党首討論 菅首相は問題意識を欠いている

2011-02-10 11:53:52 | Weblog



 昨2月9日午後、菅首相に対する谷垣自民党総裁と公明党山口代表の党首討論が「国家基本政策委員会合同審査会」で行われた。NHKの中継を聞きいて感じた印象は、菅首相が落ち着いた声で発言する箇所もあったが、全体的にいきり立った様子が目立った。総理大臣である立場上、野党党首に対して受けて立つといった余裕を見せるべきを、見せずじまいで終わった。

 余裕のなさは政権運営面の余裕のなさの反映としてある状況であろう。だが、この余裕のなさは菅首相自身の指導力が導き出した政権運営に於ける停滞によってもたらされたものと言える。

 党首討論の発言は「MSN産経」記事に頼った。「衆議院インターネット審議中継」のHPからダウンロードした動画から文字に起さなければならないのかなと億劫に思いつつ、機会あるごとに首相の所信表明や主だった記者会見の発言を記事化して「詳報」として伝えている「MSN産経」に今朝アクセスしてみると、記事となっている。面倒が省けたと感謝、感謝である。

 「詳報」の最初の記事にだけリンクをつけておくが、菅首相と山口公明党代表の党首討論の詳報も記事となっているから、まだご存知がなくて、興味のある方は順次アクセスしてみてください。

 《党首討論詳報】 (1)菅首相「国造りの理念を谷垣氏からも聞きたい」(9日午後)》MSN産経/2011.2.9 16:33) 
 
 両者の発言の要所要所を取上げて、自分が感じた感想を述べてみたいと思う。谷垣自民党総裁が取上げたテーマは菅首相が4月に纏めるとしている「社会保障の改革案」、6月に纏めるとしている「税制の抜本改革案」、この二つを纏めた「社会保障と税の一体改革」についてが1点、そして衆議院任期の折り返し点である9月に行うとしている「マニフェストの見直し」1点。さらに「解散」と小沢氏の「政治とカネの問題」の併せた4点であった。

 谷垣総裁は4月の「社会保障の改革案」と6月の「税制の抜本改革案」の「社会保障と税の一体改革」、それに続く9月の「マニフェストの見直し」の菅首相のこのスケジュールに対して、「順序が逆ではないか」と批判している。

 谷垣総裁「私ね、順序が逆なんじゃないかと思うんです。なぜかと言いますと、これは後ほどもう少し詳しく申し上げますが、マニフェストが破綻している。このことがね、いろんなことの背後にある問題です。ですから、この処理を後回しにしようというのはね、私は順序が違うんだと思います」

 マニフェストの全面的見直しということになったら、解散・総選挙して新しいマニフェストを基準に国民に信を問い直さなければならない。そこを狙っての谷垣発言なのは後で分かってくる。

 勿論、菅首相は否定する。一刻も早く「社会保障と税の一体改革」を進めるべきだと主張して止まない。

 菅首相「順序が逆というのは、私にはまったく理解できません」

 菅首相「団塊世代の前後にとって、社会保障の将来は、不安感を持っておられます。・・・子供の世代の若い皆さんは、果たして自分たちのときに、今のような社会保障の給付が受けられるのかという、不信感を多く持っておられます」
  
 そして、「我々がやらなければならないことは、しっかりとした案を作って、そして実行に移すこと」だと。

 菅首相は何度も「社会保障のあるべき姿」と言っている。それを4月までに纏めると。だが、何を以て「あるべき姿」と言っているのか全然見えてこない。単に「あるべき姿」、「あるべき姿」と言っているに過ぎないように見えるのみである。

 勿論、菅首相は4月に纏めた時点で「あるべき姿」は見える、そのときそれが実行可能性を備えたものかどうか、社会に定着して国民生活に寄与する実効性ある内容となっているかどうか議論して貰いたいと言うだろう。事実次のように発言している。

 菅首相「4月までに社会保障のあるべき姿についてしっかりと議論をして、その姿をお示しします。税については、その社会保障のあるべき姿について、そのことを実行していくためには、どれだけの財源が必要で、そして、それにはどのような形を取ることが可能か、そういうことについて併せた案をお示しをいたしますから。お示しを、6月にお示しをいたしますから。それが出たときには、協議に乗られるのかどうかについても、ぜひお答えをいただきたいと思います」

 だとしても、「あるべき姿」の模型図となるものが頭に入っているはずである。基本的な骨子といったものがなければ、その上にどのような具体像も描くことができないはずだが、その基本的な骨子さえ示さずに「あるべき姿」、「あるべき姿」と盛んに言う。

