菅首相が菅内閣の経済政策によって景気がよくなってきたとする恥知らずな成果誇示

2011-02-22 10:26:22 | Weblog



 昨2月21日衆議院予算委のトップバッターは民主党本多平直議員。菅グループ所属で結婚の媒酌人は菅直人だそうだが、だからなのか、ヨイショ発言が目立ち、どうも菅首相のいいことを見せるためのヤラセ臭い質疑応答に見えた。

 本多平直「えー、民主党の本多平直です。えー、今日は『政治とカネ』についての集中審議ということでありますけれども、え、先ず冒頭で、えー、総理に、えー、お伺いをしたいと思います。

 あのー、私は実は、えー、ずっと国民のための政治を実現するために、何としても政権交代をして、えー、民主党政権を実現したいと思ってまいりました。ま、その中でも、特に私の個人の思いとしては、何としても菅直人という男を総理にして、仕事をさせてみたい、そういう思いでずっと、政治活動をしてまいりました。

 まあ、この、菅さん、総理になってから、8ヶ月、その仕事をされてきました。今大変、えー、国民のみなさんの声が、色々厳しいものが、あります。そして党内にも厳しい声があるように聞いています。えー、そいう中でありますけれども、まだまだ、国民のみなさんに伝えられていない部分、伝え切れなかった部分、えー、これまでの実績も、これからの決意も含めて、是非お聞かせを、改めていただきたいと思います」

 本多平直が「党内にも厳しい声があるように聞いています」と伝聞形式としてその存在を不明確化しようとしたのは菅首相の失点隠しを図ったと言うことだろう。

 菅首相「大変暖かい、えー…、言葉をかけていただいて、ありがとうございます。私が、あー、昨年の6月に鳩山内閣を引き継いで、えー、政権…、の、責任者となって、えー…8ヶ月が経とうとしています。

 私はこの中で、えー…先ず(左手を肩の近くに上げて)緊急にやらなければならないこと、えー、そして、えー、国民の約束として、えー、進めなければいけないこと、さらにはこれから先のことを見通してやらなければいけないこと、この三つをやってきたつもりであります。

 緊急にやらなければいけないことは、えー、一昨年の政権交代のときに、リーマンショックの直後でありまして、大変厳しい経済状況でありました。そして鳩山内閣、私の内閣と引き続き、経済対策を次々と打ってまいりました。

 私になりましてからは、9月には、あ、予備費を使った、あー、ステップワン。そして、えー、12月には、あー、補正予算。そして今回、来年度の、おー、予算を、おー、みなさんに審議をお願いしております。

 今、ヤジで、全然よくなっていないという声がありましたけども、(一枚の用紙を両手に持って)この数字を見て、いただければですね、(右手に持ち替えて、)キャッ(「客観的に」と言おうとしたのだろうが、やめて)、結果ははっきりとしていると思います。

 2009年の、実質経済成長率がマイナス6.3であったのに対して、2010年、の、実質経済成長は、プラス3.9(声を高め)、であります。また、失業率がマイナス5.3であった2009年に比べて、5%を切って、4.9%まで、失業率も低下(「経過」に聞こえたが)をいたしました。これは客観的な数字です。

 それに加えて、デフレの一つの指標となっている、消費者物価指数も2009年の-2.2からやっと0.0(ゼロ)、デフレの脱却が見えてきたところまで、(用紙を上下に動かしながら声を強調)きたわけであります。

 そういった意味で、今ご審議をいただいている、ステップスリーの、この、予算を、成立させ、(右手を上げ、一段と声を高めて)実行させることで、いよいよ本格的な、経済成長の道筋に、乗せることができる。私はまさに胸突き八丁のところに今、(用紙を上下に動かし)あると思っています。(「そうだ」の声)

 そういった意味で、これは与野党を超えて、まさに国民の、みなさんのためにですね、この予算を(用紙を持ち上げ、声を強める)成立させ、執行させていただきたい。

 そうすれば必ずや、そうした経済成長の、道に、戻すことができると思っています。それに加えて申し上げれば、(用紙をテーブルに起き)この20年間、残念ながら進んでいない、社会保障と税の一体改革についても、6月までに、提案を必ず出しますから、これについても、与野党を含めてですね、議論をして、それを、セイ、政局の問題ではなくて、国民生活という長期的な観点から、是非、実行して参りたい。このような決意で臨んでいきたいと考えております」

