菅首相は消費税増税議論と言ったなら、誤解を生むアンフェアな質問だと言っているが、事実なのか

2011-01-15 07:43:53 | Weblog

 菅首相が菅第2次改造内閣発足を受けた記者会見を昨14日(2010年1月)の夕方6時から首相官邸で行った。NHKテレビが大相撲中継終了と共に記者会見の中継に入ったから、そのまま視聴したものの、両院議員総会や民主党大会挨拶で言っていたこととたいして変わりはないと見ていたところ、実際にほぼ同じことの繰返しであった。

 両院議員総会や民主党大会の発言自体が以前言っていたことの繰返しだから、常に新鮮味を感じない発言となる。

 ほんの僅かの違いは与謝野入閣を持続可能な社会保障制度の議論を国民的な議論に高めたいとからだとその理由を話していたが、国民的な議論に高めたいは前々から言っていたことで、果してそれができるかどうかは今後の推移をお手並み拝見とばかりに眺めるしかない。

 ただ言えることは、昨年の参院選前の消費税発言で参院選大敗北という大失敗をやらかした羹に懲りて膾を吹く反動からだろう、消費税問題を与謝野に丸投げしたとも受け止めることができないわけではない。いわば万が一の国民の批判が自身に直接届かないための緩衝材用の抜擢ではないかと言うことである。

 野党時代、「沖縄に米海兵隊はいらない、米本土に帰ってもらう」と言っていながら、それを果たす努力を放棄したことや、「政権が発足してからの半年間は、仮免許の期間」といった発言、「これまでは発信力不足だった」等々の発言から窺うことができる菅首相の責任回避性格からすると、どうしても緩衝材用の任命ではないかとの解釈となってしまう。

 但し菅首相と与謝野馨とは消費税増税に向けた意志は一致している。

 一つ奇異に感じたのは記者の消費税増税時期の質問に対して、強く非難する口調で、誤解を生む質問で、フェアではないと厳しく反論したことだった。

 その前に一昨日13日(2010年1月)の民主党大会で言っていた、今回の改造内閣は問責決議とは関係ないとの発言をこの記者会見でも記者の質問を受けて同じ理屈を繰返しているが、昨日のブログ記事の中で取り上げる予定が抜け落ちてしまったので、多くが同じ受け止め方をしているものの、改めて触れてみる。

 1月13日の党大会での挨拶。

 菅首相(改造内閣の目的について)「一部に言われているように問責が出されたからだとかではありません。今申し上げたような日本の改革を推し進めるために、そのためにどういう体制を作るのが最も強力な体制になるかの一点で、新たな体制を作って参りたいと考えています。内閣の改造に加えそれに伴う党人事の変更も行いたいと思いますので、ぜひとも新たな体制については私、代表にご一任をお願いしたい」

 昨1月14日の首相記者会見。

 記者「北海道新聞の山下です。

 総理は昨日の民主党大会で、今回の内閣改造は問責を出されたからではないとおっしゃいました。昨年9月に改造したばかりの有言実行内閣をたった4か月で変えるのは非常にわかりにくいと思います。問責がなくても仙谷官房長官を枝野さんに交代させるつもりだったのでしょうか。また、これまで法的根拠の問題というのがありましたけれども、今回の人事が、閣僚が問責されれば辞任するという慣例を作ることにつながらないでしょうか。」

 菅首相「先ほど申し上げましたように、この内閣の改造と党の体制は、これは大会でも申し上げましたが、民主党の危機を超えるためではなくて、日本の危機を超えるためという観点から行ったもの、あるいは行おうとしているものであります。その理由については、今、申し上げたように、今、日本が抱えている危機の大きな課題を超える上で、例えば与謝野さんの参加といったものも必要だと考えたわけであります。

