河野太郎のトランプのエルサレム首都移転に触れないイスラエルとパレスチナの2国家解決支持のマヤカシ

2017-12-28 11:52:21 | 政治

 巧みな言葉遣いてたぶらかす点で安倍晋三と人間性がたいして変わらない日本の外相河野太郎が12月24日から12月29日に中東を訪問、25日夜(日本時間26日未明)、イスラエルのネタニヤフ首相兼外相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と相次いで会談した。

 イスラエルで25日夜、記者会見を開いた。

 「イスラエル記者会見」外務省/2017年12月25日(月曜日)21時50分)     

 冒頭発言

 河野太郎「外務大臣就任後,初めてのイスラエル,パレスチナ訪問となりました。
 先般,アメリカのエルサレムに関する発表後,主要国の外務大臣としては初の訪問となったという風に理解をしております。イスラエルではリブリン大統領,ネタニヤフ首相兼外相,それからハネグビ地域協力相,これはJAIPの担当大臣です。パレスチナでは,アッバース大統領とマーリキー外務長官,会談した後,夕食会をやりました。

 エルサレムを巡る情勢が緊迫化している中での訪問でありましたが,中東和平に関して,かなり率直に両サイドからの話を聞くことが出来ましたし,意見交換がかなりフランクに出来たと思います。

 日本が果たすべき役割,果たせる役割,まだまだあるなという風に実感しました。イスラエル,パレスチナの当事者に対して,二国家による解決を改めて強く訴え,当事者間の交渉によって,エルサレムの最終的地位を始め,様々な諸問題を解決すべきとの日本の立場を明確に伝えました。

 両当事者が和平に向けて積極的に関与していくこと,それからアメリカが果たすべき役割,アメリカの関与というのが引き続き重要になるのではないかという私の思いを申し上げました。

 また,長年取り組んで来て,今年満10周年を迎えました平和と繁栄の回廊構想,特にJAIPが現在の難しい状況の中でも非常に上手くいっているものとして,また重要性が高まっているという風に感じました。こういう地域の実際の取組が信頼醸成に繋がっていき,和平の土台を作る手助けとなるのではないかと期待をしているところです。

 明日,実際にJAIPを訪問して,フェーズ2のキックオフをやりたいと思いますが,具体的な取組についてはそこで申し上げたいと思います。また,イスラエルではヘブライ大学で最先端の技術を視察いたしましたが,日本だけでなく,様々な国から,イスラエルのこの技術に対する期待,投資というのが大きくなっている,なるほどなというのを実感することが出来ました。私からは以上です」

 質疑応答

 記者「大臣,今も仰られたように主要国としては,初めて閣僚として訪れることになりました。トランプ大統領の表明以降ですね,非常に強いメッセージであったと思いますけれども,改めて,この主要国として初めて来たことの意義を」

 河野太郎「日本はなんと言ってもイスラエルとも,パレスチナとも良好な関係にありますので,こうう状況ではありますが,政府の首脳と率直な意見交換をすることが出来ました。両方の当事者,かなり落ち着いた対応をしてきているという印象ですし,これで和平交渉が壊れるというのではなく,当事者とも交渉をするのはやぶさかではないという感じでしたので,日本としても様々な場面で両当事者が話が出来るような場を設定していきたいと思います」

【記者】具体的にですね,この問題は70年近く解決を見ない問題ですけども,トランプ大統領の発言で更に混乱しているように見受けられますけれども,日本として具体的にどういうことをやっていくのか,どういう貢献が出来ると思っていらっしゃるか。

 河野太郎「トランプ大統領の発言によって,今まではどちらかというとシリア,イラクの問題ですとかイエメンの問題の方が中東で大きくクローズアップされていたのが,やはり中東のこの問題の根幹がパレスチナ問題だということが再度クローズアップされたのではないかという風に思っております。

 また,域内のパワーバランスが少し変わりつつある中でイスラエルもアラブ諸国との関係を強化していくことに,たぶん興味があるというか,関与していきたいということだと思いますので,その様々なパワーバランスが変わる中でイスラエルにとっても,パレスチナにとっても,ここでもう一度和平に向けて踏み出すインセンティブがあるんだと思います。日本としては両方の背中を押すと同時に両者がこう席について,席に座って話し合いが出来るような,そういう環境作り,それから率直な意見交換が出来るような信頼醸成といったものに努めていきたいと考えます」

 記者「先ほど,対話についてやぶさかではないという印象を受けたという発言がありましたが,先方から日本にこういうことをやってほしいとか要望みたいなのはあったんでしょうか」

 河野太郎「一つは,JAIPのフェーズ2を始めるにあたって,様々,解決しなければいけない問題がありますけれども,今日かなりそうした問題に目処がついたという風に思っております。そういう問題をこう日本が仲立ちをして,WIN-WINになるような方向で解決をすることが出来つつあるというのは両方の対話を促していることにもなると思いますし,信頼醸成にも繋がっているんではないかなという風に思いますので,少しそうした間で積極的に日本が両者の間を行ったり来たりして,話し合いをする環境を作っていきたいと思います。パレスチナ側からは,久しぶりに良いニュースだという話もありましたので,そういう意味で小さいながら,この両方から信頼をされていて良好な関係にあるという日本の立場を積極的に使っていきたいと思います」