 菅首相は成果を誇らしげに語っている。「鳩山内閣、私の内閣と引き続き、経済対策を次々と打ってまいりました」の発言そのものが既に成果誇示の助走となっている。成果なしと言うことなら、「経済対策を次々と打ってまいりました」などとはおおぴらには言うことはできない。あくまでも成果が実現したことを前提として口にすることができるセリフである。

 その対策は9月の予備費を使ったステップワン。そして12月の補正予算によるステップツー。ステップスリーの来年度予算執行を前に既に誇ることができるだけの成果を上げたと言っている。

 そして来年度予算が成立し、ステップスリーとして実施されたなら、「本格的な経済成長の道筋に乗せることができる」と確約している。

 全然よくなっていないというヤジに対して、一枚の紙を手に数字が示している客観的事実だと成果を譲らない。

 客観的事実の具体例として、菅内閣の経済対策によって「2009年の実質経済成長率がマイナス6.3であったのに対して、2010年の実質経済成長はプラス3.9」となったこと、「失業率がマイナス5.3であった2009年に比べて、5%を切って、4.9%まで失業率も低下」したこと、消費者物価指数が2009年の-2.2から0.0に上昇してデフレ脱却の兆しが見えてきたことを挙げている。

 では、実質経済成長率のマイナスからプラスへの上昇と失業率の改善が果してその他の経済指数の改善と連動して一般的な国民生活の向上に役立っているのだろうか。連動していないなら、国会の場で都合のいい情報だけを取上げて成果を誇る情報操作を行ったことになる。

 まさか市民・国民の味方であることを以って名乗る資格を得る市民派出身の菅直人のことだから、また本多平直議員から人間を見る目を持って「何としても菅直人という男を総理にして、仕事をさせてみたい」と最大限の希望を託され人物であることからしたら、都合のいい情報だけを取り出す情報操作などしないはずである。

 菅首相が「失業率がマイナス5.3であった2009年」とマイナス数値で言っていることは完全失業率のことで、労働力人口に占める完全失業者数の割合のことを指すからマイナスになることはあり得ない、言い間違いだと新聞が伝えている。「マイナス5.3であった2009年」と言っている以上、2009年平均完全失業率のことであるはずだが、総務省が1月28日(2011年)発表の労働力調査では2010年平均の完全失業率は5.1%で、2009年の年平均完全失業率と同じとなっている。また、「4.9%」の数値は2010年12月の完全失業率(季節調整値)に当たる。

 まさか成果を誇るに都合のいい、より改善値を見ることができる月の完全失業率を適宜抽出したとは思えないが、用紙には数値が記してあったはずであるし、それを上下に振って力説したのである。もし成果を誇るに都合のいい数値を抽出したとなるとやはり一種の情報操作の疑いが生じる。

 都合のいい情報のみを取上げる情報操作は都合の悪い情報は隠す情報隠蔽と常に一体を成す。

 完全失業率の改善は完全失業者数の減少、就業者数の増加を示す。多分財政出動を伴ったエコカー減税や家電エコポイント制度、そして中国外需が主として役立ったこれらの改善であろうが、当然個人消費は活発化していなければならない。

 だが、どの報道もエコカー減税の終了や酷暑による農産品の高騰等で逆に個人消費が低迷と伝えている。このことは特殊要因による低迷ではあるが、エコカー減税や家電エコポイント制度は高額商品対象の消費誘導であることから余裕所得層の消費に役立ったものの、非余裕所得層に役立ったとは思えないことを考えると、実質経済成長率の上昇、完全失業率の改善、消費者物価指数の上昇が必ずしも一般的な国民の生活に直結して恩恵を与えているようには思えない。

 具体例を挙げて説明してみる。先ず昨2月21日の「asahi.com」記事――《非正社員の割合34%、過去最大に 失業期間は長期化》(2011年2月21日22時25分)である。

 2月21日発表の総務省2010年労働力調査に拠っている。

●役員を除く雇用者数は5111万人(前年比+9万人)
●正社員数3355万人      (前年比-25万人/過去最少人数)
●非正社員1755万人      (前年比+34万人/08年に次ぐ多さ)
●パートやアルバイト、派遣社員など非正社員が全雇用者に占める割合2010年平均で34.3%。

 これはは2009年大幅減に対しての2年ぶりの増加だそうだ。

●非正社員の内訳
 パート・アルバイト1192万人 (前年比+39万人)
 派遣社員96万人        (前年比-12万人)

 この派遣減、パート・アルバイト増の傾向を記事は、〈今国会では、派遣規制を強化する労働者派遣法改正案の審議が予定されており、先を見越した企業の「派遣離れ」の動きが続いている。〉と解説している。

