薬事法改正案詐術に見る特定秘密保護法案の決して否定できない恣意的秘密指定の危険性

2013-11-22 09:49:35 | 政治

 

 11月12日、医療用医薬品の大衆薬転用市販直後品は安全性評価終了まではネット販売を認めず、劇薬5品目はネット販売禁止を内容とする政府の「薬事法改正案」を自民党総務会は了承した。

 この結果を受けてネット販売大手の楽天三木谷浩史社長が政府の産業競争力会議民間議員を辞任するだ何だの騒動があり、右翼の軍国主義者安倍晋三如きに慰留されて、辞意を撤回、骨のないところを見せている。

 要するに医療用医薬品から大衆薬に転用して市販したばかりの医薬品は安全性評価が終了しなくても一般薬局での販売は許可し、ネット販売は許可しないということになるが、例え一般薬局には薬剤師が存在したとしても、そのことが合理的理由となる販売差別と言えるのだろうか。

 それとも一般薬局の購入者で安全性の実験をしてから、ネット販売に回すということなのだろうか。

 勘繰るとしたら、一般薬局での購買を慣れさせてから、ネット販売に回すということかもしれない。

 慣れは習慣を生むから、一般薬局で買い慣れをつけさせておくといったところでなのかもしれない。

 この勘ぐりが間違っていないとしたら、自民党も政府も薬局業界と調剤薬局と結びついている医師会の利害を代弁した「薬事法改正案」と言うことができる。

 劇薬5品目ネット販売禁止は副作用等についてネット販売では一般薬局の薬剤師程には丁寧な説明対応ができないということなのだろうが、一般薬局での購入者がどれ程に薬剤師の説明を煩わしているのだろうか。

 煩わせたとしても、医者のように脈拍や血圧、その他を計った上で病気の種類とその進行具合を把握してから副作用を説明して薬を処方するわけではなく、購入者が買い求めたい薬の種類に合わせて説明書に書いてある程度のことを話すといったことで役目を終了させているはずだ。

 薬剤師を煩わせることのないその他大勢は大抵が懐具合と箱に書いてある能書きを照らし合わせた買い求めを行い、家に帰ってから箱を開いて中の説明書を読む程度であろう。

 だとしたら、ネット販売でも製品の表示と同時に説明書の表示を義務付けることで問題は片付く。既に説明書の表示を行っているネット販売業者も存在する。リンクページにして印刷できるようにすれば、説明書を手許に控えておくこともできる。

 もし副作用が心配で、一般薬局の薬剤師の説明が必要だという購入者は一般薬局で購入すればいいし、ネット販売での購入を優先する購入者はそうすればいいことであって、要は購入者の判断に任せればいいことではないだろうか。

 大体が薬剤師を置いている一般薬局で購入した医薬品であっても、副作用は一切ない保証はどこにもない。カネボウの美白化粧品が肌が斑になる白斑症状の副作用を起こしたのはまだ記憶に新しい経験である。

 また、副作用を起こしたネット販売の医薬品と同じ医薬品の薬剤師を置いた一般薬局での販売では副作用を起こさないという呪(まじな)いの力を一般薬局が持っているわけではない。

 一部医薬品をネット販売禁止にする合理的理由がどこにあるのか全く以って分からない。

 問題は「薬事法改正案」の一部医薬品ネット販売禁止の理由として政府の規制改革会議の報告書が触れていない理由をさも触れているかのように利用していることである。

 次の記事がこのことに関して取り上げている。《薬のネット販売規制 規制改革会議議長が批判》NHK NEWS WEB/2013年11月19日 21時2分)

 政府「規制改革会議」岡議長が記者会見で、報告書にはネット販売を認めないと記載していないにも関わらず、その報告書を基に厚労省が一部の規制を残すよう求めたことを批判しているという内容の記事である。

