議論次第の課題だと位置づけている。

 だが、必要だとしている議論を経ずに、平成の開国を謳い、貿易の自由化と農業再生の両立は可能だと言っている。これは順序が逆ではないだろうか。広く議論を求め、議論を積み重ねて、両立は可能だとする成算、成功する見通しを得てから、初めて国民に向けて貿易の自由化と農業再生の両立を謳うべきではなかったろうか。

 議論を経ずに両立は可能だと言い立てるのは不利益を蒙るとしている農業従事者の不安を煽るだけである。実際にもTPP参加反対のデモが起きている。地方選挙の投票行動にも悪影響を与えているに違いない。

 菅首相は消費税問題でも順序を逆とする過ちを犯し、貿易の自由化と農業再生の問題でその轍を踏んでいる。増税率の不可避性を議論してから国民にその不可避性と何パーセントの必要性を丁寧に説明すべきを、議論も経ずにいきなり自民党の10%を参考にすると打ち出した。

 いわば実現可能性を見極めてから態度を決定すべきを見極めもせずに実現可能性を言い立てるという過ちを繰返している。実現可能能力(=実現を可能とする能力)を欠いていることからの愚かしい過ちの繰返しであろう。実現可能能力は指導力、リーダーシップに深く関わっていく。

 また、「開国を進めるためには、貧困あるいは失業といった不幸になる要素を最小化することが何よりも必要です」と言って、不幸要素最小化を開国(=貿易自由化)の前提としているが、これも逆の発想となっている。開国(=貿易自由化)が不幸要素最小化につながる、いわば開国(=貿易自由化)が不幸要素最小化の大きな導因となると位置づけた政策でなければならないはずで、そういった前提のもと、その具体的な実現可能性の説明を国民に果たさなければならないはずだ。
 
 開国(=貿易自由化)が不幸要素最小化の大きな導因となって、ゆくゆくは日本経済の力強い回復と継続的な発展を約束すると。

 だが、そういう発想となっていないこと自体にも菅首相の実現可能能力の疑いが出てくる。

 菅首相は特命チームをつくって硫黄島で遺骨収集したことを自身の大きな手柄としている。そして、「不条理と思われる問題で、直接私が取り組むことがふさわしい問題については、しっかりと新たな特命チームをつくって進めてまいりたい」と力強く約束している。

 しかし、誰が取り組むのが「ふさわしい」かは問題ではない。政治が解決しなけければならない課題であるなら、時の政府が取り組むべき問題であり、誰が取り組んでもいいことなのだから、それを「私が取り組むことがふさわしい問題」に限って特命チームをつくるとするのは自己宣伝以外の何ものでもないばかりか、問題の矮小化となる。

 硫黄島で遺骨を集めて追悼の式典を行っている。戦前の国家が最早戦争を継続する力を残していないと分かっていながら、国家のメンツを守るためにずるずると戦争を続けて兵士の生命(いのち)を犬死同然に扱った。その国家に戦後の時代に連なる一人として亡くなった兵士の家族に済まなさと哀悼をいくら表現しても表現しきれないはずであるにも関わらず、「お遺骨を家族の元に返すことは国の責任です」と、遺骨に「お」をつけてまでして「お遺骨」と敬虔な気持を表すなら、「家族」に「ご」をつけて「ご家族の元に」とバランスを取るべきを「家族」に対しては敬虔な気持を払わずじまいとしている。

