安倍晋三の18/1/24代表質問答弁:アベノミクス格差縮小説を信じる頭、拡大説を信じる頭、各々の程度

2018-01-25 12:12:52 | 政治

 昨日、2018年1月24日、安倍晋三の施政方針演説に対する各党代表質問が行われた。希望の党代表玉木雄一郎が安倍晋三のアベノミクスによって格差が生じていると指摘、対して安倍第2次政権によって格差は縮小している、幾つかの経済指標を取り上げて答弁した。

 確かに安倍晋三が答弁に使った各指標からは、格差が僅かずつではあるが、縮小に向かっているようには聞こえる。玉木雄一郎の格差に関する
質問箇所を「希望の党」サイトから引用することにする。安倍晋三の答弁は要所要所を取り上げる。文飾は当方。

 「質問」希望の党/2018.01.24)      

■格差是正は二の次の安倍政権

 「勝てば官軍」という思想は、勝った者が正義との考えであり、「明治レジーム」の考え方とも言えます。新自由主義的発想で、強い者はより強く、そして負けた者への配慮など一切ない──小泉政権以降の自民党政権、とりわけ、安倍政権では、こうした姿勢が色濃くなっています。事実、OECDの調査によると、日本では、所得再分配政策を講じた後の方が、格差が拡大するという逆転現象が起き、再分配機能が正しく働いていません。来年度予算案を見ても、生活保護の母子加算や児童養育加算を削減する一方、海外には多額のお金を配ったり、最新のミサイル導入に何千億もの莫大なお金を使おうとしています。多くの国民が、素朴におかしいと感じています。スローガンばかりの政策で、格差是正、とりわけ子どもの貧困対策への予算があまりにも少ないのではありませんか。総理は施政方針演説の冒頭で、「すべての日本人がその可能性を存分に開花できる」時代を切り拓くと明言しましたが、母子家庭の命綱を削るような予算は、これと矛盾します。改めて、総理自身が国民に訴えた言葉の本気度を伺います。

■庶民の懐を豊かにしないアベノミクス バブルへの警戒も必要

 アベノミクスも丸5年が経ちました。物価上昇率2%の目標達成時期はなんと6回も先送りされています。物価上昇目標は一体いつ実現するのか、総理の所見を伺います。

 華々しい目標を掲げて、できないから先送りし、「道半ば」だからまだやらせてほしいというのは、まるでゴールの無い「永遠の道半ば」政策です。これは安倍総理が繰り返す「政治は結果責任」と真っ向から矛盾するのではありませんか。確かに株価は好調です。しかし、多くの国民に実感はありません。昨年12月の日銀調査では「暮らしにゆとり」と答えた人は6.5%で、前回9月から1%近く減少しています。完全雇用状態なのに賃金がなぜ上がらないのか、総理の所見を伺います。

 活況を呈する株式市場もいびつな状態が続いています。昨年は、日銀が6兆円も上場投資信託、ETFを買っている一方で、個人はほぼ同額の6兆円を売り越しています。明らかに「官製相場」の様相が強まっており、日銀の資産残高も500兆円を超えています。もしマーケットが暴落すれば、日銀が破たんし「最後の貸し手」としての機能を発揮できない懸念もあります。万が一の危機に備え、日銀はETFの買い入れをやめるべきと考えますが、総理の所見を伺います。

■安易なサラリーマン増税は消費にマイナス

 税制改正も問題だらけです。なぜ、所得税が増税となるサラリーマンが年収800万円以上から850万円以上に急に変わったのでしょうか。官邸の鶴の一声で決まるような税制は極めて不透明ではないですか。総理の所見を伺います。

 そもそも、消費への悪影響を心配して消費税増税を2度にわたって延期しておきながら、個人消費を支えるサラリーマン層の所得税増税を毎年行うのは政策的にちぐはぐです。しかも、衆院選の公約には一言も書いてありませんでした。取りやすいところから取ろうとする安易なサラリーマン増税に、我が党は反対です。むしろ格差是正のためにも、総所得が1億円を超えると税負担が軽くなる逆累進課税の矛盾を解消するため、株式の譲渡益など金融所得への課税を強化すべきではありませんか。総理の所見を伺います。

