菅首相が中国との関係修復の意見交換会をいくら開催しようとも自身の覚悟が問題

2011-02-05 11:05:07 | Weblog



 菅首相が冷え込んでいる日中関係改善検討を目的に明日の2月6日(2011年)、中国問題をテーマに有識者との意見交換会の開催を決めたと、昨日の《中国問題 意見交換会を開催へ》NHK/2011年2月4日 16時3分)が伝えていた。

 その中国問題とは、〈去年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件以来、冷え込んでいる日中関係を改善に向かわせたいねらいがあるものとみられ〉ると解説している。

 記事はさらに、〈総理大臣が特定の国をテーマとする意見交換会を設置するのは、異例のこと〉と書いている。

 異例であろうと一般例であろうと、何らかの異常な突発事態が発生して良好な関係が壊れたときにどう対処するかは、直接的にはそもそもの出発点に於ける首相自身の覚悟、あるいはどう解釈し、どう行動するかの毅然とした危機管理にかかっているのだから、そのような覚悟の問題とせずに意見交換会を開いて関係改善方法を教えられ、その教えが役に立ったとしても、あくまでも一旦壊れた場合の関係修復方法に過ぎないのだから、両国関係を壊すような予想外の再度の突発事態の対処方法とはならないことになる。

 要するに毅然とした態度を持って常に事に臨む覚悟がリーダーには必要不可欠の資質であり、そのような資質を持って事に当たって関係が壊れたとしても、計算の内に入っている覚悟の事態とすることができ、自ずから何らかの関係修復の道を見い出す覚悟にしても前以て備えていて、その覚悟に従って関係修復の次の段階を予定行動として自ら進んで行動していくというプロセスを取るはずであり、そうすることが政治家が取るべき覚悟という精神性の全体像とすることもできるはずである。

 関係を壊さないことが自身が決めた覚悟の行動であるなら、自ずから主体的行動(自分の意志・判断によって自ら責任を持って行動する態度)の形を取るから、例えそこに妥協が絡んだとしても主体性を伴った、その範囲内の行動として自己を卑屈にすることもなく、どのような結果に対しても計算に入れた覚悟の行動として対処できる。

 だが、関係が壊れることを恐れて突発事態に対応した場合、一国のリーダーとしてのどのような覚悟も発動されることはなく、尖閣問題で菅内閣が中国に対して見せてきたように覚悟という精神性とは正反対の相手国の意を迎える従属性、あるいは自らを下の位置に立たせる下位性を伴わせた妥協の形を取り、いたずらに自身の態度を相手の態度に応じさせることとなって、相手国の国益に貢献しこそすれ、自国国益の損失を絡めない保証はなくなる。

 いわば問題は毅然とした態度を持って常に事に臨む覚悟を備えたリーダーであるかどうかであろう。そうでなければ、突発的且つ深刻な軋轢が生じた場合の外国との関係交渉に於いてリーダーに主体的な覚悟を持って対処することが期待できず、従属的妥協を強いられるか関係を壊すかして関係修復のための意見交換会を次ぎの段階として常に用意しなければならないプロセスを踏まなければならないことになる。

 記事は詭弁家の枝野官房長官の発言を伝えている。

 枝野「日中関係をどう認識し、どういう方向に進めていくのかということを、日本の内閣として、民間の方も含めて、幅広い知見に基づいてしっかり考えていこうということだ」

 問題の本質を抜きに何をどう進めようとも、子供が借金しては親がその後始末にまわるような同じ後付けを繰返すことになるだろう。

 意見交換会のメンバーは、〈前の日本経団連会長の御手洗冨士夫キャノン会長や、成田豊電通名誉相談役、それに作家の石川好氏ら7人が参加する予定〉だとしているが、民間の有識者を加えることはあっても、本来なら首相を筆頭に関係閣僚や関係省庁の幹部クラスが主体となって処理しなければならない問題であるはずだが、そうせずにわざわざ民間の有識者を主体とした意見交換会を開催するということは、そもそもの出発点としなければならないリーダーの覚悟という本質的な問題を抜きにしていることからも、菅首相がこういうことをしていますと情報発信することが目的に見えてくる。

