安倍晋三を含めた西田昌司らの民法改正異論に見る新しい事実婚とその婚外子に対する悪のイメージの植え付け

2013-11-04 11:28:33 | 政治



 最高裁判所大法廷が9月4日(2013年)、両親が結婚しているか否かで子どもの遺産相続に差を設けた民法の規定について憲法違反の判決を下した。

 民法「第二節 相続分・法定相続分」、「第900条4」は、「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」と規定している。

 このうち、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし」の個所が違憲とされ、平等扱いするように判断されたということなのだろう。

 だが、「嫡出でない子」は「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹」でもあるのだから、後の「父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」規定も「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹」に対して憲法違反ということになるはずだ。

 11月3日(2013年)のフジテレビ「新報道2001」が民法改正問題に異を唱える自民党の動きとその代表者として西田昌司自民党参議院議員を出席させて、主張を述べさせていた。

 番組では「嫡出でない子」を婚外子、「嫡出である子」を婚内子と呼称していたが、インターネットで調べたところ、「婚外子」を〈法的に婚姻関係にない男女から生まれた子供。法律上は、非嫡出子と呼ばれる。非嫡出ではマイナスイメージがあるため、1980年代以降、婚外子差別反対運動をする人たちの中で使われ始めた。〉と解説されていたから、嫡出子=婚内子、非嫡出子=婚外子として記事を進める。

 番組での議論の結論を先に言うと、民法改正異論派(=自民党内保守派に重なるはずである)は、その代表者である西田昌司自民党参議院議員の主張から理解できるように、最高裁の違憲判決によって日本に於いて伝統的制度だとしている法律婚以外の結婚の形――いわゆる夫婦別姓の事実婚や男女それぞれのシングル婚等が増加して、国の形の根幹を成す家族制度=家族のあり方が変わり、そのことが国の形そのものをが変えていくことを恐れて民法改正に忌避感を示しているが、そうでありながら、新しい結婚の形から最高裁の判断を論ずるのではなく、旧来の日本の伝統的な法律婚の中での婚外子、これまでの呼称で言うと、愛人の子、あるいは妾の子の問題に矮小化して議論するという矛盾を犯した議論内容となっている。

 なぜこういった矛盾が起きるかと言うと、家族の新しい形態として事実婚を批判も否定もできないから、法律婚と併存させた事実婚とその婚外子を悪の存在と見做すイメージ操作(=情報操作)を行うことで、家族制度を守るだ、家族のあり方を守るだの口実で、新しい形態として事実婚の増加を抑えることができるはずもないのに抑えようとする意図を働かせているからだろう。

 その象徴的な砦に民法の2分の1の規定を据えようということであるはずだ。

 出演者の内、西田昌司自民党参議院議員と明治天皇の玄孫とかいう作家兼法学者である竹田恒泰、経済ジャーナリストの荻原博子の発言、少子化ジャーナリストの白河桃子、さらに出演者ではないが、その発言を伝えている永岡桂子自民党衆議院議員と右翼の軍国主義者安倍晋三の国会での答弁を取り上げる。

 永岡桂子自民党衆議院議員が茨城県の地元を訪れ、支持者の意見を聞く。お祭りなのか、テントが並んでいる。背景が紅白の幕の舞台中央にマイクを片手に持って立つ。

 永岡桂子自民党衆議院議員(比例北関東ブロック)「是非皆さんにアンケートをしてみたい。いいでしょうか。

 最高裁の言うとおりだと、可哀相じゃあないか、子供は責任はないんだが、結婚していても結婚していなくても、その相続が同じでなければならないと思う方――」

 左手を上げて、挙手を促す。後ろ姿から判断して中年の女性が一人だけ応じる。

 永岡桂子「他処でつくってきた子どもと、私たちの子どもたちと相続が同じになるのは変じゃないー?と思ってらっしゃる方」

 反応は悪いが、かなりの数が手を挙げる。

 永岡桂子「結構な方が手を挙げて頂きました」

 永岡桂子が一つのテントの前の路上で3人のオバサンの前に立っている。

 オバサン1「やっぱ許せないから、どこの子どもであれ、旦那の不倫した子は一緒に財産貰う権利は――」

 永岡桂子「ない」

 オバサン1「ない」

 ここで世論調査を示す。

 【問3】9月、最高裁大法廷は結婚していない男女間の子ども「婚外子」の遺産相続分を、結婚した夫婦の子どもの半分とした民法の規定について「違憲」とする判断を示しました。あなたはこの判断について賛成ですか。反対ですか。