 どういった骨組みで「社会保障のあるべき姿」を構築するのかの具体的な説明があって初めて国民は信頼感を持ってその構築過程と結末を注意深く見守ることができるはずであるが、その説明がない上に世論調査が示しているように指導力を備えていると思えない首相と多くの国民は把えているから、信頼が持てず、雲を掴むような気持にさせられるだけなのではないだろうか。

 当然、「社会保障のあるべき姿」の具体的な骨子に問題意識を置かなければならないことになる。

 菅首相はここで「子ども手当そのものは、これは無駄の削減による財源で行うというのがマニフェストでありますけれども、子育てという問題については、この、広い意味の福祉にも入っております」と発言しているが、これはマニフェストでは子供手当の財源はムダの削減から充当ということになっているが、消費税増税分を財源とするとの宣言であろう。

 国民が、特に生活困窮者が最も不安視しているのは消費増税であろう。社会保障改革が消費税増税と一体となるのは誰もが知っているはずである。それをマニフェストに違反してまで当初予定していなかった子ども手当の財源に消費税を充てようとしている。

 しかし菅首相にはマニフェスト違反だとの認識はないようである。谷垣総裁はが、参院選前に菅首相が自民党の消費税増税案の10%という税率を参考にすると言いながら、参院選で敗北すると「コロッと引っ込められてしまった」、「本気でこれをおやりになる気があるのかどうか」と本気度が疑われる例としてあげると、菅首相は例の如くの発言で答えている。

 菅首相「私が申し上げたのは、消費税について、それを参考にして与野党で協議をしようということを申し上げたつもりでしたが、私の言い方が、やや唐突であったために、すぐにでも消費税を引き上げるという風に誤解を招いたことを、これは私の責任も含めて、そのことを感じましたので、参議院選挙で厳しい結果をいただいた中で、もう一度、党として、党として、この問題についてしっかりと協議をしてもらいたい。こういう風に申し上げて、そして、この間のいろいろな党内の議論も踏み固めたうえで、改めて今回、今回、この社会保障のですね、考え方を、昨年の暮れには一つの5原則の社会保障の考え方をまとめ、そして、この4月にそうしたものを踏まえて、多くの党や団体の意見もきちっとお聞きしたうえで、あるべき姿を提示しようと。このことを申し上げ、併せて6月には、税との一体改革案をお示しします」――

 「すぐにでも消費税を引き上げるという風に誤解を招いた」とマスコミ報道を批判しているが、党内議論を経ない消費税発言であった不用意さ、与党でありながら、主体的にリードする姿勢を取るのとは正反対の野党の増税率を参考とした他力本願的な姿勢、例え自民党の10%を参考にするとしても、なぜ10%なのか、なぜ民主党も自民党と同じ10%なのかの具体的な説明責任を何ら果たさなかった安易な態度も批判の対象となったはずだが、冷静に自省心を働かせて自身の問題でもあると反省せずにマスコミのみの責任に帰し、自分は間違っていない、自分は正しいとする身勝手さは相変わらずである。

 昨年の暮れに纏めたと言っている「5原則の社会保障の考え方」とは次のような内容のものである。

 安心と活力への社会保障ビジョン

 社会保障改革の3つの理念と5つの原則

 参加保障 国民の社会参加を保障し、社会的な包摂を強めることを目指す

 普遍主義 すべての国民を対象  国、自治体、NPO等の多様な主体が協力

 安心に基づく活力 社会保障と経済成長の好循環を目指す
  雇用と消費の拡大
  国民の能力開発
  相互信頼の増大など

 5原則

①切れ目なく全世代を対象とした社会保障・・・主に高齢世代を給付対象とする社会保障から全世代対応型の保障への転換
②未来への投資としての社会保障・・・子ども・子育て支援等を中心に、未来への投資としての性格を強める
③地方自治体が担う支援型のサービス給付とその分権的・多元的な供給体制(現物給付)
・社会的包摂のため、支援型サービス給付の役割を重視。自治体がNPO等とも連携しつつ、住民の声に耳を傾けてサービスを提供
④縦割りの制度を越えた、国民一人ひとりの事情に即しての包括的な支援
・縦割りの制度を越えて、ワンストップサービス、パーソナルサポートを提供
⑤次世代に負担を先送りしない、安定的財源に基づく社会保障
・現在の世代が享受する給付費の多くを後代負担につけ回ししている現状を直視し、給付に必要な費用を安定的に確保

