野田首相は消費税増税に「不退転」を言うなら、景気回復も不退転とし、成長達成を増税の絶対条件とせよ

2012-03-28 09:12:57 | Weblog

 消費税増税法案を巡る事前審査を行っていた民主党税調などの合同総会は前原政調会長対応一任で28日(2012年3月)未明に閉会したが、増税反対派が納得した一任ではなく、次のステップに進めるために議論を打ち切る必要上の強引に纏め上げた“一任”だったようだ。

 3月30日に閣議決定という間近に迫ったスケジュールに合わせるためなのは誰の目にも明らかである。

 反対派が納得しない決着である以上、今後共紛糾は「線路は続くよ、どこまでも」とばかりに続く。

 反対派は税率引き上げの条件として「景気弾力条項」に成長率の具体的な数値の記入を求め、さらにただでさえ増税に反対姿勢を示しているのに閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱」に書き込まれた「今後5年を目途に所要の法制上の措置を講じることを改革法案の附則に明記する」とした文言がさらなる増税を策すものと拒絶反応、削除を求めていた。

 一方の執行部側の対応は見せかけ上、かなり譲歩した形の一任だったことを窺うことができる。《消費増税法案 新修正案を提示》NHK NEWS WEB/2012年3月27日 23時7分)

 27日午後8時から始まった民主党の会議には200人近い議員が出席。

 前原政調会長(冒頭発言)「野田総理大臣が、『今年度中の閣議決定を不退転の決意で目指す』としていることを、何としてもやり遂げなければならない。その意味で、きょう、議論をまとめさせていただき、党として決定させていただきたい」

 一任ありきの会合だった。

 紛糾し、纏まらなかったからなのだろう、午後9時過ぎに休憩、この間に前原政調会長が総理大臣公邸で野田首相、岡田副総理、輿石幹事長と夜に入ってから2度目の会談を行い、新たな修正案を纏めたと記事は書いている。

 「景気弾力条項」「消費税率の引き上げにあたっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、平成23年度から10年間の平均で、名目で3%程度、実質で2%程度の経済成長率を目指した望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるための必要な措置を講じる

 記事は次のように解説している。〈数値は盛り込んだものの引き上げの直接の条件とはしない形としています。〉

 「今後5年を目途に所要の法制上の措置を講じることを改革法案の附則に明記する」とした文言は削除。

 会議を午後10時過ぎに再開、修正案提示。反対派から異論が噴出、紛糾は続いた。

 そして夜中の12時を過ぎた28日未明、前原政調会長への“一任”。

 「経済成長率を目指した望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるための必要な措置を講じる」とは回りくどい言い方だ。

 「望ましい経済成長のあり方に近づけるための必要な措置」と言っているだけで、成長率を決めた景気回復を約束してはいない。景気回復を目指す姿勢を示していさえすれば、増税の条件とし得るという内容なのだから、まさに記事の解説通り、条件でも何でもない。

 だが、この消費税は増税します、増税条件として景気回復に「近づけるための必要な措置を講じ」ますでは、政治の責任放棄に当たらないだろうか。

 景気停滞期に於いて、あるいは不況期に於いてそこからの脱出、景気回復は時の政治の使命であり、義務であるからだ。

 好況期に於いてはその好況を維持することが時の政治の使命であり、義務であろう。

 消費税増税を策す一方で景気に関しては回復への姿勢を示しますでは政治の使命・義務に関して片務的に過ぎ、責任の放棄に当たる。

 野田首相が消費税増税に不退転を言うなら、景気回復に関しても不退転を示すべきで、そうしてこそ国民に対して政治の責任を果たすことが可能となる。

 要するに政治の使命・義務を完遂するためにも経済成長率を書き込んで、達成しなければならないということである。

 勿論、リーマンショックのような世界的金融危機による景気後退は政治の力を超えることとして、政治の義務・使命の放棄に当たらないものの、同時に消費税増税の条件を否定する事態となるのは明白である。

 前原政調会長は3月25日(2012年)の「NHK日曜討論」で、消費税増税条件として政府に経済成長を義務として課す方針でいると発言している。

 《前原氏“経済成長担保に知恵絞る”》NHK NEWS WEB/2012年3月25日 13時43分)

 前原政調会長「数字を(消費税増税の)引き上げの条件とすることは絶対にだめだと思う。国際マーケットの動向を考えたときに、私は数字を条件化することには極めてネガティブだ。

 『景気弾力条項』について、あす以降、修正案を示す。経済が悪いときに消費税を上げると、より悪くなる可能性があるので、党内の意見を聞いたうえで提案したい。政府全体に経済成長を義務として課すことをどのように担保するか知恵を絞りたい

 成長率を書きこんで増税の条件とするのはダメだが、政府全体に経済成長を義務として課し、そのことを「どのように担保するか知恵を絞りたい」と言っているが、義務を担保とするということは経済成長を約束させることを意味するはずだ。

 約束させるもさせないも、不況からの脱出は政治の使命であり、義務である以上、野田内閣が政治の使命ともしていない、義務ともしていないというなら話は別だが、政府はその約束を既定事実としていなければならないし、前原政調会長は経済成長を政府全体に約束させると言明した。

 となると、成長率を書き込んで増税の直接の条件とした方が目標が明確になるし、政府の取り組みも後がないことになって真剣となる。

 成長率を明記することのどこに不都合があるのだろうか。 

 だが、“一任”取り付けの内容は経済成長率は明記したものの、「日曜討論」で前原が言った。「政府全体に経済成長を義務として課す」ことの「担保」「経済成長率を目指した望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるための必要な措置」の“担保”へと後退し、変質させた。

 約束から努力目標への降格である。だから、前原は「口先番長」だと揶揄され、悪評に曝されることになる。

 前原だけではない、既に触れたように野田首相自身も財政再建と社会保障制度改革のために消費税増税を不退転とするなら、同時並行で景気回復をも併せて不退転としなければならない義務と責任を負っている立場にあり、そうである以上、成長率を明記して果敢に挑戦して、このことにも不退転であることを示すべきだが、景気回復に関しては不退転転じて努力目標へと逃げ込む退転を演じた。

 前原と同じ「口先番長」だと批判されても止むを得まい。

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