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簡単には喜んでばかりはいられないイラン制裁適用除外の日本の地位

2012-03-22 10:49:25 | Weblog

 2011年12月14日米国で「2012年会計度国防授権法案」が下院を賛成対数で可決・通過、同12月15日、上院を賛成多数で可決、2011年12月31日オバマ大統領が署名 。

 この法律は対イランに関しては世界各国の金融機関のイランとの取引制限を課すことでイラン産原油の輸出入を事実上不可能とすることを目指しているという。

 但し、日本の金融機関はその法律の適用除外を受けた。その理由をWEB記事から拾ってみた。

 《同盟関係に配慮も=日本のイラン制裁除外-米》時事ドットコム/2012/03/21-09:49)

 イラン制裁法に基づく制裁対象から日本を除外した理由。

 ●東京電力福島第1原発事故でエネルギー確保が困難な状況にあること。
 ●イラン産原油輸入の削減努力を評価したこと。
 ●日米同盟の重要性に配慮したこと。

 記事は、〈日本を除外することで、韓国などにさらに輸入削減を促す狙いもある。〉と書いている。

 要するに現在のところ韓国は適用除外を受けていない。日本並みにイラン産原油輸入削減に努めた場合は、適用除外を受けるということを示唆した文言なのだろう。

 日本は米政府から制裁除外の通告を事前に受けていたとも記事は書いている。

 在米外交筋「日本が震災で大変な中、同盟国としてしっかり対応していることを評価した結果だ」

 国務省高官「日本は半年間で、イラン原油輸入を15~22%削減した。日本の削減努力は制裁除外を求める国々の一定の基準になる」

 (記事解説を発言形式に一部変更。)

 この国務省高官の発言が、記事の〈日本を除外することで、韓国などにさらに輸入削減を促す狙いもある。〉の文言を引き出したということなのだろう。

 尻を叩いてセリにかけるようなものである。

 記事。〈イラン産原油を輸入している23カ国のうち、制裁対象外となったのは、日本と欧州連合(EU)の10カ国。EUは、7月からイラン産原油の全面禁輸に踏み切ることを決めている。EU以外で除外となったのは日本だけで、韓国やトルコなどは含まれていない。〉――

 何とも恵まれた日本の扱いである。

 日本側のこの適用場外に対する反応を見てみる。《イラン制裁、日本適用除外を歓迎 官房長官》(MSN産経/2012.3.21 11:29)

 3月21日(2012年)午前の記者会見。

 〈日本が過去5年でイラン産原油の輸入を約40%削減したことが評価されたと指摘〉した上で、

  藤村官房長官「(適用除外を)歓迎したい。この(輸入削減の)傾向は今後も加速され、相当程度削減される」

 但し、〈具体的な削減幅には言及しなかった。〉と記事は指摘している。

 要するにアメリカの要求次第、意向次第となるから、自分たちからは削減幅は決めることはできないということなのだろう。下手にアメリカの要求以上の削減幅を前以て決めてしまったなら、あとで日本の首を締めることになる。夢々お先っ走りはできないということに違いない。

 だが、このような日本の事情を裏返すと、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国以外の核兵器保有を禁止する核拡散防止条約を日本が批准していながら、イランの核開発問題に対して独自の毅然としたイニシアチブを取れない状況に縛られていることの証明以外の何ものでもない。

 また、イランの独裁的国家権力がイラン国民に強いている権状況に対しても経済的な国益という名の自己利害擁護を優先させて、これらの面での自律した対外的姿勢を示すことができないことの証明ともなる。

 単にアメリカに従うだけということである。

 《米国のイラン制裁、日本対象除外を歓迎 枝野経産相ら》asahi.com/2012年3月21日10時43分)

 枝野経産相(3月21日記者会見)「米国側に(日本の削減努力を)かなり具体的に説明し、例外措置を含む柔軟な対応を要請してきた。努力を理解していただいた。

 (今後のイランからの輸入の見通しについて)減少させてきたトレンドのなかで対応するので、直ちにはゼロにならない」

 藤村官房長官と同じで、アメリカの要求、あるいは意向を窺いながら、応じなければならない場合は応じていくということなのだろう。

 アメリカが決めたこの対イラン制裁は断るまでもなく、アメリカ主導の制裁であり、日本その他はアメリカに従う下の立場に位置づけられている。アメリカとの国力の差、国際政治力の違いから無理はないが、それでも日本が自律的に積極的に協力することによって、下の立場からより対等な立場を確保できて、このことが対外的発言力を損なわずにそれなりに維持できる方向に日本を進めていくことができる。

 だが、そういった方向を選択せずにアメリカと交渉して適用除外を成果としたことは、一見日本の努力によって獲ち取ったように見えて、実質的にはアメリカの判断が決めたことであって、そのようなアメリカの決定権に委ねる最終判断の構造に支配された適用除外は日本がアメリカの保護を受けたことを意味するはずだ。

 いわば日本をアメリカの保護下に置いた。あるいはアメリカと保護の関係を結んだ。

 その保護に守られて、日本の石油各社がイラン産原油の取引をしても、その決済に関わる日本の金融機関は制裁を受けずに済む。

 保護そのものの関係であろう。

 東電福島第1原発事故でエネルギー確保が困難な状況にあるからと適用除外を受けたことは“保護”という言葉そのものを象徴している。

 勿論、アメリカの日本に対する保護の関係は今回の対イラン制裁に限ったことではない。

 イランの人権状況と核開発意志は前々から分かっていたことであって、昨日今日に始まった突発事態ではない。どう転んでもいいように国益を死守する危機管理を時間をかけて構築すべきを構築しきれずにアメリカの保護に与った。

 アメリカの下位に位置し、保護を受ける関係に甘んじている以上、そのような関係を強いている政治的・外交的問題に関する対外的発言力は既に触れたように満足に発揮することは敵わないに違いない。

 イラン制裁適用除外で簡単には喜んでばかりはいられないということである。

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