班目原子力安全委員会委員長のその資格もないウソと無責任で塗り固めた2012年3月1日国会参考人答弁

2012-03-06 12:22:08 | Weblog

 3月3日(2012年)の当ブログで3月1日衆院予算委員会、梶山弘志自民党議員と枝野民主党詭弁家との福島原発事故危機管理を巡る菅無能の情報処理の問題や福島原発視察の適切性を問う遣り取りを取り上げたが、梶山議員は引き続いて班目原子力安全委員長に対して菅仮免に対する原子力問題に関する助言者としての適格性を問い質した。班目の答弁はウソと無責任で塗り固めた内容であった。

 梶山議員の質問は前回同様、主旨にとどめ、班目発言は可能な限り一字一句正確に文字に起こすことにする。

 梶山議員「総理に進言する立場として原子力安全委員会がある。ベント、海水注入の判断で班目委員長にも相談があったと思う。ベント、海水注入は遅れたと思うか」

 班目委員長「先ずベントの遅れでございます。あのー、えーと、私が最初にベントを進言したのは、あのー、11日夜の9時ぐらいだっと思います。

 その時点ではですね、私は炉心溶融に至っていない。それで、ただ、あのー、最終的な熱の捨て場がなくなっておりますので、えー、えー、とにかく圧力を下げて、圧力容器の中に水を入れ、そうすると、その水の行き場がないから蒸気としてベントをしなきゃいけない。

 それが、えー、あとから分かったことでございますけども、直流電源を全部失っている状態では殆ど不可能だなということでございます。さらに事態は進行してしまって、あのー、夜中を過ぎるとですね、今度は格納容器の圧力自体が上がってきている。

 そうなるってくるとですね、えーと、私としても恐らく格納容器の中にはかなり放射性物質が出ているということで、これはまたさらに住民の避難という問題も絡んできた。

 まあ、様々なことがあってですね、遅れたのであって、この辺りを時系列も含めてしっかりご理解を頂きたいと思います。

 (答弁を終わりかけてから、)あー、それから海水注入につきましてはですね、この件につきましては、えー、12日午後の早い時点からですね、えー、もう真水がなくなるということで、海水注入止む無しという議論は行われてございました。

 で、あのー、えー、それで、えー、その場合どういう、うー、問題があるかということはですね、例えば塩がせき出してしまったら困るとか、あるいは腐食が進むと困るとか、いうことについても、色々と、議論も済んでいたところでございます。

 それで、えーと、その問題がですね。夕方になって、さらに、えー、問題になったというふうに、えー、いろんな議論があったのでございますけれども、その辺りについてはですね、私がですね、正直なところはっきりとした記憶はございません。

 はっきりと申し上げられるのは海水を、えー、えー、注入する、ことによって、えー、えー、えー、再臨界が起こるかと聞かれるとですね、それは温度が冷えれば、えー、再臨界の可能性は常にあるわけですから、ゼロではあり得ないと答えると思います。

 ただですね、えー、臨界の危険が、臨界しても構わないんです。それよりも、冷えないことの方がもっと大問題なので、必ず海水でも何でもいいから、えー、冷やすために水を入れてくださいということは私自身は申し上げていたつもりでして、それが遅れた事情については私の方では承知しておりません」

 東京大学の原子力関係の学部を卒業、東京大学大学院の教授を務め、政府の原子力安全委員会委員長である男が専門の原子力の議論でありながら、「えー、えー」と言葉を探さなければならない、自身の履歴に反した明快さの欠如はその知識・教養だけではなく、人間性さえも疑わしくする。

 「えー、えー」をやめて貰えないかと一言言ったら、そのことに囚われて発言が混乱するに違いない。

 12日午後のうちに海水注入は何ら問題ないと既に結論を得ていた。だが、「その問題が夕方になってさらに問題になった」の「その」とは海水注入を指すはずである。しかも海水注入の結論についてははっきりと記憶していながら、夕方になって再び持ち上がった議論については、「正直なところはっきりとした記憶はございません」では都合がよすぎる。

 当時、海水注入の問題と同時に再臨界の可能性について問題となったはずである。だが、はっきりと記憶していないと言った手前、海水注入によって「再臨界が起こるかと聞かれるとですね、それは温度が冷えれば、えー、再臨界の可能性は常にあるわけですから、ゼロではあり得ないと答えると思います」と仮定の会話に置き換えている。ここにゴマカシがある。