 このアンバランスは「お遺骨」の「お」が形式的な敬語、丁寧語の類だからだろう。この形式的な態度は遺骨に対して軍手をはねたまま手を合わせている姿に現れている。

 要するに支持率獲得を狙って首相の姿をマスメディアに露出させるための遺骨収集であり、特命チームをつくって云々の手柄話だったのだろう。 

 このような形式をエサに国民の人気を取ろうとする首相に指導力、リーダーシップは期待できようがなく、当然、実現可能能力など求めようがない。
 
 この記者会見で菅首相は何度も「不条理」という言葉を口にしている。いわば自身を「不条理」を正す人間に位置づけている。そして国民にアピールできるほどの政策・指導力を持ち合わせていないインスタントな存在であるためにマスコミが取り上げることを狙ってウリにしている「政治とカネ」の問題を不条理の一つとして取り上げ、「政治とカネを何とかしなければ、日本の民主主義がおかしくなってしまうという思いから、30歳のときに初めて立候補いたしました」と言い、「小沢元代表にも、自らの問題について国会できちんと説明をしていただきたいと考えております」と付け加えている。

 一見立派なことを言っているように聞こえるが、「政治とカネ」の「カネ」を政治家個人の私的なカネとのみ把え、認識能力を欠いているためにイコール予算と把えるだけの発想を持っていない。

 先進国で唯一最悪状態にある日本の財政悪化、巨額の赤字国債、国の借金は必要でもない公共事業やその他の事業に過大な予算(=カネ)をムダに付け、それを以て地元利害誘導としてきた日本の政治の伝統が原因となった予算(=カネ)の問題であって、首相の立場にある以上、そのことをこそ最優先にケジメをつけなければならない「政治とカネ(=予算)」の問題であるはずである。

 内閣を率いる責任者としてそのことを何よりも率先して取り組まなければならない問題だと国民に訴え、解決に向けて実現可能能力を力の限り発揮していくべきだが、そのことに向ける熱意よりも近々に強制裁判でクロシロが明確に決着がつく小沢問題に裁判に任せることができずに熱意を注いでいる。

 意味もない指導力、リーダーシップとなることは目に見えている。このような首相にどのような言葉を発したとしても、実現可能能力を見出すことはできない。

 小沢氏が起訴された場合は自らの「出処進退を明らかにして、裁判に専念されるのであればそうされるべきだと考えています」と言っているが、出処進退とは辞めることだけを言うのではなく、とどまることをも言う。自身で決めるということなら、議員としてとどまることも許される選択肢であろう。

 無能な政治家を首相にとどめておく出処進退よりも小沢氏を議員としてとどめておく出処進退の選択の方が日本の国益に適う出処進退と言える。

 菅首相は「不条理」を口にしながら、自身の「不条理」には気づいていない。自らを省みる自省心を欠いているゆえの自分の「不条理」を棚に上げた他人の「不条理」のみの取り上げなのだろう。自省心を欠いた政治家に指導力、リーダーシップの類は期待できない。当然、実現可能能力も備えていないことになる。

 菅首相はねじれ国会乗り切りのために次のように訴えている。

 「最後に、国会について申し上げます。私も野党の議員が長く、そのときどきの政府を厳しく批判してまいりました。そのことを通して、国民の皆さんに時の政権の政策の矛盾などを示していきたいと考えたからであります。

 しかし、今、振り返ってみますと、政局中心になり過ぎて、必ずしもそうした政策的な議論が十分でなかった場面も党としてあるいは私としてあったのかなと思っております。今、政権交代が繰り返される中で、ほとんどすべての党が与党、野党を経験いたしました。その国会が残念ながら必ずしも政策的な議論よりも、とにかく政局的に解散を求めるあるいは総辞職を求めるといったことに議論が集中しているのは、必ずしも国民の皆さんの期待に応えていることにはならないと思います。私たちも反省をします。同時に、与党、野党を超えて、国民の目から、皆さんの目から見て、国会がしっかりと国民のために政策を決定しているんだと、こういう姿を与野党を超えてつくり上げていきたい。野党の皆さんにもご協力をお願いします」

 自身が有利な場面で散々に反則を犯しておきながら、有利な場面が相手に移り、それを利用して反則に出ると、反則はやめよう、フェアに戦おうと提案するようなご都合主義しか窺うことができない。

