社民党の福島瑞穂が2017年11月30日の参院予算委で冒頭から安倍晋三に対して今治市構造改革特区申請の獣医学部の事業主体が加計学園であることを承知していたと2017年4月18日自身提出の質問主意書に対する政府答弁書でも、2017年6月16日参院予算委でも答弁していると迫った。
福島瑞穂は安倍晋三の答弁を求めたが、梶山静六の息子の内閣府特命担当相(地方創生、規制改革)である二世梶山弘志が答弁に立った。
この答弁は重要な意味を持つゆえに枠付きで表示することにする。文飾は当方。
梶山弘志「質問書の内容ですので私の方から答弁します。先程の閉会中審査に於きましても ご説明させて頂きましたけども、もう一度改めてということであります。 今治市の獣医学部新設にかかる構造改革特区の申請は平成19年の福田内閣のときに初めて申請が行われ、それ以来、民主党政権の頃までは加計学園の事業主体である旨の記載があります。 ですけれども、15回申請しており、最初の5回が加計学園の名前が出ているということであります。この政府答弁書では政府は継続しているものであるところから、先ず安部政権が成立する以前の事実関係について記載をして頂きました。 第2次安倍政権発足以降も今治市から4回に亘って構造改革特区の申請が行われました。これらについてはいずれに於いても今治市の提案に加計学園との記載はございません。 但し政府は継続しているものであり、いずれもこうした提案を受けて、構造改革特区にかかるその後の様々な政府決定がなされたこと、構造改革特区にかかる対応方針が総理が議長を務める構造改革特区本部で決定していることから、この答弁書は今治市からの提案について、今治市からの提案について(このことを認識させるために声を強めて繰返す)総理が知り得る立場にあった趣旨を答弁したものであります。 しかし先の閉会中審査で総理が改めて整理して申し上げたとおり、今治市の提案については10数件ある案件の一つに過ぎず、結果も4回とも提案を事実上認めていないものありまして、しかも今治市の名称だけでありまして、実際には全く認識していなかったものと考えております。 最終的に本年1月に事業者の公募を行い、加計学園から応募がありました。その後1月20日の(国家戦略特区)諮問会議で認定することになりますが、その際は総理は初めて加計学園の計画について承知をしたところであります」 |
梶山弘志の発言そのものが、勿論正式な名称はないが、暗黙裡に存在する安倍晋三肝入りの加計学園安倍晋三政治関与疑惑隠しチームによる疑惑追及逃れに補強し、統一した理論なのだろう、安倍晋三も後の答弁で同じ内容の発言、同じ論理を使って事業者主体が加計学園であることを本年1月20日まで知らなかったと答弁している。
梶山弘志の答弁を解釈すると、安部政権成立以前の事実関係を今治市15回申請のうち最初の5回のみに獣医学部の事業主体が加計学園である旨の記載があったが、第2次安倍政権発足以降の今治市の申請では加計学園の記載はなかった、
そのため加計学園が獣医学部の事業主体であることは承知していなかったが、獣医学部新設の提案者が今治市であることは認識していたために政府答弁書で今治市であると言うことについては「総理が知り得る立場にあった趣旨を答弁した」という意味を取ることになる。
政権交代があっても、政府そのものは「継続している」なら、今治市が提案を取り下げすに継続して申請している以上、申請の内容事項については、構造改革特区が国家戦略特区へと体制を変えたとしても、引き継いでいかなければならないことになる。
例え「今治市の名称だけで」加計学園の名前が記載されていなくても、新設獣医学部の事業主体を少なくとも想定していないことには今治市側も申請そのものは不可能であり、申請から認可に向けて着々と手を打つことも不可能である。
逆説すると、15回申請のうち最初の5回に加計学園の名前を記載していなかったとしても、その後も加計学園を事業主体と想定していたからこそ、申請そのものの不可能を回避できたはずだ。
途中から加計学園以外に変わっていたなら、内閣府の公募に対して加計学園は応募することはなかった。加計学園自体が応募したことは今治市は継続して変わらずに加計学園を事業主体として想定していたことになる。
このことは次のことが証明する。
今治市市議会が獣医学部建設用地(16・8ヘクタール)を学園に無償譲渡する議案と校舎建設費192億円の半額にあたる96億円(県との合計限度額、うち市の上限64億円)の債務負担行為をする議案を賛成多数で可決したのは2017年3月3日のことである。
だが、建設用地のボウリング工事開始は2016年10月31日。校舎建設や敷地整備に取り掛かる地鎮祭は2017年3月28日である。福島瑞穂が質問主意書を提出した2017年4月18日よりもボウリング工事開始は半年前であり、地鎮祭は約20日前となる。
建物着工は2017年4月1日となっている。
今治市市議会が建設用地の無償譲渡を決める前にその土地に足を踏み入れて工事を開始していた。
加計学園の2017年1月10日事業主体応募前は国家戦略特区諮問会議でもワーキンググループヒアリングでも加計学園の名前が表に出ないまま、その陰で加計学園は開学に向けて準備を着々と進めていたのである。