 これがゴマカシなのは昨年5月23日(2011年)衆院震災復興特別委員会での谷垣禎一自民党総裁の班目参考人に対する追及が証明してくれる。

 班目委員長「その場に於いては海水を注入することによる問題点をすべて洗い出してくれという総理からの指示がございました。私の方からは海水を入れたら、例えば塩が摘出してしまって流路が塞がる可能性、腐食の問題等、色々と申し上げた。

 その中で、多分総理からだと思うが、どなたからか、再臨界について気にしなくてもいいのかという発言があったので、それに対して私は再臨界の可能性はゼロではないと申し上げた。これは確かなことであります」

 これ以上ないというくらいしっかりと記憶している。

 菅無能は班目のこの「再臨界の可能性はゼロではない」を受けて、政府は否定しているが、議論する時間を要したために海水注入中断を指示したことになっている。

 班目委員長は谷垣総裁に対する答弁の前日の5月22日(2012年)内閣府で記者会見を行なっている。《班目氏が政府発表に「名誉毀損だ」と反発 政府は「再臨界の危険」発言を訂正》「MSN産経」/2011.5.22 20:42)

 記者「政府は海水注入の一時中断は班目委員長が『再臨界のおそれがある』と指摘したからだとするが」

 班目委員長「私が言ったのならば、少なくとも私の原子力専門家としての生命は終わりだ。一般論として温度が下がれば臨界の可能性は高まる。『臨界の可能性はまったくないのか』と聞かれれば、『ゼロではない』と答えるが、私にとって可能性がゼロではないというのは『考えなくてもいい』という意味だ

 記者「そういう発言をしたのか」

 班目委員長「覚えていないが、私が『注水をやめろ』と言ったことは絶対にない」

 記者「政府側は班目氏が指摘したと繰り返し主張している」

 班目委員長「私への名誉毀損(きそん)だ。冗談じゃない。私は原子力の専門家だ。一般的に海水に替えたら、不純物が混ざるから臨界の可能性は下がる。淡水を海水に替えて臨界の危険性が高まったと私が言うとは思えない」

 記者「当日のことを明確に覚えてはいないか」

 班目委員長「私は海水注入が始まったと聞いて、ほっとして、原子力安全委員会に戻った。一つだけいえることは首相が『注水をやめろ』と言ったとは聞いていない。私が知る限り、当時首相と一緒にいた人が注水を途中でやめるように指示を出した可能性はゼロだ」(以下略)

 政府は班目発言を「再臨界の可能性がある」としていたが、「再臨界の危険性がある」に、たいして変わりはないと思うが、和らげる方向に訂正している。

 班目委員長は実際の会話は「覚えていない」こととして、「『臨界の可能性はまったくないのか』と聞かれれば」とここでも仮定の会話としているが、自己正当性を訴える発言に関しては狡猾にもしっかりと記憶している。

 このご都合主義は重責を担う人間として問題だが、このことは次の矛盾した発言にも現れている。「一般論として温度が下がれば臨界の可能性は高まる」と言っている以上、その可能性を避けるために海水注入を断念するか、何らかの回避策を講じなければならないことになるが、「私にとって(再臨界の)可能性がゼロではないというのは『考えなくてもいい』という意味だ」と平気で矛盾したことを言っている。

 いわば「可能性がゼロではない」はゼロの意味だとしていて、そうでありながら、「一般論として温度が下がれば臨界の可能性は高まる」とした前段の発言とも明らかに矛盾している。

 尤も「高まる」という言葉がゼロを意味するなら、何ら矛盾はないことになる。

 また、「一般論として温度が下がれば臨界の可能性は高まる」と言っていることと、「一般的に海水に替えたら、不純物が混ざるから臨界の可能性は下がる」と言っていることはどう整合性がつくのか分からないが、前者の危険性と後者の危険性回避との差引き計算、いわばどちらを選択したらいいのかの判断基準となる答を科学者でありながら示さずに矛盾したことだけを言っている。

 さらに言うと、5月22日内閣府記者会見で「私にとって(再臨界の)可能性がゼロではないというのは『考えなくてもいい』という意味だ」としていたことは梶山議員の質問に答えて仮定の会話として持ち出した、海水注入によって「温度が冷えれば、再臨界の可能性は常にあるわけですから、ゼロではあり得ないと答えると思います」と言っている発言とも矛盾することになるばかりか、発言が一貫していないこと、コロコロ変わることを示している。

 その時々によって発言が変わるということは自身の言葉に対する責任感が希薄だからだろう。言葉に責任感のない人間が政府の原子力安全委員会の委員長を務めている。この逆説は見事である。

