文韓国政府の従軍慰安婦日韓合意否定検証は韓国側の日本軍強制連行・強制売春関与の歴史認識への回帰

2018-01-11 11:26:41 | 政治

 韓国前大統領朴槿恵が救助隊も含めて300人以上の死者を出したセウォル号事件への対応不備や長年の友人である立場から朴政権への国政介入、あるいは大統領の権力を私物化して企業合併介入や資金横領、娘の大学不正入学に関与した崔順実ゲート事件等の一連の不祥事により2016年12月9日、韓国国会が憲法裁判所に対する弾劾訴追案を可決、2017年3月10日、憲法裁判所は大統領弾劾相当と判断、罷免を宣告。

 この弾劾・罷免を受けた2017年5月9日の大統領選で当選した文在寅が2017年5月10日に政権を発足。文在寅は大統領選挙中、日韓合意の見直しを公約として掲げていた。

 要するに朴政権が日本の安倍政権と取り交わした従軍慰安婦問題日韓合意を最初から正しい合意だと見ていなかった。だが、外野にいて、手出しできなかった。手出しできる立場に立つことができて、韓国政府として合意検証を開始した。

 そして2016年12月27日合意検証結果を公表、1月9日(2018年)に韓国の康京和(カンギョンファ)外相が日韓慰安婦合意に関する新方針を発表。文在寅大統領は翌1月10日の年頭記者会見で検証結果についての自らの考えを述べている。

 では最初に日韓合意検証に対して韓国政府がどのような方針で臨もうとしているのか、1月9日の韓国外相の発表を見てみる。

  「2015年の日韓慰安婦合意に関する新方針(要旨)」朝日デジタル/2018年1月9日18時17分)  

 (昨年12月27日、外相直属チームが合意の検証結果を発表して以降)外交省や女性家族省を中心に、被害者や関係団体の声に耳を傾ける一方、隣国である日本との関係を正常に発展させていく方法を真剣に検討してきた。その過程で何より、被害者の尊厳と名誉を回復しなければならないと肝に銘じた。

 また、両国関係を超えて、普遍的な人権問題である慰安婦問題が人類の歴史の教訓であり、女性の人権を拡大する運動の国際的な道しるべとして位置づけられるべきだとの点も重視した。あわせて北東アジアの平和と繁栄に向け、両国の正常な外交関係を回復しなければならないことも念頭に置いて、政府の立場を慎重に検討した。
 一、韓国政府は慰安婦被害者の方々の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けてあらゆる努力を尽くす

 二、この過程で、被害者や関係団体、国民の意見を幅広く反映しながら、被害者中心の措置を模索する。日本政府が拠出した「和解・癒やし財団」への基金10億円については韓国政府の予算で充当し、この基金の今後の処理方法は日本政府と協議する。財団の今後の運営に関しては、当該省庁で被害者や関連団体、国民の意見を幅広く反映しながら、後続措置を用意する

 三、被害当事者たちの意思をきちんと反映していない2015年の合意では、慰安婦問題を本当に解決することはできない

 四、2015年の合意が両国間の公式合意だったという事実は否定できない。韓国政府は合意に関して日本政府に再交渉は求めない。ただ、日本側が自ら、国際的な普遍基準によって真実をありのまま認め、被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待する。被害者の女性が一様に願うのは、自発的で心がこもった謝罪である

 五、韓国政府は、真実と原則に立脚して歴史問題を扱っていく。歴史問題を賢明に解決するための努力を傾けると同時に、両国間の未来志向的な協力のために努力していく

 本日述べた内容が被害者の皆さんの思いをすべて満たすとは考えていない。この点について深くおわびを申し上げる。今後も政府は真摯(しんし)に被害者の皆さんの意見に耳を傾け、追加的な後続措置をまとめていく。

 日韓合意は「被害当事者たちの意思をきちんと反映していない」ために「被害者の尊厳と名誉の回復」には繋がらない合意であることを根拠に新方針として「慰安婦被害者の方々の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けてあらゆる努力を尽くす」ことその他を挙げている。

 そして日本政府に対しては「国際的な普遍基準によって真実をありのまま認め、被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待」している。