 記者「アッバース大統領にですね,アメリカが公平な仲介者ではない,ロシアやフランスに対してですね,仲介者になってくれと働きかけをしているようですけれども,アメリカと親密な関係な日本として,やっぱりアメリカはこの仲介者なんだというような働きかけ,呼びかけとかされたんでしょうか」

 河野太郎「アメリカの関与の重要性というところは申し上げましたし,パレスチナ側もそれは十分理解をしているんではないかという風に思います。この問題がクローズアップされたことによって,もう一度このパレスチナの和平に光が当たってきていますので,それを利用してパレスチナの和平問題に多くの国がコミットしてくれるのは良いことだろうという風にパレスチナも思っているんだろうと思います。今までどちらかというとイエメンとかシリアとかリビアとかというところにこう焦点が当たっていたのが,もう一度こうパレスチナの問題に光が当たってくるようになったというのは怪我の功名と言って良いのかもしれません」

【記者】大臣,JAIPに関しては四者協議を日本が主導して続けてこられてるかと思うんですが,今後それをどういう形で展開,活用していきたいとお考えでしょうか。

 河野太郎「このJAIPは日本の他にイスラエル,ヨルダン,そしてパレスチナの四者が協力し合って,ここまで10年やってきて,成果が出ていますし,フェーズ2はもっとこのイスラエルとパレスチナ,そしてヨルダンが前に出てきてもらわないと出来ない問題というのもあります。少し具体的な問題の解決に今日,目処が立ちましたのでそういう意味では,このフェーズ2が始まるとさらに当事者関係,それぞれ関係を強めてプロジェクトを前に進めてもらわないといけない訳ですから,様々な分野での対話もそこで始まるんではないかと期待をしたいと思います」

 記者「大臣,その四か国の枠組みでの閣僚,外相級の協議など開くお考えはありますでしょうか」

 河野太郎「とりあえず,私が行ったり来たり,来たりはなかったかな。やりましたので,必要な仲立ちはしっかりやっていきたいと思います。あんまり形にこだわる必要はないかなと思います。

 記者「今までですね,日本の中東外交,どっちかと言うと資源外交というんでしょうか,エネルギーの安定供給,安定確保というのが最大の課題で,今もそれは変わらないと思うんですが,一方でこの安全保障や政治図だと思うんですけど,こうゆう中東の複雑な情勢に関わっていくことの,改めてなんですけど意義と逆にリスクみたいなものは考えてらっしゃるんでしょうか」

 河野太郎「資源外交というのは,これからもたぶん続いていくんだろうと思います。そういう中にあって,やはり今まで日本がやってきたことによって,この日本に対する信頼というのはやっぱり相当厚いものがあると思いますので,中東の平和と安定というのはこれは日本の平和あるいは経済の繁栄に直接関わってきますが,むしろ日本が得ている信頼を使って,この中東に平和と安定をもたらす活動をしない方がリスクだと私は思っております。大きな力ではないかもしれませんけど,確実に日本でなければ出来ないことというのはあるという風に思います。それは日本がそこで力を発揮することによって中東に安定をもたらして,それがひいては日本の役に立っているということなんだろうと思いますので,むしろやらないリスクというのが大きいと思います」

 記者「関連してですが,今回の対話を踏まえて,今後米国に対して何かしらの働きかけですとか,メッセージを伝えるというのはお考えでしょうか」

 河野太郎「そこは今回,いろんな国を回ってみて,アメリカとも少し意見交換をしていきたいと思っています」

 記者「今回の中東訪問で本音を引き出せたという手応えはいかがですか」

 河野太郎「そういう部分はあったかなあという風に思います。上手くいけばイスラエルとパレスチナが少しこう,様々なことで話し合いをする土台というのは出来たんじゃないか,特にJAIPのようにみんなが成功を望んでいるものを更に大きく成功させるためにどうしたら良いか,みんな努力することを惜しまず,いろんなことを考えてくれています。これは,しっかりパレスチナ,イスラエル両者話し合いが出来るんじゃないかなと,道筋をしっかりつけられたんじゃないかと思います」

 記者「年開けて9月にですね,自民党の総裁選がありますけれども,対応について現時点で大臣のお考えを伺えませんか」

 河野太郎「鬼が笑っています」

 記者「将来的な出馬についてはいかがですか」

 河野太郎「それは昔からやりますと言っていますから,変わりはありませんけれども,来年あるかどうかは,鬼に聞いてください」

 河野太郎が冒頭発言で、「先般,アメリカのエルサレムに関する発表後,主要国の外務大臣としては初の訪問となったという風に理解をしております」と言っていることの経緯を振返ってみる。

 現在軍事的占領を経て西エルサレム・東エルサレム共にイスラエル領となっているが、イスラエルが統合エルサレム全体を自国首都と定めているのに対してアラブ諸国は全占領地からのイスラエル軍の撤退要求と東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立を要求、イスラエルとパレスチナを平和共存させる「2国家共存」政策が世界の主要国家を中心に国連の場、その他で決着を見ないままに提案されている状態となっている。

