麻生太郎の佐川宣寿国税庁長官人事「適材適所」は身内感覚 国民感覚は“不適材不適所”そのもの

2018-06-06 11:42:52 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月5日付「NHK NEWS WEB」記事が、6月5日の衆議院の財務金融委員会で麻生太郎が佐川宣寿を国税庁長官に任命した人事について認識を問われて、「適材適所だったと思う」と答弁したと伝えいた。

 当日の衆院財務金融委の動画をダウンロードして、どう答弁したか見てみた。

 海江田万里「昨日、財務省から森友学園案件に関する決裁文書の改竄等に関する調査報告が公表されました。初めて改竄という言葉を使いましたが、私どもは以前から改竄ということをずっと言っておりました。

 で、麻生大臣は昨日3時半から財務省において記者会見をしました。そして冒頭15分程ですね、記者の質問にも受けておりましたけど、冒頭発言がありました。その冒頭発言の最後のところで、私も麻生大臣、辞任の弁があるのかと思っておりましたけれども、そうではありませんで、『私のリーダーシップで財務省が一丸となって、これから信頼回復に努める』、こういう発言がありましたね。

 私はそれを聞きまして、ま、耳を疑いましたね、これ。麻生総理が、これまでこの森友学園の問題に関してこの真相究明のためにどれだけやっぱりリーダーシップを取ってきたかということ、私はハッキリ申し上げまして、麻生総理、麻生大臣のリーダーシップというのは、皆無であったんじゃないだろか。むしろ隠蔽を増長する、そういう方向の働きをやっていたんではないだろうか、いうふうに思います。

 で、この森友学園の問題では3月の9日にですね、当時の佐川国税庁長官が麻生大臣のところに辞表を提出をしました。3月の9日です。私は前から、この佐川国税庁長官は不適任だよ、国税庁長官としては不適任だよということを何度も申し上げてきました。その度に麻生大臣は適材適所だ、いうことを言ってきたわけですが、3月9日、辞表を持ってこられて、何でこの3月9日です?

 まさに確定申告の一番最後の、最終盤のところに入ってきて、その国税執行の最高責任者が辞表を持ってきたのかというふうに麻生大臣はお考えでしたか」

 麻生太郎「佐川前国税庁長官の不適切、適切ということに関しましては、先ず、私供、国税庁長官として少なくともこれまでの経歴等々を考えて、また国税庁長官としての職務に関しましてはキチンと対応してきていた、というように思いますし、そのような評価も頂いておったところでありますんで、それに関して適材適所であったと、そう思っております。

 3月9日になぜ出したかっていうことに関しましては、それはご本人でないとなかなか分からんところでございますし、御本人としてもそれまでの色んな経緯を考えて、自分なりの判断をしたんだところでありますし、そのことに関してどういうような心境で、あの時点で出したについては計りかねます」(以上)

 麻生太郎は「国税庁長官としての職務に関しましては」「適材適所であった」と、財務省理財局長の職務とは区別している。但しいくら能力のある人物であったとしても、財務省理財局長として国民から疑義を持たれた官僚の国税庁長官への任命を「適材適所」と言うことができるだろうか。

 例えばの話、女性記者への「セクハラ発言」疑惑で2018年4月18日に辞任した財務省事務次官福田淳一を別の公的機関の責任者に据えることを以って、国民に対して「適材適所」と言うことができるだろうか。

 公務員である以上、上に立つ者の責任として国民に対しても部下に対しても規範となる行動が求められる。

 麻生太郎は3月の9日に佐川宣寿から辞表を受け取り、辞任を了承したあと、午後7時40分から財務省で記者会見を開いている。一部抜粋。

 「The Page」

 麻生太郎「本日、佐川国税庁長官から理財局局長時代の国会対応に丁寧さを欠き、国会審議の混乱を招いたこと、また行政文書の管理状況についてさまざまな指摘を受けていること、さらに今回、取り沙汰されている決裁文書の国会提出時の担当局長であったことなどを踏まえて、国税庁長官の職を辞し、退職したいとの申し出があり、本日付で退職させております」