 賛成 47.4%
 反対 35.0%
 その他・わからない17.6%

 国会答弁

 安倍晋三「最高裁判所の違憲判決の趣旨を踏まえ、民法の規定について検討しているところでございます」

 解説「既に婚外子相続の2分の1規定を削除し、平等にする民法改正案ができている」

 ところが、自民党内に異論が噴出。

 声のみの自民党議員「婚外子を勧めることになってしまう」

 別のシーンでの自民党の意見として取り上げた解説。

 解説「正妻の権利を根底から侵害する(最高裁)判断だ」―― 

 西田昌司(記者たちに)「国民感情的に合わないし、モラル的にもおかしいでしょ?法律を変えてしまって、果たしていいのか。家族制度が崩壊してしまうじゃないかと――」

 解説「(民法改正に)慎重派は勉強会と称する集会を開催。23人の議員が出席した」

 永岡桂子が3人のオバサンたちの前に立っている前出のシーンが再度出てくる。

 オバサン2「あれはおかしいと思った」

 永岡桂子「おかしいと思った?同じ感覚」

 同志だというふうにオバサンの背中に手を回す。

 オバサン2「他に子どもをつくったのは旦那に責任があるから、相手、相手の責任だから、やっぱり同等なのはよくない」

 永岡桂子「あのね、皆さんはきちんと夫婦生活を営んで、あの、幸せな家庭を築いているから、その中で、旦那さんがポッと(ふと笑いを漏らして)亡くなって、ポッと子どもが出てくるとなると、これはちょっとね、というのはあるよね」

 出演者同士で賛否の議論に入る。

 西田昌司自民党参議院議員日本の子どもたちは殆ど婚内子なんですね。婚外子は2.2%しかいない。これは殆ど変わっていない。世界でも一番法律婚がきっちりと守られている国なんですね。

 他の国は確かに差別をしていないと言っていますが、そもそも婚内子と婚外子の割合が同じくらいのレベルになっている。だから、他処の国はそうだけれども、日本は違うんですよね。

 最高裁判所も自分たちの国のこういう慣習とか、ルールね、こういう国民感情を大切にしなければならないと言っていながら、なぜいきなり海外がそうだからと、これは本末転倒な話で、そこを立法府としてどうするかと議論をしなければならない」

 竹田恒泰、明治天皇の玄孫、慶大卒の法学者・作家。日本の歴史が天皇を中心に形成されてきたとする皇国史観派、当然、万世一系の維持、女系天皇反対の立場を取っている。

 竹田恒泰「私はですね、この最高裁の判断には違和感を感じます。ただ、もしこれがですね、改正の方向に行ったとしても、これは必ずしも不倫を助長してもいいとか、家族制度を軽視してもいいことに絶対ならないということをですね。

 私はそもそも、違和感がありますので、これはちゃんと考えないといけないと思います。これはあまり語られていないのですが、婚外子は婚内子の半分の相続権ということなんですが、婚外子は母方から全部相続を受けられるんですよね。

 で、婚内子の場合は、一つの家系、家系簿(家系図の間違い)の家系ですね、一つの家系から受けられるんですね。婚外子の場合は両方の家系から受けられる。

 そうしたら、両方共同じに貰えるとしたら、貰い過ぎだということもあるんですね。だから、合理的差別ありなんですよ。だから、差別がですね、非合理なのか、合理なのか、それをちゃんと検証する必要があると思います」

 荻原博子(経済ジャーナリスト)「基本的に親は子どもを選べないですね。だから、子どもは愛人のところに生まれてくるのか、正妻のところに生まれてくるのかってこと、子ども自身は選べないんですよね。

 だから、そういうことに関する、国連でも、子供の人権とかはちゃんと守りなさいと。それを守っていないのは先進国では日本だけですよね。それから勧告を受けているのは フィリッピンと日本ですよね。何とかしなさいと。

 実際、確かに子どもは罪はないんですよ。ただ、奥さんは正妻と愛人だと、正妻の方は2分の1貰えますからね。で、愛人の方は貰えないと。

 そういう歴然とした、そこで差別があるので、差別と言っていいのか、何と言っていいのか分かんないけど、で、下の子どもたち?子どもはですね、子どもは罪はないし、親は選べないので――」

 白河桃子(少子化ジャーナリスト)「(判決は)結婚制度にそんなに影響は与えるとは私は思っていなんですね。だけど、結婚の形がだんだん自由になってきているので、婚外子と言っても、今三つあると思うんです。

 結婚していらっしゃる方の外のお子さん。それから子どもは出来ましたが、やっぱりこの方とは結婚しませんと判断したシングルマザーとシングルファザーがいる場合ですね。それから事実婚で、一緒にお子さんを育てながらも、法律婚はしていないという方ですね。

 その三つがあまりごっちゃになってはいけないと思います。

 後の二つに関してはこれからどんどん広がっていくことだと思いますし、後もう一つはですね、家族の形を守って、婚内子が少ないことで非常に少子化で経済が危ういところが多いんですね。

 少子化で、婚外子が増えるのは困ると言いつつ、少子化、少子化と言っていると、そこはちょっと――」
 
 西田昌司「それはちょっと次元の違う話で、かつてフランスでも子どもを増やすために、まあ、婚外子が増えてですね、増えてきたじゃないかということもあるのですけども、子どもはモノじゃないし、確かに経済に影響しますよね。

 そういった経済的事象で考えるのは本末転倒で、やっぱり我々はちゃんとした家庭で、ちゃんとした子どもをつくることによってちゃんとした日本になり得てですね、そして国力も増えるんですよ。