 同時に党の方のいろいろな活動も更に大きくしていかなければなりません。例えばシンクタンク、あるいはいろいろな『新しい公共』と呼ばれるようなNPOグループとの連携。そうしたことは内閣だけではなかなかできません。こういう活動に大きく幅を広げていく上で、仙谷さんは大変有能な力を持っておられると思っております。そういった意味で、全体のことを考えた中で、日本の危機を超えていく上で、最強の体制をつくる。そういう考えで推し進めたものであります。

 また、何か一部のグループでやったのではないかという趣旨のことを言われますが、それは全く当たりません。9月の代表選挙で私が党員サポーター、全地方議員、全国会議員に申し上げたわけです。クリーンでオープンな政治をやりたい。そして、私がその皆さんによって代表に選ばれたわけです。ですから、その公約を実現することに協力をしていただける方であれば、それはだれでも全員参加でやりましょう。例えばオバマ大統領が誕生すれば、オバマ大統領の公約を実現する上で協力する人が集まっていくのは当然であります。そういった意味で、私の代表選の公約あるいはそうした考え方を中心にして、党がまとまって、この日本の危機に飛び込んでいく。そういう立場でこの改造や党人事についての強化を行う、あるいは行おうといたしております」

 党大会挨拶では直接的な言い回しで問責改造内閣ではないと否定しているが、記者会見では直接的な言い回しでの否定の形は取らずに、「民主党の危機を超えるためではなくて、日本の危機を超えるためという観点から」の改造内閣だと党大会挨拶と同様に体裁のいいことを言っている。

 なぜ体裁のいいことなのかと言うと、民主党の危機を乗り越えずに日本の危機を乗り超えることは不可能だからだ。日本の危機の克服には時間がかかる。その間に民主党政権がポシャッたなら、当然日本の危機克服の担当者から外れることになる。

 例えば苦戦が予想されている春の統一地方選挙で全国的に敗北したなら、菅首相の責任問題が浮上する。例えどうにかこうにか首をつなげることに成功したとしても、求心力の低下を極端に招くことになって、ただでさえない指導力を全く失うこととなり、日本の危機の克服どころではなくなる。

 維持できるのは菅首相の口先だけの強がりのみであろう。いわば日本の危機の克服は政権担当政党である民主党の危機克服を前提としていると言うことである。足許を固めずに何ができると言うのだろう。体裁のいいことを言うだけでは何も克服できないことになる。

 菅首相は西岡参議院議長と会談したりして仙谷続投をあれこれ模索した。だが、逆に西岡参議院議長から引導を渡されて、交代に踏み切った。問責改造内閣以外の何ものでもない。例え問責決議を受けたら閣僚辞任という慣例をつくることになったとしても、「問責を受けて交代させる機会を把えてより強力な内閣をつくろうとしたのです」と正直に答えたなら、国民から受ける印象もよくなるに違いない。なぜなら、菅首相がどう言い繕おうとも、誰の目にも問責をキッカケとした改造内閣なのは明らかだからだ。それを問責が理由ではないと言えば言う程、嘲笑われることになる。こういったことに気づかないほど、菅首相は合理的判断能力を欠いている。

 春の統一地方選挙に備えてだろう、6種類のポスターを1月28日から全国一斉に張り出すそうだ。《民主、菅首相抜きの新ポスター 重点政策テーマに6種》(47NEWS/2011/01/13 13:49 【共同通信】)

 地方分権、社会保障、子育て支援、雇用・成長戦略、農業、税金の無駄遣い一掃等の政策テーマを掲げ、2011年度予算への反映や事業仕分けなどの実績を訴える内容のポスターだそうだが、記事題名にもあるように菅首相の顔写真抜きとなっているという。

 民主党政治を主導するリーダーの顔が写っていないポスターとは菅首相の不人気を先取りした措置だろうが、党大会挨拶や記者会見での発言の強気とは裏腹の弱腰(柳腰?)な姿勢は何とも情けない。一国のリーダーがすべきことだろうか。