 厚労省「副作用があったときに、販売した薬剤師が責任を持って即座に対応できることが必要だ」――

 厚労省はこのような理由で報告書がネット販売を一部規制する必要があるとしているかのように装い、その理由を受けて政府が今の国会に薬事法の改正案を提出したとしている。

 岡規制改革会議議長「安全性を確認した専門家の作業グループの報告書には、ネット販売を認めないという記載は一切なかった。やり方がスマートではなかった。

 薬剤師による対面販売が全国各地で実際にどのように行われているか、しっかりフォローしていきたい」――

 発言の前段は、言葉は「やり方がスマートではなかった」とソフトな批判となっているが、要は報告書を捻じ曲げたということを意味しているはずだ。

 あとで触れるが、最終的にはどう規制するかしないかは政府に決定権があり、規制改革会議の報告書を反映しないこともあるということだが、例えそのことが許されていることであったとしても、その決定に規制改革会議の報告書に基づかない情報をさも規制改革会議の報告の一部であるかのように利用することは情報の捏造であり、情報操作に当たる。

 医薬品のネット販売を全面解禁するかしないかの法律を決める「薬事法改正案」一つ取っても、関係行政機関による情報の捏造や情報の操作といった詐術が平然と行われているとしたら、特定秘密保護法案が秘密指定の過程でどのような情報の捏造や情報の操作等が行われて、恣意性を忍び込ませる詐術を行わない保証はどこにもないことになる。

 岡議長の後段の「薬剤師による対面販売が全国各地で実際にどのように行われているか、しっかりフォローしていきたい」という発言は、厚労省が「副作用があったときに、販売した薬剤師が責任を持って即座に対応できることが必要だ」としたネット規制の理由に果たして正当性があるかどうか、実際の対面販売を検証してみるということなのだろう。

 だが、検証してみるまでもなく、頭痛薬を服用したら胃の調子が悪くなった程度なら簡単な対応で済むが、一定程度以上の副作用の場合、医者の治療を頼まずに薬剤師がどう対応できるというのだろうか。

 後者の副作用の場合、ネット販売の医薬品でも同じことであるはずだ。

 副作用のない薬は存在しないと言われている。副作用が軽いか重いかの差しかないと認識し、重い場合は即座に医者に見て貰うことを各個人のルールとして一般薬局の医薬品であろうとネット販売の医薬品であろうと付き合うことが肝要であるはずだ。

 政府の規制改革会議がどのような報告書を纏めたのか見ることによって、報告書に対する厚労省の情報の捏造や情報の操作がどの程度のものか判断できる。《第19回規制改革会議終了後記者会見録》を見ると、纏めた報告書の内容をほぼ知ることができる。
 
 岡議長の発言の主なところと質疑の主なところを拾うことにする。

 岡議長「これまで何度か皆様とお話をする機会がありましたので、皆さんにも御理解いただいていると思いますけれども、私ども規制改革会議といたしましては、『安全性を確保した上で』ということで、安全性を大変重要視していることを、まず強調したいと思います。その上で、対面販売とインターネット販売における合理的な理由なき差別はすべきではないということが私どもの一貫した主張であります」――

 どうも「安全性の確保」という点が理解できない。薬品の安全性の確保は第一義的には製薬会社が負うべきで、その製造販売の担保は製薬会社の臨床試験等を経た厚労省の承認が負っている。

 だからと言って、厚労省の製造販売の承認が常に正しい訳ではないことは過去の経験が教えている。

 だが、この経験は対面販売もネット販売も等しく負うもので、薬剤師がいるいないで決まるわけではなく、差別はないはずだ。副作用が実際に出た場合の対応は既に述べた。

 岡議長「結論的には、28品目が他の一般の薬と比較して、やはりまだまだ注意しなければいけない部分があるのであれば、そこのところはしっかりと議論をしていただいて、そのための販売方法を含めて、きちんとルールづくりをしてもらうべきではないのかということもこのペーパーに書いてあるとおりであります。ただし、繰り返しになりますが、合理的な理由なくして、対面販売とインターネット販売の差別をすることはおかしいですねということです」――

