菅義偉の「総理のご意向」文書「信憑性なし」は自分たちの一方的な主張、前事務次官の主張と突き合わすべき

2017-05-27 11:49:46 | 政治

 国家戦略特区指定を受けた愛媛県今治市に建設中の学校法人加計学園岡山理科大学の獣医学部新設の特定事業に絡んで安倍晋三の意向が働いた便宜供与を窺わせる文科省作成の文書の存在を朝日新聞が5月17日朝刊で報道した。

 文書は8枚とか9枚あるとかで、その1枚は次のような内容となっているという。【】内は文書題名。

 【大臣ご確認事項に対する内閣府の回答】 

 〇(今治市獣医学部設置する時期)設置の時期については、今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、
  これは総理のご意向だと聞いている。

 〇規制緩和処置と大学設置審査は、独立の手続きであり、内閣規制緩和部分は担当しているが、大学設置審査は文部科学省。設置審査の所で不足の事態(平成30年
  開学が間に合わない場合)はあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない

 〇「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので総理からの指示に見えるのでは無いか。平成30年4月は11月上中旬には本件を諮問会議に
  かける必要があり、以前に官邸から「内閣」としてやろうとしていることを党の部会で議論するなと怒られたので、内閣府は質疑対応はするが、党内手続きに
  ついては文科省が政調(党政務調査会)と相談してやってほしい

 内閣府の長は内閣総理大臣、現在は安倍晋三であって、ナンバー2は内閣官房長官、現在の菅義偉である。

 広島県と愛媛県今治市が国家戦略特区に指定されたのは2016年1月。

 内閣府の国家戦略特別区域諮問会議(安倍晋三議長)が規制改革分野の一つとして学部新設や定員増の抑制措置が講じられている獣医学部について特区地域に限定して獣医学部の新設を可能とする制度改正の取組みを決定したのは2016年年11月。

 加計学園が国家戦略特区指定を受けた愛媛県今治市に獣医学部新設の特定事業に応募し、認定されたのは2017年年1月。

 松野博一は2016年8月3日から文科相に就任しているから、「大臣ご確認事項」の大臣とは松野博一を指すはずだ。

 要するに松野博一が文科省として国家戦略特区に指定された今治市に加計学園獣医学部新設認定に向けでどう進めたらいいか内閣府に問い合わせ、その問い合わせに対する内閣府からの回答となっている。

 内閣府は、〈今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。〉と、先ず「総理のご意向」を振りかざしておいて、〈大学設置審査は文部科学省。設置審査の所で不足の事態(平成30年開学が間に合わない場合)はあり得る話。〉と、大学設置の許認可権限のある文科省に対して加計学園獣医学部が学部新設や定員増の抑制措置が講じられきた経緯から設置審査で不認可や認可遅れといった不測の事態が起こり得ても、〈関係者が納得するのであれば内閣府は困らない〉と、一見仕方のないこととしながら、その実、主たる関係者は「総理のご意向だ」とした安倍晋三なのだから、納得するはずはないにも関わらず、〈内閣府は困らない〉、困るのは文科大臣だと暗に威している。

 ご存知のように朝日新聞報道の文書に対して政府は「怪文書」だとか、「信憑性がない」などと否定に躍起となった。

 ところが5月25日発売の週刊文春が「文書は本物」だとする前川喜平文科省前事務次官の証言を載せていることが判明、前川喜平事務次官自身が5月25日に東京都内で記者会見を開き、「文書は本物で、文科省専門教育課で作成され、幹部で共有された」と証言。

 前川喜平事務次官は文科省ぐるみの天下り問題に中心的に関わり、2017年1月にその責任を取って辞任、2017年5月22日付けの読売新聞が在職中に売春や援助交際の交渉の場になっている東京都新宿区歌舞伎町の出会い系バーに頻繁に出入りしていたと報道、この情報は官邸がリークしたと噂された。

 5月25日の前川喜平事務次官の記者会見でも出会い系バーについて記者から質問を受けている。その質問個所を「産経ニュース」から見てみる。  

 記者「読売新聞に前川喜平氏が出会い系バーに行っていたという記事が出ていた。権力の脅しではないかと思うが、こういう記事についてどう思うか。今回、自ら記者会見することに影響したのか」
 前川喜平「出会い系バーというものがありまして、読売新聞で報じられたが、そういったバーに私が行ったことは事実です。

 経緯を申し上げれば、テレビの報道番組で、ドキュメント番組で、いつどの局だったかは覚えていないが、女性の貧困について扱った番組の中で、こういったバーでデートの相手を見つけたり、場合によっては援助交際の相手を見つけたりしてお金をもらうという女性がいるんだという、そういう女性の姿を紹介する番組だった。

 普通の役人なら実際に見に行こうとは思わないかもしれないが、その実態を、実際に会って話を聞いてみたいと思って、そういう関心からそういうお店を探し当て、行ってみた。

 その場で話をし、食事したり、食事に伴ってお小遣いをあげたりしながら話を聞いたことはある。

 その話を聞きながら、子供の貧困と女性の貧困はつながっているなと感じていたし、そこで話を聞いた女性の中には子供2人を抱えながら、水商売で暮らしている、生活保護はもらっていないけれど、生活は苦しい。就学援助でなんとか子供が学校に行っているとか、高校を中退してそれ以来ちゃんとした仕事に就けていないとか。あるいは通信制高校にいっているけどその実態が非常にいい加減なことも分かった。