 班目は海水注入すべきとした自身の助言は正しい選択とするために実際は持ち出した再臨界の可能性を無理やり、「『考えなくてもいい』という意味だ」とこじつけ、さらに記憶していないからと仮定の会話にすり替えたに違いない。

 梶山議員「班目委員長が再臨界に関して菅総理にアドバイスした。ゼロではないという言い方だったのか、違う言い方だったのか」

 班目委員長「正直申し上げて、あの、ゼロではないというのはですね、可能性はなくはないという言い方であってですね、私としてははっきりと申し上げられるのは、私が、えー、ゼロではないと申し上げることによって、海水注入をためらうような雰囲気がそこに生じたということはなかったと、記憶している。そういうような事実は全く記憶がございません」

 ここでも記憶の有無を使った自己正当化のご都合主義が如実に現れている。

 冒頭の発言では3月12日午後のうちに海水注入は何ら問題ないと一旦は結論を得ていながら、夕方になってからの、政府側は再臨界の可能性についてだとしている議論については「正直なところはっきりとした記憶はございません」と明快に記憶喪失を断言しているにも関わらず、ここでは再臨界の可能性が「ゼロではないと申し上げることによって、海水注入をためらうような雰囲気がそこに生じたということはなかったと、記憶している」と海水注入をためらった障害物は班目が言い出した再臨界の可能性ではないと明快な記憶を披露している。

 要するに自己正当化にあくせくしている。事実を述べて責任の裁きを受ける気持が少しでもあったなら、記憶の有無を使い分けることも発言に一貫性を失うこともないはずだが、自己正当化のみに最重点を置いているから、発言にウソと無責任の齟齬が生じることになる。

 梶山議員「一方の当事者から話を聞いただけでははっきりしない。管前総理を参考人招致したい」

  委員会で協議することになった。決まれば面白いことになる。民主党抵抗で決まらないかもしれない。

 梶山議員「水素爆発の可能性について班目委員長がないと言い切ったどうか分らないが、菅総理の方はそういったニュアンスで把えているが、記憶しているか」

 班目委員長「非常にはっきりと記憶しているのはヘリコプターで現地に向かうときにですね、あのー、えー、これからどういうことが行われるかということについてご説明申し上げたんですが、ベントと言うことについてご説明申し上げたんです。

 で、ベントという操作は、あのー、えー、えー、原子力圧力容器の中の、えー、えー、蒸気を格納容器の中に出して、そうすると、格納容器の、えー、圧力が上がってしまうので、えー、大気にベントすると。

 こういう手順になります。で、このとき菅総理の方からですね、あのー、それでは炉心が損傷して水素を抜いたらどうなるか、というお尋ねがありましたので、その場合には、えー、水蒸気と反応して、えー、水素が生じていますと。で、えー、菅総理の方から、水素が、えー、爆発するのではないかというお尋ねがあったので、格納容器の中は窒素に置換されていますから、そこには酸素が無いので爆発はしません。最後にスタック、煙突の辺りから、出た所で初めて酸素と触れ合って、えー、燃えます。

 そういう形になるので、えー、このベントというのを急げば水素爆発の可能性というのはございませんと申し上げていると思います」

 明確に記憶していながら、最後に「申し上げていると思います」と断定とは反対の推測で終えている。事実を話す責任意識を持っていたなら、「申し上げました」と断定するはずで、逆の責任回避意識を働かせているから、推測語に置き換えることになる。

 梶山議員「格納容器の中では爆発はないということだが、その場ではそれ以上の指摘はできなかったのか」

 班目委員長「えーとですね、爆発といった場合ですね、核爆発という問題と、それからチェルノブイリのような、あれは核爆発ではなくて、水蒸気爆発なんです。それとあと、水素爆発の問題がございます。

 それで、私はですね、えーと、恐らく、あー、色んな形で核爆発っていうのはそれはあり得ませんよ。但しチェルノブイリのようなことになっては困るので、えー、水蒸気爆発というのは大変気になりますと。

 ただ、あのー、えー、可能性としてはかなり低いと申し上げていると思います。

 最後に水素爆発なんですけれども、これについて建屋の機密性があそこまで高くて、えー、水素爆発が起こるということまでは、あのー、私もちょっと、あのー、えー、失念していたというのが実態でございまして、水素爆発の建屋の、えー、で生じる可能性については何も進言していない。これは事実だと思います」