 党大会挨拶では、「私はこの政権交代は大きな意味で民主党が進めてきたことは間違っていなかったという自信を持って申し上げることができます」と堂々の宣言を行っている。ここには言っていることとやっていることの矛盾がる。

 では、消費税増税時期を尋ねた問題の箇所を見てみる。

 記者「産経新聞の阿比留と申しますが、今回の改造で与謝野さんが経済財政担当相に入りまして、藤井さんが官房副長官になられました。消費税率上げに向けた布陣が敷かれたとも言えると思います。

 ただ、民主党は平成21年の衆院選マニフェストで、行政の無駄遣い削減や、埋蔵金活用で16.8兆円の財源が生み出せると言いました。そして、それを信じて多くの有権者が政権交代を選んだ経緯もあります。総理も昨年7月の参院選前に、消費税率を上げる時期は、次の総選挙で国民の了解があった段階だと明言されております。

 民主党は、今回、マニフェストの見直しを表明しましたけれども、そうであるならば、ここは衆院解散でもう一度信を問うのが筋ではないでしょうか」

 菅首相「ただいまの質問について、私は非常に誤解を生むような質問だと申し上げざるを得ません。私たちが申し上げているのは、今の社会保障制度がこのまま維持できるのか、あるいは更に充実することができるのか、そのことをしっかりと議論しよう、そのときに合わせて当然ながら維持していくための財源の在り方、現在のままで十分なのかどうなのかということを議論しようとしているんです。それを、何か消費税引上げのための議論、そういうふうに決めつけて、すり替えて質問されるのは、私はフェアではないと思っております。

 先だっての記者会見のときにも申し上げたように、例えば現在の消費税を国税分については、高齢者の医療・介護・年金に振り向けるという、そうした税制の基本的考え方が平成11年に決まっておりますけれども、平成11年においては、約7兆円が消費税の国税分でありました。国の歳入分でありました。必要な費用は約8兆5,000億程度でありました。ですから、確かに高齢者の医療・介護・年金について、消費税の国税分でほぼ賄えてきたわけですが、平成22年においては、収入は7兆円が変わらないのに対して17兆円の支出を既にしているわけです。では、その差額の10兆円はどうしているかと言えば、それは実質的には赤字国債で、借金で埋めているわけであります。

 こういう状態が持続可能なのかという議論を社会保障の議論としてしっかりしよう。そういうふうに申し上げているときに、社会保障の社の字も言わないで、何か消費税の議論をしようとしているように言われるのは、私は大きく国民の皆さんに間違ったメッセージを与えると思いますので、あえてこのことを申し上げ、お答えとさせていただきます。

 菅首相はこの記者会見の冒頭発言で次のように述べている。

 菅首相「特に1月4日の記者会見で私は、平成の開国を行わなければならない、また、最小不幸社会を目指したい、不条理な政治を正していきたい、この3つの理念を申し上げました。そしてこれを更に具体的に申し上げれば、今、大きな課題としてあるのは、これから安心できる社会保障制度、これは制度の在り方と同時に持続可能なその財源をいかにしていくのか。この議論が必要であります」…

 持続可能な社会保障構築に向けた財源確保の議論とは消費税増税を主として行う財源確保に狙いをつけた議論であろう。いわば消費税増税を前提とした社会保障の持続可能性の確保である。

 それとも持続可能な社会保障の担保に消費税以外の財源が存在するというのだろうか。あるなら、菅首相のことだから、得意になって言いふらすだろう。ないから、言えない。ないということなら、消費税増税を前提としてのみ成り立たたせ可能な社会保障議論となる。

 とすると、持続可能な社会保障の議論とは消費税増税の議論そのものだと言っても過言ではない。持続可能な社会保障の議論と言うことで、選挙や支持率への悪影響を考えて、消費税増税に煙幕を張っているに過ぎない。

