2017年11月27日衆院予算委 新藤義孝「地方創生の最も新しい政策です。KPI(key performance indicator の略、企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標)という目標を設定して、その達成状況を見ながら、次は何をすべきかとPDCAを回していく(PDCAサイクル=計画(P)-実施(D)-評価(C)-改善(A)の4段階を繰り返すことで、計画の進行管理を適切に行い、その成果を高める仕組み)。 そういう仕組みを作らせて、まあ、作って頂いて、私はこれもかつて担当させて貰っていましたが、(「東京都への転出超過数」との題名のパネルを示して)こここにある福岡県、5700人、東京に流出している。本来なら地方と東京の転出には均衡させなければいけないのだが、結局12万人オーバーしている(東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)で転入者が転出者を上回る「転入超過」が約12万人と言うこと)。しかも拡大しちゃってるわけです。 このね、福岡県に5700人。福岡から東京に流出超過しちゃってるんですけども、この間、地方創生の私達の会議で新潟の田中元副知事(?)、参議院議員、仰いました。『福岡出ているって言うけど、九州中から南福岡に吸い取られたんだ』とね。 ですから、九州の中から福岡が吸い取っちゃって、それから東京に吸い取っている。ここ(パネル)に出ている数字、もうちょっと先の細かいところを見ないと、(動画からは聞き取れない)いうことになるんですね(「流出入の原因が見えてこないということになる」と言うことか)。 そして例えば北海道のですね、北海道中からも札幌に集中しているんですよ。全国で出生率ワーストツーの札幌ですから、子ども育てづらいところに集中して、(合計特殊出生率ワーストワンの)東京に全国から集中して、そこが最も子どもを産み育てづらいところなんだと。 この悪循環を、この流れを改善しなければいけない。東京に行きたい人は行っていいんです。全体的に地域できちんと踏まえる中、この周辺も含めたそういうKPI、PDCAの確立、きちんともう1回やるべきだと。 地域別の所得だって打ち出すべきだと私はこう思っておりまして、その意味に於いてですね、是非、今後これも要望しておきます。梶山大臣に積極的にやって頂いておりますから、この問題は実効性を上げるためには総力を集中して、5年間の集中機関にちょうど3年目ですから、さらなる改善を上げていただきたいと思います。 そしてもう一つ地方創生に関してですね、地方創生の中でも横串を刺すべきだ。私はこの間、常磐常陸市、ごめんなさい、常陸太田市、行ってきました。梶山大臣のポスターがバンバン貼ってある所。 そこで市長さんに話して貰ったの。それは道の駅で新しい無人走行の実験をやるんだって言うんで、それを見に行ったの。そしたら何と道の駅自体は市が造りますよね。そして自動走行で走らせた車に近所のお爺いちゃんたちが自分たちの野菜を積んでいるんです。 で、野菜を積んで道の駅までいくと、道の駅に今度は東京都の中野区に出してね、中野区と里まち連携事業というのをやっていて、高速バスのお腹のトランクに貨物を乗せて運んで貰っている。 今までできなかったんだけど、これ規制緩和でやるようになった。そして人が乗るような運賃で外に出すことができると。そしてそこにですね、自動運転の予算は内閣府がSIP(内閣府総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト)の予算を国交省が受けて、運用を委託している。 こういうふうに幾つもですね、実は色んな工夫をして規制緩和を絡めてやっている。だから、地方創生が独立したものではなくて、人づくり革命の独立したのもではなくて、あらゆる事業を連携させて、その地域に集中させることが重要だと。 総理これは一つですね、これは総理の発想で始まってるんですから、地方創生、人づくり革命、生産性革命、こういったものを思い切って政府内で横串連携、更にさせるための指示が必要と思いますが、是非お願い致します」 安倍晋三「正に地方が直面している様々な課題ですね、省庁の縦割りの枠の中に当然はまらないわけでありまして、まさに横串、横串を通すためにですね、省庁間の間にある壁を倒すか、穴を穿つしかないんだろうと、こう思うわけでありまして、意義のある成果を得るためには省庁の壁を打ち破ってですね、効果的な事業を実施していく必要があると、考えております。 ご紹介のあった常陸太田市の例もですね、中山間地域の課題を解決するためには単に農水省の政策の枠では対応できず、自動運転初め国交省なり、他省庁と連携することで課題解決の大きな効果を上げる事ができたと思います。 地方の皆さんにはですね、霞が関の縦割りには囚われることなく、多くの省庁を巻き込むような革新的な地方創生のアイデアを出して貰いたいと、こう思います。 私もあらゆる場面で縦割りの打破を指示しているところでありますが、国なども交付金を活用して省庁横断的な取り組みを力強く後押ししていきたいと思います」 |
新藤義孝は合理的思考能力に欠陥があるらしく、相手が簡単に理解できる的確な表現ができていない。
