昨日のブログにも書いた“資格なし”で、内容が重なるところもあるが、改めて6月9日の国会答弁。
《菅首相、8月までの続投になお意欲》(asahi.com/2011年6月9日22時53分)
菅仮免「(8月中旬までの完成を目指している)仮設住宅に入った人が生活ができるようにすること、がれきの処理、原発の収束に一定のめどがつくまでは責任を持って仕事をさせていただきたい。・・・がれき処理も8月中に生活地域からの搬出を目標に頑張っているが、その後の2次処理、3次処理につなげていくことも含めて私の大きな責任だ」
退陣に伴い衆院議員をやめる可能性を問われて――
菅仮免「やるべきことは責任を持ってやり抜く。やり抜いた後は、私の中でしっかり考えてみたい」
言っていることはそもそもからして鳩山前と取り交わした確認書の、「〈1〉復興基本法案の成立」、「〈2〉第2次補正予算の早期編成のめどをつけること」を超える契約違反である。
いわば6月中の退陣を約束することで、不名誉な内閣不信任決議案可決を回避でき、「〈1〉復興基本法案の成立」と「〈2〉第2次補正予算の早期編成のめどをつける」花道を用意して貰った。
そのことに満足すべきを、契約破棄はマニフェストでも演じている慣れたその延長でしかないのか、確認書の契約を破った上に契約の一方の当事者である鳩山前の了解も得ずに退陣時期を自分一人で設定し、8月までを自分の独断で決めて任期とする資格はない。
大体が「仮設住宅入居、瓦礫処理、原発収束まで責任をもって仕事をさせていただきたい」と欲張ること自体が菅仮免の能力の程度を超えた不遜な要求でしかない。
仮設住宅建設とその入居は遅れに遅れ、今持って10万人近い被災者がプライバシーを満足に維持できない不自由な避難所生活に閉じ込められている。
政府は5月中に3万戸完成を約束していたが、約束の責任を果たすことができず、6月を1週間超えて、形式上3万戸の完成にこぎつけることができた。形式上とは純粋に完成とは言えない戸数を含んでいたからだ。《仮設住宅ようやく3万戸 目標から1週間以上遅れ》(MSN産経/2011.6.8 21:34)
国土交通省が6月8日発表の仮設住宅完成戸数。3万57戸。このうち2741戸は水道などのライフラインを整備中で、被災者の入居に時間がかかり、純粋に完成とは言えない状態だという。
完成とはいつでも入居できて、入居と同時に普通の生活ができる状態のことを言うはずである。2741戸から57戸を差引くと、2684戸を水増しした3万戸の、しかも1週間遅れの約束ということになる。
現在仮設住宅の最終的な必要戸数は全体で約5万2千戸ということだが、民間のアパートやホテル、旅館、あるいは自治体の公営住宅に入居が進んで振替えることができた結果減ることとなった約5万2千戸ということであって、この場合の完成進捗率は50%を少し超える。
だが、当初必要と計算した戸数は7万2000戸であって、7万2000戸を建設目標として進めていたうちの6月8日時点での3万57戸-半完成の2741戸=27316戸数の完成なのだから、8月半ばのお盆までを目標期限とし、残す日数はあと2ヶ月しかないというのに、震災発生から3カ月近く経過しながら目標の半数にも満たない進捗率約38%という計算になる。
要するに順次順調に責任を果たしてきた者だけが言う資格がある引き続いての責任でありながら、仮設住宅建設で満足に責任を果たしていないにも関わらず、「仮設住宅に入った人が生活ができるようにすること」を自らの役目上の責任とする矛盾を図々しくも平気で犯している。
満足に責任を果たすことができなかった者が以後の責任を満足に果たし得ると期待できるだろうか。果たすだけの能力を持っていなかったからこその不満足な結果であって、人間が変わらない以上、その能力は引き継がれるはずで、満足に責任を果たすことができない同じ場面が繰返される。
瓦礫処理にしても、政府は責任を果たしていると言えない。処理の役目は自治体にあるが、負い切れない膨大な量の瓦礫なのだから、復興への歩みを加速するためにも積極的な政府支援を必要としているはずであり、だからこそ、瓦礫処理が一定のメドがつくまでと自らの役目としたのだろう。
だが、政府支援がその責任を果たしていない。昨6月9日の夕方7時半からのNHKクローズアップ現代「ガレキがなくならない」の番組内容は次のように案内メールに書いてある。
