安倍晋三の日朝首脳会談開催意欲は拉致問題に懸命に取り組んでいますというアリバイ作り

2018-06-12 09:30:40 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 ご存知のように安倍晋三が一方で初の米朝会談に臨むトランプに対して金正恩に拉致問題の解決に向けた提起をお願いし、自身は日朝首脳会談開催に意欲を示しているが、あくまでも前者を優先させた拉致解決の模索となっている。。

 2018年3月5、6日と文大統領特使団トップとして北朝鮮を訪問した大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が3月6日の記者会見で北朝鮮は朝鮮半島非核化の意思を明確にし、北朝鮮への軍事的脅威が解消されて体制の安全が保障されれば、核を保有する理由がない点を明確にしたことなどを発表。

 その鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室が記者会見3日後の3月9日に訪米、核・ミサイル実験の停止を提示する内容と米朝首脳会談を提案する金正恩の親書をトランプに渡した。対してトランプはその提案を受諾、今年5月までに首脳会談に応じる意向を表明した。

 安倍晋三は日朝首脳会談について例の如くのように「対話のため対話は意味がない」との態度を取っていたが、2018年3月22日付「共同47NEWS」記事が日本政府は日朝首脳会談について複数のルートを通じて北朝鮮側に意欲を伝達していると伝えた。記事は日本人拉致と核・ミサイル開発問題の解決を求める狙いだと解説している。

 この記事配信4日後の3月26日の参議院予算委員会では安倍晋三は日朝首脳会談の可能性を問われて、「北朝鮮との間では北京の大使館ルートなどさまざまな手段でやり取りを行っているが、詳細は差し控えたい。話し合いのための話し合いは意味が無く、日本にとって極めて重要な問題は拉致問題の解決だ。米朝首脳会談の機会に拉致問題が前進するように全力で取り組んでいきたいし、そのための来月の日米首脳会談にもしていきたい」(NHK NEWS WEB)と答弁している。

 日朝首脳会談での直接交渉による拉致解決よりも米朝首脳会談でトランプが拉致問題を提起、そのことをキッカケに日朝間で拉致交渉が進展することを願う、前者により重点を置いた発言となっていて、やはり米朝首脳会談を優先させている。

 安倍晋三は4月22日、拉致被害者家族らと約1時間程面会して懇談し、その後東京都内開催の北朝鮮による拉致被害者家族会や支援団体「救う会」などが主催する「国民大集会」に参加し、スピーチしている。

 先ず拉致被害者家族との懇談でのスピーチ。

 安倍晋三「先般、(4月)17日から訪米し、そして2日間にわたってトランプ大統領とじっくりと膝を交えて首脳会談を行ったところでございます。その際、北朝鮮の問題について日本の主張、立場をしっかりとトランプ大統領にお伝えしました。

 特に拉致問題について、是非この千載一遇の機会を捉えて、この拉致問題について議題に乗せ、解決を強く迫ってもらいたい。正に千載一遇のチャンスと捉え、この初めての米朝首脳会談において、この問題について金正恩(キム・ジョンウン)委員長に、日本が考えた解決に向けて伝えてもらいたい、ということをお話しさせていただいたところでございます」――

 「国民大集会」でのスピーチ。

 安倍晋三「米朝首脳会談で拉致問題を提起する、そしてベストを尽くす、と力強く約束してくれました。そして記者会見においても、昨年来日した際に、皆さんと対面されたことを思い浮かべながら、できる限り早期に御家族の再会を望む、拉致被害者の帰国に向け可能な限り全てのことをし、彼らを日本に帰国させる、あなたに約束する、こうテレビカメラの前で表明をしてくれました。この日米首脳会談の共同記者会見においては、米国でもCNN等で全国にライブで放映されるわけであります。そしてそれは北朝鮮の人々も見ている。正に世界に向かって米国の大統領がこの問題を解決する、被害者を家族のもとに返す、ということを約束してくれたと、こう思います。

 しかし、問題は首脳会談が行われ、そこで米国から提起されても、北朝鮮がどのように受け止め、実際に行動していくかであります。そしてこの拉致問題は正に日本の問題であり、日本が主体的に行動を取っていかなければならない問題であろうと、こう思うわけであります。今後一層、日米で緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の即時帰国に向け、北朝鮮への働きかけを一層強化していく考えであります」――

 「国民大集会」のスピーチでは、「拉致問題は正に日本の問題であり、日本が主体的に行動を取っていかなければならない問題であろう」と言いつつ、両スピーチを通してトランプの拉致提起を優先させ、そのことにより依存した解決の模索となっている。

 5月14日午前の衆院予算委員会で、

 安倍晋三「この歴史的な米朝首脳会談を生かして、北朝鮮にかかわる諸問題を解決していく、そのいわば前進となる会談にしていくべく、我々も全面的に協力をしなければならない、こう思っています。

 ・・・・・・・・

 そして、拉致問題についてでありますが、拉致問題の重要性については、再三再四、トランプ大統領との会談の際に説明をし続けてきたわけでございまして、認識について完全に一致できている、こう思っていますし、トランプ大統領自体も、米朝の首脳会談においてこの問題を提起するとはっきりと言われています。先般、ボルトン補佐官がテレビに出演した際にも、当然この拉致問題についても話すことになるとテレビで明言もしているということは御承知のとおりだろうと思います。

