昨6月2日開催された民主党代議士会の前に菅仮免と鳩山前が午前中に会談、次のような確認事項が取り交わされたという。《辞めるとはひと言も書いていない「鳩菅覚書」》(YOMIURI ONLINE/2011年6月2日14時03分)
確認事項――
▽民主党を壊さないこと
▽自民党政権に逆戻りさせないこと
▽大震災の復興並びに被災者の救済に責任を持つこと
〈1〉復興基本法案の成立
〈2〉第2次補正予算の早期編成のめどをつけること
まさしく「辞めるとはひと言も書いていない」が、確認事項に記述した「民主党を壊さないこと」、「民党政権に逆戻りさせないこと」、「大震災の復興並びに被災者の救済に責任を持つこと」については菅仮免は代議士会の発言で述べ、辞任については次ぎのように発言している。
《首相発言要旨―民主代議士会》(asahi.com/2011年6月2日12時46分)
菅仮免「一定のメドがついた段階で、私がやるべき一定の役割が果たせた段階で、若い世代に責任を引き継いでもらいたい」
この発言に対して鳩山前が発言を求め、二人の会談の内容を明らかにする形で辞任時期を示している。《めどは二次補正…鳩山前首相が「総理と合意」》(YOMIURI ONLINE/2011年6月2日12時48分)
鳩山前「復興基本法を速やかに成立させ、二次補正予算のめどがついた段階で、身を捨てて頂きたいと述べた。そのことに対して、菅首相から(一定のめどがついた段階で辞任するという)先ほどの発言があった。これは菅総理と鳩山との合意だ」
テレビで聞いていたら、「二次補正予算が成立したあとではなく、二次補正予算のめどがついた段階」だと念を押していた。
菅仮免は元々自省能力のない男だから当然のことかもしれないが、代議士会の発言をテレビで聞いていると、自身が政治能力を欠いているという反省意識が全然見えてこなかった。
菅仮免が言った「一定のメドがついた段階」がいつの段階なのか問題になっているが、鳩山前が復興基本法成立後の「二次補正予算のめどがついた段階」と言っているのに対して菅仮免は「私がやるべき一定の役割が果たせた段階」だと言っている。
本人の決定権にかかっている「段階」ということになる。まだ「一定の役割が果たせ」ていないと言い出したなら、それまでだし、支持率を上げるポピュリズムに徹してそれが成功、支持率が上がったなら、それを理由に居座ることだってするだろう。何と言っても、一定のメドとは俺の辞書では永遠のことだとなりかねない政権亡者なのだから。
確認文書には一言も辞任するとも、その辞任時期も書いていないし、署名まで拒否したという。
早速岡田幹事長が代議士会の閉会後のぶら下がりで引き伸ばし作戦に出た。《岡田幹事長 合意は条件でない》(NHK/2011年6月2日 19時53分)
岡田「復興にめどがついたらだ。菅総理大臣と鳩山前総理大臣との合意文書は、そのことが大事だと書いてあるだけで、それが終わったら辞めるという条件ではない」
鳩山前が言っている「第2次補正予算の早期編成のめど」ではなく、「復興にめど」だとした。菅仮免が代議士会で表明した「私がやるべき一定の役割が果たせた段階」と合致しないことはない。
菅仮免が昨夕2日午後10時30分の首相官邸記者会見で、マスコミが辞任は来年1月と示唆したとしている箇所に当たる菅仮免の発言は次のようになっている。
菅仮免「工程表で言いますとステップ2が完了して、放射性物質が、放出がほぼなくなり、冷温停止という状態になる。そのことが私はこの原子力事故のまさに一定の目途だとこのように思っております」
ステップ2完了は来年1月となっている。
記者「フジテレビの松山です。今の質問にも関連するんですけれども、総理は福島原発の事故の収束の目途について冷温停止が一定の目途だとおっしゃいましたが、ということは、総理自身は自らの手で指揮を執って、来年一月までを目標としている冷温停止までを是非やり遂げたいという意思表明なのでしょうか。また鳩山前総理との合意の文書があるようですが、その中には原発という文字は入っていないようですが、原発の収束についても含めて鳩山前総理との間で合意ができたという認識なんでしょうか」