〈家の残骸、打ち上げられた船、壊れた車・・・。東日本大震災によって発生したがれきの推定量は被災3県合計で2000万トンを超える。阪神・淡路大震災の約1.7倍に相当する量だ。しかし、これまで撤去されたのは全体のわずか18%にとどまる。遺体や思い出の品の捜索、地盤沈下による冠水など現場には様々な困難がたちはだかる。また三陸沿岸は平地が少ないため仮置き場にする土地の確保も難しい。さらに塩分を含んだがれきは焼却炉を痛めるため、処理する施設を見つけるのも困難だ。粉塵による肺炎などの健康被害も広がっている。
震災から3か月、がれきの撤去が進まない被災地の課題を伝える。〉――
2000万トンの瓦礫量に対して18%のみの処理量。
番組の中で漁師がなかなか片付かない海中の瓦礫について怒りを込めて次のように言っていた。
漁師「日本の一次産業はこの辺は海だよ、ね。その海がさ、この状態だよ。これで復興もクソもあるかい!」
菅仮免の耳には届かない怒りの声であるに違いない。
仮置場に集められ、相当高い山と積まれていたが、そこでも木材や鉄、プラスチック等に分別して、それぞれの種類に分けて最終処分場に運搬しなければならない。仮置場自体が不足しているから、ダンプで仮置場に運んできて、重機で山と積み上げていく。このことに必要とする時間以上にその分別は何倍もの時間がかかるに違いない。
なぜ派遣切り等で失職しているフリーター等を全国から集めて、瓦礫が元々ある現場現場に張り付かせ、ハサミ重機が一掴みさせて空いた場所に置いた瓦礫にパン屑に群がるアリのように取り掛からせてその場その場で分別し、それをダンプに積んで仮置場に運び、そこで種類ごとに山積みしておくといったことをしないのだろうか。
あるいはダンプが仮置場に運んできて降ろした一山分の瓦礫をその場で種類別に分別させて、重機が種類ごとに山と積み上げていく方法でもいい。失業対策にもなるし、そうして置けば後々の処理がスムーズに進むはずだ。
現状では瓦礫処理自体に遅滞が生じていて、政府は早急な復旧・復興の責任を果たしていないのだから、仮設住宅建設と同様に以後の責任を満足に果たし得ると期待できるはずはなく、瓦礫処理にしても「一定のめどがつくまでは責任を持」ちたいとすること自体が厚かましいと言わざるを得ない。
原発の収束にしても同じことが言えるはずである。東電の暫定発表では1号機の燃料損傷は地震発生の3月11日午後2時46分から5時間後の3月11日午後8時前後から始まり、メルトダウンは地震発生から16時間後の3月12日午前7時前後としていたが、原子力安全・保安院は独自の解析結果として東電が燃料損傷開始時間としていた地震発生当日3月11日午後8時頃と公表。
当然、原子炉内の圧力を下げるベント作業は一刻も争う初動対応であったはずだ。だが、海江田経産相が東電に対してベント指示したのは3月12日午前1時30分頃。東電が指示に従わなかったために法的拘束力のあるベント命令に切り替えたのがベント指示から5時間20分後の3月12日午前6時50分。
東電がベント準備に着手しのが命令から2時間24分後の3月12日午前9時04分。そして実際のベント開始がさらに1時間13分後の午前10時17分。
海江田経産相が最初にベント指示を出した3月12日午前1時30分頃から8時間47分も経過している。
官邸のベント指示に対して、なぜ東電は直ちにベント準備に着手しなかったのだろう。なぜ官邸は東電に対して自らの指示を直ちに機能させることができなかったのだろうか。
東電がベント作業にかからないからと命令に切り替えたが、ベントを実際に開始することができたのは命令から3時間半経過してからである。
政府にしても東電にしても、初動に於ける責任を果たしていなかった。その責任は厳しく追及されるべきだが、今度発足した原子力「事故調査・検証委員会」は「責任追及を恐れ原因究明の動作ができなくなる」からと責任追及は目的としないとしている。
最初から菅仮免や東電、その他の関係者に免責を与える調査・検証となっている。
だとしても、ベント作業に関して官邸も東電も責任は果たしていなかった事実は事実として残る。当然、責任を果たしていない人間が原発事故の収束に関しても、「一定のめどがつくまでは責任を持って仕事をさせていただきたい」などと言う資格はない。
菅仮免は「やるべきことは責任を持ってやり抜く」と言っているが、これまでやるべき責任をやり抜いていないのである。有言実行内閣を掲げながら、有言不実行で終わっている責任であって、「責任」なる言葉すら口にする資格はないはずだ。
責任を果たす能力を欠いていながら、8月まで責任を果たさせてくれと矛盾したことを言う。所詮、身の程知らずの往生際の悪い居座りに過ぎない。
|