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安倍晋三が12月13日(2017年)、日本と共に国連安全保障理事会非常任理事国を務めているセネガルのサル大統領と首相官邸で会談、安保理による北朝鮮制裁決議を厳格に履行し、圧力強化に向けて連携することで一致したとマスコミが伝えている。
対北朝鮮圧力で利害を一致させることができる国の首脳と会談して、誰彼なしに圧力の連携を求め、一致させているに過ぎない。だが、連携・一致の手続きを実現させなければならない肝心のロシアや中国に対しては、それができない。日本にしても安倍晋三にしても、そうするだけの力はない。
要するに安倍晋三は裸の王様を演じているに過ぎない。裸の王様でなくなるとき、北朝鮮が軍事的暴発、あるいは軍事的攻撃を出来させい保証はない。
安倍晋三は一切の対話を排除、圧力最大化によって「北朝鮮の側から政策を変えるから話し合いたいという状況を作っていくことが極めて重要だ」と、常にそうすることができる、あるいは常にそうなるかのように録音した言葉の繰返しの再生さながらに何度も口にしているが、圧力によって北朝鮮がそのように態度を変える保証もない。
アメリカが北朝鮮に対して経済制裁と軍事的圧力を強めながら、対話の条件に核放棄を掲げていたが、12月12日、ティラーソン米国務長官がワシントンのシンクタンクで講演、北朝鮮と前提条件なしで直接対話する用意があると述べたと、2017年12月13日付「ロイター」記事が伝えている。
ティラーソン米国務長官「とにかく会おう。向こうが望むなら天気の話をしてもいい。ラウンドテーブル(丸い机)にするか、四角い机にするかを話してもいい。
その上で、どのような方向に向けて進んでいくか、ロードマップの設計(公式協議の基本ルール)を始めることができる。
(北朝鮮の核保有は容認できないとの従来の立場を改めて表明した上で)対話の準備を整えれば、いつでも対話に応じる用意がある。但し北朝鮮は従来の軌道を修正する意向を持って対話に臨むべきだ」(下線部分は解説部分を会話体に直す)
要するにトランプは核放棄→対話の手順を求めているが、ティラーソン米国務長官は北朝鮮の核保有は容認できないものの、核放棄→対話の手順ではなく、対話→核放棄に向けた話し合いをしようと提案したことになる。
だから、「北朝鮮は従来の軌道を修正する意向を持って対話に臨むべきだ」との条件を付けつつ、「とにかく会おう」と対話を呼びかけた。
このティラーソン米国務長官に対してトランプ政権で安全保障政策を担当するマクマスター大統領補佐官が12月13日の講演で北朝鮮への圧力を最大まで強め、核開発を放棄させるという従来の方針に何ら変わりはないと強調したと12月14日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。
マクマスター大統領補佐官「ティラーソン長官が述べたのは結局のところ前提条件などないということだ。我々は北朝鮮への圧力を和らげる考えはないし、彼らの要求を受け入れ、対価を与えるつもりもない。
交渉は単なる話し合いであってはならない。交渉すること自体が目的ではない」
これは安倍晋三の対話を排除し、核放棄まで圧力の最大化を図るとしている姿勢と一致している。
ティラーソン米国務長官発言に対して官房長官の菅義偉が12月13日の午前の記者会見で次のように述べている。「ロイター」(2017年12月13日/12:02)
菅義偉「累次の日米首脳会談で北朝鮮政策については突っ込んだ議論を行っている。北朝鮮への圧力を最大限まで高めていくことを含め、首脳間の考え方は100%一致している。
米ホワイトハウスでもトランプ大統領の北朝鮮に関する考えに変更はないと発表している。米国と緊密に連携しながら北朝鮮に政策を変えさせるため、あらゆる手段を通じて圧力を最大限まで高める政策に変わりはない」
日米共に圧力最大化の政策に変わりはなく、その考え方で「日米首脳間は100%一致している」と、従来からの姿勢に些かも揺るぎがないところを見せている。
例えそうであっても、ティラーソン米国務長官が北朝鮮の核保有は容認できないものの核放棄を前提とせずに「先ず話し合おう」と呼びかけ、トランプが軍事攻撃も含めてすべての選択肢がテーブル上にあると言明、軍事的選択肢の証明・デモンストレーションとして日本海に原子力空母を派遣、米日、あるいは米韓共同軍事訓練を繰返し行いながら、北朝鮮が2017年11月29日に米本土攻撃可能な弾道ミサイル(ICBM)発射に成功、技術開発の向上を間近に見、その技術開発は進行形で北朝鮮の脅威が増していく方向にあるにも関わらず、あるいは米国の戦闘機や戦車、艦船の攻撃兵器の保有数とその保有数が証明する軍事攻撃能力が北朝鮮を遥かに凌駕していながら、トランプが軍事攻撃に踏み切れないのは攻撃した場合の北朝鮮の反撃がもたらす北朝鮮国民、韓国国民、日本国民、さらに韓国や日本に在留する米国民の犠牲が甚大な数に及び、もし北朝鮮が核兵器を使った場合、何百万人の犠牲者が出ること、そして多数の難民が発生することが予想されるかだろう。
このことが北朝鮮にとって米国の軍事攻撃に対する抑止力となっている。
米国が自国国益を優先して韓国・日本在留の米国民の本国帰国を前以って指示した場合、そのことを以って北朝鮮は米国の北朝鮮軍事攻撃を察知し、先制攻撃に出る危険性が生じる。
いわばトランプは軍事攻撃にも踏み切れずに北朝鮮の着実なミサイル開発・核開発の技術向上・性能向上を前にして手をこまねいている状況にある。
予想される膨大な犠牲者数がアメリカの軍事攻撃に対する北朝鮮の抑止力となっていることに反して万が一米国が軍事攻撃に踏み切る姿勢を見せた場合、犠牲者を米国の攻撃を鈍らせる抑止力とするために日本や韓国、米本土に対する先制攻撃と同時に米国と軍事行動を共にする日本に対する抑止力として拉致被害者を人間の盾としかねない保証はない。
例えトランプが軍事攻撃に踏み切らなくても、経済制裁で政治や国内経済が立ち行かなくなることによって金正恩体制の維持が困難になった場合、長年生活と自由を締め付けられてきた北朝鮮国民の多くは堕ちた偶像に対しては冷酷なまでに情け容赦ないことは理解しているだろうから、唯一イチかバチかで暴発という形で外に向かって打開策を求めざるを得なくなった場合にしても、拉致被害者を人間の盾として使うことに変わりはないはずだ。
例えそれが卑劣な手段であったとしても、自己防御の心理が利用できるものは何でも利用しようとするに違いない。
安倍晋三は自身の対北朝鮮圧力最大化が拉致被害者を人間の盾としかねない危険な綱渡りの側面を抱えていることを承知しているのだろうか。
圧力と拉致解決は相互矛盾の関係にあることは誰もが認識しているはずだ。なぜなら、安倍晋三の圧力政策に対して北朝鮮が激しく反発を強めて、拉致問題に取り憑く島も与えていない状況が何よりも証明している。