 ここにもゴマカシがある。「何も進言していない」は、水素が「スタック、煙突の辺りから、出た所で初めて酸素と触れ合って、えー、燃えます」ということを想定できるだけの知識としていただけではなく、別の配管から漏れて建屋天井に充満、そこで酸素と触れ合って爆発することも理解内のこととして想定できるだけの知識としていたことになり、単に進言を忘れただけだということを意味することになる。

 だとしたら、ヘリコプターの中で「最後にスタック、煙突の辺りから出た所で初めて酸素と触れ合って燃えます」と言ったときに可能性としてより重大な問題として付け加えなければならない進言だったはずだが、していないところを見ると、後付の想定の疑いが出ていくる。

 梶山議員「水素爆発と絡んで、炉心溶融の可能性を認識していたか」

 班目委員長「あのヘリコプターの中で、現地に行くときにはですね、実はヘリコプターで現地に着くまでにベントは終わっていて、もう水の注入が始まっているんではないかというふうに、え、私は勝手に思い込んでおりました。

 で、その時点では、従って、まだ炉心は溶けていないと、思っていたわけでございます。

 ただですね、あとからよく考えてみると、しかし既に格納容器の圧力が上がってるということは、それはもう、炉心が溶けていて、水素が発生していたと考えなければいけないなーと。

 あとからは非常に反省した事項でございます」

 その場で想定できなかったことをあとから想定した。専門家でもままある失念であろう。だが、失念した想定は重大な事柄である。それを「水素が発生していたと考えなければいけないなーと」と反省意識を欠いた軽い言葉で片付けている。

 梶山議員「班目委員長だけが技術的な話をするわけではない。委員長の周辺、あるいは菅総理の周辺に炉心溶融の可能性について言及する者はいなかったのか。班目委員長にアドバイスする人間はいなかったのか」

 班目委員長「えー、11日から12日の未明にかけてはですね、あのー、私がいたのは危機管理センターの中2階と呼ばれている、非常に10人も入れば、あー、一杯になってしまう小さな部屋でございます。そこには多分、私以外には東京電力の武黒フェローとですね、川俣部長と、あと、誰か東電の人間がいたと思います。

 それからあとは保安院の平岡次長辺りがいたと思います。あのー、基本的には技術的な話は私と、武黒フェローとの間で交わされていて、で、えー、武黒フェローから直接頼まれても、政府としては例えば自衛隊を動かすとかできないので、えー、私の口からどういうことが起こってるか説明せよと言われたということです。

 で、その時の雰囲気としては相談できる相手は私は私以外に武黒フェロー以外にいないという状態で、アドバイスを続けなければいけなかった。で、保安院の方からいろいろな情報というのが全く来なかった状態だったというふうに、記憶してございます」

 東電の武黒フェローが政府の人間ではなくても、自衛隊出動の助言はできるはずである。助言を受入れて自衛隊を動かすかどうかの最終判断は政府の責任で行うからである。東大出にふさわしいトンチンカンなことを言っている。

 梶山議員「武黒フェローと技術的な遣り取りはするが、官邸にアドバイスするのは班目委員長以外にはいない。こういう緊急時にそういった体制が望ましいことなのか」

 班目委員長「実のことを(軽く笑いながら)申し上げますとですね、あのー、えー、そのような形で私は、あの、助言をする形になるとは思ってもみなかったということでざいます。

 よく考えてみるとですね、先ずそういう形では無理だから、あの、少し技術的な人間を集めて、あのー、きちんとした議論をしながら、えー、えー、えー、どうあるべきかというのを議論すべきだというのを本来だったら、進言すべきだったかなあー、と今反省してございます。

 ただ当時は、物凄く緊迫した状態で、即刻何か、えー、これはどうしたらいいいか(という)ことの助言を求められている状態では、正直申し上げて頭が回らなかったのものも事実でございます」

 何と無責任な。助言体制を整えるよう、「進言すべきだったかなあー、と今反省してございます」、「頭が回らなかった」と言っている。

 重大事故であればある程、しっかりとした助言体制を整える緊急性が生じる。少しの間違いでも許されない緊迫した状況に置かれることになるケースが多々出てくるはずである。

 原子力安全委員会は何も無責任な班目一人で背負って立っているわけではあるまい。手違いが生じないように助言メンバーを充実させる責任も負っていたはずである。

 それを助言で手一杯でスタッフの充実まで「頭が回らなかった」と言っている。

 梶山議員「国の行く末を決める、国の危機対応にそれでいいのか。

 アメリカのNRCは早い段階でのメルトダウンの可能性に言及している。4月6日の経済産業委員会で細野大臣にメルトダウンの事実があるかと問い合わせたところ、「そういう事実はない」と答えた。班目委員長はメルトダウンについてどういう認識を持っているのか」