 こういった意見交換会をいくら重ねたとしても、重ねることでどのようなアドバイスを受けたとしても、本人の本質的な資質としなければならないリーダーの覚悟はそれが本質的な資質であるゆえにどう変えようもないためにどのようなアドバイスも突発事態発生時には何の役に立たないだろう。

 最近菅首相の一国のリーダーとしての覚悟のなさを今回が初めてではない、改めて伝えていた記事にお目にかかった。《菅首相「尖閣」主張せず 衝突事件後初の日中首脳会談で》MSN産経/2011.2.2 01:30)

 記事は伝えている。〈菅直人首相が昨年10月、ブリュッセルでのアジア欧州会議(ASEM)の際に行った温家宝首相の「廊下懇談」で、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件について「温首相は日本の立場をご存じでしょうから今日は言いません」と語り、一切言及しなかったことが分かった。1日までに複数の政府筋が明らかにした。〉

 懇談後の菅首相の同行記者団に向けた発言。

 菅首相「温首相から原則的な話があり、私も尖閣諸島はわが国固有の領土であり、領土の問題は存在しないという原則的なことを申し上げた」

 外務省のホームページも菅首相の記者団に対する発言に対応させたのだろう、〈「温家宝首相は尖閣諸島についての原則的な立場を述べた。菅首相は尖閣諸島はわが国固有の領土であり、領土問題は存在しないとの原則的立場を述べた」と、首相の説明に沿った内容を掲載している。〉と書いている。

 記事はこの発言を、〈虚偽の説明をしていた。〉と断定している。また当時も虚偽の疑いをかけられて、菅首相が記者団に話したように恩首相に伝えたのかどうか問題となり、国会でも激しい追及を受けた。
 
 さらに中国人船長逮捕の報復としてフジタ社員4人逮捕のうち3人釈放、1人拘束の状況下にありながら、会談で菅首相が温家宝首相に釈放を求めたかどうかが問題とされた。

 記事は、〈当時、中国河北省で準大手ゼネコン「フジタ」の日本人社員1人が拘束されていたが、首相は懇談でこの問題にも触れず、社員の早期解放を求めなかったという。〉と、国民の生命・財産を守る立場にある首相が求めなかった説に立っている。

 このことに関しての記事解説は、〈9月20日に中国河北省で拘束されたフジタの現地法人社員4人のうち、懇談が行われた時点で1人が解放されていなかった。首相周辺が懇談直前、早期解放を温首相に求めるよう首相に伝えたが、首相は「それはできない」と断り、話題にしなかったという。〉と、意図的沈黙だったこととしている。

 また、菅首相が尖閣諸島問題に言及しない意向を示したのに対し温首相も同調、「中国固有の領土」とする立場を主張しなかったと記事は解説しているが、にも関わらず中国国営新華社通信が〈温首相は釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土であると主張したと報じた〉のは、〈「日中双方が会談内容の公表範囲をすりあわせた結果だ」〉とする日本政府関係者の発言を伝えて、双方の国民向けの取り繕いだとしている。

 この記事から窺うことができる菅首相の外交姿勢は逃げの姿勢であり、いかなる種類の覚悟も見ることはできない。

 この記事が早速次ぎの日の予算委員会で追及の対象となった。《首相「固有の領土と言った」日中首脳懇談の尖閣虚偽説明で強調》MSN産経/2011.2.3 14:30)

 2月3日午前の衆院予算委員会質疑。

 〈首相は昨年10月にブリュッセルで行われた中国の温家宝首相との「廊下懇談」の際、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件に一切言及しなかったと報じた2日付産経新聞の記事に関し、「懇談では尖閣諸島はわが国固有の領土であり、領土問題は存在しないと申し上げた」と強調した。自民党の斎藤健氏の質問に答えた。〉

 具体的にどんな遣り取りがあったのか《衆議院TV》にアクセスして2月3日の動画を開いてみた。

 斎藤自民党議員「これは新聞による報道であるんですけれども、昨日の朝、え、もし事実であるなら、看過できない大変重大な記事が目に飛び込んでまいりました。日本外交の信頼性に関わる大変重大な話でありますので、事実でないことを祈りながら、先ずこの件について、国会の役割として、チェックだけさせていただければと思います。

