安倍内閣の「縦割りを排し、省庁の垣根を越え」の謳い文句でのテロ対策組織新設は屋上屋を架すだけの宿命

2017-12-16 11:56:00 | 政治

 12月11日(2017年)付「NHK NEWS WEB」記事が、〈3年後の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、 2017年12月11日、政府は総理大臣官邸で国際テロ対策推進本部の会合を開き、関係省庁の国際テロ情報を共有する、情報共有センターを来年夏に新設することなどを盛り込んだテロ対策推進要綱を決定しました。〉と伝えていたから、会合の冒頭、安倍晋三が挨拶でどのようなスピーチをしているのか首相官邸サイトにアクセスしてみたが、会合の説明だけで、挨拶なしなのか、何の記載もなかった。

 「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部会合について」首相官邸/平成29年12月11日(月)午後)
      
 本日午後、国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部会合を開催いたしました。会合では、現下の厳しい国際テロ情勢を踏まえ、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を見据えたテロ対策推進要綱を決定しました。

 政府としては、本日決定した要綱に基づき、縦割りを排し、省庁の垣根を越え、より核心に迫る情報収集が可能となるよう、国際テロ情報収集ユニットの活動を強化し、新たに国際テロ対策等情報共有センターを設置して、関係省庁による情報の共有・分析を促進するとともに、多くの観客の利用が予想される公共交通機関や競技会場等のソフトターゲット対策に万全を期すなど、大会の成功に向けて、引き続き、テロ対策を強力に推進してまいりたいと思います。

 先ず2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を見据えたテロ対策推進要綱を決定した。

 そして要綱に基づいて縦割りの排除、省庁の垣根を越えた核心的・的確な情報収集と情報処理(共有・分析の促進)が可能となるように国際テロ情報収集ユニットの活動を強化して新たに国際テロ対策等情報共有センターを設置し、このような体制のもと、公共交通機関や競技会場等のソフトターゲット対策等に万全を期して大会の成功に導く所存でいると言うことなのだろう。

 かと言って、「国際テロ情報収集ユニット」を廃止し、装い新たに新組織「国際テロ対策等情報共有センター」に改組するというわけではない。

 「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会等を見据えたテロ対策推進要綱」国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部決定/平成29年12月11日)  

情報収集・集約・分析等の強化

(1)イスラム過激派等に関する情報収集・集約・分析等の強化

ア「国際テロ情報収集ユニット」等の活動の拡大・強化官邸を司令塔として活動する「国際テロ情報収集ユニット」、「国際テロ情報集約室」等は、平成27年12月の設置以降、体制増強を図りつつ、各国治安・情報機関との関係強化を始めとする情報の収集・集約に取り組んできたところであるが、今後、大会等に向け、より核心に迫る情報収集が可能となるよう、その活動の拡大・強化を図る。

具体的には、関連要員の更なる増員を図るとともに、その業務の専門性を向上させるため、海外における情報収集活動に関する研修の充実、現地における情報収集活動をより安全かつ効果的に行うための専用インフラの整備等に取り組む。

また、「国際テロ情報収集ユニット」と政策部門や情報コミュニティ省庁の連携が強化されるよう、「国際テロ情報集約室」において必要な連絡調整を行う。

これらにより、これまで以上に、官邸・政策部門に対して有益な国際テロ情報が提供され、情勢判断や政策決定に有効に活用されることを可能とする。

「国際テロ対策等情報共有センター」(仮称)の活用

テロ容疑事案等に関する情報の共有・分析を強化するため、平成30年夏から「国際テロ情報集約室」に設置する「国際テロ対策等情報共有セン
ター」(仮称)を活用する。同センターでは、11省庁(内閣官房、警察庁、金融庁、法務省、公安調査庁、外務省、財務省、経済産業省、国土交通省、海上保安庁及び防衛省)の職員が一堂に勤務し、これら省庁が保有するデータベース等や知見を有効に活用、テロ容疑事案等に関する端緒情報について迅速に共有するとともに、各省庁が保有する関連情報と照合するなどの分析を行い、当該テロ容疑事案等の詳細についての解明に努める。

分析の結果判明した事項については、テロの未然防止対策の実施等に資するよう、官邸及び関係省庁に迅速に提供する。〉

 このように「国際テロ情報収集ユニット」をテロ対策組織として存続させた上で、 「国際テロ対策等情報共有センター」を新たなテロ対策組織として設置するということである。