 班目委員長「明らかに、12日の早い段階からメルトダウンは進んでいるという認識は、あー、はっきりと持ってございました」

 言っていることが事実かどうか分らないが、はっきりと記憶していることとしている。

 梶山議員「それは情報隠蔽になるのではないのか。原子力というのは公開が原則である。公文書管理法あるなしに関わらず、公開し、公表していく。そのうえに信頼が成り立っていく。

 そういったことが政府部内で議論されて、安全院長が認識していることなのか。そういった情報が出てこないのはどうしてなのか」

 班目委員長「このような非常事態に於いてはですね、原子力安全委員会というところは助言、機関でございます。そしてあの、実際に、国民に対して、えー、発信するところは原子力安全・保安院でございます。

 で、原子力安全・保安院に対して、原子力安全委員会は色々と助言をする。あくまでも国民に対しては、えー、原子力安全・保安院の方から説明する。そうあるべきなんです。

 もし原子力安全委員会が原子力安全・保安院と全く違うことを言い出したなら、国民は大混乱に陥る、ということから、あの、えー、ある程度表現を差し控えなければならない状況であったということをご理解いただきたいと思います」

 無責任極まりない詭弁となっている。助言も一つの情報である。その助言が原発事故に関係している情報である以上、国民の生命・財産に深く影響を与えることから、国民の知る権利の対象となる。

 当然、原子力委員会側には国民に対する説明責任が生じる。「もし原子力安全委員会が原子力安全・保安院と全く違うことを言い出したなら、国民は大混乱に陥る」と尤もらしく自己正当化を謀っているが、だからこそ、「ある程度表現を差し控えなければならない」と放置したのでは国民に対する説明責任の自己規制に当たり、国民に目隠しすることになる。

 また、助言機関とは情報の一元化を図ることをも役目の一つとしているはずである。

 但し助言機関の情報が常に正しいとは限らない。

 原子力安全委員会や保安院、電力業者の原子炉に関わる情報たるや原子炉の中を覗くことができるわけではないから、絶対的に正しい事実とは言えないかもしれないが、様々な計器の数値と外に現れる現象等から専門家として確たる可能性を根拠としての、原子炉が現在どういった状態にあるかの判断をそれぞれが行う過程で認識の違いが生じる可能性は否定できない。

 認識の違いを一つの認識で統一することも情報の一元化に当たるし、違いのままに並立させることも並立という形の情報の一元化に当たり、どのように統一された認識であっても、国民の知る権利に応える情報としてありのままに公開する責務を負うはずだ。

 また、原子力安全委員会が助言機関にとどまらないのは、班目委員長が再臨界の可能性に関して発した自身の発言の説明を前出5月22日(2012年)内閣府の記者会見で国民向けに説明していることが証明していることでもある。まさかマスコミ向けにのみ説明しているとでも思っているのだろうか。 

 民間の助言機関・助言組織であろうと、助言にとどまらず、社会に対する情報発信、説明責任を負っている。

 どうも班目委員長はウソと無責任で塗り固めることが得意な人間らしく、情報公開のイロハ、国民の知る権利に対する説明責任の基本を知らないようだ。 

 だからこそ、「全く違うことを言い出したなら、国民は大混乱に陥る」からと、「ある程度表現を差し控えなければならない」と助言どころか、隠す方向への動きをも自らの役目とすることになる。

 自分がどれ程無責任なことを言っているのか気づかずに無責任なことを言っている。

 梶山議員「それでは発表すべき保安院に対して班目委員長はどういう遣り取りをしたのか。保安院と意見が違うから、我々は意見を差し控えると言うことでは国民に対する役目を果たせていないと思う。

 現実に5月12日にメルトダウンを認めたということはその時点まで国民はその事実を知らなかったことになる。それらを踏まえて、委員長はどうお考えか」

 班目委員長「えーと、メルトダウンという言葉であったかどうか知りませんけれども、なおー、少なくとも、原子力安全委員会は3月の、えーと、時点の、えーと、に於いて、確か、あの、2号機のタービン建屋で高濃度の発見された時点において、えー、これは溶けた炉心と、えー、冷却水が接触して出来たものですと。

 で、その接触した場合も、えー、圧力容器の中かもしれないし、イー、格納容器の、あー、あー、出た所で起こったかもしれないと、いうことを、あー、しっかりと文書として発出しております」