新藤義孝の最初の発言は国レベルの人口移動に関して地方からの一方的な人口流出の東京圏一極集中に触れている。国レベルのその一極集中にしても地方レベルでは国レベルのパターンを踏襲して最も都市化度の高い県庁所在地への人口一極集中という、今に始まったことではない人口移動の偏った状況にあることを描いている。
何のことはない、新藤義孝自身は気づいていないだろうが、気づいていたらお仲間としてできないことだが、安倍政権のKPIやら、PDCAやら、地方創生の新しい政策を以てしても地方の活性化という“創生”が満足に機能していないことをあげつらったに過ぎない。日本自体が人口減少で様々な面で歪みが生じているというのに東京という中央による人口吸収の反動を受けた地方の人口減少によって地方の発展が妨げられているのに対して地方は地方で県庁所在地への人口集中により県庁所在地以外の小都市の発展が阻害され、衰退への道を辿っている。
当然、このような地方の負の状況から浮かび上がってくる否応もなしの政治性は安倍政権の連鎖し合う人口政策と地方政策の無策を反映させていることになる。安倍政権の無策は歴代自民党政権の無策に通じる。
あるいは歴代自民党政権の無策を受け継いだ安倍政権の無策と言うことができる。
新藤義孝は後段で「地方創生が独立したものではなくて、人づくり革命の独立したのもではなくて、あらゆる事業を連携させて、その地域に集中させることが重要だと」発言している。
もう少し論理的な言い回しをしてくれると簡単に理解できるのだが、要するに地方創生や人づくり革命をそれぞれの権限に応じて各省庁がそれぞれに独立した別個の事業として取り扱う縦割り方式ではなく、「あらゆる事業を連携させて、その地域に集中させることが重要」との文言で、いわば地方創生も人づくり革命もひっくるめた事業として地方に任せるべきだと提言しているということなのだろう。
だから、「横串を刺すべきだ」との表現で縦割りを打破して横割り(=省庁横断)に改めるよう指示を出してくれと安倍晋三に求めた。
この要求の裏を返すと、省庁間で現在もなお縦割りが横行している状況の示唆ということになる。
安倍晋三は新藤義孝の縦割りが横行している状況の示唆に対して「省庁間の間にある壁を倒すか、穴を穿つしかない」、あるいは「意義のある成果を得るためには省庁の壁を打ち破ってですね、効果的な事業を実施していく必要がある」などと縦割り打破の必要性に触れだけで、縦割り打破の方法論には触れずじまいの無策ぶりを曝け出している。
安倍晋三の縦割り打破の方法論の無策は、「私もあらゆる場面で縦割りの打破を指示しているところでありますが」との発言に象徴的に現れている。
安倍晋三の数々の指示が無効だから、縦割りが横行している状況が今以ってなくならずに維持されているということであるはずだ。
震災3周年を迎えるに当たっての2014年3月10日の記者会見。
安倍晋三「総理に就任以来、13回にわたり被災地を視察いたしました。昨年春ごろはあ ちこちで用地確保が難しいという切実な声がありました。特に、いつ、何戸の住宅が再建されるかの見通しも全く立っていませんでした。
こうした中、安倍内閣におきましては、省庁の縦割りを排しながら現場主義を徹底し、政府一丸となって加速化に全力をあげました。被災地 の抱える課題は制度面、執行面、多岐にわたります。現場主義で用地取得手続の迅速化、そして自治体へのマンパワー支援などきめ細やかに対応してまいりまし た」
安倍晋三は2015年10月15日、内閣官房に約20人の職員からなる「1億総活躍推進室」を発足させた。
安倍晋三「今日から、この『1億総活躍推進室』がスタートしたわけでございます。皆様方には、その一員としての未来を創っていくとの自覚を持って、省庁の縦割りを排し、加藤大臣の下に一丸となって、正に未来に向けてのチームジャパンとして頑張っていただきたいと思います」
何度も縦割り排除の指示を出してきた。
自身が縦割り排除に無策だから、「地方の皆さんにはですね、霞が関の縦割りには囚われることなく、多くの省庁を巻き込むような革新的な地方創生のアイデアを出して貰いたいと、こう思います」と他力本願丸出しとなった。
地方が省庁横断的なアイデアを出して「多くの省庁を巻き込」もうと、各省庁の方で中央集権的な立場からの自らのそれぞれの権限に拘って、そのアイデアを、これはこっちの権限、これはあっちの権限といった形で権限に従った役割の出番で分割しているからこそ、縦割りが横行している状況が今以って続いているというこであって、安倍晋三はそのことに対する現状認識が甘いから、地方に丸投げする他力本願に縋ることになった。
中央と地方が中央集権の関係で結びついている以上、縦割りはあくまでも各省庁の問題であって、それを打破できるかどうかは省庁を監督・指揮する政府の側の能力の問題となる。
縦割り排除の進行と共に中央対地方の中央集権の関係も剥がれ落ちていく。
安倍晋三はこれまでも何度も「縦割り排除」を言ってきた。にも関わらず、現在もそれが排除されていないということは安倍晋三の「縦割り排除」の言葉だけが踊っていたことになる。
安倍晋三は最近やたらと「生産性革命」だ、「人づくり革命」だと言っているが、各省庁の「人づくり革命」をこそ優先させるべきだろう。縦割り排除の人づくり革命ができたとき、地方創生・地方活性化の生産性が上がり、それだけではない、役所の業務に関する全ての生産性革命が実現に向かうことになる。
そんなことは気づいていない安倍晋三のノーテンキな頭なのだろう。