 最終的には日朝で話し合わなければこの問題は完全に解決することはできないと思っております。日本独自の努力で解決もしていかなければいけない。もちろん、米国や韓国や中国、国際社会の協力は必要ですし、実際に、今までになく、米国も韓国もよく理解をしていただき、協力をしていただいていると思いますし、日中韓でも初めて共同文書にも入ったわけでございます」――

 「最終的には日朝で話し合わなければこの問題は完全に解決することはできない」と言っているが、あくまでも「最終的には」――“最後の最後には”ということであって、それまでは拉致問題進展は米朝首脳会談に期待をかけ、その交渉を優先させるという文脈となっている。

 自らの外交力で日朝首脳会談の開催に漕ぎつけ、拉致解決に向けた自身の交渉に賭けるという対北朝鮮交渉の構図とはなっていない。

 安倍晋三は訪米した6月8日のトランプとの首脳会談後の共同記者会見で拉致問題について次のように発言している。

 安倍晋三「トランプ大統領は世界の中で最も理解していただいている指導者だ。首脳会談で日本の考え方を時間をかけて話し、トランプ大統領にも十分理解して頂き、米朝首脳会談で提起することを約束していただいた。

 拉致問題は安倍内閣の最重要課題だ。最終的には私とキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の間で解決しなければならないと決意している」(NHK NEWS WEB

 安倍晋三の頭の中にある拉致問題解決に向けたスケジュールに関する構図は何も変わっていない。

 安倍晋三自身が3月26日の参議院予算委員会で、「北朝鮮との間では北京の大使館ルートなどさまざまな手段でやり取りを行っている」との発言で示している、あるいは政府による複数のルートを通じた北朝鮮側への伝達で示している日朝首脳会談開催の意欲にも関わらず、北朝鮮側の反応が芳しくないことからのあくまでも米朝首脳会談でのトランプの働きかけを優先させて、「最終的には私とキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の間で解決しなければならない」と日朝首脳会談を後回しにする従来の構図を引きずることになっている要因に違いない。

 安倍晋三とトランプとの日米首脳会談6月8日2日前の6月6日、「産経ニュース」記事が北朝鮮機関紙のメッセージを伝えている。

 朝鮮労働党機関紙労働新聞「外相の河野を初めとする安倍一味がほっつき回り、『対北圧力維持』と『拉致問題』を執拗に喚いている。

 (対トランプ米政権緊密協力の要請に対して)時、既に遅しだ」

 朝鮮中央通信「『拉致問題』ごときを持ち出し、対決に狂奔するなら世界の嘲笑を受ける」

 「わが民族同士」サイト「(国際社会に対北圧力を呼びかけることで)もたらされるのは『日本疎外』現象だけだ。

 拉致問題は2002年の日朝平壌宣言に基づき既に解決された。過去に我が国を占領し耐え難い苦痛を与えた罪悪をまず謝罪して賠償すべきだ」――

 勿論、金正恩の声を代弁していると見なければならない。

 各機関紙を通した言っていることの趣旨は、勿論のこと、安倍政権の「検証可能、且つ不可逆的な方法での核の完全放棄」を求める対北圧力一辺倒政策への反発であり、その反発が拉致解決に北朝鮮を閉鎖的な態度にしている主原因であろう。

 いわば安倍政権の完全非核化要求と拉致解決要求は北朝鮮にとっては相対立する要求となっているからこその反発であって、もし北朝鮮が完全非核化に応じる意思を持っているなら、相対立する要求であることが解けて、拉致解決を国家経済回復の大きな一助とするカードを引かない手はないことになる。

 応じる意思を持っていないからこそ、核の完全放棄を求める安倍政権の対北圧力一辺倒政策に対する反発であり、「拉致は解決済み」という態度であろう。

 いくらトランプが米朝首脳会談で金正恩に対して拉致問題の解決を提起したとしても、金正恩が完全核放棄の意思を持たない限り、安倍政権の対北圧力一辺倒政策と対立することになって、北朝鮮が握っている拉致カードは温存の憂き目に遭うことになる。

 断るまでもなく、拉致が解決されたとしても、非核化が実現しない限り、日米、その他の経済的な圧力政策は続くことになるからだ。マスコミの多くの論調にあるように北朝鮮としては時間を掛けた段階的核放棄を装うことで、その間に少しでも圧力が弱まることを狙うだろう。

 安倍晋三にしても、核の完全放棄の要求と拉致解決の要求が相対立する要求であることぐらいは北朝鮮機関紙の論調からも理解しているはずだ。にも関わらず、相対立する要求であることを無視して核の完全放棄の要求と拉致解決の要求の両方を掲げて、「最終的には日朝で話し合わなければ拉致問題は完全に解決することはできない」と、さも拉致解決に向かうかのような発言を繰返している。

 要するに題名に掲げたように安倍晋三の日朝首脳会談開催意欲は拉致問題に懸命に取り組んでいますというアリバイ作りでしかないということである。

 6月8日から10日にかけて行った「NHK世論調査」で安倍晋三が拉致問題の解決に向けて日朝首脳会談の開催に意欲を示していることに対しての評価を尋ねている。

 「大いに評価する」4%
 「ある程度評価する」52%
 「あまり評価しない」19%
 「まったく評価しない」9%

 「大いに評価する」4%+「ある程度評価する」52%=56%
 「あまり評価しない」19%+「まったく評価しない」9%=28%

 評価の傾向が圧倒的に多数を占めている。

 人それぞれの解釈がある。森友問題・加計問題で下げている内閣支持率を下げ止まりにしている要因はさも拉致解決に向かうかのような発言を繰返していることに対しての国民の支持かもしれない。

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