 こういう記事であります。産経新聞であります。昨年10月のブリュッセルで、アジア欧州会議が開かれました折に、え、みなさんご案内のように、イー、菅直人総理と、中国の温家宝首相が、廊下会談をされました。えー、そしてその際、菅首相が、えー、沖縄尖閣諸島沖の中国船衝突事件につきまして、えー、『温首相は日本の立場をご存じでしょうから今日は言いません』と語って、日本の立場を一切言及しなかったと、そういうことが政府筋の、複数の政府筋によって明らかにされたという記事で、あります。

 菅総理はこの首脳会談の後に、えー、同行記者団に対しまして、こういう発言をされています。『私も尖閣諸島は我が国固有の領土であり、領土問題は存在しないという原則的なことを申し上げた』と、いうふうに説明していた、と。

 これが虚偽だったことになると、報道で、そう書いてあると言うことであります。で、一方でですね、あのー、このときまたゼネコンフジタの、日本人社員一人が釈放されていない状態で、えー、ありました。エ、この問題にも触れずに社員の早期釈放を求めることもなかったと、こういう報道であります。

 私はこの報道の真偽を確認したく、ご質問させていただいておりますが、えー、この懇談につきまして、立ち話につきまして、外務省のホームページにもやはり菅首相は、尖閣諸島は我が国固有の領土であり、領土問題は存在しないとの原則的立場を述べたと、書いてあるわけであります。

 え、外務省のホームページにも記載されている話でもありますので、先ずお忙しいところをおいでくださいました、外務省の杉山局長にもお伺いしたいと思いますが、えー、このオン、温家宝首相に対して、えー、菅首相は、この会議の際、尖閣諸島は我が国固有の領土であり、領土問題は存在しないと述べたのは事実でしょうか」

 杉山外務省局長「え、お答えいたします。あの、ただ今委員ご指摘のその温家宝総理との懇談に於いて、えー、菅総理が尖閣諸島は我が国固有の領土であり、領土問題は存在しないとの原則的な立場を述べて、述べた上で、えー、詳しくは申し上げませんが、あの、既にその報道発表している通りの3点を確認した、というふうに承知しております」

 斎藤自民党議員「と言うことは、えー、温家宝首相に対して、領土問題について『今日は言いません』と、菅総理が発言したという記事は全くのウソだと、いうことでよろしゅうございますか」

 杉山外務省局長「えー、再びのお尋ねでございますのでお答えいたします。あの、恐らく私共の、おー、事務の、おー、担当者の場として、え、報道機関の、報道の一々について、これがいいとか悪いとか、あ、いう、コメントをする、ことはしない方がいいと思います。

 ただ、今申し上げました通り、の発表をしている、ということでございます」

 斎藤自民党議員「それでは総理のお伺いしますが、温家宝首相に対して、え、この尖閣の領土問題について、『今日は言いません』と、菅総理が発言したという記事は、ウソであるというご認識でしょうか」

 菅首相「先程、ご指摘をいただきましたように私が温家宝総理との懇談で、申し上げた、あー、おー、ことは、尖閣、ウ、諸島は我が国固有の領土であって、えー、領土問題は、存在しない。えー、この、お、ことを申し上げました」

 斎藤自民党議員「ということは、『今日は言いません』と、総理が発言したという記事は、全くウソだということですね」

 菅首相「私が申し上げた、ことは、私は、はっきりと、今この場で申し上げました、それ以上でも以下でもありません」

 斎藤自民党議員「一つ確認ですが、温家宝に対して、領土問題について、『今日は言いません』と菅総理は言っていないわけですね」

 菅首相「何回も申し上げていますように私が言ったことは、今この場で申し上げた、あ、ことに、イー、尽きております」

 斎藤自民党議員「今の遣り取りで、私の理解は、『今日は言いません』と発言をしていないと、いうふうに素直に受け止めさせていただきます。

 もしこの新聞記事が事実だといたしますと、私は大変な日本の外務省の信頼性を損なうような、大きな問題だと、私は考えております。従いまして、当然のことながら、産経新聞に対して、抗議をされますね」