 元々ご都合主義者の菅首相なのだから、無理もない当然のご都合主義とも言える。

 「時の政権の政策の矛盾」の批判・追及は野党たる自党の政策の優越性の裏打ち、前提があっての批判でなければならない。それを政策の優越性からではなく、数の優越性を振り回した「政局中心」の動きだった。だからこの期に及んでマニフェストに掲げた政策の変更を余儀なくされているということなのだろう。

 だが、自分たちが「政局中心」の動きをしておきながら、逆に数の劣勢に立たされてそれをやめようと言うのは一方的な自己都合の主張となる。自分たちがそうであったなら、相手も同じ手に出ることを覚悟すべきだろう。例え同じ手に出たとしても、それを乗り切る方法を講じるべきで、それが正々堂々であって、そうはせずに休戦協定を求めるのは狡いばかりか、卑怯である。

 菅首相は「政局中心になり過ぎて、政策的な議論が十分でなかった」と言っているが、実際には子ども手当にしろ、高速道路無料化にしろ、提示された政策を自民党なら自民党内で議論し、賛否を決定した態度で与党との間でそれぞれの政策のあるべき姿を議論し合っているのである。尖閣問題でも、メドベージェフロシア大統領の国後島訪問に端を発した北方四島問題でも、外交のあるべき姿の議論を闘わせているのである。

 そして多くの国民は菅内閣の態度よりも野党の態度に支持を与えた。

 その延長上に野党は「政局的に解散を求める、あるいは総辞職を求める」動きに出ているのであって、政策や外交のあるべき姿の議論が全然なくしてそのような動きに出ているわけではない。そのような動きなくして、さも「政局中心」で求めているかのように言うのは、「仮免許」発言と同じく自身のあるべき姿を認識する力を持たない、参院ねじれ国会で自分に不利というだけの理由で、それを乗り切るために自分に都合のいいだけの解釈によって成り立たせた主張に過ぎない。総辞職も解散もしたくない自身にとっては虫のいい要求に過ぎない。

 菅首相が盛んに唱える「熟慮の国会」も同次元の虫のいい提案であろう。  

 虫のいい話は「質問要旨」に関する提案にも現れている。

 「国会での質疑のその質問要旨を、質問をされるせめて24時間前には提示をいただきたいということであります。先の臨時国会で予算委員会などでは、前の日のその質疑を翌朝5時に起きて、そして、それを見て頭に入れるのが精一杯という時間の拘束がありました。これでは本当の意味での議論ができません。イギリスでは、3日前までに質問要旨を出すというのが慣例になっておりますけれども、せめて24時間前にそうした質問要旨を出すということを、与野党を超えての合意と是非していただきたいと思います。」

 日常普段から政策勉強に励むか、現代の便利な利器パソコンがある。各政策ごとに分類した情報収集に励み、それをノート化して日常普段から目を通し、頭に入れていたなら、答弁に左程窮することはないはずである。窮するのは日常普段の勉強と情報収集に怠りがあるからだろう。

 情報収集の怠りを証明する発言がある。

 菅首相「首相官邸は情報過疎地帯だ。役所で取りまとめたものしか上がってこない。とにかく、皆さんの情報や意見を遠慮なく私のところに寄せてほしい」(YOMIURI ONLINE

 政府関係者「菅首相に事前の説明をしていると、何度も怒鳴られる。官僚は怒鳴り散らされるから、だんだん寄りつかなくなる」(毎日jp

 自身の情報収集能力の欠如を証明して有り余る出来事となっている。

 ここから窺えることは国会答弁を野党議員が提出する質問要旨に頼っている菅首相の姿である。普段収集し、自ら読み解いた情報と質問要旨とを付き合わせる姿は浮かんでこない。質問要旨を受け取ってから、周囲に指示して答弁に必要な情報を収集しているのではないだろうか。当然の指導力、リーダーシップとなる。当然の実現可能能力ということになる。