 前の所で「12日の早い段階からメルトダウンは進んでいるという認識は、あー、はっきりと持ってございました」と、メルトダウンそのものの現象と把えて、それが発生していたとの認識であったことを証言している。

 にも関わらず、しかも自分たちが文書で発出しておきながら、「メルトダウンという言葉であったかどうか知りませんけれども」では、この一点を取り上げただけでも無責任の謗りを免れることはできない。

 いずれにしても班目委員長は3月「12日の早い段階」にメルトダウンを予想していた。そして文書で発出した以上、メルトダウンの認識は当然首相官邸も保安院も東電も共通の認識としているか、他の機関が異なる認識であった場合は原子力安全委員会の独自の認識として共通の理解としていなければならないはずだ。

 当然、他の機関がメルトダウンに関して何らかの情報をマスコミを介して国民向けに公開するとき、原子力安全委員会の認識をも併せて伝える責任を負う。

 だが、そうしていなかった。

 梶山議員「文書として発出しても、国民に対するメッセージとはならない。メルトダウンが分かっていれば、自主避難を含めて、より安全な方向へ動いたに違いない。あまりに無責任な表現だと思うが、何か反論があるか」

 班目委員長「原子力安全委員会として、保安院に対して再三再四、炉心の状態がどうなっているのかをきっちりとした形で、えー、えー、えー、国民に説明をしなさいと、原子力安全委員会の場で再三申し上げております。

 それにも関わらず持ってくる絵というものがですね、物理的にはあり得ない絵というものを持って来られている。そういうのが続いているということを是非ご理解いただきたいと思います」

 「原子力安全委員会というところは助言機関でございます」と開き直って宣言していたが、助言機関としての役割も能力も果たしていなかった。と同時に保安院も保安院としての役割も能力も機能させていなかったことがこの発言から浮かび上がってくる。

 菅首相官邸が震災に対しても原子力事故に関しても危機管理の機能を果たしていなかったように原子力安全委員会も保安院も似た状況にあった。

 班目委員長は無責任を自らの体質としているから、助言機関としての役割も責任も果たしていないことに気づかない。菅仮免がそうであったように単に他に責任を転嫁して済まそうとしている。

 梶山議員「理解できない。保安院が持ってくる絵が違っても、政府部内の遣り取りであって、後になってから実はメルトダウンを認識していたと言われても納得できない。これ以上言っても同じ話しか返ってこないから、SPEEDI(スピーディ)について聞く。私も5月23日の復興特別委で当時の枝野官房長官にその存在を知っていたか質問をしたところ、『知らなかった』という答弁で、後に存在が分かってから、その対応を図ったということだが、班目委員長は当然SPEEDIの存在を知っていたということでいいか」
  
 班目委員長「これは防災訓練でですね、ERSS(事故の進展を予測する緊急時対策支援システム )とSPEEDIを使って避難区域の決定を行うということをやってございましたので、当然、よく、承知しておりました」

 菅仮免も2010年度原子力総合防災訓練に政府対策本部長として参加し、訓練項目であるSPEEDIの運用目的、その効果等の説明を受けていなければならなかったはずだが、その存在を知らなかったと言っている。

 梶山議員「政府部内では文科省からも説明はなかったという。3月16日から運用が文科省から安全委員会に代わったということだが、間違いない事実か」

 班目委員長「3月16日に官房長官からの指示があったのはモニタリングの実施は、えー、文科省で行いなさい。その評価は安全委員会で行いなさいとうことであって、SPEEDIの如何については一切官邸の方から指示はございません。

 それにも関わらず文部科学省の方から、あー、ある意味では、文科省の中で決定して、SPEEDIは、えー、安全委員会の方で、えー、これからは運用することに、してもらいたいと、そういうふうな話があったと承知しております」

 文科省がSPEEDIの運用を安全委員会に押し付けたのか、それとも責任を押し付けたのか。仕事が多い程歓迎の官僚組織にしては珍しい譲り合いである。

 梶山議員「その時々の気象状況を示すだけでも避難に役立つと思う。残念なことだが先日の国会事故調の中で避難には役立たないと答弁しているということだが、事実なのか」

 班目委員長「実際問題として、風というものはくるくる変わるものです。えーと、あの、放出源情報がないとですね、どの方に風が吹いたときに放射線物質が行くかということは、これは非常に、えー、予測するのは難しい話になります。

 さらにSPEEDIの計算自体1時間かかります。

 従ってですね、今回のような非常に早い現象のときはですね、このような予測手段を使って避難を決める。そんなことをやっている国は世界中どこにもございません。

 えー、そういう意味ではですね、予め違う方法、即ち、えー、発電所の、おー、方の緊急時の、状態がどれだけ差し迫ったものかという指標によって、もう、あの、半径何キロかという形で避難をする。

