安倍晋三の北脅威「国難」、「国民の生命と財産を守る」に反した官邸入りミサイル発射2時間半後の危機管理

2017-12-01 10:56:08 | 政治

 北朝鮮が日本時間の11月29日(2017年)午前3時17分頃、西部のピョンアン(平安)南道ピョンソン(平城)付近から日本海に向けて新型の弾道ミサイル1発を発射し、日本の日本海EEZ=排他的経済水域内に落下した。

 通常軌道で発射した場合、射程距離は米国首都ワシントンを含む同国東部に届く約1万3千キロメートルに達するICBM(大陸間弾道弾)と見られている。

 北朝鮮は発射当日の11月29日、米本土全域を攻撃できる新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射実験に成功し、金正恩委員長が「国家核武力完成の歴史的大業、ロケット強国の偉業が実現した」と宣言したと政府メディアを通じて政府声明を発したと「日経電子版」が伝えている。  

 同記事は安倍晋三が発射後の11月29日の参院予算委で「核を小型化し弾頭に積むことができれば、殆どすべての国に大きな脅威になる。北朝鮮が核保有国となることは決して認められない」と発言したと報道している。

 安倍晋三の北朝鮮ICBM発射後の首相官邸入りは発射から約2時間半後の午前6時前だと同日付「共同通信47NEWS」記事が伝えている。  

 同記事は官房長官の菅義偉が記者会見で安倍晋三の発射から約2時間半後の首相官邸入りの対応に問題はないとの認識を示したと併せて報じている。

 菅義偉「首相は(官邸隣の)公邸にいて、私は(発射から約20分後の)午前3時40分ぐらいに官邸に入った。首相の指示が出ており、連携していた」
 (政府の初動対応について)先ず危機管理のチームが集まり、関係閣僚が対応する」

 政府高官首相から発射直後に指示があった。関係閣僚と現場が動いていれば、首相が早く出てくる必要はない」(下線部分は解説文を会話文に直す)

 「時事ドットコム/首相動静(11月29日)」によると、〈午前5時53分、公邸発。同54分、官邸着。同55分から同56分まで、報道各社のインタビュー。同6時10分から同26分まで、国家安全保障会議。同35分から同58分まで、トランプ米大統領と電話会談〉、その他となっている。  

 首相官邸着は正確には午前5時54分ということになる。ICBM発射が午前3時17分頃と言うことなら、約2時間37分後となる。果たして菅義偉が言うように「首相の指示が出ており、連携していた」から、あるいは政府高官が言うように「首相から発射直後に指示があり、関係閣僚と現場が動いていれば、首相が早く出てくる必要はない」から対応に問題はなかったと理由づけることができるだろうか。

 北朝鮮は今年2017年9月3日の核実験後の9月11日に国連安全保障会議による対北朝鮮制裁決議全会一致可決によって一段の厳しい制裁と米国や日本の独自の追加制裁を受けているが、国連決議に反発したと見られている9月15日の首都ピョンヤンの郊外から北海道の襟裳岬付近の上空を通過して太平洋上に落下させる新型の中距離弾道ミサイル「火星12型」1発の発射以来、制裁効果の影響かどうかは不明だが、2カ月14日間沈黙を守り続けた上でのミサイル発射である。

 但し沈黙と言っても、外から北朝鮮を見た場合の様子であって、北朝鮮は次のICBM発射に向けて順次準備を進めていた。

 9月15日の「火星12型」発射の前は8月19日の同「火星12型」発射、その前は8月26日の短距離弾道弾3発の発射、内1発は失敗、2発の成功。北朝鮮は2017年に入って1月はなかったが、2月12日の準中距離弾道ミサイル発射以降、1カ月余の間隔は1度あったが、2カ月という間隔を置くことはなかった。 

 日本やアメリカからしたら、その沈黙が制裁の効果なのかどうかを見守っていて、それが約2カ月半続いていたが、それが敢えなく裏切られたことになり、それが米本土到達可能のICBMと言うことなら、日米共に単なるミサイル発射の再開と見ることはできない危険かつ重大な意味を持つことになる。

 なぜなら、米本土到達可能という危険かつ重大さによって米国にとって北朝鮮の脅威が一段も二段も高まった場合、軍事オプションの危険性も高まることになり、日本は米国と緊密な軍事同盟を通してアメリカの軍事行動に運命共同体の関係にあり、米国の軍事オプションの影響をモロに受けるからである。

 尤も安倍晋三が今回のミサイルが米本土到達可能な危険かつ重大な意味を持つICBMだと認識したのはいつの時間か分からない。首相官邸到達前に認識していなくても、制裁の効果なのか、2カ月半は鳴りを潜めていたが、ミサイル発射によって制裁効果がなかったことが判明したことの重大さ、あるいは制裁への期待が裏切られたことが判明したことの重大さは、朝公邸に滞在していたときにミサイル発射は知らされていたはずだから、認識していなければならなかった。

 そしてこれらの重大さは単に制裁の効果のみに関係するわけではない。

 安倍晋三が9月25日(2017年)の解散記者会見で北朝鮮の脅威を「国難」と位置づけて、その対処方法として北朝鮮に対する圧力一辺倒政策を打ち出し、「圧力の強化は北朝鮮を暴発させる危険」があるが、「世界中の誰も紛争などを望んではいない」、「政策を変えさせるための圧力だ」と、いわば「国難」回避の唯一の手段が圧力政策だとの判断を示したことは安倍晋三の北朝鮮圧力政策が北朝鮮は暴発しないことの保障であり、その保障が「国民の生命と財産を守り抜く」という確約となって現れたはずである。

 だが、北朝鮮が再びミサイルを発射したことは安倍晋三の対北朝鮮圧力政策が現在のところ効果がなかったことを示す。外相の河野太郎は国会で、「今や北朝鮮が自制する意図が無いことがはっきりした」と河野以外は多くが前々から分かっていたことを今更ながらように発言していたが、河野太郎のこの発言は対北朝鮮制裁が効果を発揮していない、あるいは効果がないことの証明ともなる。

 安倍晋三は時折り「圧力政策によって北朝鮮の側から政策を変えるから話し合いたいという状況を作っていくことが極めて重要だ」と発言しているが、このように希望する状況が今のところ現実の保障となっていないことをも意味する。

 と言うことは、「世界中の誰も紛争などを望んではいな」くても、圧力の強化が北朝鮮を暴発させる危険性を逆に高める要因ともなり得ることを示すことになる。
 
 暴発の危険性が高まることは安倍晋三の「国民の生命と財産を守り抜く」という確約の保証を危うくする。

 安倍晋三は北朝鮮のミサイル発射の一報を受けたとき、これらのことを認識しなければならなかったはずである。制裁の効果の程度、ミサイルの種類がICBMだと把握できない段階であったとしても、北朝鮮の脅威を言い立て、それを「国難」としている以上、発射を中止しないことによって想定できる「国民の生命と財産」に影響してくることになる国家安全保障上の危機の高まり程度等々を認識しなければならなかった。
 
 当然、「首相の指示が出ていた」とか、「関係閣僚と現場が動いていた」から「首相が早く出てくる必要はない」からとの理由で首相官邸入りが北ミサイル発射2時間半後でいいということにはならない。

 「国難」だとしている認識だけでも、直ちに陣頭指揮に立たなければならなかったはずだ。

 だが、1分と離れていない公邸にいながら、ミサイル発射2時間半後の首相官邸入りとなった。このことは「国難」との位置づけや「国民の生命と財産を守り抜く」としていることの国家指導者の責任に反するお粗末な国家安全保障上の危機管理対応そのものであろう。。
コメント (1)
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