 玉木雄一郎は「OECDの調査によると、日本では、所得再分配政策を講じた後の方が、格差が拡大するという逆転現象が起き、再分配機能が正しく働いていません」との文言で、アベノミクスが格差拡大の働きをしていると批判している。

 安倍晋三は先ず、「格差を固定化しない、格差を生じない世界を構築化していくことが重要な課題」と答えて、相対貧困率が政権交代後、経済が好転する中で低下に転じていると答弁している。

 特に上昇傾向にあった子どもの相対的貧困率は総務省の平成26年調査で集計開始以来初めて低下したと、間接的にアベノミクスの効用を謳っている。

 次に全世代の生活保護受給世帯の改善指標を挙げて、格差縮小の証明としている。

 「全世代の生活保護受給世帯は政権交代直後である平成25年のピーク時の約88万世帯より前年同月比で4年6カ月連続で減少し、現在では約77万世帯となっている」

 さらに「貧困の連鎖を断ち切るために来年度予算で5万を超える一人親家庭に対する児童給付手当を支給を増やした」こと。但し生活保護を受ける一人親世帯に支給する母子加算を見直すが、児童養育加算の支給対象者を高校生にまで拡大、「一人親世帯の6割強基準額が増額となる」こと、「生活保護世帯の大学進学等への進学資金のために進学準備金の支給金として自宅から通学に対して10万円、自宅外からの通学に対して30万円を支給の創設を行う」と貧困家庭の生活の底上げによる格差是正策を講じていると力説している。

 安倍晋三「引き続きアベノミクスを更に加速させながら、成長と分配の好循環をつくり上げることが格差が固定化するのを、全ての子ども夢に向かって頑張ることができる社会をつくってまいります」

 上記答弁は一語程度だが、言葉を飛ばしている。丁寧に答弁するという気持よりも、答弁の義務だけを考え、早口に読んで短い時間で終えようという気持が優っているいることからの読み飛ばしなのだろう。

 但しアベノミクスこそが成長と分配の好循環の原動力たり得ているとアベノミクスに太鼓判を押していることに変わりはない。

 玉木雄一郎が「格差是正のためにも、総所得が1億円を超えると税負担が軽くなる逆累進課税の矛盾を解消するため、株式の譲渡益など金融所得への課税を強化すべきではありませんか」と指摘したことに対する答弁。

 安倍晋三「平成30年度与党税制改正大綱により家庭の安定的な負担形成を支援すると共に税負担の垂直的な公平性を確保する観点から関連する各種税制のあり方を含め、諸外国の制度や市場への影響を踏まえつつ、総合的に検討するとされているところであり、丁寧に検討する必要があると考えております」

 要するに金融所得への課税強化は自公与党の議論を待つと言っているのみで、金融所得への課税は格差是正に資する制度にすべきという点にまで踏み込んでいない。安倍晋三が挙げた経済指標から見ると、格差は縮小しているように見えるし、同じく挙げている今後の貧困家庭等に対する政策を見ると、格差縮小が進展するかのように思わせるが、そうであるなら、格差是正にまで踏み込んだ金融所得課税にまで踏み込むべきだが、そうしないのは格差の存在を強調しかねないことになるからだろう。

 「完全雇用状態なのに賃金がなぜ上がらないのか」についての答弁。

 安倍晋三「実質賃金は2016年に前年比プラスとなったのち、2017年に入ってから概ね横這いで推移しています。一方名目賃金については、賃上げは中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが5年連続で実現し、多くの企業で5年連続のベースアップを実施、パートで働く方々の時給は統計開始以来、最高の水準となっております。

 正規の方、非正規の方、それぞれ所得環境が改善が見られ、2015年(?)春以降、増加傾向にあります。もう一つの増加を加味した総雇用所得を見ると、名目で見ても、実質で見ても、2015年7月以降、前年比プラスが続いております」

 そして玉木雄一郎の「昨年12月の日銀調査では『暮らしにゆとり』と答えた人は6.5%で、前回9月から1%近く減少しています」の指摘に対して「昨年9月は7.3%で、12月の6.5%は9月に継ぐ高い数値」だと訳の分からない答弁をしている。