 これが世界の標準の考え方です」

 胸を張るかの如くにきっぱりと宣言した。拍手を送りたいくらいだ。

 ウソと無責任で塗り固めたインチキな主張に過ぎない。

 風は一般的には一定時間ほぼ一定方向に吹く。1日とか半日とかの単位の時もある。

 SPEEDIは役に立たないとする原子力安全委員会委員長の認識を首相官邸、保安院、文科省に伝えて、実際に班目が言うように役に立たないのか検証しているのだろうか。

 単に役に立たないと言うだけではなく、SPEEDIの存在自体をどう処理するか意見を統一する責任を安全委員会なりに負っているはずだ。

 班目は発電所が公表する「緊急時の状態がどれだけ差し迫ったものかという指標によって半径何キロかという形で避難をする」方法を勧めている。

 政府はSPEEDIの初期の運用に関して「実際の放射性物質の予測放出量等の情報を得ることができず、これに基づく放射能影響予測を行うことができなかった」という立場を取っているが、班目主張の方法だと、避難半径は放出放射性物質量の予測に対応することになるから、この予測量に基づいてSPEEDIを作動可能とすることができる。

 もし放出放射性物質予測量が分からないまま何が何でも最初から避難範囲を決めていて闇雲に避難させる危機管理だということであったとしても、SPEEDIが仮定の予測値を用いてシュミレーションを行うこととさして変わらないことになる。
 
 このことは班目が「SPEEDIの計算自体1時間」かかるから役に立たないと言っていることと関係する。

 3月11日14:46 地震発生
      15:42 福島第1原発1~3号機に関し原子力災害対策特別措置法第10条に基づく
           特定事象発生の通報
      19:03 菅首相原子力緊急事態宣言
      21:23 第1原発半径3km圏内の避難指示
           第1原発半径10km圏内の屋内退避指示

 3月12日5:44 第1原発半径10km圏内の避難指示 
     15:36 第1原発1号機水素爆発
     18:25 第1原発半径20km圏内の避難指示

 今回の避難を考えてみる。

 東電が15:42に特定事象発生の通報を行なってから、政府が避難指示を出すまでに約3時間20分もかかっている。「SPEEDIの計算自体1時間」かかったとしても、東電の特定事象発生通報と同時にSPEEDIを作動させていたなら、放出放射性物質量のより確定的な予測量を少しぐらい後回しにして仮定値を用いたとしても、放出放射性物質の拡散方向への避難は避けることができたはずである。

 では、最初から避難範囲を決めていて闇雲に避難させる危機管理から、果たしてSPEEDIが役に立たないのか考えてみる。

 3月11日21:23の半径3km圏内の避難指示を受けて住民は一斉に避難を開始した。その結果幹線道路は大渋滞を起こし、なかなか前に進めなかったそうだ。普段10分、20分で通り抜けることができる場所でも1時間くらいはかかった可能性は否定できない。テレビでは大渋滞の中で停止した車を映し出していた。

 もしその間にスピーデイが放出放射性物質の拡散方向を弾き出していたなら、その方向に避難した住民をいち早くより被曝が少ないより安全地帯への避難変更を誘導することができる可能性は捨てきれない。

 また、第1原発半径10km圏内避難から半径20km圏内避難へと拡大するとき、政府は最初チェルノブイリを参考に半径30キロを考えたそうだが、避難住民が8万人から21万人に増えて大混乱が発生すると予想、20キロ圏内だと7万8千人に抑えることができるからと、20キロ圏内と決めたそうだが、住民の避難時間も避難状況も危機管理の重要な要件としなければならない。

 今回の避難を参考に以後は今回把握していなかった半径キロ圏内ごとの住民数と年齢構成を前以て把握することにしているそうだが、実際の避難となると整然とした行動は期待できない。SPEEDIが計算でき次第放射性物質拡散方向への避難を途中から遮断することになったなら、元々渋滞と混乱を極めている状況を尚更渋滞させ、混乱させることになるが、それでも生命の安全を図るために拡散方向への避難を避けなければならないはずだ。
 
 「SPEEDIの計算自体1時間」かかるからと否定的存在扱いするのは単細胞・短絡的に過ぎる。住民の避難時間や緊張状況、あるいは発生するかもしれないパニック等、住民サイドのことを考えることができない無責任に全身覆われていることからの計算時間のみに囚われたSPEEDIに対する価値判断に思えて仕方がない。