 差別をつけるなら、差別が許される合理的理由を言えと言っている。

 記者「規制改革としての意見というのは、劇薬5品目に関しても含めて、改めて全面解禁ということを求めていらっしゃるのか。まず、そこを確認させてください」――

 岡議長「私どもの意見は23プラス5品目、28品目全てを対象として、合理的な理由なく、対面販売とインターネット販売で差をつけることはやるべきではないということを言っているわけです。全面解禁するかしないかは政府が決めることですが、全面解禁するときに、インターネットだけはだめですよ。対面販売だけは認めますよということに対しては、私たちは賛成できませんと申し上げている。そういうことでよろしいですか」――

 ここで最終決定権は政府にあるということを言っている。但し規制改革会議の意見として、差別はあってはならないと釘を刺している。

 岡議長「厚労省とのやりとりの中で、対面販売におけるフェース・トゥ・フェースで顔色がどうだとかという部分はインターネット販売ではカバーできませんねという発言が厚労省側からありました。それは言いかえれば、対面との比較において、インターネットではカバーし切れない部分の具体例だと思います。厚労省からはその点をかなり重視した発言がございました」――

 厚労省としてはこの点に対面販売の有利性の一つを置いているということだろうが、顔色は病気の兆候の一つであって、病気の原因ではない。医薬品の購入者が病気の原因、もしくは具合の悪い身体の部位の自覚がなければ、対面販売であろうとネット販売であろうと医者以外は対応することはできない。

 もし自覚しているなら、対面販売もネット販売も等しく対応できる。但し緊急の服用を必要とする場合、ネット販売では間に合わない。購入者は時と場合に応じて対応すればいいことであって、規制に関係していくわけではない。

 市販薬で済む軽度の持病の場合、前以てネット販売によって用意しておく服用者も存在するはずだ。

 記者「(劇薬5品目を)ネットと対面で差別するという案に関して、議長として、または会議として、どんなやり方であったとしても、ネットは禁止というのはダメなのだという形のお考えなのか、それともきちんとした理屈付けがあるのだったら、それぐらいだったら除いてもいいのかなという思いなのか、そこの点を伺えますか」

 岡議長「『劇薬に対して』と限定した言い方がいいか別にして、私どもは一貫して、『合理的な理由があれば』と言っているわけです。『合理的な理由があれば』と。

 ですから、もしも、これは対面販売だけこの条件で販売することはオーケーだけれども、インターネット販売の場合にはだめですよというアイデアを出すのであれば、なぜだめだということについての合理的な説明をしていただく必要がありますと、我々は以前から言っているし、今日も申し上げているわけです。

 ですから、具体例として、例えば劇薬5品目について、こういう理由があるから、当面、対面に絞りますよ、こういう理由があるからということを出していただいて、それを私どもが納得できる合理的な説明があれば、頑なに、無条件で、何があっても対面とインターネットを同列にしろと申し上げているわけではないですから、そこのところの説明が、残念ながら今日の会議でも、委員の皆さんが納得するような説明がいただけなかったということです」――

 要するに対面販売とネット販売を差別してネット販売に規制をかける「合理的理由」もしくは「合理的説明」は存在しないという前提に立った報告書の取り纏めということになる。

 逆の前提なら、こうまでも無差別論を自信を持って展開しないだろう。

 だが、厚労省は一部医薬品のネット販売禁止を決める内容の「薬事法改正案」とした。

 当然、そこには合理的な理由、もしくは合理的な説明があって然るべきだが、規制改革会議の報告が触れている理由でもあるかのように装った。

 厚労省自らが「合理的理由」もしくは「合理的説明」を構築することができず、規制改革会議の報告書を捻じ曲げる情報の捏造と情報の操作を用いた理由づけに過ぎなかった。

 一部業界の利益を代弁する利益誘導の体質を今以て抱えているとしたら、成立した場合の特定秘密保護法の秘密指定に関しても、業界の利益を代弁する、恣意的意図を介在させた秘密指定が紛れ込まない保証はない。

 当然、秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関の設立は欠かすことのできない必要事項となる。

 「薬事法改正案」から見ることができる情報の捏造と情報操作から、特定秘密保護法案の秘密指定を考えてみた。

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