●非正社員の男女別割合
  男性――18.9%
  女性――53.8%

 記事はまた失業が長期化する傾向も伝えている。
 
●2010年平均完全失業者数334万人の内訳。
 失業期間1年以上失業者数121万人(前年比+26万人)

 これは3年連続の増加で、過去最多。1年以上の失業者増の傾向は全世代に共通すると書いている。

 こう見てくると、失業率がマイナス5.3であった2009年に比べて、5%を切って4.9%まで改善したと言っても、正社員を減らして非正社員を増やした失業率の改善であり、増加した非正社員にしても多分男性の失業者数をそれ程減らさない、女性の就業には役立っている失業率の改善ということであって、このような状況を以って菅内閣の経済政策の成果誇示へと持っていくのは図々しいばかりの恥知らずな情報操作、それと一体となった情報隠蔽としか言いようがない。

 非正社員の増加は低収入を理由とした、今や社会現象となっている増加する未婚化を定着させ、日本社会をなお一層の少子化へと向かわせることになる。

 菅首相はこういったことまで視野に入れていたなら、自身の内閣の経済政策の成果を誇ることはできなかったはずだ。だが、声を高めて誇ったところを見ると、既に何度も指摘している資質の欠如だが、合理的判断能力の欠如を成果誇示の原因としなければならない。

 日本社会の未婚化問題は昨2月21日の「NHK」テレビ「クローズアップ現代」でも取上げていた。その案内メールの紹介文を参考のために載せておく。

 〈2月21日(月) 【総合テレビ】19:30~19:56 

 タイトル「結婚したいのに・・・ ~止まらない未婚化~」

 日本人の生涯未婚率の上昇が止まらない。現在は男16%・女8%。2030年には男29%・女22%。さらに進めば「少子化」と「無縁化」で社会の存続さえ危ぶまれる。最新の分析で大きな原因として浮かび上がってきたのが職場の変容である。例えば、「職縁」の減少。終身雇用の崩壊や非正規労働の増加によって、職場づきあいが減り、上司が縁談を紹介するケースも激減している。

 さらに、リーマンショック以降、「男性の年収」と「女性が求める年収」のギャップも拡大。リスクの少ない結婚をしたいという若者が増えているのだ。こうした中、各地の自治体で始まった縁結び事業では、男性と女性が共に働き、収入も家事も両者が担う夫婦モデルを提唱するなどの試みも始まっている。

 番組では、最新データを交えて「未婚化」を分析し、「縁のある社会」の再構築について考える。〉――

 鳩山内閣を引き継いだ上に自らも立ち上げた菅内閣の経済政策が効果を上げていないと見ることができる生活指数は大学や高校新卒者の就職内定率にも表れている。

 今春卒業予定の大学生の就職内定率は昨年12月1日時点で過去最低68.8%を記録。今春卒業予定の高校生の就職内定率は去年11月末時点で大卒を上回る前年比+2.5ポイントの70.6%であるものの、依然として低い水準にとどまっった数値だと言う。

 さらに生活保護世帯の増加。20010年11月の生活保護世帯は過去最多の142万世帯に上ったという。また生活保護基準以下の所得でありながら生活保護を受けていない最貧生活者は最大229万世帯にのぼるという。

 菅首相は消費者物価指数が2009年のマイナス2.2から0.0に改善してデフレ脱却の兆しが見えてきたと自らの経済政策の成果の一つと誇っているが、そのことは逆に貧困世帯を苦しめる要因となる成果となる。いわば経済が強い足取りで回復していく中での消費者物価指数の上昇、デフレ脱却でなければならないと思うのだが、そうならないうちに消費者物価指数が改善してデフレ脱却の兆しが見えてきたことの成果を誇ることができるのも合理的判断能力を全く欠いているからこそできる成果誇示であろう。

 最初の方に市民派なる名称は市民・国民の味方であることを以って名乗る資格を得ると書いた。だが一般国民の多くが生活不安から解放されないうちの自らの経済政策の成果誇示は一般国民の姿が目に入っていないからできることであって、そこからは市民・国民の味方である姿はとても浮かんでこない。

 こういったことによっても菅首相がエセ市民派出身であることが証明できるが、情報操作・情報隠蔽を駆使して自己の経済対策の成果誇示を図るような首相に「社会保障と税の一体改革についても、6月までに提案を必ず出しますから」といくら約束されたとしても、期待はできないカラ約束としか受け止めることができない。


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