安倍晋三の日本版「国家安全保障会議(NSC)」は中国防空識別圏設定対応から見て満足に機能しない

2013-11-28 08:48:01 | 政治



     生活の党PR

 《特定秘密保護法案の衆議院強行採決を受けて 小沢一郎生活の党代表談話》(2013年11月27日)

 〈昨日、特定秘密の保護に関する法律案が、本会議において強行採決され、与党とみんなの党などの賛成多数で可決された。

 同法律案については、国民世論の多くが反対であり、法曹界からは憲法違反の疑義が指摘され、報道・出版界からも報道・取材の自由が侵害されるとの強い抗議の声が上がっている。さらに与党内からも国民の知る権利を著しく制約することへの懸念が示されている。

 しかし、与党は、こうした国民の世論を踏まえ時間をかけた徹底審議を求めていた野党議員の声を全く無視して、採決を強行した。本来、国民の基本的人権を制約する、このような法律案については、国会で徹底的な審議を行うことが当然であり、与党には、国民世論および野党の要求を真摯に受けとめ、十分な審議時間を確保する器量が求められる。

 この法律案の根本的に問題な点は、「官僚主導」がさらに深刻化することである。米国のように政治家がリードしている国でさえ、ひとたび官僚から「国家のため」といわれると、政治家も情報統制に口出しできないと言われている。ましてや、未だ官僚が政治行政をリードしている日本において、この法律案が成立すれば、官僚が全権を握り、強権的に国民を支配する「全体主義国家」になるおそれすらある。

 そもそも同法律案では、「大臣が特定秘密を指定する」とされているが、それは現実的に不可能である。結局、全て官僚がリストを作り、大臣はハンコを押し追認するだけになる。官僚は、所属する官僚機構の利害を優先するため、次々と特定秘密が指定され、それを入手しようとすると罰せられるということにもなりかねない。最終的に警察・検察国家になる危険性があるこの法律案を推進する政治家群は、自ら自分の首を絞めているようなものである。

 なぜ、国民の代表として国政を信託され行政をリードするはずの与党が官僚主導を強化し、国会の権能を弱め、国民の基本的人権さえ蔑ろにする同法案を強行採決したのか、理解に苦しむ。これは、もはや国民主権に基づく民主政治を否定する行為といえるものであり、本法律案を推進する議員に猛省を求めるものである。

 生活の党は、基本的人権、国民主権という日本国憲法の基本原則と根本的に矛盾するこの特定秘密保護法案に反対する。本日より始まった参議院での徹底審議、国会内外の各界各層との連携の強化によって、本法律案の成立阻止に全力を挙げることを固く誓うものである。〉――

 11月27日日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法が成立した。新設する首相、官房長官、外相、防衛相構成の「四者会合」が外務、防衛などの関係省庁に分かれている情報を一元化、首相官邸主導で外交・安全保障政策の迅速な決定を可能とする仕組みの法律だそうだ。

 「首相を中心として、外交・安全保障に関する諸課題につき、戦略的観点から日常的、機動的に議論する場を創設し、政治の強力なリーダーシップにより迅速に対応できる環境を整備する」と謳っている。

 謳い文句だけを見れば素晴らしいが、大したことはできまい。看板倒れ、ハコモノで終わる予感がする。メンバーとなる右翼の軍国主義者安倍晋三以下、官房長官、外相、防衛相の面々を見てみれば簡単に理解できることである。

 11月23日、中国は東シナ海に防空識別圏を設定した。日本が既に設けている防空識別圏と重なり合い、沖縄県の尖閣諸島上空周辺を含んでいる。その空域に侵入した中国軍機に日本の自衛隊機がスクランブルをかけ、逆に中国軍機が自衛隊機を侵入者と見做してスクランブルをかけるという同時発生的な危険な事態も想定可能となる。当然、危険な事態が不測の事態の発生に進展しない保証はない。