菅仮免「鳩山前総理との合意というのは、鳩山前総理がつくられたあの確認書に書かれたとおりであります」
記者「そこには原発という文字が入ってませんが、総理としては認識としてはそこまで含むという・・・」
菅仮免「私が一定の目途と申し上げたのは、代議士会で申し上げたのであります。私の申し上げている意味は、今聞かれてましたのでお答えいたしました」
確認書には「第2次補正予算の早期編成のめどをつけること」と書いてはあるが、辞任のメドは書いてない。だから、菅仮免は巧妙にも、「鳩山前総理との合意というのは、鳩山前総理がつくられたあの確認書に書かれたとおりであります」と言った。
辞任に関してのメドについては何も書いてないですよ、二人の合意は確認書に書いてあるとおりのままですよと。
そして辞任のメドについては代議士会で発言したことであって、今聞かれたから、「工程表で言いますとステップ2が完了して、放射性物質が、放出がほぼなくなり、冷温停止という状態になる」段階だと答えたとしている。
原子炉の安定化そのものは基本的には東電が担当する。だが、放射能避難者と震災被災者に対する様々な支援・救助策は菅仮免の指導のもと行う。これまで見てきた菅仮免の支援・救助策の不備・不足・遅滞・不適合・齟齬等々の失態・無策を来年の1月まで8ヶ月も許すことになる。
指導力もない、無能な指導者を来年の1月まで8ヶ月も居座らせることになる。
さっさと内閣不信任決議案に賛成してトドメを刺すべきを、鳩山前が無能なリーダーに延命治療を施した。だが、どう如何ように延命治療を施そうと、単に任期を永らえさせるだけで、長く居座らせることによって指導力欠如も無能も治療できるわけではない。
当たり前の指導者が10進めるところを、5か6しか進めることができないに違いない。
その理由はリーダーシップを欠いている、合理的判断能力を持たないからなのは言うまでもないが、鳩山前と取り交わした確認書の「民主党を壊さないこと」と「自民党政権に逆戻りさせないこと」の2点の確認事項にも現れている。
「民主党を壊さないこと」は壊すも壊さないも政権リーダーの指導力、統治能力、あるいは政治運営次第であって、既に大分壊れかかっている。
この民主党の内部半壊状態はすべて菅仮免が招いた。組織の在り様はリーダーの指導力や統治能力次第だからだ。また野党の提出の不信任決議案も、菅仮免のリーダーの指導力と統治能力に基づいた政治失態が招いた一騒動であろう。
だが、いくら内部がどう壊れていようとも、党の命運、その盛衰は最終的には国民の審判によって決定する。
ときには自ら党を割って壊す場合もあるが、選挙で国民の審判を受けて勢力を伸ばす例もある。
また「自民党政権に逆戻りさせないこと」云々の政権選択にしても、やはり国民の審判によって決定する国民事項である。
菅仮免の指導力欠如と合理的判断能力欠如の助けを借りて、野党合わせた参院での勢力伸張によって全体として既に半分逆戻りさせていることも国民の審判を受けた結末である。最後の引導を渡すのは国民である。
要するに政党の勢力盛衰にしても政権担当にしてもリーダーの指導力と統治能力、さらに国民の審判が要件となると言うことである。
だが、リーダーの指導力と統治能力、さらに国民の審判を要件とする認識も持たずに、そのことを無視して「民主党を壊さない」だ、「自民党政権に逆戻りさせない」だと二人だけの決定事項とした。
これは菅仮免にしても鳩山前にしても、民主党という一つの政党と政権を私物化視していたからこそできた確認事項であるはずだ。
党も政権も国民と共にあることを一時たりとも失念するような政治家、失念して私物化視するような政治家は決してリーダー足り得ないはずだ。
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