 「国際テロ情報収集ユニット」は2013年1月のアルジェリア邦人人質殺害事件や2015年11月13日のパリ同時多発テロ事件を受けて2015年12月8日に発足した。

 2016年7月1日の邦人7名の犠牲者が出たダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件では安倍政権は「国際テロ情報収集ユニット」を現地に向けて派遣したが、現地入りする前に既に特殊部隊が突入。この時間のズレはアルジェリア事件のように長期戦になると踏んでいたが、襲撃発生から約10時間後、治安部隊が突入、犯人側と銃撃戦となり、犠牲者が増えることとなった。

 いわばバングラデシュ側との情報共有が満足に機能していなかった。あるいは機能させることができなかった。

 2015年12月8日の「国際テロ情報収集ユニット」発足当時テロ対策組織の組織図が発足同日の2015年12月8日付「国際テロ情報収集・集約体制の強化」内閣官房 外務省/平成27年12月8日)に記載されていたから、左に掲げておいた。  

 画像冒頭部分に記載されているが、ここにも分かりやすい段落で書き記しておく。

〈邦人関連事案に関する国際テロ情報の収集等を抜本的に強化するため,

①国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部に「国際テロ情報収集・集約幹事会」(議長:内閣官房副長官)
②内閣官房に「国際テロ情報集約室」(室長:内閣官房副長官)
③外務省(総合外交政策局)に「国際テロ情報収集ユニット」を置く。

 全て新設である。内閣官房長官を本部長とした「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」の下に2つのテロ対策組織、外務大臣のもとに1つのテロ対策組織が既に置かれていて、その上、平成30年夏から内閣官房の「国際テロ情報集約室」に「国際テロ対策等情報共有センター」(仮称)なる名称の新たなテロ対策組織を新設する。

 海外、あるいは国内で日本人が巻き込まれるテロ事件が発生したとき、4つの組織が同時にそれぞれが抱えている少なくないはずの職員を動員して個別に情報収集し、情報分析を行うが、4つの組織それぞれがそれぞれに異なる実体験や見聞で得た知見に基づいた推測・解釈に従った4つの統一見解で纏められて、それらの統一された4つの見解が4つの組織全体で相互に情報共有を図ることになる。

 当然、組織全体で共有された情報は最終的に集約・統一されて一つの情報として発信され、一つの発信に基づいた統一された対策と行動を打ち出されなければ、迅速なテロ対策は望むことができないことになる。

 最終的な情報の共有までに4つの組織の4つの情報から1つの情報に統一という時間のかかる手続きを取らずに4つの組織から優秀な人材を抜擢して1つの組織に組み替えて、直接的にその場で収集し分析した情報を1つの情報に集約・統一する迅速な手続きを採用し方がテロ対策として機能するのではないだろうか。

 大体がそれぞれの省庁の下に幾つものテロ対策組織を設けること自体が縦割りそのものを意味する。省庁横断、あるいは省庁の垣根を越えてといった常に繰返される古くて新しい決まり文句に実効性を持たせるとしたら、どの省庁にも属さない一つの行政組織として新たに設立、そこに各省庁から優秀な人材を集めて機能させるべきだろう。

 2011年4月12日の参院外交防衛委員会で自民党参院議員の佐藤正久が独自に作成した「東日本大震災対策組織図」(左掲)を示して、名前だけを見ると、同じ役割を連想させるものが幾つもある菅内閣の災害対策組織が10以上も乱立していることを取り上げて、「色々なものができあがって責任が分散している。会議が多過ぎて、何の会議か分からない。誰の指示を聞けばいいのか分からない。みんな困っている」と批判した。

 菅内閣の東日本大震災対応は世論調査で評価しない、原発事故についての政府の情報提供については不適切が常に上回っていた。要するに菅内閣の災害対応はそのための組織の数程にも機能させることができなかった。

 と言うことは、災害対策の組織の数だけを増やしていったことになる。組織を増やすことで、仕事をしている気になっていたのだろう。あるいは仕事をしているように誤魔化していた。

 安倍内閣がテロ対策で今更ながらに「縦割りを排し、省庁の垣根を越え」と謳わなければならないのは、現実問題として縦割りと省庁横断とは逆の省庁ごとの縄張りが存在していてテロ対策組織が満足に機能する様子が見えないからだろう。

 だから、新たに「国際テロ対策等情報共有センター」を置くことになったはずだが、組織としての機能を妨げる縦割りと省庁ごとの縄張りが存在する以上、縦割りと縄張り排除が先決問題で、それをせずに「縦割りを排し、省庁の垣根を越え」といった謳い文句だけで新たなテロ対策組織を設置するのは菅内閣の災害対策組織程の乱立状態ではないとしても、屋上屋を架すだけとなる宿命しか待ち構えていないはずだ。

 組織づくりには長けているが、組織を機能させることは苦手と言うことにならないように気をつけなかればならない。

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