 梶山議員「班目委員長は現在も安全委員長だと思うが、今日でも明日でもこういう事故が起きたとき、避難についてのアドバイスをする際、何を利用して避難せよとするのか」

 班目委員長「現在、原子力安全院会では防災指針の見直しを進めていございます。その中で基本的な考え方等はもう既に示してございます。

 実際のですね、避難ということになりますと、あのー、地区の区割の問題がありますので、あの、行政庁の方に手伝ってもらわなければいけないのですが、あの、大雑把な地図をもとにですね、やはり半径のところは今避難してくださいとか、次は半径何キロについては、そういう避難の指示になるんではないかと思います」

 今回の避難と違うのは避難範囲毎の住民の状況を把握しているということのみで、半径毎の避難である点は何ら変わらない。車を持たない住民のためにバスを前以て委託し、どこのバス会社のバスはどこそこの地区と指定していたとしても、原発事故が起きるまで空車のまま待機してくれるわけではない。予定していたバスが来ないことの混乱、車所有の住民は行動を共にする家族がいるなら、一緒に我先にと走り出す混乱等々、予測していない事態は避けがたい。

 SPEEDIの予測があとから追いかけても避難に役立たないとは決して断言できないはずだ。

 梶山議員「私の地元である茨城県、東海村があります。東海村は平和利用の魁(さきがけ)だったが、茨木県は原子力の理解を求める冊子を発行している。小・中・高生、一般向けとあるが、その中でSPEEDIがあるから安全だと書いてある。これは高校生向けだが、『事故のとき大気中の放射性物質がどう動くかを地形や気象条件を考えにいれながら、予測するSPEEDIが整備されている』

 こういったものを信じて立地をしていて、事故になったとき大丈夫だと思っている人たちがたくさんいる。

 非常に無責任ではないか。現在安全委員長ですよ。辞職してはどうか。辞表を出したらどうか」

 班目委員長「まずは、SPEEDIに関しては、おっしゃるとおり、あの、えー、文科省の管轄で行われてきたものなんで、あのー、えー、安全委員会としては、えー、もうちょっと色々意見を言うべきだと思っています。

 それから、あのー、私自身の職でございますけれども、いずれにしろ4月になりますと、新規制組織になると言うことで、あのー、えー、原子力安全委員会自体がなくなりますので、当然、あの、えー、えー、辞めることになると思っています」

 自ら責任を自覚して辞職するのと、組織の消滅と同時に自動的に失職するのとでは全く別物である。あくまでも責任意識を欠いている。無責任人間としたら当然の開き直りとも言える。梶山議員が憤るのも理解できる。

 梶山議員「余りにも無責任じゃないか。今日明日にも地震が発生して、何が起こるかも分からない。現実に今朝も震度5弱の地震が起き、東海村はみんな心配している。4月新しい組織になったら辞めるという考え方だとしたら、即刻辞表を出して辞めるべきだ。ご意見があれば」

 班目委員長「原子力安全委員会としては、えー、例えば安全設計指針とか、えー、色々なものが、明らかに間違っていた。

 従って、え、先ず、これを直す、ということに全力を上げるということで、3月一杯を以って全力を挙げているところでございます」

 無責任男らしくカエルのツラにショウベン。いや、班目のツラにショウベン。責任意識などなーんにも感じない。

 梶山議員「設計指針はいいが、地震が起こったときにどうするのか。野田総理大臣に対して技術的な助言をする。どうしたらいいかって言うことをこの無責任な班目委員長がする。

 総理、良ければ一言を」

 野田首相「あの、東大震災を受けて色んな教訓があったと思います。今度新しい組織ができるまでの間の委員(梶山議員)がご指摘のとおり何が起こるか分かりません。

 その教訓を最大限生かして、安全のための役割を果たして欲しいと、緊張感を持って対応して欲しいと思いましたし、国民の説明も緊張感を持って説明をして欲しいを思いました」

 見事な通り一遍の当たり障りのない無難な答弁となっている。班目を役立たずの無能だと批判すれば、使い続けている自身の任命責任に影響してくる。結果無難な答弁となるのだろうが、逆に無能を無能とせずに使い続けることは国民をバカにしていることになる。

 首相もそこまでは気づかないのだろう。

 梶山議員「総理の言う緊張感、その緊張感が欠けているのが、私は班目委員長だと今痛切に感じているところであります」

 議事録未作成の問題追及に移る。

 以上ウソと無責任で塗り固めた班目参考人答弁を見てきた。

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