安倍加計学園政治関与疑惑:安倍晋三は自身の発言通り、「WGの情報を受け取ることもない」は事実なのか

2017-12-11 12:38:13 | Weblog

 2017年8月6日付一部有料記事「朝日デジタル」が2015年6月の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)で内閣府が獣医学部の新設提案について愛媛県と同県今治市からヒアリングした際、学校法人加計学園の幹部が出席していて、学園の教員確保の見通しを巡る質疑等が行われたが、議事要旨には出席していた幹部の名前や発言の記載はなく、その事実関係を政府側、提案者側双方の出席者が朝日新聞の取材に認めたと報じている。   

 加計学園側の出席者は加計学園系列の千葉科学大の吉川泰弘教授(現・加計学園新学部設置準備室長)と他2名。

 記事は〈複数の出席者によると、吉川氏はヒアリングの場で、既存の大学の獣医学教育では、獣医師の新たなニーズを満たしていないなどと述べたという。政府側の委員からは教員確保の見通しなどの質問があり、吉川氏が答えたという。〉などと記している。

 このワーキンググループ(WG)ヒアリングは2015年6月5日の開催。議事要旨に出席者名も発言も記載がないとの「朝日デジタル」の報道を受けて、内閣府国家戦略特別区域諮問会議有識者議員で6月5日のWGで座長を務めたアジア成長研究所所長・大阪大学社会経済研究所招聘教授の八田達夫が「朝日デジタル」と同じ2017年8月6日付、「国家戦略特区WG座長 八田達夫」名で、「国家戦略特区WG(平成27年6月5日)の議事要旨について」なる題名のPDF記事を公表、ヒアリングは非公開との前提で開催したものの、今治市が国家戦略特区に指定され、提案が実現したことから2017年3月6日に議事要旨を公開したが、加計学園関係者(3名)は今治市が独自の判断で説明補助のために出席させたもので、説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはないといった内容の断りを書き込んでいる。   

 この内容の裏を返すと、もし今治市が国家戦略特区に指定されず、提案が実現しなかった場合は議事要旨は公表しなかったことになる。物事が成功裏に進捗した場合は公表し、しなかった場合は非公表とするというルールは物事を完璧に見せるための情報操作であり、非公表部分は情報隠蔽に当たるばかりか、公表したとしても、説明補助者だからと言って、その名前と発言を非公表とするのは二重の情報操作であり、二重の情報隠蔽となる秘密主義の恣意的横行そのものである。

 今年2017年11月30日の参院予算委で社民党の福島瑞穂が自身が提出した過去の質問主意書に対する政府答弁書と安倍晋三の過去の国会答弁で今治市提案の獣医学部新設に関わるその事業主体が加計学園であると承知していたと発言していたのに対して2017年1月20日の第27回国家戦略特別区域諮問会議で加計学園が獣医学部の事業主体として認定された際に初めて知ったとしているのは「ウソをついている」と追及。

 対する安倍晋三の答弁。

 安倍晋三「この件についても閉会中審査で既に申し上げているところでございますが、この今治市の提案については正に今治市が提案したものであったわけでございますが、最終的には応募に応じて加計学園が公募に応じた段階で我々が知る立場になる、本年1月に事業の公募を行い、加計学園から応募があった後にですね、1月20日に諮問会議で認定することになりますが、私が直接知ったのが諮問会議でありますから、ワーキンググループなどに出席しないわけあります。いちいち情報を受け取ることもありません」――

 「私が直接知ったのが諮問会議でありますから、ワーキンググループなどに出席しないわけあります。いちいち情報を受け取ることもありません」と言っていることは、2015年6月5日開催のWGヒアリングで加計学園関係者が出席して発言したとしても、自身はWGには出席しないタテマエになっているし、WGの情報を諮問会議で受け取ることもないから、事業主体が加計学園であるとは知る由もなかったとの自己正当性の主張である。

 自身の政治関与を隠す目的で2015年6月5日のWGヒアリングに加計学園関係者の出席と発言を議事要旨に非公表とし、2017年1月20日の第27回国家戦略特別区域諮問会議で初めて知ったことにしたのではないかと疑うこともできるが、疑惑=事実とすることはできない。

 2015年6月5日の今治市獣医学部新設提案に対するWGヒアリングに対応する諮問会議はWGヒアリングから24日後の2015年6月29日に「第14回」目として開催されている。

 WGヒアリングと諮問会議の議事要旨に加えてそれぞれに提出された配布資料から、安倍晋三が「WGから情報を受け取ることはない」と言っていることが事実かどうか探ってみる。

 先ず「朝日デジタル」が報じている2015年6月5日WG議事要旨に記載がないにも関わらず出席していた加計学園関係者3名の内1名は加計学園系列千葉科学大教授であり、加計学園新学部設置準備室長の吉川泰弘である。

 吉川泰弘はネットで調べてみると、昭和46年に東京大学農学部畜産獣医学科卒業、昭和51年に獣医師免許を取得、北里大学獣医学部教授や加計学園系列千葉科学大学副学長等を経て、現在は同大学危機管理学部動物危機管理学科教授に就任中となっている。
 