 いろいろなことが実地の中から学べた。その中から、多くの人たちが親の離婚を経験しているなとか、中学・高校で中退や不登校を経験しているという共通点を見いだした。

 ある意味、実地の視察調査という意味合いがあったわけですけれど、そこから私自身が文部科学行政、教育行政をやる上での課題を見いだせた。ああいうところに出入りしたことは役に立った。意義があったと思っている。

 あと、読売新聞がこの問題をどうして報じたのか。私の極めて個人的な行動ですから。それをどうして読売新聞があの時点で報じたのかは私には分からない」

 記者「権力の脅しかということはどうか」

 前川喜平「私はそんな国だとは思いたくない」

 代理人弁護士「その点は明らかな証拠はないですから、何とも答えようがない」(以上)

 前川喜平事務次官の記者会見発言に関して官房長官の菅義偉が5月26日午前の記者会見で発言している。産経新聞の記事を伝えている2017年5月26日付「BIGLOBEニュース」から見てみる。  

 菅義偉「8つの文書は出所不明のものであり、信憑性も欠ける。その点は変わらない。また、内閣府に聞いたところ、文書にあるような『官邸の最高レベルが言っている』とか『総理のご意向』とか、こういうことを言った事実はない。安倍晋三首相からそうした指示をされたことはなかった。その中に私の部分、私の補佐官についての部分も言及されているが、全く事実と異なっている」

 要するに菅義偉は前川喜平事務次官の記者会見での文書に関わる発言に関してはこれまで通りに全面的に否定している。尤も全面否定でなければ、自ら矛盾を演じることになるから、初めから分かり切った反応ということになる。

 では、前川喜平事務次官が出会い系バーに通っていたことに対する菅義偉の反応を見てみる。

 記者「前川氏は会見で出会い系バー通いを認めた上で、杉田和博副長官から注意を受けたことを明らかにした。杉田氏から報告を受けたか」

 菅義偉「昨日の前川さんの会見を踏まえて、杉田副長官に確認したところ、前川氏がそういう場所に出入りしている情報を耳にし、(次官時代の)本人に確認したところ、事実であったということで、厳しく注意したということであります。杉田副長官から報告を受けた。

 また、昨日の前川氏の会見では、女性の貧困問題の調査のために、いわゆる出会い系バーに出入りし、かつ女性に小遣いを渡したということでありますけど(ふっと嘲笑めいた笑いをこぼす)、ここはさすがに強い違和感を覚えました。多くの方もそうだったのではないか。常識的にいって、教育行政の最高の責任者がそうした店に出入りして、小遣いを渡すようなことは、到底考えられない」

 双方の記者会見の双方の発言から、前事務次官が出会い系バーに通っていたことは事実であり、そのことについて前事務官が杉田内閣官房副長官から注意を受けたことも事実であることが分かる。

 だが、前事務次官が述べている出会い系バーに通っていた目的に関しては菅義偉がそれを述べているとおりの事実ではないと否定していないものの、「強い違和感を覚えた」、「到底考えられない」という表現で事実として疑わしいとしていることは、その事実が前事務次官の一方的な主張に過ぎないと見ているからだからだろう。

 だが、この一方的な主張という点では文書に「総理のご意向」関係者として実名か役職名で載っている安倍晋三を筆頭に菅義偉や文科相の松野博一、文科副相の義家弘介、官房副長官の萩生田光一等々が国会や記者会見で、「(内閣府や文科省に)働きかけていたのなら、私、責任取りますよ」(安倍晋三)、「信憑性がない」、あるいは「怪文書みたいな文書」(菅義偉)、「文書の信憑性について疑問を持っている」(萩生田光一)、「そもそもこの文書が事実の文書であるかどうか、分からない」(義家弘介)と言っていることに関しても本人たちがそう言っているだけの一方的な主張の可能性は否定できない。

 いわば安倍晋三以下、菅義偉たちがそのようにつくり上げている事実に過ぎないということもあり得る。

 勿論、前事務次官の「文書は事実だ」という発言も本人がそう言っているだけの一方的な主張だと切って捨てることはできるし、そうしたい側が見れば、そうだとすることができる。

 だが、その理由として前事務次官が実際には不届きな目的で出会い系バーに通っていたとしても、その不届きさを以って記者会見での「文書」に関する発言の全てまでを一方的な主張だとする根拠とすることはできない。

 当事者からすれば、自己保身や自己正当化のためにどちらが事実に反する自分たちに都合がいいだけの一方的な主張を口にしているのかは重々承知しているものの、それを隠している以上、お互いが相手に対して一方的な主張に過ぎないと見做す平行線がいつまでも続くことになる。

 平行線を断ち切る方法として、完全な方法とは言えないが、双方の主張を突き合わせることができる前事務次官の国会への参考人招致以外にない。

 完全な方法ではないのは国会という場でもどちらか一方が自分たちがそう言っているだけの一方的な主張を繰り広げて、相手の主張を事実に反するとか、一方的な主張に過ぎないと言い募って、決着がつかないままに質疑応答をおしまいにすることができるからだ。

 だが、少なくともどちらがナチスのゲッベルスもどきに「ウソを100回言えば事実となる」の巧妙な策略を用いたのか、参考人招致を聞く者をして印象づけることができるはずだ。

 このような印象づけを回避するために自民党は前事務次官の国会への参考人招致に反対しているのだろう。

 このように思われないためにも、自民党は参考人招致に応じるべきだ。

 
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