 また、中国の防空識別圏設定は安倍晋三が中国に対して常々「対話のドアはオープンにしている」と宣っていた対中外交の一つの成果でもある。この対中外交能力一つを見ても、強力且つ創造的なリーダーシップに基づいた官邸主導は期待できまい。

 日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法は2013年6月7日国会に提出、10月25日、衆院本会議で審議入りし、11月7日、衆院にて賛成多数で可決、参院に送付、11月8日から参院審議入り、11月27日可決成立した。

 中国の防空識別圏設定は日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法が参院で11月27日に可決成立した3日前の11月23日である。いわば参院で審議中の出来事であった。

 翌11月24日の日曜日、右翼の軍国主義者安倍晋三は神奈川県茅ケ崎市で友人や秘書官とゴルフを楽しんだとマスコミが伝えている。

 記者中国が東シナ海に防空識別圏を設定したが、空をどう守るのか」(下線部分は解説文を会話体に直す)

 安倍晋三「気持いいですね」(時事ドットコム

 要するにゴルフを愉しんでいるのだから、政治の話で煩わすなというイナシなのだろう。

 安倍晋三が中国の防空識別圏設定に関して首相官邸で既設の安全保障会議を開催、岸田文雄外相、小野寺五典防衛相、菅官房長官ら関係閣僚と対応を協議したのは11月26日である。

 11月23日の中国の防空識別圏設定から3日後のことである。中国防空識別圏設定11月23日翌日11月24日の安倍晋三ゴルフから2日後である。

 第一番に参議院で日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法が審議中であり、可決・成立は予定範囲内であったことからして、その組織発足に気持の上で備えていたはずだし、メンバーも日本版NSCの「四者会合」の4者と既設の安全保障会議メンバーと重ねることができることも加えて、成立した場合の新設の日本版「国家安全保障会議(NSC)」の予行演習とするだけの気概を持って、なぜ直ちに安全保障会議を開くことをしなかったのだろうか。

 だが、中国の防空識別圏設定から3日後の安全保障会議であり、たったの24分間の開催となっている。開催後の11月26日菅官房長官の記者会見発言を見てみる。

 菅官房長官「続きまして、中国国防部による『東シナ海防空識別区』の発表について、外務省、防衛省より報告がありました。政府としては、国際社会と連携しつつ、中国側に強く自制を求めてまいる所存であります」(首相官邸

 これだけである。安全保障会議での議論は中国の防空識別圏設定以外は「防衛計画の大綱」の見直しについての議論とフィリピン中部の台風被害についての議論、締めて24分間。

 菅官房長官「次に、フィリピンにおける台風被害及び我が国の対応について、防衛省、外務省より報告がありました。詳細につきましては、防衛省、外務省にお尋ねをいただきたいと思います」(首相官邸

 菅官房長官は午後の記者会見で中国の防空識別圏設定に関して初めて具体的な指示を出している。

 菅官房長官「我が国としては、防空識別圏を飛行する航空機について、これまでのルールのとおりに運用を行っていくとの政府方針を中国側に通告した。

 政府としては、官民一致して対応すべく、改めて国土交通省からそれぞれの航空会社に対し、中国側に飛行計画書を提出しないよう協力を要請した」

 記者「各国も日本と同じように提出しない方向か」

 菅官房長官「殆どの国は提出していないようだ」

 記者「民間機がトラブルに巻き込まれた場合、誰が責任をとるのか」

 菅官房長官「そうしたことは全く考えていない。日本の航空機だけでなく、世界の数十社の飛行機がその空域を飛んでいる。中国側からも『今回の措置は民間航空機の飛行の自由を妨げるものではない』という回答を得ている」(以上NHK NEWS WEB

 当日午後は安全保障会議を開催していないから、安全保障会議で決めたことではないはずだ。

 各航空会社に対する中国当局への飛行計画書提出拒否要請は前日11月25日に全日本空輸と日本航空が、〈防空識別圏を通過する台湾便などの運航で、中国当局に飛行計画の提出を始めたことを明らかにした。〉(MSN産経)ことを受けた対応であろう。