 バリバリの獣医学のエキスパートと見ることができる。当然、肩書は「新学部設置準備室長」となっているが、実質的には獣医学部設置準備室長を意味し、準備する側の加計学園の代表としてWGヒアリングに出席した。

 今治市はこのWGヒアリングに備えてPDF記事の「提案書」と「配布資料」を提出している。

 「提案書」は2015年6月4日の日付で、「今治市国家戦略特別区域提案書」と題している。内容は「具体的な事業の実施内容」として「国際水準の大学獣医学部の新設」を謳い、教育方針として「動物由来新興感染症等のリスク回避と蔓延防止 (高病原性鳥インフルエンザ、SFTS等)」、「食料貿易における品質保証、安全性確保、ブランド化、国際トレーサビリティー等の推進」、「公衆衛生を担う公務員獣医師や産業獣医師の確保」、「応用型ライフサイエンス分野への貢献(新技術・新産業の創出)」等を挙げている。   

 「配布資料」は「添付資料」と題して、テーマを「提案書」と同様、「国際水準の大学獣医学部の新設」に据えて、枠ごとに背景を幾つかの色で色付け、背景色に応じた色文字で、従来の獣医学やアメリカの動向、「日本の課題」、「地域の課題」、新設大学獣医学部の「効果」等々、プレゼンテーションしている。 

 吉川泰弘が獣医学のエキスパートであり、獣医学部設置準備室長の役目を担っている以上、PDF記事の作成そのものは自身以外の誰かであっても、記事内容に関しては吉川泰弘がタッチして、その指示で作成され、最終的に出来栄えに目を通した上で内閣府に提出されたはずだ。

 当然、WGヒアリングの議事要旨に吉川泰弘、他の2名の加計学園関係者の名前や発言が載っていようと載っていなかろうと(実際には無記載だが)、「提案書」と「配布資料」に記載してある専門的な様々な点についての質問に対しての説明は加計学園の獣医学部設置準備の責任者として吉川泰弘が主に担っていたはずだ。

 いわばWGの影の主役は吉川泰弘の背後に控えている加計学園であって、今治市提案の新設獣医学部の事業主体が加計学園であることをWG出席の全員が承知していて、そうであることを前提に政府側委員は議論に臨み、議論が進められた。

 このことが2015年6月5日のWGヒアリング後の2015年6月29日に開催された「第14回国家戦略特別区域諮問会議」の安倍晋三に伝えられていたかどうかが問題となる。但しWGヒアリングの座長として出席していた八田達夫は「第14回会議」に有識者議員として出席しているから、加計学園が新設獣医学部の事業主体であることは承知していたはずであるし、承知していなければならない。

 この事実が安倍晋三に伝えられていなかっとしたら、八田達夫はずっと黙っていたことになる。

 先ず「第14回諮問会議」には、「改訂日本再興戦略素案(抜粋)(資料2-2)」(有識者議員提出資料)が提出されている。 

 獣医学部新設に関しては以下の内容のみが記載されている。

 〈⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討

・ 現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。〉

 この「資料2-2」で、〈現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し〉と言っている「構想」自体は加計学園の新学部設置準備室長の吉川泰弘が提出し、議事要旨には記載されていないが、説明しないはずはない「提案書」と「配布資料」に基づく「構想」であるはずだ。

 「諮問会議」の議長は安倍晋三であるが、「第14回」は石破茂が内閣府特命担当大臣(国家戦略特別区域)として進行役を務めている。「資料2-2」に関する八田達夫の発言を見てみる。

 八田達夫「最後、8ページ、⑭です。獣医師養成系大学は、40年以上新設されていないのですが、今、エボラその他いろいろな獣に由来した病気が伝播しています。したがって、こういう研究者をつくるということは非常に大切なので、獣医大を新しく新設することを検討することになりました」

 「第14回国家戦略特区諮問会議」での獣医大学の新設についての発言はこれだけである。

 吉川泰弘がWGヒアリングに今治市名で提出した「提案書」と「配布資料」に関わる説明と、それらに基づいて議論され、結果得た結論についての説明があり、そのような説明に対して諮問会議でも議論が行われる常識的なプロセスが進行していいはずだが、議事要旨からはこのようなプロセスは見えてこない。

 この常識なプロセスは今治市提案の新設獣医学部の事業主体が加計学園であることを前提として行われることは断るまでもない。

 当然、安倍晋三のWGから「いちいち情報を受け取ることもありません」と言っていることは常識に対して整合性を欠くことになり、虚偽に位置づけられる。

 常識的であるのに議事要旨には常識が反映されていないということは2015年6月5日のWGヒアリングの議事要旨と同様、「第14回諮問会議」の議事要旨でも議論の多くを省いて隠してしまっているからだろう。

 議事要旨に記載しないことによって表に現れるべきことが現れずに隠れた状態になっている構図は意図的な隠蔽の介在なくして起こりようはない。

 この点を加味すると、安倍晋三の「いちいち情報を受け取ることもありません」は虚偽の位置づけから、限りなく虚偽そのものに近づく。

 その虚偽は加計学園獣医学部新設に安倍晋三が政治関与していた事実を隠すために必要とした虚偽ということなのだろう。
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