プーチンは北方四島共同経済活動で安倍晋三の平和条約締結交渉に向けたシナリオを逆手に取っていないか

2017-05-08 12:57:36 | Weblog

 ――日本時間2017年4月27日日露共同記者会見を首相官邸サイトに公開しないのは安倍晋三の不都合を隠す情報隠蔽ではないのか――

 安倍晋三がロシアのモスクワを訪問、日本時間の2017年4月27日午後8時半過ぎからプーチンと日露首脳会談、会談後共同記者会見を行った。

 首脳の共同記者会見となると、いつもは二三日後に首相官邸サイトにその動画とテキストが公開される。4月27日の日露共同記者会見から10日以上も経過しているが、今回に限ってどちらも載らずじまいとなっている。

 2016年12月15日山口での日露首脳会談と12月16日東京での日露首脳会談後の12月16日日露共同記者会見は動画とテキスト共に公開されている。公開は国民に対する説明責任の問題に属す。今回は説明責任を果たさないことになる。

 なぜなのだろうか。 

 モスクワに向けて羽田空港を出発する際に行った対記者団発言は《首相官邸》サイトに公開されている。

 安倍晋三「プーチン大統領とは、昨年12月の長門会談の成果の上に、平和条約交渉を着実に前進させていきたいと思います。そのために北方四島での共同経済活動、そして元島民の皆さんの自由な墓参の実現について、大きな一歩を記したいと考えています。

 さらには、喫緊の課題である緊迫する北朝鮮情勢について、またシリア情勢について、様々な世界の課題について率直に意見交換を行い、共に連携して取り組んでいくこととしたいと考えています」

 要するに「北方四島での共同経済活動」と「元島民の自由墓参の実現」が「平和条約交渉進展」に資するとの考えで首脳会談に臨む姿勢でいる。

 この場合の姿勢はあくまでもこちら側の希望であって、相手の姿勢と合致する場合もあるし、合致しない場合もある。当然、当方の姿勢が首脳会談に適宜反映されたかが問題となる。

 反映の程度は共同記者会見に現れる。あるいは共同記者会見から汲み取らなければならない。

 となると、肝心の共同記者会見を公開してこそ、国民に対する説明責任を果たすことになる。だが、果たさなかった。

 安倍晋三の共同記者発表での発言要旨を次の記事から見てみる。

 2017年4月28日付《【日露首脳会談】共同記者発表での安倍晋三首相発言要旨 調査団派遣「歴史的試みだ」》産経ニュース/2017.4.28 22:08)      

 安倍晋三「4年ぶりにモスクワを訪問することができ大変うれしく思う。温かく迎えていただいたプーチン大統領とロシア国民の皆さまに心から感謝を申し上げたい。

 山口・長門で大統領を迎えた昨年12月。北方四島の元島民の切実な思いを託した手紙を真剣なまなざしで読んでくれた。君の姿は私のまぶたにいまも焼き付いている。大統領は記者会見で「心を打たれた』と率直に語ってくれた。

 初めて、北方四島の元島民の方々に航空機を利用してお墓参りをしていただくことが決まった。6月中に国後島と択捉島のお墓にお参りしていただきたい。長い間、国後島の古釜布1カ所に限られていた出入域手続きの場所を今後増やす。本年は歯(はぼ)舞(まい)群島の付近に設置することで合意した。

 北方四島における共同経済活動についても話し合った。エコツーリズムなど北方四島ならではの観光を盛んにする。その最初の一歩として5月中にも官民による現地調査団を派遣することで合意した。これは歴史的な試みだ。新しいアプローチを通じ両国民間の信頼を増進させ、ウラジーミルと私の間で平和条約を締結したい。私が昨年、ソチで提案した8項目の協力プランも着実に前進している。

 首脳会談では北朝鮮について時間を割いて話した。ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国であり、6カ国協議の重要なパートナーだ。引き続き緊密に協力し、北朝鮮に対し安保理決議を完全に順守し、さらなる挑発行為を自制するよう働きかけていくことで一致した。シリア情勢、テロとの戦いをはじめ、世界が直面する課題はロシアの建設的な役割なくして解決できない。国際社会で日本とロシアがいかに協力を進めていくべきか、真剣にそして率直に議論した。