 いわば後手の対応であった。中国が11月23日の防空識別圏設定に当って飛行計画書の提出や防空識別圏を管理する中国国防省の指示に従うことなどの公告を出していたにも関わらずである。

 だが、直ちに対応できずに安倍晋三は11月24日にゴルフ、3日後の11月26日にやっと安全保障会議を開催しても、外務省と防衛省からの報告と国際社会との連携、中国側に対する強い自制要求程度のことしか決めることができなかった。

 日本航空と全日空が政府要請に応じて飛行計画書を提出しないことを決めたのは政府要請の11月26日当日夜になってからである。夜になったのは各航空会社で政府要請に従うべきか従わるべきか協議に時間を要したからだろう。

 このような事態一つとっても、政府のやることは後手の対応だと分かる。
 
 こういった体たらくで、いくら謳い文句が素晴らしかろうとも、日本版国家安全保障会議(NSC)が組織されたとしても、満足に機能すると誰が思うだろうか。

 最初のうちは気張るかもしれないが、そのうちマンネリ化し、形式化するのがオチではないか。結果、謳い文句倒れとなる。

 日本版国家安全保障会議(NSC)を組織したとしても大したことはできないと考える本質的な理由は日本人の思考様式・行動様式が権威主義の図式に従っていることである。上の指示・命令に従う思考・行動に慣らされていて、上と下が上下の境なく忌憚のない議論を交わしてより創造的な結論を得ることに不慣れなため、情報収集には能力を発揮できたとしても、創造的な結論の生み出しに当たる収集した情報の解釈に力を発揮することが期待できない恐れにある。

 情報解釈が満足に機能しないと、解釈した情報の活用にも自ずと限界が生じる。不満足が不満足を相互対応させるということである。

 中国の11月23日防空識別圏設定に対する11月26日午前の安全保障会議開催と午後の各航空会社に対する中国への飛行計画書提出拒否要請の後手の対応はまさに上記ケースに当てはまる、情報をそれなりに収集できたとしても、その情報の解釈と解釈に従った創造的な活用の機能不全を示しているはずだ。

 特に右翼の軍国主義者安倍晋三は合理的判断能力を欠いている。この能力欠如は日本版NSCが謳う「戦略的観点」を成り立たせ可能とする戦略的思考性の未熟を示す。とてもとても強力なリーダーシップなど期待しようもない。

 菅官房長官は当初、日本版国家安全保障会議(NSC)の議事録は作成しないとしていた。だが、参議院は「国の安全保障を損ねない形で会議記録の作成を検討する」(NHK NEWS WEB)とした付帯決議を採択、法案を可決・成立させている。

 要するに「国の安全保障を損ねる」と理由をつけることで、議事録作成を免れることができる。

 だが、議事録作成と作成した議事録公開とは性格を異にする。国の安全保障を損ねることのない一定の年数を経過した後、何が議論されていたのかの国民の検証を得るためにも公開することが自分たちが負っている責任であるはずだが、「国の安全保障を損ねる」という理由で議事録そのものを作成していなかった場合、公開は不可能となり、公開不可能は検証不可能をイコールとして政治行為に欠落を生じせしめ、当然、国民に対する説明責任の不履行へとつながっていく。

 このような議事録作成に関する熱意のなさは既設の安全保障会議の議論を踏まえた状況としてあり、同時に責任感の希薄性に帰着するはずだ。既設の安全保障会議で見るべき創造的な議論(=見るべき創造的な情報解釈)を交わすことができ、見るべき創造的な情報活用に発展させて国民に対する見るべき創造的な利益を生み出していたなら、メンバーとして負っている責任を十分に果たしていることになり、議事録公開は別にして議事録作成自体には何ら躊躇する理由はないはずである。

 だが、逆の状況にあるということは組織として掲げた目的に添う議論すら交わしていないということであるはずだ。

 こういった面からも、日本版国家安全保障会議(NSC)は満足に機能しない恐れを抱えていると言わざるを得ない。

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