 そして「因みに御党の政権である民主党政権の末期2012年12月を見ると、(『暮らしにゆとり』と答えた人は)3.3%だ」と、数値の比較を以ってしてアベノミクスの効能を間接的に押し出している。

 そして2017年の内閣府の調査を取り上げる。

 「現在の暮らしに満足している」73.9%の過去最高。
 「所得収入面で満足」――平成8年以来、21年ぶりに不満を上回った。

 そして最後に「今春闘で3%以上の賃上げを期待している」と結んでいる。

 安倍晋三の以上の答弁を以ってして、現在のところ、「道半ば」ではあるが、アベノミクスを格差縮小に貢献すると信じる頭の状況になることができるのか、いや、格差拡大にしか貢献しないと信じる頭の状況にならざるを得ないのか、前者・後者によって頭の程度に違いが出る。

 先ず実質賃金が2016年に前年比プラスとなったといっても、1以下のコンマの世界であり、当然、平均の数値である以上、所得上位者が所得下位者のマイナスを補った平均1以下のコンマの世界を構図としていると見なければならない。

 例え1以下のコンマの世界であったとしても、所得最下位層にまで実質賃金がプラスとなったなら、それ以上のプラスを手に入れる所得上位者の賃金がコンマを取り払う力を発揮することになるはずだ。

 だが、そのような状況にはなっていない。このことは物価が上がると上がった分、貨幣価値が下がる名目賃金が中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが5年連続で実現したとしても、物価を反映させることになる実質賃金が1以下のコンマの世界で横這いで推移することになっているところに現れている。

 実質賃金がプラスになったと言っても、所得上位者が所得下位者のマイナスを補った1以下のコンマを構図としていることを証明してみる。

 このことがなぜ格差拡大を示しているのか、証明することになる一つの記事を見てみる。2016年11月28日付の「野村総合研究所」PDF記事に、2015年の〈日本の富裕層は122万世帯、純金融資産総額は272兆円〉なる記述と、全階層の純金融資産総額は、「1402兆円」とする記述がある。   
 2015年の日本の世帯総数は約5300万世帯。5300万世帯-日本の富裕層122万世帯=非富裕層5178万世帯
 全階層の純金融資産総額1402兆円-富裕層純金融資産総額272兆円=1130兆円÷非富裕層5178万世帯≒2183万円(非富裕層1世帯当たりの平均金融資産)
 富裕層1人当りの平均金融資産272兆円÷122万世帯≒2億2300万円

 富裕層1人当りの平均金融資産が2億2300万円に対して非富裕層の1人当りの平均金融資産が2183万円。この格差は大きいが、非富裕層の金融資産がゼロの物が多いことを計算すると、格差は更に大きくなる。

 しかもアベノミクスの上に厚い政策によって年々家計の金融資産残高は増加している。2017年9月20日付「日経電子版」には、〈日銀が20日発表した(2017年)4~6月の資金循環統計(速報)によると、家計の金融資産残高は6月末時点で、前年同期比4.4%多い1832兆円と過去最高を更新した。〉との記述がある。

 上記「野村総研」の1402兆円よりも400兆円以上も増加している。でありながら、実質賃金のプラスが平均1以下のコンマの世界に留まっている。

 要するに安倍晋三がどのような経済指標を示そうと、あるいは下層世帯の生活が少しは良くなっていても、さらに実質賃金がプラスになっていると口を酸っぱくしても、それとも、「パートで働く方々の時給は統計開始以来、最高の水準となっております」と言おうと、所得上位層の所得が上位するに連れて累進的にそれ以上に増加しているから、格差は相対的に確実に拡大していることになる。

 弟が今まで500円貰っていた小遣いが500円増えて1千円に増えたとしても、1万円貰っていた兄が1万5千円の小遣いとなったなら、格差は拡大以外の何ものでもない。

 いわば安倍晋三の「成長と分配の好循環」の訴えに反してアベノミクスが上に厚く、下に薄い所得の再配分機能を構造としていることに何ら変わりはない。所得下位者に対する少しばかりの底上げでアベノミクスが格差縮小に貢献していると解釈するような頭の状況にならないことである。

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