 これは理念・方針を述べたもので、「社会保障のあるべき姿」の具体的姿を述べたものではない。

 谷垣総裁は消費税について自公政権が成立させた平成21年度の税制改正法の附則104条が「平成23年度中に消費税を含む税制抜本改革案を国会に出さなければならないと義務付けている」ことから、6月に税制の抜本改革案をまとめて平成23年度中に国会を通した場合、24年度からの実施となることから、任期中は消費税は増税しないと規定したマニフェスト違反に当たる、「マニフェスト違反をですね、私ね、野党も一緒に協議して片棒を担げと、菅さんが仰っていることはこういうことなんですね。私はね、そういう八百長相撲、一緒にカド番だから立ってくれみたいな話はね、これは私は乗れません。国民との約束違反を手伝えというのは筋違いだと思います」と、マニフェスト違反の片棒は担げないから、協議には応じることができないと拒否した上で、「まずは、消費税率を引き上げるという新しいマニフェストをお作りになって、そして国民の声をお聞きになることが必要じゃないかと思いますよ」と最初からそう仕向けるべく目論んでいた解散を求め、選挙に勝った方が負けた方の協力を得て消費税を含めた一体改革を進めるべきではないかと提案する。

 菅首相の方は今解散して総選挙を行えば勝てる自信がないことが第一番の理由なのだろうが、勝てる自信があったら、これが民意だを示すためにも早々に解散・総選挙に打って出ていたろう、あるべき社会保障の姿の提示が先だ、あるべき社会保障の実現にどういった税制改革が必要か、「そういう議論もしないまま、『まず解散だ』というのは、国民の利益よりも党の利益を優先されている提案だとしか思えませんが、いかがですか」と解散・総選挙を否定している。

 谷垣総裁ははここでも与野党の「議論」を拒絶する。「マニフェスト違反の共犯にアンタなってくれ。冗談じゃありません。私のお答えはそういうことであります」

 菅首相は対して消費税増税は決してマニフェスト違反ではないと反論に出る。

 菅首相「実はですね。2009年のマニフェストに。2009年のマニフェストに加えて、2010年の参院の時にもこのマニフェストを提案を致しました。2010年のマニフェストにおいては、ここにちゃんと書いてあります。つまり、早期に結論を得ることを目指して、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始しますということを書いて、それで皆さんにも提案を致したわけであります。現在のスタンスは消費税に関しては、まずは消費税から始めるのではなくて、社会保障のあるべき姿を皆さんにお示しし、それに必要な財源の中には当然消費税のことも含まれますので、そういうものを含めて協議を致しましょうというのは、すでに参議院の選挙の時の私のマニフェストにきちんと申し上げていることでありまして、そのことが国民に対する何かごまかしだということは、全く当たりませんので、そこだけは明確に申し上げておきます」

 確かに2010年参院選マニフェストには「早期に結論を得ることをめざして、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」と書いてある。だが、菅首相が「2009年のマニフェストに加えて、2010年の参院の時にもこのマニフェストを提案を致しました」言っているように2009年衆院選マニフェストには「消費税」なる言葉は――

 「税、自動車取得税の暫定税率は廃止して、2.5 兆円の減税を実施する。

 将来的には、ガソリン税、軽油引取税は「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化、自動車重量税は自動車税と一本化、自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止する。」のみが文中に含まれているだけである。

 但し、《民主党政策集INDEX2009》には消費税に関する次のような記述がある。
  
 消費税改革の推進

 消費税に対する国民の信頼を得るために、その税収を決して財政赤字の穴埋めには使わないということを約束した上で、国民に確実に還元することになる社会保障以外に充てないことを法律上も会計上も明確にします。
 具体的には、現行の税率5%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当します。将来的には、すべての国民に対して一定程度の年金を保障する「最低保障年金」や国民皆保険を担保する「医療費」など、最低限のセーフティネットを確実に提供するための財源とします。

 税率については、社会保障目的税化やその使途である基礎的社会保障制度の抜本的な改革が検討の前提となります。その上で、引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化します。

 インボイス制度(仕入税額控除の際に税額を明示した請求書等の保存を求める制度)を早急に導入することにより、消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにします。

 逆進性対策のため、将来的には「給付付き消費税額控除」を導入します。これは、家計調査などの客観的な統計に基づき、年間の基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を一律に税額控除し、控除しきれない部分については給付をするものです。これにより消費税の公平性を維持し、かつ税率をできるだけ低く抑えながら、最低限の生活にかかる消費税については実質的に免除することができるようになります。

 いわば、2010年参院選マニフェスト自体が2009年衆院選マニフェストの違反となっている。

 2009年衆院選マニフェストは消費税に関してはあくまでも「現行の税率5%を維持」を前提としている。だが、将来の増税必要性を見据えて、「税率については、社会保障目的税化やその使途である基礎的社会保障制度の抜本的な改革が検討の前提」として許すとしていて、「その上で、引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化します」という手続きを踏むとしている。