 菅首相が答弁に立たずに枝野官房長官が代りに立ったためにヤジや抗議の声が飛ぶ。

 枝野「あの、新聞を含め、様々な報道、あの、それぞれの言論の自由がある中で色んな報道がされております。えー、その中には、おー、個別の問題は申しませんが、あの、当事者として、私が、例えば、知見した事実(よく聞き取れなかったが、確かに「知見」と言っている。ここは「経験した事実」と言うべきでは?)と異なっている、おー、というような内容が含まれていることございますが、それに対して政治家の立場として、えー、一つ一つ、えー、すべてについて、対応していく、ということよりも、あの、今お尋ねいただいた、こともありますが、あー、内閣として、えー、の立場、あー、見解・知見を、こうした場を含めて、お示しをしていくことが大事だと、いうふうに思っております」

 斎藤自民党議員「私は産経新聞という、日本の大きなメディアが、総理が発言していないと、いうことをですね、発言していないことを、発言したというふうにですね、えー、間違えて、外務省が報道しているというですね、外務省の報道に対する信頼性が揺らぐような記事であるから、もしそれがですね、事実でないなら、抗議するのは私はトーゼンのことだと思いますけれども、見解の相違ということで次に進みたいと思います」――

 既に菅首相の「あー、おー、えー」のつっかえつっかえの発言が証明している新聞記事の事実の証明であるが、斎藤議員は新聞報道は事実かどうか尋ねた。だが、菅首相は記事は事実であると肯定することも、事実ではないと否定することもせずに既に公表していた発言を繰返して答弁とした。

 枝野は詭弁家らしく新聞が当事者の言動と異なる報道を行ったとしても、いわば国会等の場で見解・知見を示していくことが大事だとわけの分からないことを言って誤魔化している。

 間違った報道に対して国会等の場で提示していく「見解・知見」にはデマ等の虚偽報道に対する修正、あるいは否定も入っているだろうし、修正や否定を入れる必要が生じる場合もあるだろうから、枝野の言っていることは詭弁以外の何ものでもない。

 例え枝野の詭弁発言を無視するとしても、事は菅首相の外交に対する覚悟と能力、その姿勢と信頼性に関わる問題であり、産経記事はそれを真っ向から否定していて、当然、菅首相の外交無能力を曝け出す報道ともなり、このことは菅首相の政治的人格を損ない、政治家として備えていなければならない名誉を傷つける報道ともなり得る。勿論、支持率にも影響していくはずである。

 もし事実でないなら、一国の首相としての自身の名誉を守るためにも、「事実ではありません。間違った報道です」の簡単にして明快な短い言葉で済んだはずだ。また、自身の名誉を簡潔な言葉で守ることができた。虚偽報道であると否定しなかったところを見ると、否定できなかったための否定も肯定もしない態度だったと断定せざるを得ない。

 斎藤議員はフジタの問題にも触れているが、昨年(2010年)の事件発生後の10月6日の衆議院本会議代表質問で自民党の稲田朋美議員の、温家宝首相との会談時に社員の釈放を求めたのかの質問に対して今回と同じく直接の答弁を避けている。
 
 菅首相「また、アー・・・、フジタ、アー、の社員の、問題については、併行して私と温家宝総理との話と併行して、えー、我が国の、オー、として、その、1名の身柄の、安全の確保等、早急な釈放を、オー、求めて、現在も、オー、交渉を進めて、いるところで、あることを申し上げておきます」――

 「勿論、求めました」という明快な回答とは決してなっていない。「求めました」と答えたなら、次は温家宝首相はどう答えたか聞かれることになる。事実でないことを言ったら、次も事実でないことを重ねていかなければならなくなる。

 この程度の覚悟しか示すことができなかった菅首相である。中国との関係修復の知恵を検討し、その知恵を出す意見交換会を何度開いたとしても、どのような覚悟も期待できないリーダーであることに何ら変わらない以上、意味もない意見交換会となるのは目に見えていると、やはり何度でも言わなければならない。


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