 要するに日韓合意は「国際的な普遍基準」に則った「真実」の追求によって成り立っているとは言い難い。韓国政府としては「合意に関して日本政府に再交渉は求めない」ものの、今後共「真実と原則に立脚して歴史問題を扱っていく」と宣言、日韓合意を全面否定している。

 但し全面否定の具体的根拠には触れていない。

 この1月9日の韓国外相の新方針を発表翌日の1月10日に文在寅大統領は年頭記者会見で検証結果についての自らの考えを述べている。
 

 「年頭記者会見要旨」産経ニュース/2018.1.10 12:50)   

 一、平昌冬季五輪を南北関係改善と朝鮮半島の平和の転機としなければならない。

 一、従軍慰安婦問題を巡る日韓合意は両国間の公式的合意という事実は否定できないが、誤った問題は解決しなければならない。

 一、慰安婦問題を巡り韓国は、外交的な問題の中、十分に満足できなかったとしても現実的に最善の方法を探した。

 一、合意に基づき日本が拠出した10億円は問題解決に向けて良い目的で使えるなら望ましい。

 一、日本が心から謝罪するなどして、被害者たちが許すことができた時が本当の解決だ。

 一、日本とは心を通わせた真の友人となることを望む。歴史問題と未来志向の協力を分離して努力していく。

 一、今年が朝鮮半島の平和の始まりとなるよう最善を尽くす。その過程で日本や米国、中国など国際社会と協力する。(共同)

  文在寅は「従軍慰安婦問題を巡る日韓合意は両国間の公式的合意」ではあるが、「誤った問題は解決しなければならない」との表現で誤った合意と批判している。

 と言うことは、検証結果に基づいて“誤った公式合意”と看做すことに同意しているということであろう。いわば文在寅にしても日韓合意を全面否定している。それゆえに「合意に基づき日本が拠出した10億円は問題解決に向けて良い目的で使えるなら望ましい」との仮定願望の形で言いつつ、その実、「良い目的で使えないのではないのか」と疑問を投げかけている。

 要するにいくらカネを積まれても、誤った合意に拠出されたカネなのだから、カネの趣旨自体が如何わしい性格を帯びることになるということなのだろう。

 もし韓国が日本に対して政治的にも経済的にも強い立場に立つことができたなら、「使えるなら望ましい」といった仮定願望を使わずに「使うことはできない」と断言する形で拒否することになったに違いない

 また、強い立場に立つことができないゆえに日韓合意は公式的合意として認めるが、誤った合意である以上、「日本が心から謝罪するなどして、被害者たちが許すことができた時が本当の解決だ」と、“心からの謝罪”を求めることになったのだろう。

 文在寅が何を以って誤った合意だと日韓合意を全面否定し、日本政府からの「心から謝罪」があって初めて「本当の解決だ」としているのだろうか。

 2015年12月28日の日韓合意では、〈慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。〉ことを認め、〈 安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。〉ことを受け入れている。

 安倍晋三が日韓合意で認めた韓国人女性慰安婦に対する「当時の軍の関与」とは、以前からも国会その他で表明していたが、日韓合意後の2016年1月18日の参院予算委員会で、慰安所の設置・管理、慰安婦の移送、業者の慰安婦募集への要請のみだと答弁している。

 いわば常々表明しているように韓国人女性の拉致・誘拐を手段とした強制連行・強制売春には日本軍の関与はなかったとする答弁となっている。

 安倍晋三のこの「当時の軍の関与」に関わる歴史認識に基づいた日韓合意を文在寅政権は「慰安婦被害者の方々の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やし」にはならない誤った合意だと全面否定している関係を取っているということになる。

 当然、後者の歴史認識は韓国人女性の拉致・誘拐を手段とした強制連行・強制売春には日本軍の関与があり、この一線は譲ることはできない「真実と原則に立脚」した歴史認識としていることになる。

 この歴史認識は朴政権も掲げていて、日韓がギクシャクする原因となっていた。要するに文在寅は元々の韓国に於ける歴史認識へと回帰したに過ぎない。

 安倍晋三が主導する歴史認識が事実か、韓国の元々の歴史認識が事実なのかによって、いずれが胡散臭い歴史の改竄に手を貸しているのかが別れることになる。

 すべての問題点はここあることに留意しなければならない。

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