獣医学部新設申請が「今治市の名称だけで」あったとしても、構造改革特区当初の加計学園を事業主体と想定した今治市の獣医学部新設申請という形態は何も変わらずに継続されていたのである。
そもそもからして今治市が事業主体をどこに想定して獣医学部の新設申請を行っているのか、国側が認識しないこと自体が不自然極まりない。当然、構造改革特区への当初の申請同様に事業主体が加計学園であると想定するか、あるいは確認しなければならない。
だが、その両方共行わずに加計学園の名前は隠れたまま(隠したままと言うべきか)、今治市への獣医学部新設だけが議論され、決められていった。
福島瑞穂は安倍晋三に対して今治市が新設を申請している獣医学部の事業主体がどこなのか考えたことも、あるいは確認しようともしなかったのか問い質すべきだった。
要するに梶山弘志が最初に示した加計学園であることは知らなかったとする疑惑追及逃れの理論を打ち破る角度を変えた追及が必要であるにも関わらず、2017年4月18日の質問主意書に対する政府答弁書の文言と2017年6月16日参院予算委の安倍晋三の答弁をベースにした追及に何度も拘って再度取り上げ、虚偽答弁ではないのかと迫るだけで、安倍晋三から梶山弘志の発言と殆ど同じ内容の答弁を引き出す徒労を演じるのみであった。
福島瑞穂の何度かの同じ追及のあとの安倍晋三の答弁も枠付きで記載してみる。文飾は当方。
加計学園安倍晋三政治関与疑惑隠しチームによる疑惑追及逃れの統一した論理なのだろう、安倍晋三も後の答弁で同じ内容の発言、同じ論理を使って事業者主体が加計学園であることを本年1月20日まで知らなかったと答弁している。
安倍晋三「この件についても閉会中審査で既に申し上げているところでございますが、この今治市の提案については正に今治市が提案したものであったわけでございますが、最終的には応募に応じて加計学園が公募に応じた段階で我々が知る立場になる、本年1月に事業の公募を行い、加計学園から応募があった後にですね、1月20日に諮問会議で認定することになりますが、私が直接知ったのが諮問会議でありますから、ワーキンググループなどに出席しないわけあります。いちいち情報を受け取ることもありません。 ですから、加計学園から応募があったその後、1月20日に諮問会議で認定することになりますが、その際、初めて加計学園の計画について承知をしたというところであります」 |
福島瑞穂は「誰も納得しません」と言い、相手が認めまいとしている理論を打ち破るのではなく、上に挙げた参議院予算委の安倍晋三の答弁だけを頼りに無理やり認めさせようとするムダな努力を費やすのみであった。
安倍晋三は「私が直接知ったのが諮問会議でありますから、ワーキンググループなどに出席しないわけあります。いちいち情報を受け取ることもありません」と言っている。
このことは2015年6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループヒアリング」に3名の加計学園関係者が出席していたにも関わらず、議事要旨に記載がないことを言っているのだろう。
確かに国家戦略特区諮問会議議長の安倍晋三はワーキンググループヒアリングには出席しない。だが、そこで議論され、結論を得た情報を上部の会議体である国家戦略特区諮問会議で出席者全員に報告されて、その情報を全員で共有しないことには諮問会議として出さなければならない更に上の結論に導く議論は行うことができないことになる。
いわばワーキンググループヒアリングで議論された情報は国家戦略特区諮問会議での議論の踏み台となって、一定の情報を形成しなければならない。あるいは踏み台にして、一定の情報を積み上げていかなければならない。
もし情報の共有が行われず、安倍晋三が言っているように「情報を受け取ることもなく」、ワーキンググループヒアリングの議論、その全体としての情報と断絶した形で諮問会議で議論が行われるとしたら、ヒアリングの意味を失うし、開く意味も失う。
2015年6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループヒアリング」は政府側はWG委員でもあり、諮問会議の有識者議員でもあるアジア成長研究所所長の八田達夫がこの場の座長として出席、提案者側から愛媛県企画振興部地域振興局長や地域政策課主幹、今治市企画財政部企画課長が出席して「国際水準の獣医学教育特区」を議題にどのような獣医学部を目指すかを議論している。
そして既に触れたように議事要旨には出ていないが、加計学園関係者が説明補助者として出席して発言もしていた。
当然、加計学園関係者が議論に加わっていたことと加わって議論し、纏めた情報は諮問会議に反映され、諮問会議での議論の参考とし、諮問会議の情報として纏めなければならない。諮問会議の議長である安倍晋三にしても、議長が飾りでなければ、WGヒアリングの情報を共有する一人でなければならない。
加計学園が事業主体であることを承知していたからこそ、諮問会議の議論がWGヒアリングの情報と断絶しているような装いを見せなければならなかったのだろう。
福島瑞穂は安倍晋三が巧みに言い逃れるかもしれないが、「情報を受け取ることもなく」と言っていることの矛盾を突いて、それを少しでも広げる追及をすべきだったが、既に固めている言い逃れの理論を突く一本調子の追及にのみ時間を費やし、同じ答弁でかわされる堂々巡りを演じるのみであった。