 菅首相は2010年参院選マニフェスト発表記者会見で次のように言っている。

 菅首相「強い財政、強い社会保障をつくる、こういう道筋に持っていくために、消費税について、これまでも議論を長くタブー視する傾向が、政治の社会でありましたが、ここでは思い切ってですね、このマニフェスト、今申し上げたような形で、書かせていただいたところであります」…

 ここではっきりと消費税増税議論は「強い財政、強い社会保障をつくる、こういう道筋に持っていくため」だと、その目的を明言しているのである。その上で政権与党のリーダーでありながら、政策をリードするのではなく、増税率を野党「自民党の10%を参考にする」とその数字の根拠を示しもせずに安易に相乗りした姿勢が批判を受け、菅首相が愚かしくも「天の配剤」だと言っている参院選大敗を招き寄せた。

 菅首相が自ら言っていたようにまさしく持続可能な社会保障の議論とは消費税増税の議論以外の何ものでもない。このことは社会保障議論と消費税議論とは一体を成していると言うこともできる。消費税増税の前提なくして、持続可能な社会保障は存在しない。

 大体が記者の質問に答えて言った「平成11年においては、約7兆円が消費税の国税分で」で、「必要な費用は約8兆5,000億程度」、それが「平成22年においては、収入は7兆円が変わらないのに対して17兆円の支出」云々自体が既に社会保障と消費税を一体とさせた発言となっている。

 自身が一体の発言をしていながら、「何か消費税引上げのための議論、そういうふうに決めつけて、すり替えて質問されるのは、私はフェアではないと思っております」などと言うのは、「すり替え」でも何でもなく、悪質・不当な言いがかりとなる。

 また、「社会保障の社の字も言わないで、何か消費税の議論をしようとしているように言われるのは、私は大きく国民の皆さんに間違ったメッセージを与える」にしても、社会保障議論と消費税議論が一体である以上、例え「社会保障の社の字も言わな」くても、消費税増税議論を指しているのであって、決して「大きく国民の皆さんに間違ったメッセージを与える」と言うことにはならない。

 逆に「持続可能な社会保障」議論の名の元、消費税増税議論をカモフラージュすることの方が本質的には国民に対する「間違ったメッセージを与え」、菅首相の方こそが誤解を生む、フェアでない態度を取っていると言える。 
 
 菅首相は昨年9月の代表選前に当選1回生新人議員と意見交換会を行い、8月24日午前の2回目の19人との会合で次のように自身をアピールしている。

 菅首相「今までの古い体制や官僚の省益を優先する仕組みを壊す力が、自分にとって一番強いメッセージだ」

 菅首相「おかしいところをおかしいと思って立ち向かう姿勢と、物事を作り替える上で必要になる壊すことに対しては、自分は相当力を持っている」

 持続可能な社会保障議論にしても、この議論と一体をなす消費税増税議論にしても、従来の社会保障制度、従来の消費税を「壊」して、新たに「物事を作り替える」作業であり、そういったことに対して「自分は相当力を持っている」と言った。

 これが口先だけの言葉でないなら、消費税増税による財源確保が持続可能な社会保障に必要だと、具体的内容と共に国民に説明して事に当たるべきだろう。

 だが、他の数々の発言同様に口先だけの言葉となっている。

 言っていることとやることがこうまでも違う首相は珍しいだけで片付けることはできない。2010年参院選マニフェスト発表記者会見でギリシャの危機まで持ち出して 強い財政と強い社会保障をつくるには消費税議論が必要だと言っていながら、消費税発言が原因となって参院選を大敗すると、それ以降そのことに触れずに先延ばしする態度のブレを見せたように、何かの障害が生じた場合、再び態度のブレを見せない保証はない。特に指導力なし、責任回避意識の強い菅首相に限って言うと、その危険性が高い。

 大根首相の大根政治を見せつけられること程、国民にとっての悲劇はない。大根首相は早々に舞台から退場して貰うに限る。

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