 ウラジーミルとは7月の20カ国・地域(G20)首脳会議の際に会うことで合意。9月のウラジオストクでの東方経済フォーラムでの再会も楽しみにしている。

 安倍晋三がモスクワに向けて出発する際に羽田空港で明らかにした「北方四島での共同経済活動」と「元島民の自由墓参の実現」が「平和条約交渉進展」に資すると考えていた内、「元島民の自由墓参の実現」は果たすことができたようだが、「北方四島での共同経済活動」は「5月中にも官民による現地調査団を派遣することで合意」へと「最初の一歩」を踏み出したことになる。

 共同経済活動に関する話し合いもなかなかの上出来だったと見なければならない。だから、その「最初の一歩」を「歴史的な試みだ」と自賛することができたのだろう。

 そして「最初の一歩」が最終目的に繋がる感触を得たはずだ。感触に応じて「新しいアプローチを通じ両国民間の信頼を増進させ、ウラジーミルと私の間で平和条約を締結したい」と平和条約締結の期待を安倍晋三をして抱(いだ)かしめた。

 これは希望的観測であってはならない。政治は現実主義に徹しなければならない。安倍晋三がプーチンとの首脳会談で得た感触、あるいは期待は共同記者会見でのプーチンの発言からも窺うことができなければならない。そこに両者の意見や主張の一致を見ることができる。

 もし窺うことができるプーチンの発言となっていたなら、共同記者会見の両首脳の発言を首相官邸サイトに公開しないまま国民の説明責任としない合理的な理由は存在しないことになる。
  
 安倍晋三にしても公開して国民への説明責任を果たすと同時に会談の成果を自慢したいはずだ。

 だが、そういった展開を取らなかった。 

 北方四島での共同経済活動開始に当たって現在一番の障害は日露双方の法的立場を害さない「特別な制度」を設ける交渉が全然進展していないことにあるとマスコミは伝えている。

 考えるに北方四島に対しては日露双方共に自国領土とし、双方共に主権を主張している関係から、領土と主権の二つの主張を双方共に降ろさないままにロシアの法律にも日本の法律にも依拠しない「特別な制度」を設けることで日露双方の法的立場を害さないように配慮し、その上で領土の帰属=主権の帰属を最終的に解決して平和条約に持っていくということなのだろう。

 だが、東京都内で2017年3月18日に開催した北方領土での共同経済活動に関する初の日露次官級協議ではロシア側は「ロシアの法律に矛盾しないような条件に基づいて実現しなければならない」と主張し、その法律下での経済活動であることを譲らなかったとマスコミは伝えている。

 いわばロシアの主権下のみでの共同経済活動に拘った。

 この日露次官級協議でのロシア側の主張はプーチンの意向を反映させているはずだ。4月27日の日露首脳会談でのプーチンの共同経済活動に関わる姿勢にイコールさせなければならないのだから、大統領の意向を反映させない一外務官僚の主張ということはあり得ない。

 いわば共同経済活動での「特別な制度」に関しては3月18日の日露次官級協議で既に答が出ていた。

 だからなのだろう、北方四島における共同経済活動開始の「最初の一歩」は日露双方の法的立場を害さない「特別な制度」構築の進展に置かなければならないにも関わらず、それを5月中の官民による現地調査団の派遣に置くことになった。

 ロシアは安倍晋三提唱の北方四島での共同経済活動を熱望している。熱望していても、ロシアの法律の適用を譲らないでいる。

 上記共同記者発表での安倍晋三発言要旨には、「新しいアプローチを通じ両国民間の信頼を増進させ、ウラジーミルと私の間で平和条約を締結したい」との安倍発言を伝えている。

 安倍晋三は平和条約締結交渉の前提に「両国民間の信頼を増進させ」ることができると信じている共同経済活動を置いていて、共同経済活動を通して構築することになる日露両国民の信頼を武器に平和条約締結交渉に持っていくというシナリを描いていることが分かる。

 いわば現在の安倍晋三にとっては平和条約締結が至上命題となっていて、今や共同経済活動の実施が平和条約締結交渉に持っていくための最重要の通過点となっているということになる。

 ということは、共同経済活動の実施が前進しなければ、安倍晋三は意に反していつまで経っても平和条約締結交渉までの道のりが遠いままとなる。

 プーチンはそのことを見抜いていて、安倍晋三のシナリオを逆手に取り、ロシアの主権下のみでの共同経済活動を譲らないでいたなら、安倍晋三が平和条約締結交渉を間近に手繰り寄せたいばっかりにプーチン側の思惑に乗るのではずだと計算して、そのためのプーチンの意向を反映させた3月18日日露次官級協議での「ロシアの法律に矛盾しないような条件に基づいて実現しなければならない」というロシア側の主張ということではないだろうか。

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