 それをモノのようにやっちゃあまずいし、今仰ったね、色んなパターンは事実ですね。ところが、それを全部含めても、いわゆる婚外子というのは全体の子どもの中でも2%というのは圧倒的な事実で、これは日本は世界の中でも非常に婚内子が圧倒的に多い。

 だから、本当に例外なんです。ただ、私はその例外の方にも色んな事情があるから、最高裁が訴訟の中でね、今回の場合はこういう違憲判断のように平等に扱ったらいいじゃないかというのは、これは認めるんです。

 それはそれでいいんです。ところが、ただ、それを一般法に変えてやるときにはね、やっぱり立法府はね、社会全体を見て判断しなければ、社会を変えてしまうんですよ。

 今回の問題で一番の問題はね、憲法とは何かと言うとね、本来は国の形なんですよ。日本人が培ってきたね、日本人としてのモラルを含めた意識の延長線上にある国の形。

 ところが、この今の憲法はこの形から離れたところから伝えられてきたというのは問題ですが
、だから、この憲法判断、平等だと言うだけでですよ、国の形、家族の形、無視した判断が出ちゃうと、今回のテーマからちょっとズレますがね、根本的なところで問題があるということを我々は今回の判決で感じなければいけないと思います」(以上)

 民法改正異論派の本質的な主張はこれまでの西田昌司の発言で言い尽くしているはずだから、以下省略することにする。

 西田昌司は勿論のこと、永岡桂子にしても竹田恒泰にしても、荻原博子にしても、法律婚内の婚外子の問題としてのみ扱い、新しい婚姻の形として増えつつある事実婚から見た婚外子として問題を把えていない。

 白河桃子一人のみが、事実婚から婚外子を把えている。

 特に西田昌司と永岡桂子は法律婚内の婚外子を悪のイメージで把えて家族のあり方を論じていて、西田昌司は、「日本の子どもたちは殆ど婚内子なんですね。婚外子は2.2%しかいない。これは殆ど変わっていない。世界でも一番法律婚がきっちりと守られている国なんですね」と言い、「やっぱり我々はちゃんとした家庭で、ちゃんとした子どもをつくることによってちゃんとした日本になり得てですね、そして国力も増えるんですよ」と言うことで、新しい婚姻の形である様々な事実婚を牽制している。

 西田昌司が言っている「憲法とは何かと言うとね、本来は国の形なんですよ。日本人が培ってきたね、日本人としてのモラルを含めた意識の延長線上にある国の形。

 ところが、この今の憲法はこの形から離れたところから伝えられてきたというのは問題ですが」
は右翼の安倍晋三の思想と重なる。

 安倍晋三が日本国憲法を占領軍がつくった憲法だとして忌避するのは日本の国柄が伝えられていないと言うことからだろう。

 安倍晋三「占領時代に占領軍によって行われたこと、日本がどのように改造されたのか、日本人の精神にどのような影響を及ぼしたのか、もう一度検証し、それをきっちりと区切りをつけて、日本は新しスタートを切るべきでした」(2012年4月28日の自民党主催「主権回復の日」に寄せたビデオメッセージ)

 この発言は西田昌司が言っている「日本人としてのモラルを含めた意識」=「日本人の精神」と「国の形」を「改造された」と言っていることと本質的には同質を成す。

 右翼の軍国主義者安倍晋三は国会答弁で、「最高裁判所の違憲判決の趣旨を踏まえ、民法の規定について検討しているところでございます」と言って、2分の1規定の取り外しに前向きな姿勢を示しているが、ここのところ女性のの活躍を言い、女性の人権尊重を言っている手前、異論を言うことができないからで、本心のところでは反対なのは、2007年に民法の離婚後出生「300日規定」の見直しの動きが出たとき、自民党内から異論が噴出、当時首相だった安倍晋三も同調している。

 安倍晋三「婚姻制度そのものの根幹に関わることについて、色んな議論がある。そこは慎重な議論が必要だ」――

 要するに女性の人権・権利よりも伝統的な家族制度・家族のあり方に拘った――終局的には国の形に拘った。

 右翼の軍国主義者安倍晋三と西田昌司は同じ穴のムジナと見なければならない。

 国の形を「日本人が培ってきたね、日本人としてのモラルを含めた意識の延長線上にある国の形」とさも正当性あるが如くに言っているが、モラルにしても意識にしても、当然国の形にしても完成し、固定したものと認識するのみで、新しいモラルも新しい意識を認めず、当然国の形も時代と共に動き、変化していくものとは把えていない。

 この構図は安倍晋三等が普段口にしている「女性の人権」等の言葉をウソにする現象と言うことができる。

 ウソだからこそ、結果的に法律婚内の事実婚やその婚外子に悪のイメージを与えて、新しい時代の事実婚を同じ悪のイメージに染め上げ、その増加にストップを掛けようと謀ることができる。

 妾の子であろうと、愛人の子であろうと、あるいは事実婚の婚外子であろうと、一個の人格を備えた個人である。世に蔓延ってどこが悪い。法律婚の婚内子と堂々と渡り合う資格を有する。

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