 麻生太郎自身、佐川宣寿を理財局長時代、問題のあった人物だと認めている。特に国政の重要課題を審議する場である国会への「対応に丁寧さを欠き、国会審議の混乱を招いた」ことは一部局の責任者としての経歴に重大な汚点を記す失態となったばかりか、国民に対して礼を失する態度となる。

 だが、それを汚点とも、失礼な態度ともせずに「適材適所」として財務省理財局長から国税庁長官へと栄転させた。麻生太郎の感覚は社会通念に反してはいないだろうか。

 「朝日デジタル」が〈学校法人・森友学園(大阪市)との国有地取引の際に財務省が作成した決裁文書について契約当時の文書の内容と昨年2月の問題発覚後に国会議員らに開示した文書の内容に違いがある〉と報じたのは2018年3月2日である。

 この報道を受けて、森友問題追及の国会審議が一段と紛糾したが、財務省は当初、国会議員らに開示した文書のみしか存在しないとして書き換えを否定していたが、野党の激しい要求に調査を約束、「朝日デジタル」報道の3月2日から10日後の3月12日になって、去年2月以降、14件の決裁文書に書き換えがあった等の調査結果を報告、謝罪した。

 いわば佐川宣寿が2017年2月以降、財務省理財局長として国会答弁に立ち、野党の森友学園国有地売却に関わる疑惑追及に抗してどのような政治家の関与もない、適正な売却だったとの主張を繰返していた間に決裁文書の改竄が行われた。

 佐川宣寿が国税庁長官を辞任したのはこの3月12日の3日前である。既に財務省は文書改竄の調査に取り掛かっていて、改竄した文書の存在の報告を佐川宣寿が受けていたことは3月9日の夜、報道陣の取材に応じた際の発言が示している。

 「産経ニュース」(2018.3.9 22:53)(一部抜粋)

 佐川宣寿「理財局長時代の国会対応に丁寧さを欠き、国会審議の混乱を招いたこと、行政文書の管理について指摘を受けたこと、(森友学園に関する財務省の)決裁文書の国会提出時の担当局長であったことを踏まえ退職したいと大臣に伝えた。今回処分を受けたことや確定申告期間中の辞職となったことをおわび申し上げる」

 記者「担当局長だったときに書き換えたのではとの指摘もあるが、当時の認識は」

 佐川宣寿「捜査を受けている立場なので差し控えたい」

 記者「森友学園への土地の売却は適正な価格であったと確信しているか」

 佐川宣寿「「そういう思い。理財局長時代はそう考えていた」

 記者「虚偽答弁した認識は」

 佐川宣寿「そういう批判があることは承知している」

 記者「特定の政党などへの忖度(そんたく)はあったのか」

 佐川宣寿「「忖度とはどういう意味か。国会での質問には誠実に対応したと思っている。国有財産の処分に関する質問には『法律、ルールに基づいて管理してきた』と答弁してきた」(以上)

 記者が「担当局長だったときに書き換えたのではとの指摘もあるが、当時の認識は」と尋ねたのに対して佐川宣寿は「捜査を受けている立場なので差し控えたい」と答えているものの、文書改竄の認識に立った反応なのだから、財務省から佐川宣寿に報告が入っていたことの証拠であろう。

 東大卒のキャリア官僚で確かに優秀なのだろう。だが、国権の最高機関である国会という場で上に立つ者の責任として国民に対しても部下に対しても規範となる行動を取るべきところを、少なくとも国民の目からは批判を受ける行動に終始した。

 これは重大な過失以外の何ものでもない。財務省理財局長から国税庁長官に栄転する当時、既に国民の批判は激しいものがあった。それを躱(かわ)しての麻生太郎による国税庁長官人事なのだから、「適材適所」だと頑張るのは身内には通用したとして、国民感覚から“不適材不適所”としか受け止めることはできないはずだ。

 麻生太郎は行政の不信を招いた責任という点だけではなく、国民感覚を理解できないという点でも財務大臣としての資格はない。

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