 ここに来て人種差別主義者である点、罰当たりなアメリカ大統領トランプが12月6日(2017年)、ホワイトハウスで演説を行い、従来のアメリカ政府の立場を覆して中東のエルサレムをイスラエルの首都と認めると宣言、現在テルアビブにある米国大使館をエルサレムに移転する方針を表明。

 この「2国家共存」を打ち砕くようなトランプのイスラエルのエルサレム首都認定関与にパレスチナ自治政府はもとより、中東各国のみならず、世界の多くの国が批判・反対し、エジプトがエルサレムの地位の変更は無効であり、エルサレム「首都」撤回を求める国連決議案を安全保障理事会に提出、12月18日、採決にかけられたが、常任理事国である米国が拒否権を行使し、否決された。

 但し安保理理事国15カ国のうち14カ国が賛成、その中に日本が含まれている。

 国連総会は加盟国に対する勧告のみで強制力のない、いわば賛成・反対それぞれ象徴的な意味合いしか持たない緊急特別会合を12月21日に開催、エルサレムをイスラエルの首都と認定するアメリカ決定の撤回を求める決議案を賛成多数で採択した。

 日本は安全保障理事会と同様に認定撤回に賛成票を投じて、日本政府の立場を世界に示した。

 当然、「イスラエル,パレスチナの当事者に対して,二国家による解決を改めて強く訴え,当事者間の交渉によって,エルサレムの最終的地位を始め,様々な諸問題を解決すべきとの日本の立場を明確に伝えました」云々の文言で、「2国家共存」の形態に関わる決定権限を日本政府を代表して従来どおりにパレスチナとイスラエルの当事者のみにあるとしている以上、アメリカにはその権限はないことにしていることになって、権限のないアメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認定したことを無効な関与だとする意思表示を国連総会で示したようにパレスチナとイスラエル双方に表明しなければならなかったはずだ。

 「アメリカにはイスラエルの首都をどこにするか、決める権限はありません。決める権限はパレスチナとイスラエルの当事国のみにあり、双方の話し合いにかかっています」と。

 と言うことは、トランプのエルサレムをイスラエルの首都と認める関与を前提とせずに話し合う姿勢を特にイスラエルに要請しなければ、その認定を国連総会で無効な関与だとした意思表示と整合性が取れなくなる。

 ところが、そういった要請のプロセスは発言のどこからも見えてこない。いわばトランプの関与を無効とする意思表示を示さないだけではなく、その関与が当事国間の話し合いの新たな極度の阻害要件となっている現状を無視して、言い替えると、その無効な関与を生かしたまま、「アメリカが果たすべき役割,アメリカの関与というのが引き続き重要になるのではないかという私の思いを申し上げました」とアメリカの関与の重要性を言うことができる矛盾。

 あるいはトランプの首都認定の関与を無効だとする意思表示を示さないまま、「日本としては両方の背中を押すと同時に両者がこう席について,席に座って話し合いが出来るような,そういう環境作り,それから率直な意見交換が出来るような信頼醸成といったものに努めていきたいと考えます」と言うことができる矛盾。

 これらの矛盾が示すこの恥知らずな図々しさの構図は見事である。

 そして日本、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンの4者が協力してパレスチナの経済的自立を促進することを目的とする「平和と繁栄の回廊」の中核事業であるイスラエル占領下のヨルダン川西岸所在のJAIP(エリコ農産加工団地)が「非常に上手くいっている」ことを以って善しとする問題のすり替え、マヤカシにしても見事である。

 JAIP(エリコ農産加工団地)を視察したときの地元関係者を前にした発言を12月26日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。  

 河野太郎「パレスチナでの取り組みは、私の中東外交の最前線だ。中東和平の実現が容易ではない状況だからこそ、パレスチナの友人として、日本らしいやり方で持てる力を尽くして、和平の実現に一層貢献していく」

 日本政府が国連総会で無効としたトランプのエルサレムをイスラエルの首都と認める関与が「中東和平の実現が容易ではない状況」を更に複雑・混沌化させることを、トランプの認定以降の現状を見ても容易に予想可能な中、現実問題としてその関与をトランプに撤回させることこそが肝心な外交的配慮であるにも関わらず、その意思表示も努力も示さずに「パレスチナの友人」を名乗り、「日本らしいやり方で持てる力を尽くして、和平の実現に一層貢献していく」と日本政府の力が「和平の実現」に役立つかのように言っている

 その「日本らしいやり方」とは、記事が〈工団地の整備と合わせて、今後、4000万ドル(日本円でおよそ45億円)を投じ、IT分野の起業を支援する人材育成センターを新設するほか、加工団地で生産された製品を輸出しやすくするため道路整備を進め、物流の円滑化などに取り組む考えを明らかにし〉たと伝えているようにカネを出すことなのだろう。

 だが、イスラエル占領下の加工団地やその他の分野にいくらカネを出したとしても、「和平の実現」の契機となる領土問題解決の保証がどこにあるというのだろうか。

 全てがマヤカシの河野太郎の中東訪問となっている。

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