 当然、平成21年度の税制改正法の附則104条に縛られて平成23年度中に消費税を含む税制抜本改革案を国会に出して国会を通過、成立した場合、平成25年衆議院任期に至らないうちの平成24年から消費税を増税することとなって、「現行の税率5%を維持」を破ることになる。

 勿論、平成21年度の税制改正法の附則104条を改正すればクリアできるが、参院がねじれている点からして、衆院3分の2確保が保証されなければクリアはできない。

 逆に2009年衆院選マニフェストを厳格に守るなら、平成25年度に法案を提出、4年の任期切れ後の平成26年からの施行に持っていかなければならないことになる。

 菅首相は「社会保障のあるべき姿」を言うのみで、基本的な骨子さえ示していないと批判した。だが、《民主党政策集INDEX2009》 「消費税改革の推進」の最後の文言、〈逆進性対策のため、将来的には「給付付き消費税額控除」を導入します。これは、家計調査などの客観的な統計に基づき、年間の基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を一律に税額控除し、控除しきれない部分については給付をするものです。これにより消費税の公平性を維持し、かつ税率をできるだけ低く抑えながら、最低限の生活にかかる消費税については実質的に免除することができるようになります。〉は社会保障改革が消費税増税と一体となっている以上、あるいは税制改革が消費税増税を避けて通ることができない以上、重要な骨子となる提案であろう。

 これをより具体化して、提示することによって低所得層程強く抱いているはずの、菅首相が言っている「不信感・不安感」の払拭に役に立ち、逆に信頼感・安心感の与える助けとなるはずである。

 消費税増税に対する世論調査で賛否が40%半ば前後でほぼ割れるのは、増税賛成は現在言われている5%の増税でも生活を十分にやっていけると踏んでいる安心所得層と看做すことができるし、増税反対は5%増税では生活に不安が生じるか、あるいはやっていけないのではないかという恐れを抱える不安所得層の生活者と見ることができるから、不安所得層を対象とした増税による生活圧迫を解消するセーフティネットこそが安心社会の構築に必要不可欠となるはずである。

 だが、「社会保障のあるべき姿」を言うのみで、このような配慮を示した情報発信が全然ない。

 谷垣総裁「明らかに衆院の時のマニフェストはですね、消費税はやらないというのが大前提だった」こと、ムダ削減で公約の財源を浮かすとしていたことが「無駄排除でできたのはこの2年間で2・6兆円。2年間で12・6兆(の必要財源としていたことから比べて)、大きな乖(かい)離(り)があるじゃないですか。とても行き着けませんよ。それから2番目。そうやって無駄を探して、財源を見つけても結局バラマキのために使ってしまうから、ぜんぜん財政体質の改善につながらない。だから国債の格付けも落ちるんですよ。それからもう一つの最大の問題点。毎年社会保障1兆増えますね。マニフェストをひっくり返してみても、どうやってこの1兆円増に対応していくかっていうのは何も書いていないですよ。だから、財政がこのままにしておけばですよ、この菅さんたちのマニフェストは『財政破壊のマニフェスト』ですよ。だからこれから見直せと言っておるんですよね」
 
 マニフェスト違反を楯に間接的に解散を求めている。

 菅首相は「バラマキではないんです。このマニフェストは従来の政権でできなかった新たな政策を掲げた」と、これまでも同じことを言っている、マニフェストの中には進んでいる政策もあると言って、進んでいるとする政策をいくつか挙げ、政策の選択の違いに過ぎないのだから、「もっといい政策が何かということをお示しされるべきであって、12月の皆さんの基本方針には、自分たちとしての予算案をお示しすると書いてありますが、残念ながらその後、お示し頂いたという記憶はありません」と、かつて与党の自公が野党の民主党に言っていたようなことを言っている。

 最後に「政治とカネの問題」を取上げるが、「企業と団体献金についても法案をまとめている」とか、「小沢元代表に私も『もう一度話をしたい』ということを申し入れいる」、「近々、こういった問題についてもきちっと話し合って、方向性を定めていきたいと、このように考えていることをしっかりとこの場で申し上げておきます」とその指導力から言ったら当てにもならないことを言って、時間切れとなる。

 いきり立つばかりで、「最小不幸社会」と言う割には、あるいは「不条理を正す政治」と言う割には消費税増税に不安を抱える生活者層(私もその一人だが)に対する思いやりも何もない、問題意識をどこに置くべきかを欠いた、情報発信力不足の菅首相の発言の数々であった。

コメント (1)
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