 最後に菅首相自身の「不条理」を棚に上げた姿。

 稲福琉球新報記者「先ほど総理は不条理を取り除きたいという話をされていましたが、沖縄に米軍基地が集中することも不条理なことだと思います。これは5月の日米合意どおり辺野古に移設されたとしても、沖縄に集中するという状況は変わりません。総理はこのことについて不条理だと考えますでしょうか。

 あと1点、日本全体で受け止め、できる限りの負担軽減をという話もありましたが、もう少し具体的にどのようなことに取り組めば負担軽減になるのか、総理の考えをお聞かせください」

 菅首相「私も多少ではありますけれども、沖縄の歴史などに触れた書物も拝見をさせていただきました。戦後に限って見ても、日本へ復帰された後においても本土における、つまり沖縄以外の米軍基地が大きく削減された中で、沖縄の基地が余り減らされなかったというこのことは、私にとっても政治家の一員として大変慙愧に堪えない思いをいたしておりまして、そのことは沖縄でも申し上げたところです。そういう意味で不条理という言葉で言い尽くせるかどうかわかりませんが、その1つだと考えております。

 そういう思いをしっかり私自身持ちながら、それでは具体的にどのようにしていくかということで、先だって沖縄で私なりの考え方を申し上げさせていただきました。何としても全体としては沖縄の基地負担を引き下げる方向で、できることをできるだけ迅速に進めていきたいというのが基本的な姿勢です」

 米軍基地が沖縄に集中していることは不条理の「1つだと考えております」と言っている。だが、その不条理解消を集中している基地そのものの沖縄からの県外・国外への移動によってではなく、そのことは棚に上げて基地集中の状況は変えずに、訓練の一部移転等の危険の除去、基地負担の軽減を以ってして代える「不条理」を平気で主張している。

 だが、何よりも菅首相が犯している「不条理」は野党時代と現在とは異なる言行不一致であろう。

 2001年7月21日。7月29日投開票の参議院選の応援で沖縄を訪れて記者会見したときの沖縄県の米軍基地問題についての発言。毎日新聞(2001年7月22日付)より引用だという。

 菅首相「海兵隊はいろんな軍事情勢、極東情勢を勘案してみて、沖縄に存在しなくても日本の安全保障に大きな支障はない。(海兵隊は)アメリカ領域内に戻ってもらうことを外交的に提起すべきだ」

 『マスコミ市民』2006年7月号より引用(2006年6月1日の講演)

 菅首相「よく、あそこから海兵隊がいなくなると抑止力が落ちるという人がいますが、海兵隊は守る部隊ではありません。地球の裏側まで飛んでいって、攻める部隊なのです。たしかに来たら戦うかも知れませんが、そのための部隊では全くありません。そういう意味で海兵隊は、ラムズフェルドの言うように、良い悪いは別にして、先制攻撃的な体制を考えた時には、沖縄にいようがグアムにいようが大差はないわけです。私は、沖縄の負担軽減ということで言えば、海兵隊全部をグアムでも、あるいはハワイ州では是非来てくれといっていたのですから、そっちに戻っていって貰えばいいと思っています。

 沖縄に海兵隊がいるかいないかは、日本にとっての抑止力とあまり関係がないことなのです」

 以上、菅首相の沖縄 - 病んだ日本を救うために、間違った常識を捨てよう からの引用。

 野党時代とは違って、立場と責任の違いと東アジアの状況の変化を口実に現在と過去の言動不一致を何ら恥じることなく許す「不条理」は凄い。ご都合主義者の面目躍如と言ったところだろう。

 自身の「不条理」は棚に上げて、不条理を正すとしている。虫のいいご都合主義ではないか。こんな政治家が一国の首相を務めていて、「私の念頭には、解散のかの字もありません」と言っている。

 こんな人間から実現可能能力を想像できる者が一人としているだろうか。一人としていまい。


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